久元 喜造ブログ

2014年6月24日
から 久元喜造

富岡製糸場 世界遺産登録を喜ぶ。

群馬県の 富岡製糸場 が、「富岡製糸場と絹産業遺産群」として、世界文化遺産に登録されことが決定しました。
岩井富岡市長をはじめ関係者のみなさまに、お祝いを申し上げたいと思います。

富岡製糸場は、1872年(明治5年)に官営工場として開設され、我が国の殖産興業の象徴であり続けてきました。その後、民間に払い下げられ、1939年(昭和14年)からは、片倉工業が生糸の生産を行ってきました。
生糸の生産が海外との厳しい競争にさらされる中で、明治以来の施設を大切に保存されながら、工場の操業を続けてこられたご苦労は並大抵のものではなかったことと想像します。
片倉工業は、1987年(昭和62年)に操業を停止しますが、2005年(平成17年)に富岡市に寄付されるまでの18年間、15000坪に及ぶこの巨大な施設の維持・保存に全力を傾けられました。
そして現在は、富岡市の手で、大切に管理されています。

私は、2010年の秋、施設内を案内していただいたことがあります。
そのときにお伺いしたお話によれば、工場の設計、建設の指揮と、初期の工場の運営に当たったのは、ブリューナーをはじめとするフランス人でした。
ブリューナー一家には、320坪にも及ぶ、広大な屋敷が与えられたと記憶しています。破格の待遇と言えますが、当時の明治政府は、それだけ必死にヨーロッパの技術を吸収しようとしたのでしょう。
生糸や機会の検査を担当したフランス人たちのために建てられた検査人館は、1873年(明治6年)の建築。
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のちに改装され、工場長室、貴賓室などがつくられました。当時のままに保存され、有栖川幟仁親王の書なども残されていました。
この館には、当時のままだという、浴室、浴槽も保存されていました。
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この貴重な産業遺産が、幾多の困難を乗り越えて大切に保存・管理され、今回の世界遺産登録に至ったことに深い感銘を覚えます。


2014年6月21日
から 久元喜造

板宿・井戸書店を訪問。

先週、板宿商店街の井戸書店にお邪魔しました。
小さな(失礼?)街の本屋さんです。昔は、このような本屋さんが街の中にたくさんありましたが、ずいぶん少なくなってしまいました。
そんなに広くない店内に、数人のお客さんが、書棚を見遣ったり、本や雑誌を広げたり、めいめいに時間を過ごしておられます。
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三代目の店主、森忠延さんにお話をお聞きすることが出来ました。
森さんのお話では、書店の経営が難しくなってきた背景のひとつに、図書館の貸し出しが激増していることがあると言います。すでに全書店の販売冊数を大幅に上回る貸し出しが図書館で行われています。
私も、以前から、利用者が求めるままに図書館がベストセラーを大量に購入し、無料に貸し出すようなことを続けていると、書店は立ちゆかなくなり、また、苦労して労作を書き上げた著者にとっては適切な印税収入が見込めなくなって、活字文化の衰退につながるのではないか、という危惧を持っていました。
先日も、中央図書館館長をはじめ幹部に来ていただき、この点についての説明を求めたところですが、神戸市立の図書館では、同一の図書の購入上限冊数を定め、厳格に運用しているとのことで、とりあえず、安心しました。

当然のことながら、アマゾンなどのネット販売の急増、「新古書店」の販売冊数の増加も要注意です。
ネット購入の手軽さは否定できないところで、何とか、街の書店との共存を模索していけないかと感じます。
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森さんは、子どもがネットに関わりすぎると、読書習慣が失われ、「集中力の欠如」「思考しない・短絡化」「記憶・感情・知覚の鈍化」「言葉の衰え」を招き、国力の低下を招く、と心配されていました。
これらの関連についても、注意深く考察していくことが必要です。


2014年6月19日
から 久元喜造

「90分飲み放題」は、日本くらい?

先週、日本語を流暢に使いこなすフランス人の方から、こう言われました。
「日本に来て、電車や地下鉄の中で、日本人が酔っぱらうのを見て驚きました」
「パリの地下鉄の中で酔っぱらうフランス人、いません」

最近は、電車の中で酔っぱらっている人は、以前より少なくなりましたが、そんなに、日本とフランスとは違うのか、と訝しく聞き流す私に、フランス人は、さらにたたみかけます。
「『90分飲み放題』とかやっているのは、日本くらいですよ。飲み放題だと、短時間に飲まなければいけない。だから、日本人は、電車の中でも酔っぱらうのです」
「フランス人も飲みますが、ワインをゆっくり飲みます。みんなで会話しながら、楽しみながら飲みます。だから、日本人みたいに、電車の中で酔っぱらうことはありません」

ずいぶん、断定的な言い方をするものだ、と感心しました。
『90分飲み放題』だからと言って、元を取ろうと飲みまくる人は多くはありません。
飲み放題は、飲み代をあらかじめはっきりさせておくための知恵だとも言えます。日本人がみんな飲み放題で飲み狂い、電車の中で酔っぱらっているわけではありません。

しかし、『90分飲み放題』が、異文化に属する方から、こんな風に見られているというのは、新鮮に感じました。
確かに、飲み放題というのは、グレードの高い飲み方とは違いますし、時間に制約されない古典的な庶民の飲み方とも違います。
一方、最近は、『プレミアム飲み放題』と銘打ってワンランク上の銘柄をそろえるとか、『兵庫の酒飲み放題』とか、飲み放題の世界も進化しているようで、フランスに日本の「飲み放題文化」を輸出するのも面白いかも、などとくだらない妄想に耽ってしまいました。


2014年6月16日
から 久元喜造

『ラトヴィアのおはなし』

神戸とラトヴィア・リガ市友好都市締結40周年を記念し、神戸を訪問しておられたリガ市のみなさんは、無事、帰国されました。
神戸と同じく、ラトヴィアとの交流を長く続けておられる自治体が、北海道東川町です。その東川町の松岡市郎町長さんが、『ラトヴィアのおはなし』を送ってくださいました。

『あくまとにょうぼう』など5つの民話が収められています。
この本には、東川町と姉妹都市であるルーイエナの美術学校の生徒さんたちが描いたイラストも入っています。
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日本の民話によくあるような、ほのぼのとしたお話はありません。
「あくま」もよく出てきますし、悪人には厳しい懲罰が待っています。
『うんのこばこ』では、「ははおや」にいじめられている「はたらきもの」の「ままこ」が、森のなかで「おばあさん」に助けられ、そのおかげで「おうじさま」と結婚するのですが、一方、「ままこ」をいじめた「ははおや」は、「わがままなむすめ」とともに、焼かれて死んでしまう運命をたどります。
物語は、
「はこの なかから ひが とびだして、いえ もろとも おやこを きれいさっぱり やいてしまいました」
と、まるで、行状のよくなかった親子が死んでせいせいしたかのように結ばれます。

権力を持つ者に対する、庶民のささやかな抵抗やあざけりも出てきます。
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『かけつけ三ばい』では、「けちな じぬし」が、使用人に出す食事をけちるため、仕事の後、「みずを 三ばい のませる」ことにします。
これに対し、使用人のひとりが「四はいめ」のお代わりを所望し、その理由として、「いが ひろがって、めしが もっと 入る」と言うのを聞いた「けちな じぬし」が、「かけつけ三ばい」を無理強いしなくなった、というお話です。
『べつばらのしくみ』でも、「ものごい」が、屁理屈をこねる「りょうしゅさま」に一泡吹かせます。

東川町とラトヴィアとの友情が、さらに深まっていくことをお祈りしたいと思います。

 

 


2014年6月14日
から 久元喜造

アヴェ・ソルを聴く。

神戸市とラトヴィアのリガ市が姉妹都市提携を結んで40周年を迎え、ウシャコフス市長をはじめとするリガ市のみなさんが神戸を訪問されています。
昨晩は、市長のほか、ペンケ駐日ラトヴィア大使も出席され、歓迎レセプションが開かれました。
レセプションでは、ラトヴィアが誇るリガ室内合唱団アヴェ・ソルの演奏も披露されました。
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昼には、長田のピフレホールで、アヴェ・ソルと神戸市混声合唱団とのジョイントコンサートが開かれ、ウシャコフス市長と並んで聴かせていただきました。
アヴェ・ソルを聴くのは初めてでしたが、想像していたとおりの素晴らしい演奏でした。
アメリカの作品やドビュッシーの作品も演奏されましたが、やはり民謡の宝庫ラトヴィアの作品が心に染みました。

中でも感銘を受けた作品は、”Es gulu gulu”。
プログラムには、「ねむり」と訳されていましたが、日本語が分かるラトヴィアの方によれば、直訳すると、「わたしはねむい、ねむい」だそうです。
不可思議な透明さを湛えた美しい作品でした。もともとは古いラトヴィア民謡ですが、現代のラトヴィア人作曲家による編曲で歌われました。
覚醒から睡眠に移行する過程で、不思議な幻想が出現するさまを描いているように、私には感じられました。
人間の声がいかに豊かな表現可能性をもっているかについて、改めて気づかされたようにも感じました。

コンサートは、ラトヴィア民謡を代表する名曲「風よ吹け」で締めくくられました。
満席の会場から、両市の合唱団に対して、大きな拍手が送られました。


2014年6月13日
から 久元喜造

ワールドカップ 香川・岡崎選手への期待

ブラジルでサッカーワールドカップが開幕しました。
日本代表選手の中には、神戸ゆかりの香川真司選手と岡崎慎司選手がいます。
香川選手は垂水区の乙木小学校出身、岡崎選手は西区の滝川第二高校出身。
神戸ゆかりの、神戸市民になじみの深い2人の選手が選ばれたことを、大変うれしく思っています。
神戸市役所のロビーや花時計側の建物の壁面に、両選手の出場を祝い、横断幕を掲げています。
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乙木小学校には香川選手への応援横断幕が掲げられています。
滝川第二高校最寄駅、地下鉄西神中央駅前のショッピングモールには、岡崎選手への応援横断幕が。

日本代表には、かつてヴィッセル神戸に所属した大久保嘉人選手や伊野波雅彦選手もおり、ブラジルでの活躍を期待しています。
日本代表の初戦となるコートジボワール戦は、日本時間で15日(日)午前10時にキックオフです。
当日、神戸では、ノエビアスタジアム神戸でパブリックビューイングが開催されますが、1万人を超える応募があったと聞いています。
神戸からブラジルへ熱い応援を届けましょう。


2014年6月11日
から 久元喜造

住宅都市局のみなさんと政策討議

きょうは、庁内で、住宅都市局のみなさんと政策討議を行いました。
会場レイアウトは、多少ユニークです。
部屋の真ん中に、机を六角形にして配置。その一辺に、進行役の岩橋計画部長、鳥居副市長、私が座り、残りの各一辺に、課長、係長が3人ずつ着席です。周囲には、椅子席が並べられ、60人ほどのみなさんが着席しています。
山崎聡一住宅都市局長は、後ろの椅子席から議論を見守ることにされたようです。
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岩橋部長が、「きょうは、ものごとを決める場ではないので、皆さん、自由に発言してください」と口火を切り、議論を開始。
まず、机に着席の係長から、「土地利用政策」「総合交通体系」「ニュータウンのリノベーション」「住宅政策(空き地、空き家、住み替え)」について、それぞれ、3分から5分くらいの説明がありました。
図表やグラフを使った、簡潔でわかりやすい説明でした。

そのあと、自由に議論が行われましたが、全体の問題意識は、「人口減少時代の都市のあり方」です。
住宅開発等による市街化区域の拡大を抑制する、市街化区域内の未利用地を市街化調整区域に「逆線引き」するという大きな方向性については、異論はありませんでした。
鉄道駅から遠く、人口の流出が進んでいる地域の土地については、鉄道駅に近い地域の土地と換地するという手法も提案され、注目されました。このような形で土地の交換が進んでいけば、いずれは遠隔地の居住者はいなくなって原野に戻り、市街化調整区域に逆線引きすることが可能になります。

神戸市は、市役所の中から積極的な政策提案を行い、街づくりを主導してきた輝かしい伝統があります。
最後に私から、そのような伝統を受け継ぐ住宅都市局のみなさんは、局内でしっかりとした議論を行い、エピソード的な施策ではなく、制度的な手法を活用した普遍性の高い政策を立案し、提案していただくようお願いし、政策討議を終えました。
たいへん有意義な2時間でした。


2014年6月10日
から 久元喜造

地方自治の地道な仕事の仕方

6月6日の毎日新聞朝刊に、片山善博慶応大学教授のインタビューが掲載されていました。
嘉田由紀子滋賀県知事の知事選挙不出馬に関するものでしたが、地方自治についての本質的な議論を含んでいて、興味深く読みました。

片山善博氏は、2期8年、鳥取県知事を務められました。
県が計画していたダム計画を中止させたのは、
「「脱ダム」とか公共事業がすべて悪だとかいう発想」
ではなく、必要性や他の施策との優先順位との関係を考えたからだ、とおっしゃっていました。
いかに世間の耳目をひくかなどということでなく、客観的な必要性の観点からのみ冷静に判断されたということでしょう。

こうした経験を踏まえ、片山氏は、
「ダムに限らず、真摯に議論すればおのずと落ち着き先は決まる。正しい政策は大騒ぎしなくても時間がたてば支持される」
と、指摘されています。
「方針転換によって痛みを覚える人もいるので、そっとするのが礼儀だ」というコメントについては、「説明責任」とは相いれない、と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、考え抜いて政策判断を行って来られたご経験と、それらによって培われた見識が伝わってくるように、私には感じられました。
インタビューは、
「地方自治とは、住民が困っている課題をシステムとしてどう解決するかという、本来は地道なもののはずだ」
と、結ばれます。

そのとおりだと思います。
「地方自治」は、住民の日々の生活に根差した、地道な営みです。
意見が分かれている政策テーマについて、いたずらに争点化を図るのではなく、周囲を見渡しながら、そっと事を運び、気づかれることなく問題を解決するのも、芸術的な仕事の仕方なのかも知れないと、尊敬する片山先輩のインタビューを読みながら感じました。


2014年6月8日
から 久元喜造

大災害時における選挙執行

先週、マスコミ関係者のみなさんの懇談会があり、1時間ほどお話をさせていただいたのですが、その中で、東日本大震災が起きたときに選挙をどのように延期していったのかについて取り上げました。

2011年は、統一地方選挙の年でした。
3月11日、東日本大震災が発生したとき、4月10日執行の選挙の告示日が3月24日に迫っていました。
総務省選挙部では、地震発生のその日から、選挙を延期させるための特例法案の立案に着手、3月18日には閣議決定され、その日のうちに国会で成立しました。
この法律は、被災地における統一地方選挙の対象選挙を、最大6ヶ月、9月22日まで延期できるようにするものでした。
法律は、5月と8月に2回にわたって改正され、延期することができる選挙の対象を拡大するとともに、期限もさらに遅らせることができるようになりました。

このように、地方選挙については、法律で選挙期日を延期することができるわけですが、国政選挙についてはそうはいきません。
とりわけ衆議院の解散が行われたときは、解散の日から40日以内に総選挙を行うことが憲法で明記されているからです(憲法57条)。統一地方選挙のように、法律改正で延期させることはできないのです。
もし、衆議院が解散されている状態であの日を迎えていたとしたら、衆議院選挙の公示と選挙の執行を行うしかありませんでした。選挙実務は大混乱を来したことでしょう。

選挙期日は、為政者の都合で勝手に動かされることのないよう、明確に定められる必要があります。
東日本大震災、阪神・淡路大震災クラスの大災害が発生したときは、一定の範囲で国政選挙の期日を延期することができるようにするための根拠規定が、何らかの形で憲法の中に設けられるべきではないかと思います。


2014年6月4日
から 久元喜造

INAC神戸レオネッサへの期待

先週から、神戸市役所には、カナダで行われる、2015サッカー女子ワールドカップ出場を祝い、横断幕が掲げられています。
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先月ベトナムで行われた女子アジアカップでの「なでしこジャパン」の活躍は見事でした。
その中心的な役割を果たしたのが、地元「INAC神戸レオネッサ」に所属する、海堀あゆみ、澤穂希、中島依美、髙瀬愛実の4選手でした。
ロビーに掲げました横断幕では、各選手のお名前も入れています。
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また、アジアカップでは、8月末までシアトルにレンタル移籍中の川澄奈穂美選手の活躍も光りました。
思い起こせば、「なでしこシャパン」は、3年前のワールドカップ・ドイツ大会で優勝、2年前のロンドンオリンピックで銀メダルを獲得しましたが、INAC神戸からは、澤選手をはじめ7選手が入り、大活躍しました。

そういう盛り上がりの中で、神戸市として、練習環境の向上のために、2012年11月、六甲アイランドに「神戸レディースフットボールセンター」を整備しました。
昨年は、なでしこリーグや皇后杯などで優勝を重ね、史上初の4冠を達成し、見事、期待にこたえてくれました。
私も3月末、4冠達成を記念した集いに出席し、激励させていただきました。

6月に入り、アジアカップのため中断されていた「なでしこリーグ」も再開されました。
現在、6位のINAC神戸ですが、調子も上向いてきています。
是非とも今シーズンでも、目標の3冠を達成してほしいと願っています。