久元 喜造ブログ

真昼のフクロウは教室を横切る。

もうすぐ4月です。生き物たちが動き出す季節になり、山田中学校 時代の想い出をひとつ。

木造校舎の2階の教室で、授業を受けていたときのことです。
窓際に座っていた私は、校舎近くのポプラの葉陰に、何かがいるのに気づきました。よく見ると、それは、枝に止まっているフクロウでした。
フクロウを見るのは初めてだったので、授業には身が入らず、フクロウの方ばかりを見ていました。
フクロウは、ときどき目をつぶったり、じっと前を見ているようでもあり、私の方を見ているようでもありました。
次の日も、そして、その次の日も、フクロウは、同じ枝にじっと止まっていました。
私は、フクロウが来てくれるのがとてもうれしく、このことは誰にも話しませんでした。

どうして、あんなことが起きたのかは、今でもよくわかりません。
誰かが、フクロウに気づいて、下から石でも投げたのか、それとも、フクロウと私の目が合った瞬間だったのか ― 突然、不思議が音がして、大きな物体が教室を横切り、反対の窓から消えていったのです。
一瞬の出来事でした。

もちろん教室はどよめきましたが、ほとんどの同級生は、何が起きたのか、わからなかったと思います。授業をしていた先生は、板書をしていて、「どないしたんや」と後ろを振り返っただけでした。
でも、私には、はっきりと見えたのです。
羽を大きく動かしながら、自分のすぐ目の前を飛んでいくフクロウの姿が。

私はあれ以来、野生のフクロウを見たことがありません。
古木が稀少になっている中、生きて行くのはたいへんかもしれませんが、丹生山系のどこかで、ひっそりと棲息していてほしいと願っています。