久元 喜造ブログ

2014年2月27日
から 久元喜造

ネット通販の拡大と街の賑わい

報道によれば、インターネットを使って商品やサービスを提供するネット通販の市場規模は、2013年度には、約16兆円に上る見込みだそうです。
この市場規模は、同じ年度の全国スーパー売上高の約12兆7千億円、全国百貨店売上高の約6兆2千億円を大きく上回っています。
ネット通販はたいへん便利で、サービスや使い勝手についても改善が進められてきています。
私も利用者の一人です。

消費市場全体の拡大が見込めない中で、ネット通販の拡大は、デパートやスーパーの売り上げに影響を与えていることは間違いないでしょう。また、街の中の商店は減少が続いていますが、その背景にはネット通販の拡大もあると思われます。
アマゾンによる書籍のネット通販は年々拡大しており、そのあおりを受けて、街の中の本屋さんは、次々に姿を消しています。
神戸でも、元町の老舗書店『海文堂』が昨年閉店し、話題になりました。

消費者がインターネットで商品やサービスを購入するようになれば、人は買い物に出かけることが少なくなる可能性があり、このことは街の賑わいにも影響をもたらす可能性があります。
私たちはネット時代に生きており、ネット通販がさまざまな便益を与えていることは確かです。
同時に、ネット通販が巨大な存在になってきている今日、ネット時代における街の賑わいをどのように考えていくのかは、まちづくりの重要なテーマであると思われます。


2014年2月24日
から 久元喜造

NHK報道の検証が不可欠~佐村河内守問題②~

2月21日のブログ でも触れましたが、佐村河内守問題では、やはり、マスコミ報道のあり方が改めて問われるべきではないでしょうか。
とりわけ、この人物を、昨年3月放送の「NHKスペシャル」で取り上げ、賞賛したNHKは、番組制作の検証を誠実に行うことが求められると思います。

「NHKスペシャル」は、NHKのドキュメンタリーの分野での看板番組です。
これまでも、幅広いテーマを取り上げ、国際社会や地域社会、現代史、科学技術など、知られざる事実を広く紹介し、深層を深く抉り、深刻な矛盾に切り込む番組が制作されてきました。
私も、ずいぶん以前から、「NHKスペシャル」を見てきました。そして、いろいろ考えさせられることが多かったものでした。
しかし近年は、芸能人、スポーツ選手、芸術家を持ち上げるような番組も増え、Nスペがどこか変わってきているような気がして、見ることは少なくなっていました。
そういえば、NHKの番組全体を見ても、じっくりと見せるというよりは、その場限りの受けや笑いをとることばかりを狙ったシーンが増えているように思えます。

今回の事件で、看板番組の制作に当たった方々が、ペテン師を見破ることができなかったことは、やはり深刻に受け止めていただきたいと思います。
NHKには友人や知人がいますが、いずれも、有能で良識的なみなさんばかりです。
報道のみならず、映像、音楽、編集などのさまざまな分野でも、一流の人材がひしめいているはずです。
真に才能があり、良識的な人材が組織の中で登用され、重要な役割を果たしていただくようになることが、NHKの信頼回復の鍵を握るのではないでしょうか。
今回の恥ずべき事件を契機として、実効ある改革が進められることを願わずにはおれません。


2014年2月22日
から 久元喜造

妹尾美智子さんのご逝去

神戸市婦人団体協議会専務理事の妹尾美智子さんが、昨日、2月21日に逝去されました。
昨年12月、各区で開催された婦人市政懇談会総括集会では、元気なお姿で司会をしておられ、信じられない思いで、訃報に接しました。
同協議会の専務理事に就任されたのは、1960年のこととお聞きしておりますので、半世紀以上にわたり、神戸の婦人運動を率いて来られたことになります。

私が妹尾さんのお名前を初めて知ったのは、鈴蘭台に住んでいた、1960年代後半だったと思います。
婦人会の会合から帰宅した母が開口一番、「妹尾さんはすごい。切れる!」
と話していたのを記憶しています。

妹尾さんは、積極果敢に婦人運動、消費者活動、婦人の市政への参画などをリードされ、お名前は全国に知られていました。
一昨年、副市長として神戸に戻ってきてからは、直接、仕事などを通じ、妹尾さんのご指導をいただけるようになりました。
婦人市政懇談会などでは、軽妙洒脱な語り口で、和やかに会議を進行されていたお姿を想い起こします。

矢田立郎前市長が神戸新聞に、「数え切れないほどの宝を神戸の街に残していただいたことを決して忘れません」と話されていますように、妹尾さんのご功績は多岐にわたっています。
その中でも、神戸市室内合奏団、神戸市混声合唱団の活動を支援され、市民の間に音楽芸術が根付くのに大きく貢献されたことも忘れられません。

心より、哀悼の意を表したいと思います。


2014年2月21日
から 久元喜造

ニセ作曲は昔から~佐村河内守問題①~

「現代のベートーヴェン」、作曲家・佐村河内守氏をめぐる報道がなお続いています。
他人がつくった曲を、本人がつくったかのように装い、周囲の目を欺いてきたことが問題になっています。
また、交響曲第1番「HIROSHIMA」が、原爆と無関係だったことが明らかになり、広島市が「広島市民賞」を取り消すなど、騒ぎが広がりました。

作品のタイトルを差し替えたり、他人の作品を自分の作品として喧伝することは、一種の詐欺ですが、このような行為は、いつの時代にもあったようです。
あの天才作曲家、モーツァルトも似たようなことをやっていました。
モーツァルトは、雇い主であったザルツブルクの大司教シュラッテンバッハが亡くなり、新しい大司教コロレドが就任したとき、新しい大司教を歓迎する祝典劇として《シピオーネの夢》を献上しています。しかしこの作品は、前のシュラッテンバッハ大司教の僧籍50周年を記念する祝賀行事のための小オペラを、ほとんどそのまま転用したものでした。
前の大司教が亡くなったので、その人のためにつくった作品を、後任者に別の名前をつけて献上したというわけです。
また、モーツァルトは、シンフォニーの注文を受けて作曲が間に合わなかったとき、ヨーゼフ・ハイドンの弟ミヒャエル・ハイドンの作品を、自分の新作として発表、演奏しています。

もちろん、今回の佐村河内守氏の行為は、モーツァルトとは本質的に違っています。
佐村河内守氏は、曲をつくることすらできない人物で、存在そのものが虚構だったようです。
障害者であったことにも、深刻な疑念が差し挟まれています。

とんでもないペテン師、いかさま師だったようですが、このような人物は、いつの時代にも存在するのであり、問題は、そのような人物を、天才としてもてはやしてきた側の見識のなさです。
とくに、マスメディアの報道のあり方については、十分な検証が求められます。


2014年2月15日
から 久元喜造

市役所ロビー~花物語~

神戸市役所の1号館ロビーに、素敵な「ガーデン」がつくられています。
~花物語 Flowers’ Story 市役所ロビーガーデン~
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ロビーガーデンを飾る花々は、神戸市内の北区と西区で栽培されています。
北区淡河町では、色とりどりのチューリップが咲き誇っています。
また、西区伊川谷町では、いい香りのするストックや、春の花壇を彩ってくれる鉢花の数々が、可愛い顔を見せてくれています。
この『市役所ロビーガーデン』は、3月2日(日)まで設置しますので、市役所のロビーで、春を感じていただければと思います。

淡河町では、チューリップのほかに、ユリとグラジオラスが栽培されています。
淡河のユリは、昨年『神戸リリィ』という愛称がつけられました。
とても気品のあるユリです。
また、伊川谷では、花壇苗の生産が盛んです。

もうすぐ、『神戸花物語2014春』が開催されます。
神戸で栽培されているさまざまな花々を観ることが出来ますし、販売も行われる予定です。
《開催期間》
2月28日(金) 13時半~18時
3月2日(土)・2日(日) 10時~17時
《開催場所》 神戸ハーバーランド地下「デュオドーム」(JR神戸駅前地下街)

是非、足を運んでみてください。


2014年2月9日
から 久元喜造

吉野弘さんの逝去

詩人の吉野弘さんが、1月15日に逝去されました。
いくつかの新聞が、吉野弘さんの追悼記事を掲載していました。

私が始めて吉野弘さんの詩に接したのは、山田中学校3年生のときに受けた国語の授業でした。国語の教科書に取り上げられていたのは、『奈々子に』という詩だったと記憶しています。

国語の担任の先生は、この詩が、作者自身の人生経験に根ざしたものであることを強調していました。きっと、吉野弘さんの生き方に思い入れがあったのでしょう。
「赤い林檎の頬をして 眠っている奈々子」という初めの部分は、その後も、しばらく記憶していました。
そして、長く、この詩のことは忘れていましたが、吉野弘さんの訃報に接し、改めて、本当に久しぶりに、『吉野弘詩集』を紐解きました。1968年(昭和43年)の発行です。

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(中略)

唐突だが 奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが ほかからの期待に応えようとして
どんなに 自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり 知ってしまったから。

お父さんが お前にあげたいものは
健康と 自分を愛する心だ。

ひとが ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。

自分を愛することをやめるとき
ひとは 他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。

自分があるとき 他人があり 世界がある

そして「お父さんにも お母さんにも 酸っぱい苦労がふえた」と告白した上で、「苦労は 今は お前にあげられない」とし、

お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。

と、結ばれます。

中学生の私は、おそらく、教科書に載っていた彼の詩に心動かされるものがあり、海文堂かどこかの書店で、『吉野弘詩集』を購入したものと思われます。


2014年1月31日
から 久元喜造

深紅の薔薇に呼び起こされる記憶④

60本の深紅の薔薇は、今なお元気で、私の部屋を華やかにしてくれています。
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今はカラオケはほとんど歌いませんが、昔、『百万本のバラ』を歌っていた頃がありました。

小さな家とキャンバス ほかには何もない
貧しい絵描きが 女優に恋をした
大好きなあの人に バラの花をあげたい
ある日街中の バラを買いました

百万本のバラの花を
あなたにあなたにあなたにあげる
窓から窓から見える広場を
真っ赤なバラでうめつくして

この歌の作曲は、ライモンズ・パウルス。
ラトビアの作曲家で、ラトビアが旧ソ連から独立した後、教育大臣になった芸術家です。
歌詞は、女優に恋をしたある「絵描き」が、何もかも売り払ってバラの花を買い、女優がいる部屋の窓の下を埋め尽くし、女優がバラの花々を眺めるているさまを遠くから観るだけで満足して、そっと立ち去っていく、という内容です。
女優は華やかな人生を送り、「貧しい絵描き」は 孤独な日々を送ります。けれどバラの思い出は、「絵描き」の心から消えることありませんでした。
もの悲しいけれど、ロマンチックな歌詞です。

しかし、この歌のもとの歌詞は、もっと悲劇的な内容だったと、ラトビアを何回か訪れたことのある、家内から聞いたことがあります。
本来のタイトルは、『マーラが与えた人生』。
「マーラは娘に命を与えたけれど、幸せをあげ忘れた」という内容です。

この歌の背景には、ラトビアの人々の苦難に満ちた歴史があるようです。
あまりにも救いのない内容だったので、少しでも慰めがある、『百万本のバラ』の物語に作り替えられたのかもしれません。


2014年1月29日
から 久元喜造

断固とした有害鳥獣対策を

私は、選挙期間中、北区、西区で有害鳥獣の被害が深刻になっていることを危惧してきました。
私のブログ「岩岡でも深刻化するイノシシの被害」では、及ばずながらお聞きした実態について触れさせていただき、「有害鳥獣対策に本腰を」 では、行政として対策を強化していく必要性について述べました。
そして、 私の政策 の中でも、
「農産物に大きな被害を与えるイノシシやアライグマなどの有害鳥獣対策を強化します」
と、掲げました。

こうしたお約束をできるだけ早く実施したいと思い、その実現を急ぎました。
そして、その具体策について、昨日、記者発表させていただきました。

そのひとつは、狩猟免許の取得費用に対する補助です。
免許取得後、神戸市内の猟友会に加盟し、捕獲に参加する人を対象に、取得費用のほぼ全額に当たる6万5千円を補助します。
ハンターのみなさんは、残念ながら減っていますし、高齢化が進んでいます。少しでもハンターを増やし、深刻な鳥獣被害の軽減に貢献していただきたい、という願いを込めました。
一斉捕獲期間の謝礼金も、1頭あたり1万円から2万円に引き上げます。

有害鳥獣の被害が増えていることの背景には、生態系のバランスが失われていることも背景にあると思われます。生態系の多様性とその維持も、あわせて図っていかなければなりません。

ただ、残念ながら、最近、若手の市役所のみなさんと意見交換をしますと、「迷惑している」、「ほどほどにしてほしい」といった意見があったことは、残念でした。
たぶん、もっと大事なことがあるだろう、われわれはそんなにヒマではない、市長の趣味に振り回されるのはたまったものではない、といった、私への反発があるのかも知れません。

先のブログでは、
「神戸でここまで被害が出ている現実は、あまり市民には認識されていないのかも知れません。西区や北区で、かなり大きな問題になっていることは、もう少し市民の間で共有されてもよいのではないでしょうか」
と、書きましたが、まず、市役所の中で、もっと理解が深まるようにしていかなければなりません。
自分の努力不足を反省するとともに、市役所のみなさんの理解を得ながら、前進していきたいと改めて決意しています。

 


2014年1月26日
から 久元喜造

『阪急電車』の風景

きょうは、大阪で会合があり、地下鉄を乗り間違えて、淡路に出てしまいました。
淡路から阪急電車で十三へ。神戸線の特急に乗り、西宮北口でさらに普通に乗り換えました。

普通電車は、比較的空いていて、座ることができました。
隣に座っていたのは、若いお母さんと小さな女の子です。
女の子が、元気な声で、母親に話しかけますが、お母さんは、周りに気を遣われる方のようで、そのたびに
「シーッ」とか
「静かにしなさい」
とか言って、女の子をたしなめていました。

別に、周りの乗客が気にしている風でもないので、私は、
「いいんじゃないですか。気にされることはありませんよ」
と、言いましたら、その声が女の子に届いたのか、
「おじさんも、いいって言ってるって」
と、また、元気な声を出したので、乗客に笑い声が起きました。
その後、私も含め、乗客は、お母さんと女の子の会話を、ニコニコしながら眺めていました。
とても微笑ましい車中の風景でした。

若いお母さんと女の子は、岡本で降りていきました。
向かい側に座っていた乗客の何人かは、降りていく二人に手を振りました。
私も振り返って、車窓から手を振りました。
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何年か前に観た映画、有川浩の『阪急電車』を思い起こしました。
『阪急電車』は、西宮北口を通る今津線が舞台でしたが、阪急・神戸線も、穏やかで温かな車内でした。


2014年1月25日
から 久元喜造

深紅の薔薇に呼び起こされる記憶③

深紅の薔薇は、私の部屋を華やかに彩ってくれます。
名酒 HIBIKI を舐めていると、R.シュトラウスの歌曲に、確か、赤い薔薇を歌った曲があったのを思い出し、ラックから引っ張り出して、聴きました。

歌詞は、カール・シュテーラー Karl Stieler (1842 – 85)
作曲は、リヒャルト・シュトラウス Richard Strauss (1864 – 1949)
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とても官能的な内容の歌詞です。

Rothe Rosen

Weißt du die Rosen, die du mir gegeben?
Der scheuen Veilchen stolze heiße Schwester;
von deiner Brust trug noch ihr Duft das Leben
und an dem Duft sog ich fest mich und fester.

君は覚えているだろうか? 君がぼくにくれた薔薇を
内気なすみれの姉妹であり、気高く情熱的な薔薇を
君の胸から その薔薇の香りが ぼくに生命を運んだ
そしてぼくは その香りを ますます強く吸い込んだ

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静かに、夜が更けていきました。