久元 喜造ブログ

2016年11月30日
から 久元喜造

「児童相談所」でもよいのでは?

児童相談所は、児童福祉法に基づき、児童虐待のほか、不登校など子どもが抱える問題に対応するための重要な施設で、神戸市では「こども家庭センター」と呼んでいます。
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児童相談所の名称は、神戸市のように自治体の判断で変えられるのですが、厚生労働省は、このほど、利用者の混乱を招きかねないとして、自治体に対し、略称である「児相」の表記を求める方針を決めたとの報道がありました。
いずれ、各自治体に通知されるものと思われます。

国の判断がいつも正しいわけではありませんが、今回の厚生労働省の通知は適切な対応だと思います。
大切なことは、施設の名称がその仕事の内容から見て端的でわかりやすいか、ということです。
そういう観点から言えば、「児童相談所」さらには「児相」という略称は、新聞などに毎日のように掲載されており、国民の認知度も高いと思われます。
自治体がバラバラに名前をつけていたら、新しく転入された住民のみなさんは、果たしてこのまちに児童相談所はあるのか、と戸惑うことでしょう。

「こども家庭センター」は、ハーバーランドにありますが、近年の相談件数の増加などに対応するため、現地での拡充やほかの地域への移転を検討しています。
この機をとらえ、「児童相談所」に名称を変更することが考えられてもよいのではないでしょうか。
「こかせん」などと、職員だけに通用する略語を言っていても、市民にはわかりません。(9月26日のブログ
市会での議論や市民のみなさんのご意見をふまえながら、検討していきたいと思います。


2016年11月27日
から 久元喜造

模擬国連の開催

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模擬国連世界大会が、11月23日から26日まで神戸で開催されました。
模擬国連は、世界の学生のみなさんが各国の外交官の役割を担い、国際連合の会議を模して行われる活動です。
参加者は、担当する国の利害を代弁して発言、交渉し、合意形成を図ります。

模擬国連世界大会は、春にニューヨークで5,000人規模の大会が開かれ、秋には世界各地の大学で開催されます。
日本で開催されるのは初めてで、神戸での大会は、NCCA(National Collegiate Conference Association 全米学生会議連盟)と神戸外国語大学が主催しました。

23日に神戸外国語大学で行われた開会式には、私も出席し、「今、世界には、さまざまな対立や衝突があるが、それらを乗り越えることができる共通理解の枠組みが求められており、その構築に挑戦してください」という趣旨の挨拶をしました。
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今回の会議には、11か国から、約380人のみなさんが参加されました。
式典、会議は、すべて英語で行われます。
模擬国連のことは、以前から船山仲他学長からお話を伺っておりましたが、神戸外大がこのような権威ある世界会議を主催されたことに敬意を表したいと思います。
また、26日の朝日新聞には、国連事務総長役を務めた同大4年の谷幸穂さんのことが紹介されていました。
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谷さんには、以前もお会いしたことがありますが、大役を果たし、今頃はほっとされていることでしょう。
お疲れまでした。


2016年11月24日
から 久元喜造

神戸市デジタルライブラリーがスタート。

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このたび、神戸市のウェブサイトとして、広報紙や市政案内などの広報印刷物をホームページで閲覧できる、デジタルライブラリー を開設しました。
このサイト(eBOOK HOUSE)では、印刷物をカテゴリー別に分類して掲載するとともに、キーワード検索も可能で、探している印刷物を簡単に見つけることができます。
スマートフォンやタブレットにも対応しています。

デジタルライブラリー  の開設により、区役所などへ印刷物を取りに行く必要がなくなり、最新情報をいち早く受け取ることができるようになりました。

さらに下の画像でお示ししていますように、画面上で、メモを書いたり、線を引くこともできます。
一度書き込んだメモを保存することができ、後から読み返すこともできます
メモはご自身の端末上で書き込まれるため、 元のデータには影響しません。。

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これからも神戸市の広報を進化させ、わかりやすい情報発信を行っていきます。


2016年11月20日
から 久元喜造

蓮實重彦『伯爵夫人』

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なんとも魅力的な装丁。
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赤と黒のコントラストが目を惹く、妖しげな雰囲気を漂わせる装丁です。
著者は、蓮實重彥。
フランス文学者で、東大総長も務められました。

小説の焦点は、ひたすら下半身。
局部的な描写が次々に現れます。
それでいて、文章は流れるように心地よいのです。
まるで美しい音楽を聴いているかのようです。
官能的だけれど、けっして聴く者を自己撞着的満足に耽溺させない音楽です。
あくことのない感覚的描写で思い起こされるのが、宇能鴻一郎の個性的な発声法とリズムですが、『伯爵夫人』には、高踏的でアイロニカルな佇まいが感じられます。

謎の女性、伯爵夫人が、帝大受験を控えた高校生の二朗を挑発し続ける物語ですが、ふたりの周囲には、かなりの人物が登場して局部に絡んだ人間模様を現出させ、名状しがたい混沌は、ある種のラビリンスに読む者をいざないます。
記憶がひんぱんに挿入されることもあり、現実と夢想が交錯します。
ある種の白昼夢かもしれません。
自然はまったくと言ってよいほど登場せず、繰り広げられるのは、人工的で微細な秘められた世界です。

永井荷風の『断腸亭日常』には、いわゆる裏風俗が登場し、戦時下においても健在であった欲望の存在をちらりと見せてくれます。
類似の描写は『伯爵夫人』にも登場しますが、観察者に徹した永井荷風と異なり、蓮實重彥は、破滅に向かう人物たちをからかい、あざ笑い、いたぶる謎の女性を通じて、日本が崩壊に至る過程を鮮やかに描きます。
そして物語は、米国に宣戦布告したニュースで閉じられるのです。(文中敬称略)


2016年11月17日
から 久元喜造

トランプ氏が勝つと思っていました。

米国大統領選挙から1週間が過ぎました。
あの日、11月9日(水)午前9時半から、庁内で「英語による政策討議」が開かれました。
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冒頭、私は次のように挨拶しました。
拙い英語ですが。

Good Morning!
Are you interested in  the result of yesterday’s election?
Of course, I am.
The result of the election will affect the relationship between Japan and the United States.
But we are working for Kobe City.
So, we have to make Kobe great again! (笑)

このとき、私は、トランプ氏が勝利するだろうと感じていました。
想い起こしていたのは、3年前の自分の選挙です。
すべてのマスコミの事前予想は、私の「リード」「優勢」を報じていました。
しかし私はそうは思いませんでした。
私は、主要政党、そして幅広い分野の団体から推薦、支持を受けていました。
そのような雰囲気の中で、私以外の候補者を支持している方が正面から聞かれれば、そのことを正面切って言いにくいのではないか。
それに、マスコミの事前調査は、一定の補正をかけるとは言え、固定電話にかけるやり方です。
報道には疑問を感じていましたが、案の定、薄氷の勝利でした。

今回の大統領選挙では、主要マスコミはクリントン氏を支持し、トランプ氏に厳しい批判を浴びせていました。
そんな空気の中で、トランプ支持と言いにくい雰囲気は間違いなくあるだろう、その数は相当多いのではないかと想像していました。

あの日の夕方、トランプ氏の当選を、密かな満足感を感じながら聞きました。
私は、自分の選挙は弱いのですが、選挙ウォッチャーとしては優秀なのです(笑)。
もちろん、こんな自己満足に浸っていてはいけません。
仕事をしなければ!


2016年11月16日
から 久元喜造

若い世代のみなさんとの対話

神戸の街づくりや行政サービスに、若い世代のみなさんの意見を反映させていくことは大切です。
そこで、市長に就任してから、さまざまな機会を通じて、対話しながら意見交換を行い、市政に反映させていく試みを続けています。

昨年度は、大学生のみなさんとの円卓会議を設け、さまざまな意見をいただきましたが、この夏には、企業で働いておられる20代、30代のみなさんと、平日の夜に意見交換を行いました。
大阪から神戸に越して来られた女性の方からは、かなり辛口の神戸評をいただきましたが、こうした率直な指摘はありがたいです。
子育て支援、公共交通、街灯などについて、今後の政策、事業に反映させていきたいと思います。

先週の日曜日には、市内の女性団体の主催により、全員女性のみなさんとの懇談会にお招きいただきました。
約120人の出席者の多くは大学生のみなさんで、在籍学校も、関西学院大、甲南女子大、甲南大、神戸学院大、神戸松蔭女子学院大、親和女子大、神戸山手大学、兵庫県立大、神戸大、武庫川女子大、グルーミング学院と、多岐にわたっていました。
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最初に私から、きょう話題にしたいテーマについて尋ねたところ、たくさんの手が上がり、それらをもとに30分ほど自分の考えをお話ししました。
質問もたくさん出され、活気あふれる議論ができたことは、とてもうれしかったです。


2016年11月12日
から 久元喜造

井手英策『日本財政 転換の指針』

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著者の問題提起は、日本の財政危機の本質が税収の決定的不足であり、増税に対してどのように社会的コンセンサスを創り上げていくのか、という点にあります。

このようなテーゼを立てたうえで、筆者が戦後日本の財政の歩みを振り返り、歴史的に注目するのが「土建国家」です。
「土建国家」というと、否定的な評価が定着していますが、著者は、公共事業により、とりわけ地方において働く機会が創出されたことを評価します。
この結果、減税による中間層への利益分配が可能になり、社会保障に関する公的支出を軽減しました。

しかし、低成長時代に入り、このような利益配分構造が壁にぶちあたると、財政の方向は「いかに無駄をなくすか」に向かい、そこに「奪い合いの政治」が生まれました。
「誰がムダ遣いをするかを監視し、告発する政治」が当たり前の風景になりました。
「この分断を志向する民主主義は、不信社会化という社会の危機と分かちがたく結ばれており、それらが財政危機の原因となった」と著者は考えます。
このような状況の中では、人々は財政再建のための増税には強く反対し続けます。

どう事態を打開すればよいのか。
著者は、「人間を所得の多寡で区別しない、ユニバーサリズムに基づいた財政」という視点から、国税、地方税の具体的な税目について検証し、あるべき改革方向を示します。
そして、「特定の階層を受益者とする」のではなく、「すべての人びとが受益者となり、負担者となる」方向を目指すべきだと結論付けます。
私も、全体としてそのような方向を目指すべきだろうと思います。


2016年11月10日
から 久元喜造

「ヤマト1」「疾風」お疲れさまでした。

メリケンパークで展示されてきた「ヤマト1」「疾風」の撤去作業を11月9日に開始しました。
ヤマト1」は、海上航行実験に成功した世界初の超電導電磁推進船で、昭和60年から研究・開発に着手。
平成4年6月に三菱重工業㈱神戸造船所で完成し、実験終了後に神戸市が無償で譲り受けました。
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また、「テクノスーパーライナー疾風」は、三菱重工業㈱、川崎重工業㈱をはじめとする造船7社が開発し、平成6年7月に完成。
神戸港でさまざまな実験を行ったのち、神戸港の130年記念事業として、神戸市がテクノスーパーライナー技術研究組合より譲り受けました。
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神戸市では、「ヤマト1」を平成8年7月から、「疾風」を平成9年4月から、メリケンパークで展示してきましたが、展示開始から約20年の歳月が流れ、両船とも老朽化が進みました。
そこで、神戸開港150年記念事業としてメリケンパークを再整備する機会に、各方面のご意見もお聴きした上で、解体、撤去することにしたものです。 

先週末には、高所作業車を用意し、約15メートルの高さから船を眺めていただくことにしました。
両方の船の前には行列ができ、順番に作業車に上がっていただきました。

「もったいない」「寂しい」という声があったとも聞いています。
神戸の地で、このような挑戦が行われた歴史を記録にとどめ、研究開発の成果を20年近く展示し続けた記憶を大切にしたいと思います。
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メリケンパークは、これから本格的に整備を進め、来年4月にオープンします。
桜並木も登場し、緑豊かで、海と空に開かれたオープンスペースに生まれ変わります。


2016年11月5日
から 久元喜造

ファーマーズマーケットの賑わい

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東遊園地で開催しているファーマーズマーケット。
神戸市内の農家のみなさん、神戸市内の地産地消に興味をお持ちの飲食店のみなさんなどに参加をいただき、さまざまな産品を販売するマーケットです。
農水産物の販売だけでなく、生産者と消費者が互いに理解を深め、つながりをもちながら良い産品の開発につなげていくことも目的にしています。

おかげさまですっかり定着しました。
きょうの土曜日は、好天にも恵まれ、大賑わいです。

今年は、30回開催しますが、25回目のきょうは、FARM TO FORK と名付けられたイベントを開催しました。
茅葺職人、相良育弥さんの指導でつくられた茅葺小屋でトークイベント。
ゲストは、米国ポートランド市でオーガニック農園を経営されているステイシー・ギブンズさん。
神戸R不動産の小泉寛明さんの司会で、北区の若手農家、森本聖子さんをまじえ、神戸の食、農業やまちづくりについて意見交換しました。
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つづいて、場内に設えられたパイプハウスで、「食都神戸」推進会議の第1回会議。
生産流通、レストラン、金融、学術研究、メディア、行政の各分野から参画いただき、「食都神戸2020」(GASTROPOLIS KOBE)構想を強力に推進していきます。
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東遊園地芝生化の実験を始めてからしばらく経ちましたが、確実にこの場所を訪れ、ゆったりとした時間を楽しむみなさんが増えています。
「芝生にしてよかったですね」
と何人もの方から声をかけられ、ありがたかったです。
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ルミナリエでの損傷具合をみながら、次のステップを考えることにします。
社会実験はこれからも続きます。


2016年11月4日
から 久元喜造

政策討議は、みかけより中身が大事。

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庁内で政策討議をするときに感じていることを、少し記したいと思います。
パワポでつくる資料が、内容的に散漫になっていないか、ということです。
スローガンや抽象的な方向性が大きな字で書かれ、そのようなページが、十数枚も続くような印刷資料が数多く見受けられますが、どうでしょうか。

政策討議は、営業用のプレゼンではありません。
展開しようとする政策について、
・誰が
・何を
・どこで
・どれくらいの期間で
・どのような手法で
・どれくらいの費用で
実施するのかについて、端的に示した資料が基本ではないでしょうか。

その政策の必要性が明らかであれば、抽象的な説明を延々とする必要はありません。
既存事業を見直すのであれば、見え消しで十分です。
国の制度を活用する場合には、国の制度の概要もほしいところです。

パワポの使用はいちがいに否定されるべきではありません。
先日の若手プロジェクトチームのみなさんは、上手にパワポを活用していました。
配布用資料と映写の使い分け(2014年11月4日のブログ)も見事でした。
その一方で、視覚に主眼を置いた資料は、具体的な論点が過度にイメージ化され、曖昧になるきらいがあることは否定できません。
配布資料だけであれば、ワードやエクセルで十分な場合も多いでしょう。
要は、実質的な論議が効率的に行われるよう、広い意味での費用対効果を勘案し、意味のある情報を厳選した簡潔な資料を準備することが大切です。