久元 喜造ブログ

地方自治の地道な仕事の仕方

6月6日の毎日新聞朝刊に、片山善博慶応大学教授のインタビューが掲載されていました。
嘉田由紀子滋賀県知事の知事選挙不出馬に関するものでしたが、地方自治についての本質的な議論を含んでいて、興味深く読みました。

片山善博氏は、2期8年、鳥取県知事を務められました。
県が計画していたダム計画を中止させたのは、
「「脱ダム」とか公共事業がすべて悪だとかいう発想」
ではなく、必要性や他の施策との優先順位との関係を考えたからだ、とおっしゃっていました。
いかに世間の耳目をひくかなどということでなく、客観的な必要性の観点からのみ冷静に判断されたということでしょう。

こうした経験を踏まえ、片山氏は、
「ダムに限らず、真摯に議論すればおのずと落ち着き先は決まる。正しい政策は大騒ぎしなくても時間がたてば支持される」
と、指摘されています。
「方針転換によって痛みを覚える人もいるので、そっとするのが礼儀だ」というコメントについては、「説明責任」とは相いれない、と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、考え抜いて政策判断を行って来られたご経験と、それらによって培われた見識が伝わってくるように、私には感じられました。
インタビューは、
「地方自治とは、住民が困っている課題をシステムとしてどう解決するかという、本来は地道なもののはずだ」
と、結ばれます。

そのとおりだと思います。
「地方自治」は、住民の日々の生活に根差した、地道な営みです。
意見が分かれている政策テーマについて、いたずらに争点化を図るのではなく、周囲を見渡しながら、そっと事を運び、気づかれることなく問題を解決するのも、芸術的な仕事の仕方なのかも知れないと、尊敬する片山先輩のインタビューを読みながら感じました。