久元 喜造ブログ

2017年1月21日
から 久元喜造

水素社会 神戸から始動=総理施政方針演説

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昨日行われた安倍総理大臣の施政方針演説では、水素社会について、次のように触れられています。

水素エネルギーは、エネルギー安全保障と温暖化対策の切り札です。これまでの規制改革により、ここ日本で、未来の水素社会がいよいよ幕を開けます。三月、東京で、世界で初めて、大容量の燃料電池を備えたバスが運行を始めます。来年春には、全国で百か所の水素ステーションが整備され、神戸で水素発電による世界初の電力供給が行われます。
二〇二〇年には、現在の四十倍、四万台規模で燃料電池自動車の普及を目指します。世界初の液化水素船による大量水素輸送にも挑戦します。生産から輸送、消費まで、世界に先駆け、国際的な水素サプライチェーンを構築します。その目標の下に、各省庁にまたがる様々な規制を全て洗い出し、改革を進めます」

神戸で進めている水素発電の実証実験、昨年 1月27日のブログ でも取り上げた水素サプライチェーンの構築について触れていただき、名誉なことと感じています。
水素ステーションについても、昨年11月7日の臨時記者会見 で発表しましたが、今年の3月に兵庫区七宮町で神戸で初めて営業をスタートさせます。

神戸から本格的な水素社会を始動させていく意気込みで取り組みます。


2017年1月20日
から 久元喜造

神戸新聞『ひょうたん池物語』書評

1月15日(日)の神戸新聞朝刊「ひょうご選書」に、『ひょうたん池物語』の書評が掲載されました。
評者は、詩人の たかとう匡子さんです。

タイトルは、「いま再び 少年時代を生きる」
物語について、丁寧に紹介していただいた上で、こう、記されていました。

「登場する村の子どもたち、よしお、きよし、じろうの3人組。その中のひとりに作者の<私>がいる。神戸っ子の現役の市長さん自身、どこか今でもあの頃の懐かしい自分自身の少年期に戻りたかったのだろう」
「単なる思い出にはしたくないから童話というジャンルを借りて今いちど少年時代をそのまま生きておきたいと思ったのだろう」

「今いちど少年時代をそのまま生きておきたい」と思ったことは、確かにそのとおりです。
過去を回想する、単なるノスタルジアにはしたくはありませんでした。
美しい過去のとおり「そのまま生きて」いることが、いま現実には不可能であることを、いやというほど感じながら。

どこでこの本が手に入るのか、と聞かれることが多いのですが、三宮センター街のジュンク堂には、置いていただいていますので、ご覧いただければ、幸いです。


2017年1月17日
から 久元喜造

平成29年「1.17のつどい」

今朝、東遊園地で開催された「阪神・淡路大震災1,17のつどい」に参加しました。
あの震災から22年の年月が流れましたが、悲しみが癒えることはありません。

5時46分、黙祷。
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竹灯籠の前には、今年もたくさんのみなさんが集っておられます。
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震災の記憶を次の世代に伝えていくため、新しい世代のみなさんが新しいアプローチも取り入れながら、この日のために準備をしてくださいました。
「慰霊と復興のモニュメント」前のステージで、式典が開始されました。
ご遺族を代表し、大鳥居慎司さんが追悼の言葉を述べられました。
私からも追悼の誠を捧げました。
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間もなく東日本大震災から6年が経とうとしています。
東北の被災地と神戸との間で、さまざまな交流が生まれました。
神戸の大学生、中高生のみなさんも、東北を訪れ、交流はしっかりと根付いています。
若い世代のみなさんの取組みに、新たな時代に向けての希望の光を感じます。


2017年1月16日
から 久元喜造

「神戸市職員 定年前の伝言」

きょうの神戸新聞社会面に、今年3月に退職される4人の神戸市幹部のみなさんが登場していました。

北区長の高武秀年さん
看護大学事務局長の 丸一功光さん
行財政局主税部特別滞納整理担当課長の清久哲生さん
水道局事業部東部センター所長の進藤幸生さん
です。
「減災を担う次世代に託す思い」を語っておられました。

限られた紙面では、あのとき経験されたこと、感じたこと、次世代に伝えたいことのほんの一部しか紹介されなかったことと思いますが、それでも、苦労された日々の様子や感じておられることがひしひしと伝わってきて、何度も読み返しました。

毎年、震災への対応に苦労されたみなさんが一線を退かれ、新しい世代と交代します。
歳月が流れるのは止めることはできませんが、私たちは、先人から学び、経験や想いを受け継いでいくことができます。

神戸市では、新規採用職員には、震災の体験談の講義を受講させるだけではなく、職場の上司や先輩に対して震災当時の経験の聴き取りを行ってもらっています。
また、あのときの経験を有する職員が指導し、現場の状況を再現したゲーム「クロスロード」を用いた研修や災害対策本部の動きをもとにしたロールプレイング研修を実施しています。
被災地に派遣される職員は、震災時の経験を有する職員と若い世代の職員がチームを組んで、被災地の現実と格闘しています。

今年度退職される職員のみなさんには、3月まで担当していただいている仕事でご苦労をおかけしますが、その後も引き続き、いろいろな面で、後に続く者を指導していただきますようお願いいたします。


2017年1月13日
から 久元喜造

算盤の想い出

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少し前、あるお家を訪ねた時、奥から、古い算盤を出してきてくださいました。
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算盤を見て、もうすっかり忘れていた、昔の想い出が蘇ってきました。

東京に出て、兵庫県出身者が入る 尚志館 に入寮したのですが、このとき、NHKラジオ講座を聴き、算盤の練習をしていたのです。
周りからは「電卓の時代やで」 と馬鹿にされましたが、気にしませんでした。
どうして算盤を練習していたのか。
計算のためというより、単に指を動かしたいだけだったのかもしれません。
それと、
「ゴワサンデネガイマシテハ」
で始まる講師の語り口が、まるで歌を聴いているようで、心地よかったのかもしれません。
そんな浅薄な動機だったので、授業が忙しくなるとサボりがちになり、結局やめてしまいました。

役所に入ると電卓全盛で、私は電卓を左手で速打ちする練習を繰り返し、かなりのところまで腕を上げました。
そんな中で2年目に配属された石川県財政課には、算盤の名手がいました。
遊び半分で誰かがふたりを対決させると言い出し、真夜中、私は受けて立ちました。
名手と私は、確か最大9ケタの数字が並んだ決算統計か何かの表を渡され、合図とともに集計を開始・・・
合計はピタリと一致、所要時間もほとんど差はなく、引き分けに終わりました。

その後、財政畑に配属されなかった私は、あまり集計作業に関わらず、電卓からも遠ざかりました。
電卓練習の成果は、キーボードを打つのに多少は役立っている程度です。
これに対し、算盤が脳の発達に効果があるのは確実です。
今から振り返れば、もう少し算盤を続けていればよかったと悔やまれます。


2017年1月9日
から 久元喜造

華やかに、厳粛にー神戸の成人式

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去年と同じタイトルで記したいと思います。

きょう、午後1時から、ノエビアスタジアムで、神戸市主催の成人式が行われました。
約1万人の新成人のみなさんが参加されました。
しばしば、ほかの自治体では、参加者の一部が荒れ、混乱も見られるという報道に接しますが、神戸の成人式は、これまでと同じく、華やかな雰囲気の中にも、厳粛に行われました。

「幸せ運べるように」が流れ、黙祷が捧げられました。
決して静まりかえっていたというわけではありませんが、多くのみなさんが、池田りんたろう市会議長と私の祝辞に耳を傾けてくれました。
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8人の新成人の代表が、誓いの言葉を述べ、拍手が送られました。
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式の前に、短時間でしたが、意見交換を行い、しっかりとした意見をいただきました。
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神戸は、突然の災害を前にして苦境と立ち向かい、試練を乗り越えてきました。
市民が助けあい、励まし合いながら、街を甦らせてきました。
そのような神戸の経験は、新成人たちに間違いなく受け継がれていることを、今年も感じることができました。

成人式の後、神戸文化ホールの「第22回あじさいコンサート」に出席しました。
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幕間の挨拶では、東日本大震災の後、被災地と神戸との間で音楽の交流が積み重ねられていることに触れました。

若い世代のみなさんに、震災の記憶が受け継がれ、新しい形で未来に継承されていることに感動を覚えた一日でした。


2017年1月7日
から 久元喜造

隈研吾『自然な建築』

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2020年東京オリンピックの主会場となる新国立競技場の設計者であり、我が国を代表する建築家からは、とても分かり易く、明確なメッセージが伝わってきました。
自然な建築」とは何か。
著者は、「場所と幸福な関係を結んだ建築」だと、端的に指摘します。
対極にあるのは、「場所を選ばない」コンクリートを駆使した建築です。
コンクリートは、「表象と存在の分裂」を許容します。
表象が独り歩きして肥大化し、表象をめぐるテクノロジーを競い合う20世紀の主役は広告代理店であった、と著者は言います。
興味深い考察です。

「自然な建築」を模索する著者に大きなインスピレーションを与えたのは、安藤広重の『大はしあたけの夕立』でした。
この絵では、「雨が絵画空間の中でひとつのレイヤーを構成し、そのレイヤーの裏に「大はし」が重なり、さらに川面、対岸と重なりあ」います。
すなわち、「自然と人工を対立する現象とはとらえず、両者を連続したものと見なす日本的な自然観」です。
著者は、「そのような自然と人工物との連続性を、具体的な建築の中で表現すること」を目指します。

このような思想に支えられて、著者が設計に関わった個々の建築について、具体的に紹介されていきます。
工期上の制約も、予算上の制約も、所与のものとしてとらえられ、その中での葛藤も綴られます。
しばしば、はるか天上の高みから見下ろして観察しているかのような著作に出会いますが、本書は、それらとは全く異なり、矛盾を抱えた現実との格闘の記録でもあります。


2017年1月4日
から 久元喜造

神戸港開港150年の御用始め

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今日は、御用始め。
正午から、ポートアイランドの国際会議場で、神戸市、兵庫県、神戸商工会議所などが主催する「平成29年新年合同祝賀会」が開催されました。
各界から、約1700人のみなさんが参加されました。

今年は、西暦1868年1月1日に神戸港が開港して150年の記念すべき年に当たります。
この年の秋、元号は慶応から明治に変わり、我が国は近代国家としての歩みを始め、神戸は、我が国を代表する国際港湾都市として発展してきました。

神戸がここまで発展してきた大きな要因は、交通の要衝であったからです。
神戸の今後の発展を考えるとき、陸海空の交通の要衝であるという神戸の強みをさらに生かしていくことが求められます。
神戸港については、さまざまな記念事業と合わせて、30年後のビジョンを策定し、着実に、港勢の発展を期していきます。
昨年は、長年待ち望まれていた大阪湾岸道路西伸部の着工が決まり、年末には有料道路事業の導入も実現しました。
昨年2月に開港10年を迎えた神戸空港については、運営権譲渡の手続きを着実に進め、関西全体の発展に貢献できるよう、取り組んでいきます。

開港以来、神戸には海外からさまざまな産品、風習、文化が入り、進取の気風に富んだ市民性を育んできました。
神戸市政は、神戸のこれまでの歴史を大切にしながら、進取の気風を受け継ぎ、積極果敢に未知の世界に挑戦していきます。


2016年12月31日
から 久元喜造

児童虐待対応の第一線

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大晦日。
今年、大きな社会問題になった児童虐待について記し、締めくくりたいと思います。
12月24日の朝日新聞天声人語は、こんな文章で始まっていました。
「子どもへの虐待事件が起きるたび、児童相談所の対応が問われる。なぜ助けられなかったのかと。しかし、日々の相談所の活動によって多くの子どもたちが危険な状況から逃れていることはあまり注目されない」

朝日新聞には、「児相の現場から」という連載が掲載されていました。
はじめから行政を批判するのではなく、ありのままの現実に目を向けようという報道姿勢に敬意を表します。

児童虐待の現場は、困難を極めます。
私も、こども家庭センター(神戸市の児童相談所)のほか、区役所、社会福祉協議会などの職員のみなさんから、できる限り話を聞くようにしています。
児童福祉司、保健師、保育士をはじめ、さまざまな職種のみなさんが連携して、子どもの命を救おうと、必死の対応をしてくれていることに頭が下がります。
もちろん、個々のケースを後から見れば、もっとベストの対応はあり得たということはあるかもしれませんが、現場のみなさんは、ぎりぎりのところで奮闘してくれています。

しばしば、虐待に走る親、その同居者、恋人は、社会から追い詰められた被害者だという見方に立った記事も目にします。
確かに、社会に背を向け、孤独のうちに追い詰められて虐待につながるケースもあります。
しかし、本当にこれが人間のするのことなのか、と言葉を失うケースがあることも事実です。

きわめて困難な問題ですが、新しい年も関係機関と連携しながら、組織一丸となって児童虐待の根絶に向け取り組んでいきます。


2016年12月29日
から 久元喜造

ノエスタ ハイブリッド芝の実験

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ノエビアスタジアム神戸。
ヴィッセル神戸、INAC神戸レオネッサ、神戸製鋼コベルコスティーラーズなど神戸を代表するトップチームのプレーが行われる、大事なスタジアムです。

とくに神経を使うのがフィールドに敷かれた天然芝です。
多くの技術者の力を得て、日々丹念に整備しているのですが、天然芝が健全に育つためには、適度な日照や風通しが必要です。
人には優しい最新鋭の屋根が、芝の成長には大きな影響をもたらし、開設以来、芝との格闘が繰り広げられてきました。
昨年は状態がとくに夏に悪化したため、今年は、天然芝の育成・確保のための特別の予算を計上し、6月には「夏芝」に、9月には「冬芝」に張り替える作業を実施いたしました。

しかし、現在の方式では張り替え作業時にスタジアムが使用できなくなり、毎年多額のコストを要するという問題があります。
そこで、次のステージとして、欧州で使われている「ハイブリッド芝」の導入に向けた実証実験を開始しました。

「ハイブリッド芝」とは、天然芝のフィールドにきめ細かな間隔で人工繊維を埋め込み、天然芝の根を絡ませて芝生の強靭化を図るものです。
これに合わせて、照度不足の解消のために照明装置による照射を行い、さらに、地中に埋設された配管により温水や冷水を通して地中の温度を操作する「地温コントロールシステム」を採用します。

少しでも良好なピッチコンディションを実現するため、来年にかけて「ハイブリッド芝」の実験を続行し、本格導入につなげていきたいと考えています。