久元 喜造ブログ

「退屈」な町から女性が出て行き、『消滅可能性都市』?

「日本創成会議」人口減少問題検討分科会(座長・増田寛也元総務大臣)は、2040年(平成52)年に、2010年と比較して若年女性(20~39歳)が半分以下に減る自治体を「消滅可能性都市」と呼んでいます。 (5月11日のブログ
どうして、若年女性が地域から出ていくのか?
そのキーワードの一つは、「退屈」かも知れない、と、山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』(2012年)を読んで感じました。
yamauchi

1980年生まれの著者のデビュー作。
帯には、-「地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語」とあります。
「退屈」から逃げだし、上京したものの、結局、地元に戻る女の子もいれば、ずっと「退屈」を受け入れて、ローカルに暮らしている女の子もいます。
登場人物はみんな違うのですが、「ここではないどこか」に、「ここではない何か」を探し求め、探しあぐね、あるいは探索をあきらめた、「若年女性」の姿があります。

「退屈」なローカルと対極にあるのは、東京の非日常でしょう。
「町いちばんの美少女」は、そこに自己実現の場所を見いだそうと上京し、専属モデルからグラビアアイドルになり、もてはやされます。しかし、そこからクイズ番組などへの幅を広げられず、「アダルトビデオと見分けがつかないようなDVDを何本か出し」、これ以上の露出拡大を断念して、地元に戻ってきます。そして、フリーターになり、平凡な結婚の道を選びます。

ここから何か、政策に結びつくようなヒントがあるわけではありません。
でも、何かを考えるときに、その何かに関連した場所を覆っている「気分」を感じることは、大事なことではないかと、この小説を読んで感じました。