朝日新聞(6月28日掲載)の中島京子さん「お茶うけに」は、柿の葉寿司のレシピについてでした。
「庭の柿の木に葉が青々と茂り、それが成人男性の手のひらくらいまで大きくなると」柿の葉寿司の「季節到来」です。
中島家の柿の葉寿司は、明治生まれのおばあさまが谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を読んでつくり始められたそうです。
ここから、谷崎レシピと中島レシピの違いが詳しく紹介されます。
谷崎レシピでは、米を炊くときに結構な量の酒を入れるのですが、中島レシピでは、酒を入れず、昆布を入れてごはんを炊き、鮨酢を合わせて酢飯にします。
文豪レシピの肝は新巻鮭を使うことですが、中島レシピでは、刺身用の鮭を冊で買ってきて塩を振って一晩寝かせ、塩締め鮭を自作します。
『陰翳礼讃』(2024年6月21日のブログ)の柿の葉寿司のことは記憶に残っていなかったので、改めて開くと、終わりの方に書かれていました。
文化の歩みが急激で、「食べる物でも、大都会では老人の口に合うようなものを捜し出すのに骨が折れる」との嘆きが吐露されます。
「先だっても新聞記者が来て何か変った旨い料理の話をしろと云うから、吉野の山間僻地の人が食べる柿の葉鮨と云うものの製法を語った」と続きます。
「物資の乏しい山家の人の発明に感心し」つつ、「現代では都会の人より田舎の人の味覚の方がよっぽど確か」だと賞賛し、文豪レシピが語られます。
柿の葉寿司は、今では駅弁の人気メニューです。
谷崎が新幹線の駅で柿の葉寿司を売っていると知ったら、どんなにか驚いただろうと思います。
私も柿の葉寿司は大好きで、新神戸駅から新幹線に乗るときによく購入し、車中で味わうのを楽しみにしています。