久元 喜造ブログ

2014年8月9日
から 久元喜造

昭和42年の大水害

戦前の昭和13年の大水害は、古くから神戸にお住まいのご高齢のみなさんの間では今でも時々話題になりますが、戦後の大きな災害は、昭和42年の大水害です。
熱帯低気圧となった台風が西日本に停滞する梅雨前線を刺激し、神戸にも集中豪雨をもたらしました。
六甲山系のあちこちで土砂災害が発生し、とりわけ、当時の葺合区市ヶ原の世継山斜面では、大量の土砂が崩れ落ちてふもとの集落を直撃し、21名の人命が失われました。
神戸市全体の被害は、死者84名、行方不明8名、家屋の全壊流出361世帯、半壊376世帯、床上浸水7,759世帯、床下浸水29,762世帯でした。
当時の災害の模様は、 神戸市のウェブサイト でご覧になれます。

私は山田中学の2年生でしたが、雨が激しく降り出したとき、神戸電鉄湊川駅の近くにいました。たちまち歩道は水があふれ、当時、神戸電鉄は湊川の地上駅が終点でしたが、停車していた車両ごとプラットホームが完全に浸水していた光景をまざまざと想い起こします。
しばらく神戸電鉄も有馬街道も不通になり、何日後かに、西宮の山口辺りを迂回したルートをたどるバスに乗り、鈴蘭台の自宅に帰りました。

昭和42年の大水害の後、神戸市では、国や兵庫県とともに、砂防ダムや防災林の整備、急傾斜地対策の実施、河川改修、市街地における浸水対策などを進めてきました。
しかし、災害予防だけでは被害を未然に防ぎ、あるいは最小限にすることはできません。災害が発生するおそれがあるときは、安全に、すばやく避難することが必要です。
神戸市では、各区ごとに、 洪水ハザードマップ を作成し、提供していますので、参考にしていただき、気象情報に注意して、災害への備えをしていただきたいと思います。

 

 


2014年8月7日
から 久元喜造

震災直前に作成された「幻の防災計画」

7月30日の毎日新聞夕刊に、「幻の防災計画、震災4日前に答申 耐震化など提唱」という見出しの記事が掲載されていました。
「阪神大震災が起きた1995年1月17日のわずか4日前に、神戸市が建物の耐震化促進や防災ボランティアの育成など、先駆的な防災対策を盛り込んだ基本計画をまとめていたことが分かった」
というものです。

記事によれば、この基本計画案には、神戸には「多くの活断層が存在し地震発生の可能性も否定できない」と明記され、「社会の防災力が低下してきている」と警鐘を鳴らしていました。その上で、「防災対策として▽都市の基盤や建物、公共施設などの耐震強化▽幼少期から防災教育を推進し、防災意識を高める「防災博物館」の整備▽防災行政の一元化−−などを列挙。防災ボランティア活動の推進と評価する仕組みも挙げた」とあります。
震災前、審議会委員として防災対策を取りまとめた室崎益輝神戸大名誉教授の「当時としては画期的な内容だった」というコメントも記されていました。

震災前、神戸市では、第4次神戸市基本計画の策定作業中でした。市民参加のもとで原案が作成され、この原案に対する総合基本計画審議会の答申が平成7年1月13日になされています。
記事にあります「幻の防災計画」とは、この「第4次神戸市基本計画原案に対する答申」のことです。

震災直後、神戸市行政に対してはさまざまな批判がなされましたが、そのひとつが、神戸市は株式会社神戸市として開発行政ばかりを重視し、防災への取り組みを怠った、というものでした。
この記事は、当時の神戸市政が、地震の発生に対する問題意識を持ち、必要な対応を考えていたことを明らかにしてくれています。
提言された対応をとる間もなく、あの日を迎えることになったのですが、その内容は、平成7年10月に策定された第4次神戸市基本計画に盛り込まれ、今日までその着実な実施が図られてきています。


2014年8月4日
から 久元喜造

神戸市文書館と文書管理の重要性

少し前のことになりますが、 神戸市文書館 を訪問しました。
とても雰囲気のある建物です。
nanban
それもそのはず、もともとは、1938年に私設美術館として建設され、戦後、神戸市が美術品を含めて譲り受け、1965年には市立南蛮美術館と命名されて市民に親しまれてきました。
1982年に、現在の 市立博物館 の中に『南蛮美術館』が設けられ、美術品が全部移されて閉館となり、その後、1989年、神戸市文書館 として開館し、今日に至っています。
神戸市文書館 には、神戸市に合併した旧町村の文書も保存され、専門の職員の手によってマイクロフィルム化の作業が行われていました。

文書は、行政の基本です。
文書は、適正に作成され、保存年限に従って正しく保存され、情報公開条例に従って適正に公開される必要があります。そして、文書の中でも貴重なものについては、原本は大切に保存されるとともに、マイクロフィルムなどに複製されて、閲覧に供することが求められます。

総務省の文書管理はひどいもので、私はしばしば局内、部内の全職員に宛てて、 適正な文書管理を求めるメールを送り、書庫などにも出向いて改善状況を点検していました。
国であれ自治体であれ、文書管理を行う上で管理職の役割は重要です。
文書管理を部下任せにせず、その状況を把握し、その改善を図っていくことが求められます。少なくとも文書管理の現状について関心を持つことは不可欠です。
残念ながら、文書管理なんか担当に任せておけばよいという傾向が、国や自治体において往々にして見られますが、 そのような傾向は、ある意味で行政機構の質的劣化であり、改めていかなければなりません。


2014年8月2日
から 久元喜造

ヘビの嫌いな方は読まないで下さい。

小学生、中学生の頃の話です。
当時の鈴蘭台など山田町の里山、野原、田圃、ため池の畔には、ヘビがたくさんいました。田圃の畦道にはとりわけ多く、何回も出くわすこともありました。
一番多かったのはアオダイショウで、中には自分の身長を超える大物もいました。正確な呼び名はわかりませんが、カラスヘビと呼ばれていた黒いヘビもいました。
みんながみんなそうしていたかどうか覚えていませんが、ヘビをつかまえては尻尾を握り、ぐるぐる振り回してよく遊びました。ヘビを握ると、癖のある臭いが手について、いくら石鹸で手を洗ってもなかなか落ちませんでした。

ヤマカガシに出会ったのは一度だけです。山道を歩いていると、木の枝に絡まっていて、私の方を向き、攻撃態勢に入りました。
何秒かくらいのことだったのかもしれませんが、ヤマカガシと私は、しばらく睨み合いました。目は澄んでいて、とても高貴な顔立ちだったような記憶があります。毒を持っていることを、しばし忘れました。

マムシに出会ったのは、2回です。
中学生の頃、神戸電鉄三田線の山の街と鈴蘭台の間の線路沿いに、急ごしらえの道が出来て、その道を歩いていると、山の斜面に向かって、一匹のマムシが登っていきました。薄茶色をしていました。
もう一回は、田圃の畦で、じっとしているのを見かけました。灰色をしていました。

下の写真は、西区産のマムシです。ハメ酒になったものをいただきました。
ひとりで飲むには多すぎるので、今は、新宿の割烹店のカウンターに鎮座し、お馴染みさんに元気と精力を与えてくれています。
mamushi
ヘビは、食物連鎖の頂点に近いところにいる生き物で、ヘビがたくさんいることは、それだけ生物多様性が保たれていることを意味します。ヘビたちとも共存できるような自然環境を守り、回復させていきたいものです。

 


2014年7月30日
から 久元喜造

ときには、ユートピア的発想も必要では。

将来を構想するアプローチを、ごくおおざっぱに分類すれば、次の3種類になるのかも知れません。
1)現状をどのように改革していくかを、現状の延長線上に考える「シナリオ的発想」
2)現状とはまったく無関係に、あるべき理想の姿を構想する「ユートピア的発想」
3)逆に、絶対にこうあってほしくない姿から将来構想を照射してみる「逆ユートピア的発想」-オーウェルの『1984年』が代表的。

ふつう、私たちは、「シナリオ的発想」に基づいて将来の姿をイメージし、そのための方策を考えます。私のように、長く実務の世界に身を置いてきた人間は、ほとんどがこのアプローチをとります。
「ユートピア」という言葉には、空想的、非現実的、幼稚といった軽侮のニュアンスがあり、とりわけ役所の世界では、「ユートピア」が語られることはまずありません。
しかし、覆いがたい閉塞感がこの世を覆っているように感じられるとき、あるいは、まったく次元が違うのですが、「シナリオ的発想」に依拠して将来構想をいくら議論しても堂々巡りになり、疲労感を感じてしまうようなときは、思い切って現実を忘れ去り、「ユートピア的発想」に頼ることがあってもよいのではないかと思えるときがあります。

最近、中沢新一『チベットのモーツァルト』所収の「極楽論」を久しぶりに読み返したのですが、難解な内容をなかなか理解できないまでも、「ユートピアのビジョン」を語ることが、いかに透徹した知性と知的鍛錬、そしてときには、想像を絶する肉体的限界への挑戦を必要とするかについて考えさせられました。
nakazawa
「極楽」の多様な姿が次々に繰り出され、「現実の世界以上に現実的な世界」の存在に目が眩む思いがしました。


2014年7月27日
から 久元喜造

NHKは、取材方法について説明して下さい。

きょうの夜は、公務も政務も入っていなかったので、NHKスペシャル「調査報告 STAP細胞  不正の深層」を見ました。
この問題の舞台は、神戸のポートアイランドにある  理化学研究所発生・再生科学総合研究センター  です。同センターは、神戸市が推進する医療産業都市構想の拠点でもあり、興味深く拝見しました。
医療産業都市構想に長く関わってきた、三木孝神戸市保健福祉局長のインタビューも放映されていました。

私はかねてより、7月11日のブログ  でも書きましたように、小保方さんに関する報道の過熱ぶりには、疑問を呈してきました。理化学研究所において、静かな研究環境が確保されるように願ってきました。
ところが、小保方さんに関する報道はエスカレートするばかりで、NHKもその過熱報道の片棒をかついできました。さらに今回、複数の報道によれば、NHKは、今日の番組放映のために小保方さんを追いかけ回し、けがまでさせたとされており、開いた口がふさがりません。

言うまでもないことですが、 報道の内容は、取材の正当性によって担保されます。不適正な取材方法に基づき制作された番組は、その信憑性に疑問が生じ得ます。
きょうのNHKスペシャルは、海外での取材を含め、相当の労力を費やして制作されたことと拝察します。優秀な記者、番組制作スタッフが多数関わって制作されたことでしょう。
それだけに、ここのところ報道されている小保方さんへの取材方法が正当だったのか、真相を明らかにすべきです。
NHKは、 佐村河内守問題 でも、BPOの審理の対象とされるなど、番組内容の信憑性に対する疑問が高まっています。
今回の小保方さんに対する取材の真相についても、早急にその詳細を明らかにすべきだと考えます。
同時に、STAP細胞問題に関する疑問は、理化学研究所自身により、責任を持って解明されることを期待します。


2014年7月26日
から 久元喜造

これからの神戸空港-関西全体の発展のために

昨日、太田国土交通大臣は、 新関西国際空港会社 の「関西国際空港及び大阪国際空港特定空港運営事業等実施方針」を承認されました。
この方針は、関西国際空港及び大阪国際空港(伊丹空港)の、いわゆる運営権譲渡(コンセッション)に関する文書です
すなわち、両空港に係る運営権を設定し、民間事業者に空港の運営事業などを実施させることにより、その民間事業者が、そのノウハウを最大限活用しつつ、「投資に対する収益に関し自らリスクを取る統治体制に移行することで、より効率的で緊張感のある経営を実現できる仕組みを確立し、民間事業者の柔軟な創意工夫による、空港ビジネスの展開を可能」にしようとするものです。
このようにこの文書は、関西国際空港及び大阪国際空港(伊丹空港)に関する文書ですが、この中で、神戸空港について、次のような記述が盛り込まれました。

「運営権者は、神戸空港の管理を他に行わせようとする場合には、運営権者の下で同空港を一元的に運営することより、関西国際空港の国際空港の拠点としての再生・強化及び関西全体の航空輸送需要の拡大を図る目的から、神戸空港管理者と交渉を行うことができる」

神戸空港については、「神戸沖空港」の賛否をめぐって市民の意見が対立した時期を含む長い歴史があります。
さまざまな経緯を経て、神戸空港は2006年に開業しましたが、運営権譲渡に関する動きが本格化する中で、その対象は、関西国際空港及び大阪国際空港(伊丹空港)に絞られてきました。
このような経緯にかんがみれば、今回の実施方針において神戸空港についてこのような言及がなされたことは、神戸空港を含む三空港の一体的な運用に向けた取り組みを進める上で、大きな意義があると考えます。
まずは、両空港の円滑な運営権譲渡を見極め、神戸空港が、関西全体の発展に寄与することができるよう、しっかりと対応していきたいと思います。


2014年7月24日
から 久元喜造

外国人観光客への Wi-Fi環境の整備

神戸を訪れる外国人観光客が、インターネットで観光情報を収集したり、検索する上で、Wi-Fiを快適に利用できるようにすることは、たいへん重要です。
同時に、FacebookやTwitterなどのSNSの利用が可能となり、神戸の魅力や神戸での感想を、その場で発信していただけるようになります。

そこで、神戸市では、「KOBE Free Wi-Fiカード」を配布し、市内の3,000以上のアクセスポイントでWi-Fiに接続できるようにします。
利用方法としては、「KOBE Free Wi-Fiカード」記載のIDとパスワードを入力してアクセスします。 外国人観光客へのWi-Fi環境は、ほかの都市でも整備が進められていますが、3000以上というアクセスポイント数は、神戸が国内で最大規模となります。
KOBEFreeWiFicard
また、このカードは、全国47都道府県の20万アクセスポイント以上で利用できますので、多くの都市に旅行されても利用することができます。
「KOBE Free Wi-Fiカード」は、7月31日から、神戸市総合インフォメーションセンターや観光案内所などで配布を開始します。外国客船の入港時などにも、配布できるように進めていきます。

このほか、独自に整備拠点も設けます。国内外観光客の受入拠点となる11拠点で整備し、簡単にインターネットに接続できる環境を提供します。
平成25には、神戸市には、約55万人の外国人観光客が来訪したと推計されています。
「KOBE Free Wi-Fiカード」で、さらにその増加に向けて弾みをつけたいところです。


2014年7月22日
から 久元喜造

ついにBPOが乗り出した。-佐村河内問題⑤

放送・倫理番組向上機構(BPO)  という団体があります。
NHKと民放が設立した団体で、放送への苦情や放送倫理の問題に対応する第三者機関です。
BPOの中に設けられた 放送倫理検証委員会 は、問題があると指摘された番組について、取材・制作のあり方や番組内容を調査し、放送倫理上の問題の有無を審議・審理してその結果を公表する任務を有しています。

この 放送倫理検証委員会 が、7月11日、これまでこのブログでも取り上げてきた佐村河内守氏に関する、次の7番組の審理入りを決めました。

・TBSテレビ『NEWS23』「音をなくした作曲家 その”闇”と”旋律”」(2008年9月15日)
・テレビ新広島『いま、ヒロシマが聴こえる・・・』(2009年8月6日、7日)
・テレビ朝日『ワイド!スクランブル』「被爆二世・全聾の天才作曲家」(2010年8月11日)
・NHK総合『情報LIVE ただイマ!』「奇跡の作曲家」(2012年11月9日)
・NHK総合『NHKスペシャル』「魂の旋律~音を失った作曲家~」(2013年3月31日)
・TBSテレビ『中居正広の金曜日のスマたちへ』「音を失った作曲家 佐村河内守の音楽人生とは」(2013年4月26日)
・日本テレビ『news every.』「被災地への鎮魂 作曲家・佐村河内守」(2013年6月13日)

同委員会の川端和治委員長は「各局がそろって間違えたのは重大」と述べられたそうですが、こんなに多くもの放送局と放送関係者が、インチキ詐欺師に騙され、その宣伝に荷担した構造や背景は何だったのか、是非、徹底的に明らかにしてほしいと思います。
とりわけ、公共放送であるNHKは、5月31日のブログ  でも触れましたように、おざなりな記者発表でお茶を濁し続けてきました。
NHKに 自浄能力がない以上、BPOの真相究明に期待したいと思います。


2014年7月21日
から 久元喜造

イノシシへの餌付けは絶対にやめて。

1月29日のブログ でも書きましたように、私は、市内の有害鳥獣による被害はもはや見過ごすことができない段階に来ており、市役所内から少々反発があっても、断固とした対応をとらなければならないと考えてきました。
平成26年度予算では、担当の農政部の努力により、狩猟免許の取得費用に対する助成、捕獲期間の捕獲謝礼金の引き上げなどの措置を講じましたが、被害の拡大は続いています。

とくに、中央区、灘区、東灘区の市街地で、イノシシによる人身被害が発生していることは深刻に受け止めなければなりません。6月には、中央区で一日に4人が負傷し、東灘区では、4日連続で住民が襲われています。
そこで、神戸市としては、警備員によるパトロールを大幅に強化するとともに、山中に監視カメラを設置してイノシシの生態や動向を調査分析することとし、6月26日に、岡口憲義副市長が記者会見して、その方針と内容を発表しました。

このようにイノシシが市街地に出没するようになった大きな原因が、人による餌付けです。イノシシが可愛いからという理由でしょうか、イノシシに餌をやる市民がいるのです。
安易に餌にありつける味を覚えたイノシシは、次に、ゴミをあさるようになります。こうして、イノシシが街の中をうろつくようになると、住民との遭遇の機会も増え、人身被害が起きる可能性が高くなることは必然です。
人間の勝手な行為で、人間と野生動物の生活領域が乱されるのは、動物にとっても迷惑なことでしょう。

神戸市は、条例で餌付けを禁止していますが、これが守られないとなると、悪質な違反行為を行う市民の氏名の公表など、さらなる対応を行っていかなければなりません。 
イノシシへの餌付けは、絶対にやめてください。