久元 喜造ブログ

2014年7月19日
から 久元喜造

官展-東京、ソウル、台北、長春

今週は、 兵庫県立美術館 で、「官展に見る近代美術」を鑑賞しました。
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「官展」は、国の主催による美術展です。1907 年に東京で文部省美術展覧会(文展)として開催されたのが最初です。
その後、海外でも開催されるようになり、朝鮮半島ではソウルで、台湾では台北で、満洲では長春で開催されました。
海外領土や満州国での「官展」の開催は、大日本帝国政府の占領政策や満州国での国策の展開と関連していたと想像されます。

もともと、芸術と政治との関係は微妙です。
たとえばナチス・ドイツは、ヒトラーの趣味もあり、シャガール、パウル・クレー、カンディンスキーなどの作品を「退廃芸術」と決めつけて迫害したことが知られています。一方、ナチス・ドイツに賞揚された作家たちは、戦後、ヒトラーへの協力者とみなされ、多くは苦難の道を歩みました。
そんなこともあったので、純粋に芸術作品として鑑賞しようと思いつつも、とくに朝鮮、台湾出身の作家が戦後たどった運命が気になり、作家の説明の方に目が行ってしまいました。
ソウルの「官展」に出品した作家の多くは、戦後、韓国でも活動し、韓国画壇の指導的立場で活躍した作家も多かったようですが、北朝鮮国民となった作家たちの消息はほとんどわからないようでした。
台北の「官展」に出展した作家の多くも、戦後の台湾で活躍したようです。しかし代表的な台湾出身の画家、陳澄波 は、1947年の228事件で殺害されました。
長春の「官展」への出品は現存していないようで、「官展」に参加した作家の同時代の作品や日本に引き揚げた後に描かれた作品などが展示されていました。
旧ソ連軍侵入後における文化財破壊がいかにすさまじかったかを物語っているように感じました。


2014年7月16日
から 久元喜造

神戸と福岡の人口が逆転するとき。

神戸市の直近の人口(推計人口)は、2014年6月現在、153万8454人です。
東京23区を除けば、横浜、大阪、名古屋、札幌に次いで、全国で5番目の大都市です。
そして、神戸に次いで人口が多いのは、福岡市です。

残念なことですが、神戸の人口は、ごく近い将来、福岡市に抜かれることは確実です。
2014年6月 神戸市 153万8454人 福岡市 151万5995人 その差は、22459人
2013年6月 神戸市 154万867人 福岡市 150万2354人 その差は、38513人
2012年6月 神戸市 154万3951人 福岡市 148万9142人 その差は、54809人

ここのところ、2年続けて、16000人を超える人口差の縮小が続いていますので、早ければ2015年秋、遅くても2016年春には、神戸市と福岡市との人口が逆転する可能性が高いと考えられます。
福岡市は、一貫して人口が増加してきました。かつて京都市の人口は福岡市より多かったのですが、2011年6月に福岡市が上回りました。
我が国の人口が減少している中で福岡市の人口が増え続けているのは、福岡市が九州の中枢都市であり、福岡県を含むほかの地域から人口を吸収し続けているからです。同じ事情は、札幌にも当てはまります。

人口は都市の活力のバロメーターですから、福岡の人口が神戸を上回ることになるのは、神戸を愛する市民のみなさんにとっては受け入れにくいことかも知れません。
しかし、長年続いてきた傾向を考えれば、これは、神戸市民が向き合わなければならない事実です。
その上で、神戸が、居住都市としても「選ばれる街」の地位をどう回復させていくのか、しっかりと議論を行い、政策展開を図っていかなければなりません。

 

 


2014年7月13日
から 久元喜造

半世紀ぶりの会下山公園

昨日の土曜日は、午前中、ポートアイランドの 神戸学院大学 で、同大学現代社会学部の開設記念式典があり、祝辞を申し述べました。
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そして、夕刻、兵庫区会下山町の 神戸学院大学附属高等学校 を外から見学しました。吹奏楽部の皆さんの練習の様子にしばらく聞き入りました。
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その後、会下山町を散策し、会下山公園に登りました。

5年生まで学んだ神戸市立川池小学校(現会下山小学校)の「川池こどもの歌」は、この会下山が舞台で、確か、次のように始まりました。

明るく晴れた 会下山に
こだまとひびく 歌の声

そして、2番か3番の冒頭。

神戸の港 見下ろして
世界に伸びる 明日の夢

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半世紀ぶりの会下山公園は、昔に比べ、樹影が濃くなっているように感じられました。そして、眼下に神戸の街並みと海が広がっていました。ただ、昔よりも、神戸の港は遠くなっていました。
川池小学校の子供にとって、会下山公園は、湊川公園とともに、格好の遊び場でしたが、この日は、土曜日の夕刻にもかかわらず、遊んでいる子供の姿はありませんでした。

自治会の掲示板に、「あらい熊を見かけました。気を付けて下さい」と、注意を呼びかける張り紙がありました。
地域のみなさんのつながりや助け合いの気持ちを垣間見る思いがしました。
なかなか難しい課題ですが、アライグマの駆除にも、粘り強く取り組んでいきたいと思います。
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「川池」の名前は、地域福祉センターの名称に残されています。そして、ここで「川池子育てサロン」が開催されていることも知り、温かい気持ちで会下山を後にしました。

 

 


2014年7月11日
から 久元喜造

理化学研究所-落ち着いた研究環境の回復を。

思い起こせば、1月28日、STAP細胞に関する記者発表が行われてからの、小保方晴子さんに関するフィーバーぶりには、すさまじいものがありました。
私に対しても、アイドルとなった小保方晴子さんに、神戸市がもっと積極的にアプローチせよ、とのご意見をたくさんいただきました。

しかし、私は、このような動きや発想には違和感を覚えていました。
2月10日の記者会見(神戸市ウェブサイトへのアップは、2月18日)では、次のように答えました。

「私の個人的な印象を言えば、小保方晴子さんに関する報道、あるいはメディアでの取り上げられ方というのはかなり過熱していると思います。ご本人もネットで表明されていますけれども、静かに研究をさせていただきたいというのがご本心だろうと思うんですね。
私はもう少しその研究を見守りたいと思っています。 ・・・・冷静に研究をできるような、そういう静かな環境を提供するということが地元自治体としての務めではないかなと私は感じています」

STAP細胞に関するその後の経緯はさすがに予測はできませんでしたが、研究のあり方についての思いは、今でもまったく変わっていません。
科学技術に関する研究は地道なものです。
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター  は、基礎的発生生物学に留まらず、幹細胞研究や再生医療に関する最先端の研究拠点です。ips細胞による世界初の臨床研究への期待も高まっています。
理化学研究所は、STAP細胞について、説得力のある説明を国民に対してしっかりと行っていただきたいと思います。
そして、一日も早く、落ち着いて研究できる環境が回復されることを願ってやみません。


2014年7月9日
から 久元喜造

神戸市下水道行政の底力

きょうの午後は、西水環境センター・垂水処理場にお邪魔しました。
芋田晴夫センター長をはじめ職員のみなさんから説明を聞き、センター内を案内していただきました。
畑恵介下水道河川部長は、入庁後すぐに垂水処理場で仕事をされたようですが、その頃とは、処理場の様子は一変していると聞きました。
垂水処理場は、国道2号線、そして、山陽電鉄の東垂水駅、滝の茶屋駅の南の海沿いに立地しています。
地下には、汚水ポンプ、生物反応槽、沈殿池などが配置され、地上には、芝生広場、多目的グラウンド、テニスコート、フットサルコートのほか、恋人岬と呼ばれる観光スポットまであります。
管理棟の屋上に上ると、台風接近の小雨の中、明石海峡大橋が靄に包まれて佇んでいました。

垂水処理場では、今年から、「こうべWエコ発電プロジェクト」が稼働しています。
バイオガス発電と、太陽光(メガソーラー)発電を組み合わせた発電システムです。
神戸市は、下水の汚泥を消化タンクに供給し、メタンを主成分とするバイオガス(消化ガス)を発生させ、発電設備に供給します。
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この発電設備と太陽光パネルの両方の設備は、(株)エナジーバンクジャパン(EBJ)が設置し、運営しています。
屋上には、約8000枚の太陽光パネルが並べられ、壮観でした。
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神戸市は、実質的に投資額ゼロで、下水汚泥を有効に活用し、廃棄物とCO2排出量の削減に貢献するとともに、20年間で約7億円の売電収入を見込むことができます。
太陽光とバイオガスのダブル発電事業は、日本初の取り組みです。長年培われた技術力と構想力が開花したプロジェクトです。
神戸市の下水道行政に携わっている職員のみなさんの底力を感じることができました。


2014年7月6日
から 久元喜造

市役所における「女性の登用」

私は、去年の市長選挙の政策 「本物の市政改革をすすめ、新しい地方自治がはじまる街に」の中で、
「若手や女性をはじめ職員の思い切った登用により、市民の生活を守る最強の仕事人チームをつくります」
と約束しました。
市役所改革において、女性の登用は重要な課題です。
自治体は、国と歩調を合わせて、民間企業に対し、女性を積極的に役員・管理職に登用するようお願いする立場にあります。その市役所が、女性の登用においてお寒い状況では、お願いするだけの説得力がありません。

市長に就任してまもない昨年12月1日の人事異動では、長田区長に神戸市政では2番目になる女性区長を、また、神戸市広報官に、民間出身の女性広報専門員を任命しました。
さらに、今年4月1日の人事異動では、一般事務職では部長級に3人、課長級に8人の女性職員を昇任させました。
この結果、係長以上の女性管理職数は過去最多の165人になりましたが、職員全体から見れば微々たるものです。

このように女性管理職の割合が少ないのは、女性職員が、管理職の登竜門である係長になろうとしない傾向があるからです。
神戸市では、係長になるには係長試験に合格する必要があります。
若手職員が主として受験するA選考で見ると、受験資格を有する職員のうち受験した職員の割合は、男性職員が42.5%に対し、女性職員は6.5%に過ぎません。
女性の係長が少なければ、課長や部長、局長になるべき人材の層が薄くなるのは当然の理です。
女性職員にもっと係長になってもらうためには、係長試験のあり方にとどまらず、係長の仕事や処遇のあり方、そして、女性が働きやすい職場環境や出産・育児支援のあり方を真剣に考える必要があります。
人事当局をはじめ、職員の皆さんと一緒に、これらの課題の克服に、しっかりと取り組んでいきたいと思います。


2014年7月4日
から 久元喜造

「退屈」な町から女性が出て行き、『消滅可能性都市』?

「日本創成会議」人口減少問題検討分科会(座長・増田寛也元総務大臣)は、2040年(平成52)年に、2010年と比較して若年女性(20~39歳)が半分以下に減る自治体を「消滅可能性都市」と呼んでいます。 (5月11日のブログ
どうして、若年女性が地域から出ていくのか?
そのキーワードの一つは、「退屈」かも知れない、と、山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』(2012年)を読んで感じました。
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1980年生まれの著者のデビュー作。
帯には、-「地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語」とあります。
「退屈」から逃げだし、上京したものの、結局、地元に戻る女の子もいれば、ずっと「退屈」を受け入れて、ローカルに暮らしている女の子もいます。
登場人物はみんな違うのですが、「ここではないどこか」に、「ここではない何か」を探し求め、探しあぐね、あるいは探索をあきらめた、「若年女性」の姿があります。

「退屈」なローカルと対極にあるのは、東京の非日常でしょう。
「町いちばんの美少女」は、そこに自己実現の場所を見いだそうと上京し、専属モデルからグラビアアイドルになり、もてはやされます。しかし、そこからクイズ番組などへの幅を広げられず、「アダルトビデオと見分けがつかないようなDVDを何本か出し」、これ以上の露出拡大を断念して、地元に戻ってきます。そして、フリーターになり、平凡な結婚の道を選びます。

ここから何か、政策に結びつくようなヒントがあるわけではありません。
でも、何かを考えるときに、その何かに関連した場所を覆っている「気分」を感じることは、大事なことではないかと、この小説を読んで感じました。


2014年7月1日
から 久元喜造

西区「分庁舎」実現に向けて

選挙の政策 「西区のおける政策」の中で、
「西神地域において、区民サービスの向上を図るため、福祉部門の機能強化をはじめ、行政サービス拠点となる区役所の「分庁舎」を、西神中央駅前に整備する」
と記しました。

今日は、西区役所、西神中央出張所におじゃましました。
中川西区長からしっかり説明を受けましたので、「西区分庁舎」を出来るだけ早く実現できるよう、作業を進めています。
今年度の予算では、「分庁舎」整備のための調査費を計上しました。
すでに調査にとりかかっており、今年度中に、「分庁舎」の機能、規模、場所などについて、目途をつけたいと考えています。
しかしいくら急いでも、「分庁舎」が完成し、サービスの提供を始めるまでには、数年がかかります。それまで、「分庁舎」の完成を待ってほしい、とお願いするだけでは、悠長すぎます。

そこで、それまでの間、少しでも、西神山手線沿線住民のみなさんへの行政サービスを向上させることが出来るよう、西神中央駅前にある 西神中央出張所を拡充し、福祉部門の機能強化を図ることにしました。
区民センターの4階に、西神中央出張所がありましたが、5階に、福祉部門のコーナーを新設しました。

高齢者福祉(介護認定申請受付、市民健診無料券交付、敬老優待乗車証など)、 障害福祉( 身体障害者・療育手帳の申請受付・交付、特別障害者手当・特別児童扶養手当など)、こども福祉(保育所受付、福祉乗車証(母子) 交付、 母子健康手帳、乳幼児 健診・育児相談、児童手当申請受付)などについて、6月から、業務を開始しました。

これで、西神山手線沿線のみなさんへの区民サービスは、一定程度、向上が図られたと思いますが、抜本的には、「分庁舎」が待たれるところであり、さらに作業を加速させていきます。


2014年6月29日
から 久元喜造

水道局職員は池で猟銃をぶっ放ち・・・・

もうだいぶ前になりますが、ある自治体で仕事をしていたとき、先輩幹部氏からこんな話を聞いたことがあります。
むかし、むかしのお話です。

その幹部氏は、役所に入ったばかりの頃、水道局に配属され、水源池の管理事務所で働いていたのだそうです。
山に囲まれたその水源地は、水は清く、澄み切っていて、静寂に包まれていたのだそうです。
ところが、突然、静寂を破り、銃声が・・・・

その 水源池には、大きな鯉がいて、ときどき岸辺に近寄ってきていたのだそうです。
その鯉をめがけて、ズドーン、ズドーン猟銃をぶっ放ち、鯉を仕留め、仕留めた鯉を「鯉こく」にし、酒盛りをしていたというのですから、すごい話です。
今、そんなことをすれば(誰もしません)、職員は即刻、懲戒免職、市長も監督責任を免れませんが、北の大地らしい、おおらかで豪快な話だと、思わず、腹を抱えて笑ってしまいました。

水道は、都市の近代化の象徴です。取水、浄水、配水など水道の施設整備、管理には、近代技術の粋が集められます。
同時に、水は自然からの贈り物です。大地の恵みです。水道は、自然とともに、大地とともに、あり続けてきました。
ときに猟銃をぶっ放ちながら、水源池の畔で一日を過ごしていた某市元幹部氏は、身体全体でこのことを感じ続けておられたのかもしれません。

幹部氏は、よく部下を引き連れ、野外でジンギスカンをしていました。あるとき、私を呼んでくれ、しこたま飲んだ後、
「水源池に行くべ!」
と、若き日々を送った水源池にみんなを案内しました。
もうとっぷりと日は暮れ、池の畔では蛍がひっそりと舞い、水面は漆黒の闇の中に沈んでいて、鯉の姿を見ることはできませんでした。


2014年6月27日
から 久元喜造

港に船が着く・・・・

神戸の港に、大きな船が着くのは、いいですね。
吉永小百合さんの『もうすぐ陽が昇る』 (平成25年8月1日のブログ) に、
「もうすぐ陽がのぼる 港に船が着く」
という一節がありますが、神戸港に大きな客船が着くと、何となくわくわくします。

先日、ポートターミナルに接岸した、サンプリンセス を見に行きました。
77441トン。
市役所の私の部屋からも望めるのですが、やはり近くで見ると、なかなかの存在感です。
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サンプリンセスは、今年中に10回、神戸港に入港する予定です。
今年は、サンプリンセスを含め、100隻の客船が入港する見込みです。
3月19日には、クイーン・エリザベス(90901トン)」が入港し、約5万人のみなさんが見学に来られました。
大型客船が入り、見学に来られるみなさんで神戸の街がにぎわうことは、神戸の活性化につながります。
QE_Port of Kobe

港の間の競争は激化しています。
世界の主要船社、日本の船社等への活動を、しっかり行っていかなければなりません。
せっかく神戸港に来られた以上、できるだけ長く神戸港に滞在していただくことも必要です。
市内観光の魅力的なツァーを企画し、提案していくことが求められます。

神戸港には、2つのターミナルがあることは強みで、現在、ポートアイランドのポートターミナルの改修に取りかかっています。
便利で使い勝手の良い、そして、デザイン性にも優れたポートターミナルに生まれ変わることができるようにしたいと思います。