久元 喜造ブログ

『藍那のふたり式部』


神戸市立神港橘高校 では、絵本を制作・出版する取組みが続けられています。
神戸の各地域に残る民話・伝説や史跡にスポットを当て、小学生や中学生による現地調査や聞き取りを経て制作するという、意義ある取組みです。
今回の絵本の舞台である藍那は、神戸市北区の山合いの地域です。
神戸電鉄の鈴蘭台駅から3つ目の駅が藍那駅です。
終点の新開地駅から約20分の便利な位置にありますが、周囲は里山で、ゆったりとした時間が流れています。

藍那には、お墓か供養のために建てられたと伝わる二つの石の塔があります。
和泉式部の墓と伝わる塔は、あいな里山公園のはずれにあります。

紫式部の墓と伝わる塔は、神戸電鉄藍那駅の近くにあります。

いずれの石塔も二人の式部が活躍した平安時代からかなり後に建てられたとされ、墓ではないと考えられていますが、本書では、二人が生きた時代の様子が、分かり易く書かれています。
藍那は摂津の国と播磨の国の間にあることから「相野」と名付けられ、長い年月の間に表記が「藍野」に変わり、やがて「藍那」と呼び方が変わっていったそうです。
藍那は、歴史豊かな里です。
徳川道、藍那道、鵯越道、義経道などの古道があり、道しるべもあります。

見事な題字は、書家の古溝茂(幽畦)先生の手になるものです。
古溝先生は、神港橘高校の校長をされていたとき、絵本の制作に貢献されました。
「当初はお年寄りが語り伝えてきたことを生徒たちによる聞き取り調査したものを文字化、フィールドワークすることにより風景を絵本にしていった」と記されています。
これからも生徒のみなさんが神戸市内の各地を歩き、神戸の歴史を自分の目で感じてほしいと願っています。