もうだいぶ前になりますが、ある自治体で仕事をしていたとき、先輩幹部氏からこんな話を聞いたことがあります。
むかし、むかしのお話です。
その幹部氏は、役所に入ったばかりの頃、水道局に配属され、水源池の管理事務所で働いていたのだそうです。
山に囲まれたその水源地は、水は清く、澄み切っていて、静寂に包まれていたのだそうです。
ところが、突然、静寂を破り、銃声が・・・・
その 水源池には、大きな鯉がいて、ときどき岸辺に近寄ってきていたのだそうです。
その鯉をめがけて、ズドーン、ズドーンと猟銃をぶっ放ち、鯉を仕留め、仕留めた鯉を「鯉こく」にし、酒盛りをしていたというのですから、すごい話です。
今、そんなことをすれば(誰もしません)、職員は即刻、懲戒免職、市長も監督責任を免れませんが、北の大地らしい、おおらかで豪快な話だと、思わず、腹を抱えて笑ってしまいました。
水道は、都市の近代化の象徴です。取水、浄水、配水など水道の施設整備、管理には、近代技術の粋が集められます。
同時に、水は自然からの贈り物です。大地の恵みです。水道は、自然とともに、大地とともに、あり続けてきました。
ときに猟銃をぶっ放ちながら、水源池の畔で一日を過ごしていた某市元幹部氏は、身体全体でこのことを感じ続けておられたのかもしれません。
幹部氏は、よく部下を引き連れ、野外でジンギスカンをしていました。あるとき、私を呼んでくれ、しこたま飲んだ後、
「水源池に行くべ!」
と、若き日々を送った水源池にみんなを案内しました。
もうとっぷりと日は暮れ、池の畔では蛍がひっそりと舞い、水面は漆黒の闇の中に沈んでいて、鯉の姿を見ることはできませんでした。