久元 喜造ブログ

2014年4月10日
から 久元喜造

パリの新女性市長

去る4月5日、パリ市議会は、パリ市の新しい市長に、与党社会党のアンヌ・イダルゴ氏を選出しました。
イダルゴ氏は、54歳、パリ市で初の、素敵な女性市長さんですね。
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フランスの自治体の選挙制度、また、パリ市長の選出方法も、我が国とは全く異なっていますので、簡単に紹介したいと思います。

まず、議会議員の選出方法です。
パリの有権者は、20ある区で、政党の候補者名簿に投票します。この名簿には、各区の議席数と同数の候補者が、順位を振られて記載されています。有権者は、名簿を選ぶのであり、個々の議員を選ぶのではありません。
この投票で過半数の得票を獲得した名簿には、各区の議席の過半数を割り当てられ、残り半数の議席は、有効投票数の5%以上を獲得した名簿に比例配分されます。
過半数を獲得した名簿がなかった場合は、2回目の投票が行われます。原則として、1回目の有効投票数の10%以上を獲得した名簿に対して投票が行われ、相対的に一番多数を得た名簿に議席数の半分が与えられ、残りの議席は、1回目と同様に比例配分されます。

パリには区議会のほかに市議会がありますが、各名簿の当選者の上位3分の1の区議会議員がパリ市議会の議員を兼ね、残り3分の2は、各区議会の専任の区議会議員となります。
パリ市長は、パリ市議会の選挙で選出されますが、通常は、過半数を獲得した名簿第1順位の市議会議員が選ばれます。

我が国の地方自治体は、住民が直接選挙する議員から構成される議会と、やはり住民が直接選挙する知事、市町村長の二元代表制がとられていますが、もうひとつの特徴は、有権者は、議会の議員も、知事、市町村長も、投票用紙に個人の名前を書くことです。
これに対し、フランスでは、有権者は、政党が作成する名簿を選びます。
議会が、議会議員の選挙結果に基づき、市長を選ぶことと、政党の存在が明確に制度に位置づけられ、大きな役割を果たしていることが、フランスの制度の特徴となっています。


2014年4月8日
から 久元喜造

『たちばな』の「たこ焼き」は、「明石焼き」か?

三宮サンタープラザ地下の『たちばな』。
ときどき、昼休みにお邪魔しています。
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この『たちばな』のルーツが、新開地にあるとすれば、私は、昭和30年代、物心ついたとき、新開地の路地裏で、『たちばな』の たこ焼き を食べていました。
新開地の『たちばな』は、その後、閉店になりましたが、少なくとも数年前には、まだ看板など残っていましたし、新開地本通りにあるアーケードには、今でも、その名前を見ることができます。
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三宮の『たちばな』の味は、半世紀以上前とまったく変わっていません。まず、急須っぽい器に入っただし汁と三つ葉が出され、しばらくすると、赤い板の上に整然と並べられた、「たこ焼き」が運ばれてきます。
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『たちばな』は、「明石焼き」とは名乗っていませんが、それは、巷間あふれている『明石焼き』の一種と思われます。
実は、『明石焼き』の存在を知ったのは、新開地で『たちばな』の「たこ焼き」を食べていた頃よりずっと後、東京に出てからのことでした。
私は、東京の見知らぬ店で、「明石焼き」を初めて食し、「これは、『たちばな』の「たこ焼き」の偽物か!」と思ったのでした。

『たちばな』の「たこ焼き」と「明石焼き」とはどのような関係にあるのでしょうか?
ずいぶん昔から、「明石焼き」が存在し、それを、『たちばな』の店主は「たこ焼き」として始め、当時の神戸っ子は、ちょっと毛色の違う「たこ焼き」として楽しんだのでしょうか。
それとも、『たちばな』をはじめ、このタイプの「たこ焼き」が先にあり、それが、後年、「明石焼き」と名付けられたのでしょうか。

ときどき、『たちばな』にお邪魔して、「たこ焼き」をいただきながら、いつもこの疑問がもたげてきてしまうのです。
でも、正直言ってしまうと、腹が立つのですよ。
半世紀以上も前に、神戸っ子が「たこ焼き」として楽しんでいた料理を、どうして「明石焼き」と呼ばなければならないのかと。

 


2014年4月5日
から 久元喜造

「海文堂”復活”検討」について

きょう、4月5日(土)の神戸新聞朝刊1面に、「海文堂”復活”神戸市が検討」という記事が掲載されていました。
昨年9月、100年近い歴史に幕を下ろした神戸・元町商店街の「海文堂書店」の復活に向け、神戸市が検討を始めたことが分かった、という内容です。

まだ、本格的な検討をしているわけではありません。
海文堂の閉店によって、元町商店街には書店がなくなってしまったことを嘆く声はよく耳にするところで、「行政として対応するは適当か、その場合に、何か方策はないか」、といった議論を庁内でしている段階です。

書店が次々に消えている理由は、いくつか挙げられると思いますが、最大の要因はネット社会だと思います。
先日も、大学生の4割が読書する習慣がない、という調査結果が報道されていましたが、本に代わって大学生がいつも手にしているのはスマホです。
いうまでもないことですが、アマゾンなど書籍のネット販売が著しく拡大してきたことが、書店での書籍販売の減少をもたらしています。
ネット販売は私もときどき利用しますが、とにかく便利です。
また、電子書籍の影響もあることでしょう。

このような背景を考えれば、街の中から書店が消えていくのは、社会の変化に伴う必然であり、消費者の合理的選択の結果だという見方もできます。そうであれば、行政がこのような消費者行動やマーケットの動向に逆行するような対応をするのは、適当ではないし、無理があるという考え方もあることでしょう。
庁内には慎重論もありますし、実現に向けての課題もたくさんあります。
市民レベルでの議論を期待したいと思います。

もし、前を向いて検討を進める場合にも、「神戸市営書店」のような発想ではなく、活字を愛する市民が書店を支える仕組みをどのようにして構築できるか、という視点を大切にしたいと思います。


2014年4月4日
から 久元喜造

国家公務員に対する国民感情

新年度に入り、霞ヶ関は、予算非関連の法案の提出、審議の季節を迎えます。
法案を担当しているセクションでは、昼、夜はありません。
この時期に限らず、霞ヶ関の勤務は過酷です。不夜城の様相を呈します。

もうずいぶん前のことですが、ある全国紙が、霞ヶ関の若手課長補佐の日々を取り上げてくださったことがありました。
毎月、100時間以上の残業の日々が続き、生まれたばかりの子供と過ごすこともできない。
すやすや眠っている我が子の顔を一瞬、眺め、仮眠をとり、また出勤する毎日・・・
そんな後輩の日々が記された記事を読んで、私たちの苦労を少しでも知っていただけるのは、とてもありがたく感じました。

それからしばらくして、その全国紙の編集局幹部と話をする機会があり、あの記事に話題が及びました。
幹部はおっしゃいました。
「久元さんは、あの記事を読んだ読者が、役人に同情してくれると思われたかもしれませんが、あの記事に好意的な反応はほとんどありませんでした。大半は、厳しい記事批判、役人批判でした」
「『どうして、役人にあんなに甘い記事を書くんだ!』
『死ぬまで働かせればいいではないか!』
『○○新聞は、国民と役人のどっちの味方なんだ!』 ・・・・
こんな反応がほとんどでした。私どもも意外だったのですが・・・」

確かに官僚は、もうかれこれ20年くらい、さまざまな理由から、国民の反発を買ってきました。しかし、現役の職員は、不祥事とは無縁で、必死に仕事をしています。
それだけに、そのような反応は、とても悲しく、残念でした。

「これが、官僚に対する現実の国民感情なのです。私たちは、そんな国民感情を前提にして、紙面をつくっていかなければならないのですよ」
某全国紙の幹部は、複雑な笑みを浮かべ、そう呟かれました。


2014年4月1日
から 久元喜造

組織に帰属するということ。

きょうは、神戸市役所に採用された、351人の新人のみなさんの入庁式がありました。
凛とした雰囲気が漂います。
たくさんの可能性の中で、神戸市役所で働くことを決断した新人のみなさんと向き合うのは、私自身、緊張する瞬間です。

私は「組織に帰属して社会人としての人生を歩むことを決断されたみなさん」に、「私たちの組織を、覚めた目で客観視するのではなく、自分のものとして、向き合っていただく」ことを求めました。
なぜなら、「組織に帰属して生きていく人間」は、組織によって生かされているからです。
組織が素晴らしければ、みんなが自己実現を図ることができます。
逆に、組織が堕落し、疲弊していれば、その組織の人間には、災厄が降りかかります。
新人のみなさんも、私たちの組織のありように着目し、不断に、組織の改革に取り組んでくれるよう、呼びかけました。

もちろん、組織に帰属して生きていくことは、組織に自らのすべてをゆだねることを意味するわけではありません。
組織の側が、組織の構成員に、画一的な行動様式や価値観の共有を求めるベきでもありません。

私は、新しく仲間になる新人のみなさんに、周囲に迎合することなく、自分の個性、価値観、想いを大切にしてほしい、と呼びかけました。
画一的な価値観で染め上げられた組織は、一見、統率がとれているように見えて、実は、弱いものです。

「ひとりひとりの音色を大切にし、異なる音色が響き合って、ハーモニーを奏でるようになればうれしいですね」
自分なりに、新人のみなさんへの期待を述べました。

 


2014年3月30日
から 久元喜造

INAC神戸開幕戦

きょう、ノエスタで、INAC神戸の開幕戦が行われました。
リーグ4連覇を狙う、INAC神戸の応援に駆けつけました。
恥ずかしながら、始球式をさせていただきました。
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その後、記念撮影。
ユニフォーム、結構、似合っていると、自己満足です。
子供たちは、元気いっぱいに駆け抜けていきました。
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試合開始前に、神戸市会INAC神戸を応援する会の会長、平井真千子議員とツーショット。
平井真千子先生からは、いつも、元気をいただいています。

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観客席に座ると、前列に、同じ高校の某先輩がおられ、
「始球式、見たけど、下手やなあ。もっと、上手に蹴らんとあかんわ」
と、冷やかされ、さっそく、生ビールを注文。ちびちび飲りながら観戦しました。

前半は、0対0でしたが、後半、先制されたものの、すぐに、FW高瀬さんが強烈なシュートを叩き込み、同点としたので、まずは一安心。
キャプテンの高瀬愛美さんは、先日のパーティーでも本当に素晴らしい挨拶をされました。知力、気力、人間力も備えた、素晴らしい選手です。
結果的には、残念ながら、黒星発進となりましたが、まだ始まったばかりです。
気分一新、頑張りましょう。

 


2014年3月30日
から 久元喜造

養父市の特区指定を喜ぶ。

3月28日、政府から国家戦略特区の地域指定があり、神戸・ポートアイランドの医療産業都市を含む「関西圏」が指定されました。これまでご支援をいただきましたみなさまに感謝申し上げます。
また、兵庫県の養父市が農業特区に指定されました。
3月8日のブログ でも触れましたが、養父市の広瀬栄市長とは、ヴィッセル神戸の開幕戦でお会いし、いろいろ意見交換をさせていただきました。
広瀬市長をはじめ養父市のみなさまに、お慶びを申し上げたいと思います。

養父市が考えておられる特区指定の効果は、農業委員会から市長への権限移譲が柱になるようです。
規制緩和は、手段であって目的ではありませんが、養父市の特区指定が大きく報道され、全国から注目されていることから、養父市への新たな企業の参入など、大いに期待されるところです。
耕作放棄地の再生と農業生産の拡大に向けて、養父市が特区指定を契機として、大きな成果を出して行かれることをご期待申し上げたいと思います。

神戸は、北区や西区に広大な農地を擁する農業都市ですが、耕作放棄地が目立つようになっています。
新年度には、新たに、市民・職員協働プロジェクトチームの仕組みを設けることとしており、耕作放棄地対策を含む農業の活性化に取り組むチームも設置する予定です。
養父市の動きにも注目しながら、神戸市としても農業の活性化にしっかりと取り組んでいきたいと思います。


2014年3月28日
から 久元喜造

真昼のフクロウは教室を横切る。

もうすぐ4月です。生き物たちが動き出す季節になり、山田中学校 時代の想い出をひとつ。

木造校舎の2階の教室で、授業を受けていたときのことです。
窓際に座っていた私は、校舎近くのポプラの葉陰に、何かがいるのに気づきました。よく見ると、それは、枝に止まっているフクロウでした。
フクロウを見るのは初めてだったので、授業には身が入らず、フクロウの方ばかりを見ていました。
フクロウは、ときどき目をつぶったり、じっと前を見ているようでもあり、私の方を見ているようでもありました。
次の日も、そして、その次の日も、フクロウは、同じ枝にじっと止まっていました。
私は、フクロウが来てくれるのがとてもうれしく、このことは誰にも話しませんでした。

どうして、あんなことが起きたのかは、今でもよくわかりません。
誰かが、フクロウに気づいて、下から石でも投げたのか、それとも、フクロウと私の目が合った瞬間だったのか ― 突然、不思議が音がして、大きな物体が教室を横切り、反対の窓から消えていったのです。
一瞬の出来事でした。

もちろん教室はどよめきましたが、ほとんどの同級生は、何が起きたのか、わからなかったと思います。授業をしていた先生は、板書をしていて、「どないしたんや」と後ろを振り返っただけでした。
でも、私には、はっきりと見えたのです。
羽を大きく動かしながら、自分のすぐ目の前を飛んでいくフクロウの姿が。

私はあれ以来、野生のフクロウを見たことがありません。
古木が稀少になっている中、生きて行くのはたいへんかもしれませんが、丹生山系のどこかで、ひっそりと棲息していてほしいと願っています。


2014年3月26日
から 久元喜造

組織には多様な人材が必要。

組織ではどんな人物が好かれるでしょうか。
ノリがよく、軽やかに笑いを振りまき、周りとさわやかにコミュニケーションができるような人物。そして、当意即妙のやりとりができ、悪意に満ちた詰問にも、さりげなくお得意の笑顔でかわすことができれば、最高の評価を得ることができることでしょう。
そして、テキパキと、スピーディーに仕事が出来そうなタイプが好まれます。

自治体でも、そのような人物像を理想とし、そんなタイプの新人を採用しようとする傾向があります。それを頭から否定するものではありません。
しかし、採用に当たって、ある種の特定の人物タイプを対象とし、そのようなタイプ以外の人物を排除する傾向をはらむとするなら、それは問題があると思います。

自治体では、明るいノリで、さわやかに、テキパキと次々に物事を処理することができる職場ばかりではありません。
住民の皆さんの中には、自分が求めるものを、上手に説明できない方もたくさんおられます。辛抱強く、耳を傾ける能力が必要とされる場合も少なくはありません。
また、研究現場などにおいても、短期間に目に見える成果を出すことが求められる傾向が強まっていますが、じっくりと、粘り強く課題を研究し、解決していく能力も大切です。そのような能力を軽んじる傾向は、長い目でその組織を劣化させていくことでしょう。

神戸市のような規模の大きな自治体では、やはり、多様な人材が求められます。志が高く、公務員に求められる知識と問題処理能力を備えた多様な人材を、どのようにして採用していくのか、自治体の知恵と見識が問われるところです。


2014年3月24日
から 久元喜造

国営明石海峡公園・春の息吹

きょうは、うららかな初春の陽射しに誘われ、北区藍那の国営明石海峡公園にお邪魔しました。
藍那の里のかなりのエリアが、公園に含まれています。
人工的な公園ではなく、里山の再生が公園整備のコンセプトになっており、園内に入ると、懐かしい里山の風景が広がります。
この地域は、昭和40年代に耕作が放棄された田畑が多く、園内では、その再生に向けた取り組みが、丁寧に行われていました。
ご案内くださった、田畑正敏所長さんは、公園の整備のみならず、生態系、植生、農業、民間習俗にも深い造詣をお持ちの方でした。

園内には、たくさんのため池が残され、ひとつひとつ、保存の手立てが講じられています。
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コクチバス、ブルーギルなど外来有害魚の駆除も含め、生態系の維持にも努力が払われていました。

残念ながら、園内にも、イノシシ、アライグマなどの有害鳥獣が繁殖しており、被害が目立っているとのことでした。
兵庫県、神戸市との連携のもとに、駆除も進みつつあるようで、最近、見かけるようになったというニホンジカへの対応も含め、地道が努力が求められます。

昔、前をよく前を通った、相談ガ辻の茅葺き民家の1軒が、園内に移築されていました。
所有者の方のご理解のもとに、新たな生命が吹き込まれようとしています。
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公園のオープンは、平成28年6月とのこと。
さまざまなNPOのみなさんとの協力関係も進んでいるようで、 開園に向けた努力が進められている姿を、目の当たりにすることができました。
ありがとうございました。