久元 喜造ブログ

2014年6月2日
から 久元喜造

神戸は過ごしやすい街。

きのうも、今日も、暑かったですね。
きのうは、公務はなかったのですが、それ以外の政務もあり、市内を歩きました。
「暑いですね」という声を何度もお聞きしました。
確かに暑かったです。
しかし、神戸の暑さは、関西のほかの都市に比べれば、ましだった方かも知れません。

気象台によると、昨日、6月1日の最高気温は、京都、36.0度。
これに比べ、神戸は、30.7度。
5度以上も低いのです。
ちなみに、大阪は、32.9度でした。
神戸と京都の最高気温が、5度以上あるということは、すごいことなのではないでしょうか。
神戸は、京都より、はるかに、涼しい街なのです。

さらに、統計を調べ、1980年から2010年までの、神戸、大阪、京都の、それぞれの最高・最低気温を比べると、
8月の最高平均気温は、神戸が31.8度、大阪が33.4度、京都が33.3度。
1月の最低平均気温は、神戸が5.8度、大阪が6.0度、京都が4.6度。

確かに、神戸も、夏は暑く、冬は寒いのですが、三都を比較しますと、相対的に、神戸は、夏は涼しく、冬は温かいことが分かります。
私は、長い旅路を経て、40年ぶりに、神戸に戻ってきました。
そして、神戸がいかに、気候的に恵まれた都市であるかを、身をもって体験します。
とくに、須磨、垂水、舞子あたりは、海風がそよぎ、陽光が燦々と降り注ぐ、穏やかな地域です。
気候的に恵まれていることは、地理的な優位性の具体的な現れかも知れません。
神戸は、この優位性を大切にしながら、街づくりや将来の都市像を考えていくことが大切なのではないでしょうか。


2014年5月31日
から 久元喜造

ベートーヴェンの偶像化~佐村河内守問題④~

「現代のベートーヴェン」-佐村河内守氏が自らの宣伝に使ったキャッチコピーです。
聴覚の障害をたたかい、乗り越えて、数々の名作を書き上げていったベートーヴェンに自らをなぞらえたかったのでしょう。

そのベートーヴェンについても、伝えられてきた人物像が本当に実像に近いものなのかどうかは、議論の余地があります。
たとえば、私たちの世代の小中学生時代、音楽室に掲げられていたベートーヴェンの肖像は、苦難を乗り越えて、全身全霊、作曲に打ち込むベートーヴェンの姿を想起させますが、この肖像画は、ベートーヴェンが亡くなってから、はるか後に描かれたものでした。
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存命中に描かれたベートーヴェンの肖像画(国立音楽大学のサイト  参照)は、この絵とは似ても似つかぬものです。
偉大な作曲家、ベートーヴェン像は、ロマン・ロランの『ベートーヴェンの生涯』などによって創り上げられてきましたが、それは、記録や証言とはかなり異なり、誇張され、神格化されたものであることが知られています。
もちろん、ベートーヴェンが偉大な作曲家であり、特に晩年の作品群が至高の芸術的価値を有していることには、疑いの余地はありません。

ある人物が、死後に偶像化、神格化されることはよくあることですが、このような現象の背景には、ヒーローを待望する心理が、古今東西を問わず、存在し続けてきたが挙げられるでしょう。
もちろん、インチキを重ね、自らの実像とおよそかけはなれた虚偽の「偶像」を創り上げることは、さすがに本人の存命中には無理なことでした。
嘘は露見し、偶像は地に墜ち、偶像化に荷担したNHKに対する社会の信頼は失墜しました。
ヒーローを待望する素朴な人間心理を、自らの利益に利用しようとした佐村河内守氏とNHKは、同じ穴の狢と言えなくもありません。
2月24日のブログ でも触れましたが、NHKには、報道の検証を行う義務があります。3月16日に行ったような、おざなりな記者発表では、視聴者は納得しません。

 


2014年5月27日
から 久元喜造

部下をケイタイのドレイにするな。

携帯電話が普及して便利になりましたが、さまざまな歪みが出ていることも事実です。
そのひとつに、立場の弱い人間が、強い人間からの携帯電話から逃れられないことが挙げられます。
立場の強い人間は、好き放題、電話をかける一方、かかってくる電話を拒否できます。しかし、立場の弱い人間は、いつ、どこにいても、携帯に出なければならない、という立場に、しばしば置かれるからです。

駅のホームや路上などで、いかにもエライ風の中年男性が、携帯をかけ、いきなり相手に、「今どこにおるんや?」「何をしとったんや?」などと怒鳴っているの見ることがありますが、決して好感が持てる姿ではありません。
市役所でも、若手の職員から、
「別に急ぎでもないのに、休みの日に上司からやたら携帯に電話がかかってきます」
という声を聞くことがありますが、上司としての資質を疑います。
このタイプの管理職は、総務省にもいたことがあり、この男の下にいた優秀な部下は、何が何でも転出したいと申し出、認められました。

休みの日まで、携帯で部下を追い回すのは、ある種の人権侵害です。 24時間、部下をケイタイのドレイにするのはやめるべきです。
もちろん、緊急の場合は、携帯電話や携帯メールを駆使して、すばやく情報を伝達していかなければなりません。そして、時間外に緊急事態が発生したときに、携帯を駆使してテキパキと動けるためにも、平時には、よけいな仕事上の連絡は避け、部下に無用のストレスをかけないようにすることが大切なのではないでしょうか。


2014年5月25日
から 久元喜造

マイクは大事、されど・・・・。

5月23日のブログ で、マイクのことを書いたところ、フェイスブックを含め、いくつかの味わい深いコメントをいただきました。
実際に会場の設営に携わっておられるみなさんによれば、マイクの不具合を完全になくすのは、そんなに簡単ではないようです。
「事前に何度もチェックしているはずなのに、いざ本番になったら、うまく行かない」こともあるようで、「裏方にとっては緊張の連続」だそうです。
「マイクについては本当に悩まされます。ワイヤレスならともかく、有線でさえ本番で調子が悪くなることがあります」
というコメントもありました。
そんな事情なので、「そこはひとつ寛容なお心でお許しいただきたいと思います。担当者は、相当へこみますので・・・」
というアドバイスも頂戴しました。

きょう、障害者スポーツ大会があり、開会式に出席したのですが、保健福祉局長の開会宣言のときに、マイクが入っていませんでした。短い宣言の3分の2は、まったく聞き取れませんでした。
開会式は和やかな雰囲気で無事終了し、マイクのことを覚えている出席者はほとんどいないと思います。ですから、担当者が「へこんで」いただく必要は、まったくありません。
ただ、やはりマイクのチェックは大事で、会場の設営に当たる方々には、マイクについて関心を払っていただくことが望ましいと感じます。

それにしても、マイクが入ってないことに気づき、すかさず、壇上に駆け上がってスイッチを入れた、女性幹部職員の行動は、本当に素早かったです。抜群の反射神経に瞠目しました。
「予期せぬ、好ましからぬ事態が出来した状況」を、広く「危機」と呼ぶなら、見事な危機管理対応でした。


2014年5月23日
から 久元喜造

マイクは大事だ。

先日、市主催のあるパーティーで挨拶しようとしたら、用意されてあったマイクから音が出ません。
こぢじんまりとしたパーティーでしたので、地声で話しましたが、来賓の方には失礼なことになってしまいました。
担当者は、先立つ会議の調整や会場の設営など何から何までやっていたので、マイクのチェックまで手が回らなかったのは仕方がありません。
結果としては、別に何の問題もなかったのですが、大事な会議やイベント、式典などでは、マイクの不具合が致命傷になることには注意が必要です。

総務省にいたときのことです。永年勤続表彰の大臣挨拶のときにマイクの雑音がひどく、式典が台無しになったことがありました。同じ大臣のときの省議でも、マイクの音が途切れ途切れで、参加者は会議に集中できませんでした。
幸い、寛容な大臣だったので、事なきを得たのですが、3月10日のブログ で取り上げた方だったら、式典も省議もその場で終わりになっていたでしょう。

私も去年の選挙の出陣式のとき、マイクが不調で、音が頻繁に途切れました。気持ちが急速に萎えていくのが自分でもわかり(こんなことではいけないのですが)、休みの日にもかかわらず朝から駆けつけてくださった沢山のみなさんに、失礼なことをしました。
また、6月の出馬記者会見のときは、話し出そうとマイクのスイッチを入れた途端、ものすごい轟音が響き渡り、
「どうしてこんなことになるんでしょうねえ・・・」
と、記者会見の冒頭から思わず愚痴を口走ってしまい、自分の未熟さを露呈してしまいました。
会見に先立ち、ホテルの幹部のみなさんが10人近く、名刺を持って次々に挨拶に来られましたが、この中の誰かひとりでも、たったひとりで頑張っている女性担当者に、「マイクのチェックは大丈夫か?」と確認してくれていたなら・・・・と、ついつい思ってしまったのでした。


2014年5月20日
から 久元喜造

関西プレスクラブで講演

昨日、5月19日、大阪市内で開催された 関西プレスクラブ の会合で、講演させていただきました。
関西プレスクラブ は、大阪の主要な新聞社、通信社、テレビ、ラジオ各社などで構成される組織で、ちょうど就任して半年にしかならない私に、このような機会を与えていただいたことは光栄です。
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前半は、大都市制度の課題への対応について触れました。
まさにここ大阪で盛んに議論が行われている都構想、そして、神戸市などが主張している特別自治市構想のルーツは、1943年の東京都制、そして、戦後の地方自治法で制度化されながら施行されなかった特別市です。
そして、この両者が制度化されるまでには、明治期からの長く、複雑な経緯がありました。

東京都制を受け継いだのが都区制度です。そして、特別市施行をめぐるせめぎあいの末に出来た妥協の産物が、現行の指定都市制度です。
指定都市制度は、60年以上続いてきた制度ですが、道府県との二元行政・二重行政、域内分権の必要性などが指摘されてきました。そして、これらの課題を抜本的に解決する方策として提唱されているのが、都構想と特別自治市の制度です。

これらへの考え方と、より漸進的な対応としての、今国会に地方自治法改正として提案されている「総合区」による対応、そして、現行制度の枠内での運用上の対応について触れました。
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戦前の五大市のひとつでもある神戸市は、これら大都市制度の課題について、制度的な提案を行うとともに、自らも必要な改革を行っていきたいと考えています。
そして、東京一極集中を是正し、関西圏全体の発展に貢献できるような取り組みを行っていきたいと述べ、締めくくりました。


2014年5月19日
から 久元喜造

有害動物を殺す悲しみ

鹿が、神戸市内にも入り込んできているという情報が、たくさん寄せられています。
市街地に近い藍那でも目撃されていますし、3月24日 のブログでも記しましたように、明石海峡公園内で、繁殖している可能性があります。
六甲山系の中に鹿が入り込み、繁殖すると、手がつけられなくなります。
丹沢山系では、鹿が植物を食い荒らし、山腹崩壊をもたらしたり、ヤマビルをまき散らし、人間にも吸血危害が及んでいますが、六甲山系でも、そのような事態が起きかねず、そうならないうちに、駆除しなければなりません。
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しかし、鹿のように可愛い動物を殺すことについては、感情的な反発が出る恐れもあります。
イノシシの場合でも、駆除することについては、抗議が寄せられます。

愛らしい動物を殺す悲しみと向き合うことを考えるとき、想い起こすのは、ローリングスの『子鹿物語』です。
舞台は、フロリダ半島、山の中の開拓地。
ある日、主人公の父親が森の中でガラガラ蛇に咬まれ、応急手当のために鹿を撃ち、肝臓を取り出して毒を吸い出します。
鹿のそばには、生まれたばかりの子鹿がいました。主人公の少年は、子鹿を育て始め、小鹿と仲良く遊びながら、内向的な性格を克服していきました。
しかし、子鹿は大きくなるにつれ、野生の本性を顕し始め、畑の作物を食い荒らすようになります。森の中の開拓地に生きる一家にとり、これは死活問題でした。
森に捨てに行っても、子鹿はそのたびに戻ってきて、畑を荒らします。
さまざまな葛藤の末、子鹿は結局、射殺されることになりますが、深く傷ついた少年は、家出してしまいます。
物語は、少年が悲しみを克服し、両親の元に戻るところで終わります。

鹿の急増の報に接するとき、『子鹿物語』に涙した子供の頃を想い出します。


2014年5月15日
から 久元喜造

NHKに対する篠山市長の怒り

昨日、5月14日のブログ で、篠山市に関するNHK「クローズアップ現代」のずさんな対応について取り上げました。
問題は、NHKが、番組制作に当たって当の酒井市長に取材もせず、ずいぶん昔のインタビューを勝手に使ったという点にあります。
この点についてのNHK広報局の見解は、
「当時のインタビューを使用することは市の担当者に伝えていた。市長の理解を得ていなかった点は配慮すべきだった」
というものでした。
私は、こんな大事なことを知らされた市の職員が市長に報告しないということはあり得ないと思っていましたが、どうも、そのとおりだったようです。
酒井篠山市長によれば、 担当した職員(行政経営課)は、次のように話しておられるそうです。

「3月18日にディレクターの方が市役所に来られてお会いしました。会ったのはこの1回だけで、あとはでメールや電話で、写真を提出したり、財政の数字などの説明をしたり、問い合わせに答えていました」
「4月30日に放映と聞いて、どのような内容になるか心配で、4月28日に電話したところ、合併前後の状況に加え、当時の瀬戸市長と酒井市長のインタビューも放映されるとは聞きました。しかし、その具体的な中身は全く判らないし、市長に報告したり了解をとったりというものではなかった」
というものでした。
職員の方は、NHKのコメントを聞いて、ただ愕然とされているようです。
酒井市長によれば、「真面目で、誠実で、仕事熱心な職員」だそうです。
「NHKというので、誠心誠意、取材に応えてきたのに裏切られ、大変残念です」と、その職員の方は話しておられるそうです。

NHKには、良識的で素晴らしい人材がたくさんおられます。
NHKの広報や担当部局が外部の声にいっさい耳を貸さないというのであれば、こんな異常な状況を変えていこうという声が、NHK内部からわき上がってくることを願うしかありません。


2014年5月14日
から 久元喜造

NHK「クローズアップ現代」のずさん報道

4月20日に放送された「クローズアップ現代」は、「平成の大合併」を特集しました。
この中でインタビュー出演された篠山市の酒井隆明市長から、「視聴者の誤解を招く」として、NHKに意見書が提出されたという記事が、きょうの神戸新聞朝刊に掲載されていました。

記事によれば、同特集は、合併に関わった自治体のひとつに篠山市を選び、同市については、財政難や市民サービスの低下などが取り上げられました。
市職員や住民の声など最近の取材画像とともに、酒井市長のインタビューがあり、「(行政が)何をしていたんだという思いはもたれると思う」などと発言されたようです。
ところが、この番組の制作にあたって酒井市長への取材はなく、このインタビューは、今から6年も前の2008年の取材分だったというのです。この点の説明は番組ではありませんでした。
酒井市長は、NHKに送った意見書の中で、「最近の市の取り組みについて触れられず、不誠実だ。過去の取材画像を時期を明示せずに使われ残念」とされています。

ひどすぎるのではないでしょうか。
私も、テレビからインタビューを受けることはありますが、それは、取材に関するそのときどきの状況やテーマがあり、それを前提として、聞き手の質問に答える形で行われます。
そのような取材もせず、過去の、しかも相当昔のインタビューを使って番組を制作するとは、番組のシナリオが初めからあり、それにふさわしい画像を探し出してきて、都合よく使ったとしか思えません。

しかも、記事によれば、NHK広報局は、「当時のインタビューを使用することは市の担当者に伝えていた。市長の理解を得ていなかった点は配慮すべきだった」とコメントしていますが、こんな大事なことを、担当者が市長に伝えないということがあるのか、大いに疑問です。
看板番組でこのようなずさんな制作、報道、そして、不誠実な対応がなされるようでは、国民のNHKに対する信頼が揺らいでいかないか心配です。

 


2014年5月12日
から 久元喜造

神戸の農業の強み

初夏の天候は変わりやすいですね。
朝、市役所のロビーで、西区伊川谷町の花々を眺めながら登庁したときは、よい天気でした。
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ところが、午後、市会本会議が始まった頃から、空がかき曇り、西区に到着したときは、本降りの雨になりました。
そんな中を、ワイン用ぶどう団地をご案内いただきました。
神戸のワイン醸造、ぶどう用ワインの生産が始まってから、もう30年近くにもなります。
神戸ワインは、すべて神戸のぶどうからつくられています。100%神戸産ぶどうです。
きょうは、シャルドネとメルローの畑を見せていただきました。
雨の中でしたが、手づくりで大切に育てられている様子が伝わってきます。
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ぶどう団地のあとは、少し離れた集落にお邪魔させていただきました。
さらに雨脚が強くなりましたが、田圃の畦や池のほとりを歩きながら、人に優しい農作物の生産と、良好な農村景観の維持、生態系の保全を大切にされている、地域のみなさんと対話をさせていただきました。
いろいろな課題があることも、ひしひしと伝わってきます。
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日本の農業が競争力をつけていくことは大事なことですが、それは、諸外国の後を追い、ひたすら生産性を究極まで高めることのみを追求することで得られるのではないということを、この美しい集落と里山の風景を眺めながら感じました。
大消費地に近い神戸の近郊農業は、米国やオーストラリアの超大規模農業とは異なるアプローチで、神戸の、日本の消費者に貢献していけるし、そうあるべきだということを確信します。

雨音をバックミュージックにしながら、それぞれのありようで、工夫を凝らしながら農業生産に取り組んでおられるみなさんと杯を酌み交わし、有意義で、楽しい時間を過ごさせていただきました。
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すばらしいひとときを与えていただき、本当にありがとうございました。