久元 喜造ブログ

2020年9月14日
から 久元喜造

情報の受け手のことを考えてください。


教育委員会事務局が学校現場に対して、半年弱に、3687件ものメールを送っていた問題は、いろいろなことを考えさせてくれます。
根本的には、情報の出し手が情報の受け手のことを慮っていないところに問題があるのではないかと思います。
総合教育会議でも申し上げたのですが、メール群を受け取る校長先生や教頭先生がこれだけの量を読み切れるのかということです。
もし読み切れているとしても、人間の時間は限られていますから、メールの処理に忙殺され、子どもたちと向き合う大切な時間が奪われているとしたら悲しいことです。

また、メールの受け手が一人あるいは限られている一方、送り手が多数の部局にまたがっていると、送る側から見ればそんなに多くのメールではないかもしれないが、受け手には膨大な数のメールが届いてしまうことになります。
事務局の中の調整が必要です。
個々のメールについても、zip ファイルに多数のファイルが添付されていて、膨大な文書を読まなければいけないという話も断片的に聞いています。
文部科学省から送られてくる通知を事務局が咀嚼してポイントを的確、簡潔に伝えることも、コロナへの対応を考えれば大事な視点ではないかと思います。
通知文書が簡潔でわかりやすいかという点も重要です。
どちらでもとれるような曖昧な表現に終始し、問い合わせなければわからないというような状況があるとすれば、これも問題です。

総合教育会議の翌々日には、民間出身(金融機関、電機メーカー、報道機関)の調査官3名を任命し、調査に当たってもらうことにしました。
今月中には調査を終え、具体的な改善に結び付けることができるようスピード感を持って進めます。


2020年9月5日
から 久元喜造

木田元『ハイデガー「存在と時間」の構築』


マルティン・ハイデガー(1889 – 1976)の『存在と時間』は、一度は読んでみたいと思いながら挑戦しかったのは、難解で知られた著作であり、どうせ読んでもわからないだろうと思っていたからでした。
木田元(1928 – 2014)は、未完の書であった『存在と時間』をハイデガーの意図に従って再構築しようとします。
この試みが成功したのかどうかは別として、この作業の意図と過程を記した本書を読み、ほんの少しだけ『存在と時間』に近づくことができたように感じました。

本書が比較的読み易かったのは、木田が『存在と時間』に出てくる基本的概念の説明に際し、ドイツ語などの原語の意味、ときには語感を含め丁寧に説明してくれているからです。
『存在と時間』の重要な意図は、「古代存在論の伝承的形態を解体」することにありました。
そこで、古代存在論の存在概念の考察から始まり、アリストテレス、スコラ哲学、デカルト、カントと続く西洋哲学の系譜が批判され、その解体が目指されるのですが、木田は、ギリシア語、ラテン語、ドイツ語の原語の意味、語感を示しながら分析してくれます。
私のような哲学の素人には、このような説明はとてもありがたいものでした。
もし、個々の訳者が深い思索の上に選んだ日本語であっても、訳語だけからは原文にたどり着くことはできなかったと思われるからです。
このことは、外国文学の邦訳においても言えることですが、『存在と時間』のような難解な哲学書においてはいっそう当てはまります。
本書を読了して、いくつか出ている邦訳を読んだとしてもきっと理解できなかったであろうと改めて確信し、いつか本書を再読したいと感じました。


2020年8月26日
から 久元喜造

散水で道路の温度を下げる試み。


異常な高温が続いています。
大都会では、ヒートアイランド現象により、都心の気温はさらに上昇します。
何かすることはできないのか。
なかなか難しい課題だけに、挑戦してみる価値はあるのではないかと思います。
ひとつのアプローチは、道路に水を撒き、気化熱で路面の熱を奪って温度を下げることです。
古くから日本人は夏に「打ち水」をしてきましたが、車を使って大規模に行うことが考えられます。

こうした発想から、神戸市は、現在、散水車で水を撒く実験を行っています。
旧居留地とその周辺の車道、市役所2号館東から東遊園地東の歩道に散水ルートを設定し、積載量 4t の散水車 2 台が、1日2周 散水して周ります。
この散水実験は、7 月 20 日から開始しており、9 月 19 日まで続ける予定です。
これまでのデータ解析では、アスファルト舗装の表面温度は、散水前の約 55 度から、5度から10 度程度の低下を確認 しています。
神戸大学にご協力をいただき、路面の温度が低下する効果のほか、周辺の環境に与える影響などについて検証していただいています。
年内には検証結果をとりまとめたいと考えています。

散水によって、都市の気温を下げることはできませんが、道路の表面温度を下げることで歩行者の体感温度が下がれば、異常高温対策として一定の効果があります。
今回の散水実験の効果が認められれば、来年はさらに規模を拡大し、場所を増やすことも考えられます。
神戸の市街地には、南北に小河川がたくさん流れており、地下からの湧水も豊富です。
簡単ではありませんが、神戸の豊かな水を活用して街を冷やすことができないか、研究を進めていきます。


2020年8月21日
から 久元喜造

神戸市に「ふるさと納税」のお願い。


ふるさと納税制度は、ご自身が指定する自治体に寄付すれば、所得税や居住地の自治体に納める地方税について、一定の限度額の範囲で寄付額のほぼ全額が減額され、多くの場合、返礼品が届くという有利な制度です。(ふるさと納税制度  とは)
寄付された自治体は、それだけ財源が得られますが、居住地の自治体の税収は減収になります。

令和元年度の神戸市への寄付額は、6億5468万円。
おかげさまで、前年度に比べ、2億3000万円ほどの増加となりました。
寄付していただいたみなさまに、感謝申し上げます。
一方、神戸市民がほかの自治体に寄付したことによる市税の減収額は、43億2600万円。
前年度に比べ、8200万円ほどの減少になりました。
多くの大都市で他の自治体への寄付が増加している中での減少なので、これも喜んでいます。
他の自治体への寄付は、翌年度の税収の減少、つまり財源の流出を意味します。
主な大都市の流出額を見ると、横浜市が約145億円、名古屋市が約86億円、川崎市が約64億円などで、これらの大都市に比べれば少ないのですが、それでもかなりの多額に上ります。
寄付額を差し引いた流出額は、地方交付税で補填される額を勘案した実質的な金額では、約1億6000万円で、無視できない額に上っています。
神戸にゆかりのみなさまには、神戸市へのふるさと納税をよろしくお願いいたします。
神戸市に愛着を感じておられる市外のみなさまに共感していただけるようなメニューを、さらに充実させていきたいと思います。(神戸市ふるさと納税公式サイト
神戸市も魅力ある返礼品のメニューを用意しており、是非ご覧いただければと思います。(返礼品メニュー


2020年8月18日
から 久元喜造

登下校時、マスクは外してください。


昨日、浜松の最高気温は、41.1度。
神戸でも、36度を記録しました。
連日の猛暑が続く中、今日から、神戸市内の小中学校では授業が再開されました。
炎暑の中、子どもたちは登下校することになります。
今朝のテレビのニュースで、ある九州の市立小学校の風景が放映されていました。
子どもたち全員がマスクを着けて登校していました。
炎天下、マスクをつけての登下校は、危険を伴います。
文部科学省の 「学校の新しい生活様式」(2020.8.6) でも、「小学生など、自分でマスクを外してよいかどうか判断が難しい年齢の子供へは、気温・湿度や暑さ指数(WBGT)が高い日に屋外でマスクを外すよう、積極的に声をかけるなどの指導を行います。その際、人と十分な距離を確保し、会話を控えることについても指導します」と指摘しています。
「その際」以下について、子どもたちはそのような行動を取ることができないだろうからマスクを着用するように指導することは、最近の異常な高温を踏まえれば適当ではないと考えます。

神戸市の方針は一貫しています。
今年の異常高温は、近年の気象状況からは予想されたことでした。
5月27日には「神戸市熱中症警戒宣言」を発出。
5月29日には 「神戸市熱中症予防対応指針」 を策定し、その中で、「登下校時には、マスクの着用をしない」と明記しています。
炎暑の中、子どもたちにマスクの着用を強制することは、大きな苦痛を与えますし、熱中症にかかる危険を高めます。
最終的には、保護者や子どもたち自身の判断ですが、熱中症は命に関わる危険な病気であり、熱中症のリスクを下げるための対応をくれぐれもよろしくお願いいたします。


2020年8月12日
から 久元喜造

国勢調査人口の水増しは許されません。


きょうの 読売新聞 朝刊1面の見出しは、「国勢調査で不適切集計」「大阪市など人口計上に住基転用」。
前回(2015年)の国勢調査で、大阪市など一部自治体が、居住実態が不明の世帯について、国のルールに反し、住民基本台帳(住基)の情報をそのまま転用する方法で人口を計上していたと報じています。
たいへん驚きました。

市町村は、住民の住所などの情報を登録し、住民票を作成します。
ただ、他の自治体に転出しても住民票を移さない人もおり、住基情報と実際の居住実態が異なることがあります。
そこで、5年に1回行われる国勢調査では、居住の実態も含めた調査が行われます。
世帯ごとに調査票が配布され、記入していただいた調査票をもとに、全国、各自治体ごとの人口が集計されます。
神戸市は、非回答者については、近隣住民などからきちんと聞き取りを行い、国のルールに従って調査を行いました。
一部の自治体で、報道されているような方法で調査が行われたなら、その自治体の人口は水増しされたことになります。
記事で大阪市の担当者は、「人口の下振れを避けるためだった」と答えています。
今回の報道が事実であるとするなら、前回の国勢調査の信頼が揺らぎかねません。

神戸市が人口減少、大阪市、福岡市など圏域の中心都市が増加傾向にあることは、紛れもない事実です。
神戸市は、人口減少対策に全力で取り組んでいます。
同時に、国勢調査は、あらゆる政策の基本であり、調査は統一的なルールに則り、正確に実施される必要があります。
今年の国勢調査では、前回のような人口の水増しが行われることがないよう、全自治体は、良心に従い、緊張感を持って取り組む必要があります。


2020年8月8日
から 久元喜造

白川方明『中央銀行』


前日本銀行総裁、白川方明氏による 750ページ近い大著です。
私は金融の素人で、本書に出てくる用語、特に英語の意味がときどきわからず、調べながら読み進めたこともあり、通読するのにかなりの時間がかかりました。
本書中の感銘を受けた一節をブログで紹介したところ、フェイスブックに「白川氏は日本の国内景気を悪化させた張本人とされている」とのコメントをいただきました。
本書の中で著者は、総裁在任中「リフレ派」「期待派」と呼ばれる人々から厳しい批判を受け続け、これらの批判を意識しながら対応されたことが繰り返し語られます。
たとえば、2009年11月20日、政府の経済報告閣僚会議において、著者によれば唐突に「デフレ宣言」が出され、この頃から日銀は「デフレを容認している」との批判を浴び続けました。

白川氏が日銀総裁として在任された約5年間は、政権交代、リーマンショックに始まるグローバル金融危機、デフレの進行、東日本大震災とまさに激動の時代でした。
日銀総裁として何を考え、どう決断したのかが克明に描かれます。
たいへん困難な仕事だったと想像しますが、著者が常に中央銀行としての使命である「物価の安定」「金融システムの安定」を忠実に果たそうとされたことが伝わってきます。
経済理論をめぐる論争にも折に触れて言及されながら、理論的根拠に支えられた金融政策を追求し、同時に現実とのはざまで苦闘されたさまも生き生きと描かれています。
政治との関わりについても個々の政治家の実名を挙げて記されており、時代の体温が伝わってきました。
中央銀行の独立性と民主主義との関係に関する奥行きの深い考察についても感銘を覚えました。


2020年8月1日
から 久元喜造

熱中症にも最大限の注意を。


昨日の7月31日、大阪管区気象台は「近畿地方が梅雨明けしたとみられる」と発表しました。
さっそく、今日の土曜日は、神戸もたいへん暑い一日となりました。
本格的な真夏の到来に伴い心配されるのが、熱中症です。
熱中症にかかり重症になると、命の危険に関わることもあります。

とくに今年は、新型コロナウイルス感染症対策で、外出時などにはマスクを着用することが多いと思います。
たいへん難しい課題ですが、感染に注意しながら、熱中症にかからないようにする必要があります。
マスクを着けていると、熱が体から放出されにくくなり、体温が上昇する傾向が出てきます。
のどの渇きを感じにくくなり、脱水状態になる可能性が出てきます。
そこで、感染症対策が必要ではない場合には、マスクを外していただければと思います。
屋内でも屋外でも、他の人と2m以上の距離を取ることができれば、マスクを外していただきたいと思います。
子どもたちに対しては、登校時・下校時、友だちと距離を取るように注意しながら、マスクを外すように教えてほしいと思います。

熱中症患者が増加すると、新型コロナウイルス感染症への対応に支障が出るおそれがあります。
熱中症と新型コロナウイルス感染症は、重症化すると呼吸状態の悪化や意識低下が見られることがあり、症状が似ているため、医療機関では防護服を着用するなど診療に際して新型コロナ対応が必要となります。
熱中症の救急搬送が増え、入院される方が増加すると、新型コロナウイルス感染症のための病床の確保にも支障が生じる可能性が出てきます。
このような観点からも、熱中症にかからないよう、一人ひとりが注意していただきたいと思います。


2020年7月25日
から 久元喜造

北神急行の市営化を活かした街づくり


今年の6月1日、北神急行電鉄が市営化され、運賃が大幅に下がりました。(2019年3月19日のブログ
谷上から三宮までは地下鉄でわずか10分あまり。
神戸市の北部地域の価値は大きく向上していくと見込まれます。
同時に運賃引き下げの効果に期待し、手をこまねているだけでは不十分です。
市営化の効果をさらに活かし、北区の人口減少に歯止めをかけることができるような魅力ある街づくりが求められます。
とくに谷上で接続する神戸電鉄三田線沿線においては、民間投資を誘導することができるような施策が必要です。
先日、このための方策を議論するweb局長会議を開催し、各局長からはさまざまな報告や提案がなされました。
そこで、昨日、一昨日と、コロナウイルス感染者の発生状況に注意を払いながら、神戸電鉄三田線沿線を見て回りました。

谷上駅前については、すでにデジタルサイネージやベンチなどが設置され、少し雰囲気も変わってきています。
駅前広場のさらなる再整備を図ることとし、計画の策定を進めることにしています。
また、有馬街道の皆森・谷上間においては、車線の増加を含む道路拡幅工事をスピード感を持って進めます。
有馬街道の大池駅前から唐櫃大橋交差点を経て有馬口交差点までの区間では、すでに大池駅前の整備が完了し、さらにトンネルの開削も終わっており、事業が急ピッチで進められていることを確認できました。
一方、神戸電鉄三田線の花山、大池、神鉄六甲、唐櫃台、有馬口の各駅前の状況を改めて見ましたが、現状のままで良いとは思えません。
それぞれの駅前の土地の形状や利用状況を踏まえながら、神戸電鉄と協議し、必要な手立てを講じていきたいと思います。


2020年7月19日
から 久元喜造

山中俊之『外国人にささる日本史12のツボ』


神戸情報大学院大学教授、山中俊之先生の近著です。
世界96か国を回られた外交官としてのご経験を通じ、外国人が日本の歴史のどのようなところに関心を抱くのかについて語られます。
外国人は、長い年月を経て育まれてきた日本の生活文化をどう見ているのか。
この視点は、私たち日本人が自らを客観視し、独善を排しながら日本文化の特質を考える上で有益です。

最初に語られるのは、日本人なりのありようで受け継がれてきた自然との共生です。
その背後には、一神教を奉じる人々とは異なる宗教観があると、著者は指摘します。
多くの神社・仏閣は、神仏習合を基調としています。
神戸には豊かな里山があり、そこには自然と文化遺産が一体となった魅力があります。
改めて私たちは、時代の変遷を経て受け継がれてきた神戸の里山の価値を再認識したいと思います。

本書で繰り返し登場するのは、江戸時代です。
江戸時代には豊かな文化が花開きました。
著者は、葛飾北斎に1章を割いていますが、それは世界で最も有名な日本人が葛飾北斎であるという認識からです。
北斎をはじめとする浮世絵は、印象派などヨーロッパ絵画に大きな影響を与えました。
江戸時代の価値は、文化芸術にとどまりません。
江戸の街では堆肥に至るまでさまざまな資源が再利用され、「サステナブルなエコ社会だった」と著者は言います。
幕府の経済政策は意外に開明的で、庶民を含めた教育水準は高く、賄賂も少ない清潔な行政が行われていたと著者は指摘します。
時代劇の悪代官などはおそらく後世の作り物なのでしょう。
明治の近代化は画期的な意義を持ちますが、その絶対視から自由になり、江戸時代を見つめ直すことができました。