久元 喜造ブログ

2016年3月29日
から 久元喜造

『ふたば学舎』への名称変更

昨日、市会に提出した平成28年度予算と関連議案などの議決をいただきました。
それらの中に、旧二葉小学校の「神戸市立地域人材支援センター」(神戸市長田区二葉町)の名称を「ふたば学舎」に変更する条例改正案があります。
hutaba

この施設には何度もお邪魔しましたが、地域のみなさんからは、
「施設ができるとき、昔からなじんだ『ふたば』という文字を入れてほしいと何度も市役所にお願いしました」
「しかし、全市的な施設なので特定の地域の名前を入れるわけにはいかない、との理由でかないませんでした」
というお話をお伺いしてきました。
その都度、「それはおかしいですね」と申し上げてきたのが影響したのかもしれませんが、昨年暮れ、自治会、婦人会、学校関係者などから構成される旧二葉小学校活用委員会から「ふたば学び舎」に変更してほしいという要望をいただきました。

この要望を踏まえ、今回条例改正案を提出することにした理由のひとつは、「地域人材支援センター」と呼ぶ方がほとんどおられないということでした。
たいていの方は、「昔の二葉小」とか単に「ふたば」などと呼んでおられました。
呼んでもらえないような名前は、施設の名称としてそもそも不適当です。

また、全市的施設だから特定の地域の名称を使ってはいけない、というのもおかしな話です。
そんなことを言うなら、王子動物園や北野工房も不適当な名称なのでしょうか。
訳のわからぬ屁理屈で地域の声を封殺するような態度は、許されません。
それに地域性の尊重は、地方自治の大事な要素です。


2016年3月27日
から 久元喜造

山内マリコ『東京23話』

160220
山内マリコさん (2014年7月4日2015年11月16日 のブログ)の近著が目に入ったので購入していましたが、少し時間ができたので読みました。

読み始めましたが、正直つまらなかったです。
長く働いていた千代田区、飲みに行くのが多かった中央区と港区、そして、学生時代を含めて長く住んだ新宿区と、自分なりに思い入れがあったせいかもしれないのですが、底が浅い感じがして、途中で読むのをやめようかと思いました。

ところが、台東区で雰囲気ががらっと変わります。
登場するのは、浅草六区。
かつての日本随一の繁華街。
「役人たちが奥山にあったいかがわしい見世物小屋なんかを全部六区に押し込めたもんで、たちまち大衆芸能のメッカになった」。
当時の猥雑な活気が生き生きと蘇ってきます。
永井荷風の『断腸亭日常』と重ね合わせながら、浅草六区に想いを馳せました。

続いて、墨田区に登場するのは、浮世絵師、葛飾北斎歌川国芳です。
北斎の娘、お栄を交えた軽妙な会話は、二人の天才の想いを作者なりに組み立て、優れた芸術論に仕上がっていました。
国芳は自答します。
「目に映るもの全部を—目に見えないものだって、思いのままに」

たまたま、先日、「神戸ゆかりの美術館」で猫を描いた絵ばかりを集めた「猫まみれ展」を見たのですが、最も印象に残ったのが、歌川国芳の浮世絵でした。
それらは、単に猫を描写したというよりも、猫を題材にして、実に自由に想像力を飛翔させているように感じられました。

残りの各区の話も実に面白く、あっという間に読み終えました。


2016年3月25日
から 久元喜造

「都に局、道府県に部を置く」

160324
多くの自治体は、年度末になると組織の再編を行いますが、毎年この時期に思い起こされるのが、かつて携わった地方自治法の改正です。

市町村の組織に対する制度上の規制は、戦前からほとんどなかったのですが、都道府県の組織には法律で厳しい制約が課されていました。
昔は、団体の規模に応じて、東京都の局、道府県の部の名前まで法定されていました。

平成15年1月、私は地方自治制度を担当する総務省自治行政局行政課長になりましたが、このとき、最終的な制約の緩和が予定されていて、すぐにこの改正を担当することになりました。
用意されていた案は、
「都に局、道府県に部を置く」
でした。
私は、都と道府県で組織の名称を異にする必要性に疑問を感じながらも、着任したばかりだったので、まあこれでいいいか、と思っていたのですが、たまたま、当時読んでいた永井荷風の『断腸亭日乗』の中に、次の一節を見つけたのです。

「東京市教育局長贓吏〇〇来る」

東京都に局があるのは、東京市が局を置いていた名残ではないか。
それだけの理由であれば、同じ広域自治体である都と道府県の組織の名称に、法律で差を設ける理由はありません。
私は、局や部といった名称で縛らず、都道府県も市町村もすべて自由に「内部組織を設けることができる」という案を用意し、この案のとおり法律改正が行われました。

これで都道府県の組織編成は完全に自由になりました。
この規定を使い、部を本部や局に変更する県も出てきています。

大事なことは、最も合理的でわかりやすい組織を編成し、質の高い行政サービスを展開できるようにするところにあることは言うまでもありません。


2016年3月22日
から 久元喜造

トアウェスト「息づく進取の気質」

トアウェストは、トアロードの西のエリアで、細い路地が入り組み、小粋な雑貨店やバー、カフェなどが集まっています。
少し前のことになりますが、3月16日の神戸新聞に、トアウェストのシェアハウス「Z ROOMS」が取り上げられていました。
160319
路地からさらに裏道に入った、古めかしいビルの4階にあるそうです。
2階の壁をぶち抜いた30平方メートルほどのコモン(共有)スペースです。
記事によれば、「暮らしているのは、性別、国籍、年齢、職業、全てごちゃまぜの10人余り」。

シェアハウスを運営されているのは、設計やデザイン、施工を手掛ける集団「TEAMクラプトン」です。
自らを「変態」と称する同集団代表の山口晶さんは、
「東京だと変態は埋もれる。大阪や京都はちょっと空気が違う。でも神戸では連帯ができる。ちょうどいい規模と自由さが魅力です」
と、神戸の魅力を語られます。

「息づく 進取の気質」と見出しがつけられたこの記事は、
「街に重なっていく新しい色、懐かしい色。山口さんらの拠点・トアウェストも、二つの色彩が交錯していた」
と結ばれていました。

都心の再生を考えるとき、最先端の機能を備えた商業ビルの新設は必要です。
同時に、比較的古い建物群のあるエリアが、新しいビジネスを興していく場所となり、都市文化を奥行きの深いものにしていくという視点も大切にすべきだと思います。
トアウェスト、そして乙仲通りなどのエリアから、神戸を元気にする新しい動きが生まれていくことを期待したいと思います。


2016年3月19日
から 久元喜造

ラグビーワールドカップ2019準備委員会

ラグビーワールドカップは、2019年秋に初めて日本で開催され、全国12都市で試合が行われます。
神戸では、ノエビアスタジアムが会場となります。

3年半後の大会開催に向け、各方面と調整を進めてきましたが、神戸全体でスクラムを組んで準備を加速させるため、「ラグビーワールドカップ2019神戸開催準備委員会」を設置し、昨日第1回の委員会を開催しました。
160318
委員会は、神戸商工会議所、兵庫県ラグビーフットボール協会をはじめ、スポーツ、報道、地域、防犯、医療、観光分野などの分野の方々から構成されています。
ラグビーワールドカップの概要と2019日本大会について説明があり、意見交換を行ったほか、基調講演として、過去5回のラグビーワールドカップで現地コメンテーターを務め、ラグビージャーナリストとしても著名な村上晃一さんに「ラグビーワールドカップの価値と魅力について」と題してお話いただきました。
海外からのラグビーファンは、2,3週間滞在するので、経済効果も大きいというお話がありました。

2019年に向けた、いわばキックオフになりました。
新年度早々に第2回を開催して、確実に開催に向けた準備を進め、2018年にはさらに組織を拡充した推進委員会を設立する予定です。

神戸で試合をされる選手のみなさんには最高の試合環境を、観戦者には最高の感動と興奮を味わっていただけるよう、そして最高のおもてなしをお届けできるよう取り組んでいきます。


2016年3月15日
から 久元喜造

祝鈴高新聞・文部科学大臣賞

すでに報じられているとおり、県立神戸鈴蘭台高校編集部が「高校新聞の甲子園」と言われる「第45回全国高校新聞コンクール」で最高賞の文部科学大臣賞に輝きました。
160310

2月26日号を読みましたが、一面には、卒業式の記事が掲載され、2面には、神戸市が進めている鈴蘭台駅前再開発事業の特集が組まれていました。
160310-2
1964年にすでに都市計画決定されていたこと、1995年の阪神・淡路大震災で事業が中断されたこと、2011年に改めて都市計画決定され、着工に至ったことなどの経緯がまとめられています。
市の住宅都市局市街地整備部へのインタビューのほか、再開発に関係するお店や住民にみなさんの意見も掲載されていました。
「20年前にこの話が出ていたら鈴蘭台は盛んになってさびれていなかったのにね」というコメントもありました。
駅前再開発についての鈴高生のアンケートも行われ、87.1%のみなさんがメリットを感じてくれているようでした。
同時に、再開発に関する批判も含め、さまざまな意見も掲載されていました。
丹念な取材が窺えます。

詳しい平面図も掲載されていましたが、この中に記されていなかったのが、鈴蘭台交番です。
今の鈴蘭台交番は、駅から少し離れており、住民のみなさんからは以前より駅前に移転させてほしいという要望をいただいてきました。
昨年暮れに井戸知事に直接お願いしたところ、神戸市が用意した用地に移転することで、駅前移転が実現することになりました。

鈴高新聞編集部のみなさんには、これからも、学校のこと、地域のこと、神戸のことなど素晴らしい紙面をつくってほしいと願っています。


2016年3月11日
から 久元喜造

教育に関する調査研究の含意

1月策定した神戸市教育大綱は、学力の向上など7つの基本方針を定めています。
その中に「教育に関する科学的な調査研究」があります。

言うまでもなく教育は、一人一人の子供、すなわち人間と真正面から向き合う営みです。
人間とは何なのか、という根源的な問いかけから逃れることはできません。
「子供なんて所詮こんなもの」という思い込みと、「人間の心の中などわかるはずがない」という諦観との間を揺れ動いてはいけないと思います。
人間という存在は汲みつくせないものであることを前提にして、そこに近づこうとする営為が教育には求められるのでないでしょうか。

子供の心の中を理解しようとする中で、 実務に携わる私たちは、哲学的、宗教的なアプローチではなく、科学的な知見に基づく、実証的な調査研究を重視すべきだと思います。
とりわけ、急速に進展し、日々変容しているネット社会は、子供の心理にどのような影響を与えているのか、また、動機が不可解な少年犯罪が続発する背後には何があるのかといったテーマについては、不断の分析が必要です。
幸い、これらについては膨大な研究の蓄積があり、日々進化しています。
それらの成果を調査分析し、教育現場に活かしていく努力が求められているように感じます。

それらの調査研究結果が絶対に正しいという保証はありません。
だからこそ、大綱では、「それらの成果を実際の教育現場にどのように反映させていくかについては、専門家の意見を聴取しつつ、教育委員会において検討を行っていく」としています。

あるべき教育の姿を求めて、模索を続けます。


2016年3月7日
から 久元喜造

大原瞠『公務員試験のカラクリ』

ohara
就活の記事があふれていますが、この本はあまりにも面白くて、あっという間に読んでしまいました。
著書の肩書きは、「公務員試験評論家」。
こんな職業があるのですね。

著者は、この分野のウォッチャーだけあって、地方公務員が「都道府県庁や市役所という地方自治体単位で採用され、特に事務職採用者の人事異動の範囲はその自治体が行うほとんどすべての行政に及ぶ」ことを正しく理解しておられます。
そして、幅広い範囲で異動させられることを指摘した上で、こう述べます。

「そもそも公務員の仕事のなかには、「ときにはやりがいがないかもしれないけれども、どこかで誰かが、まじめにやらないといけない仕事」が相当含まれている。そして、辞令一本で、やれと言われた仕事にはNOとは言えず、淡々とこなすしかない」

確かに、内容が異なるさまざまな部署に脈絡なく異動させるような人事をしていると、専門性は身につかず、優れた人材は育たないでしょう。
優れた人材を採用しようとするなら、採用する側に、人材育成に関する確固たる方針がなければなりません。
きれいなパンフレットや見栄えのよいウェブサイトをつくることは二の次です。

著者は、「やりがいのある仕事」と、そうでない仕事が初めから截然と分かれて存在していることを前提にされているようですが、そのような状況があるとするなら、改めなければなりません。
一見やりがいがないように見えるかもしれない仕事に、いかにやりがいを持って取り組めるようにするかについて、衆知を結集することが必要です。


2016年3月4日
から 久元喜造

さんちか50周年リニューアルオープン

160303-1
さんちか
(三宮地下街)が開業50周年を迎え、リニューアルが進められてきました。
きょうオープニングセレモニーが開催されました。

さんちかがオープンした時、私は小学生でしたが、三宮の地下に、きれいで賑やかな新しい街が出現したことに驚いたものでした。
今回のリニューアルでは、明るい白を基調としたデザインウォールと公共通路が設けられ、落ち着いた色彩のファサードが展開されています。
デザインコンセプトは、WAVE・・・波
公共通路の耐震性が向上しているほか、有馬温泉の案内所も設置されました。
160303-2

神戸の玄関、三宮の今後を考えるとき、商業・業務機能の高度化を図っていくことが大切です。
たくさんのみなさんに訪れていただき、ショッピング、グルメ、アートシーンを楽しんでいただきたいと願います。
駅に近接して高層タワーマンションが林立するような街を、神戸市民は願っていないと思います。
駅の近傍は、商業・業務機能を重視し、駅から一定程度離れた周辺エリアにおいて、都心居住へのニーズとの調和を図っていくことが必要です。

同時に、大阪をはじめ周辺都市に通勤・通学している神戸市民の利便性を高めていくことも重要です。
神戸を大阪のベッドタウンにしていくことは、神戸の衰退につながります。
商業・業務機能と居住機能とのバランスをどのようにとっていくのか、市民的議論の深まりを期待したいと思います。


2016年3月2日
から 久元喜造

外国語を話せる職員が頑張っています。

英語による政策討議(日本語禁止)を市役所内でときどき開催していますが、昨年9月7日の会議では、神戸に引っ越して来られた外国人市民に行政がどのように対応しているのかについて議論しました。
参加してくれた職員は、言いっぱなしに終わらず、15の具体的な提言にとりまとめてくれました。
それらの中には、多言語によるホームページの充実、医療通訳の活用など多少時間がかかるものもありますが、すでに動き出しているものもあります。

垂水区役所で始まった、多言語対応可能な職員によるサービスは、その一例です。
まず、区役所で対応可能な職員(通称:タープ)の名簿を作成します。
英語対応ができる職員10名、中国語対応可能職員3名、ハングル対応可能職員1名が登録されました。
「自分の業務おいては対応可」「日常会話程度」といった対応レベルも申告します。
タープは、来庁者がすぐにわかるように、専用の名札とバッジを着用します。
terp
また、タープの名簿は区役所内で共有され、外国人住民の方が窓口に来られた時は、担当職員が対応可能なタープに通訳などを依頼します。
通訳業務終了後は、タープは、簡単な報告書をつくって総務課に提出します。
すでにオーストラリア、中国、米国、ネパール、シリア、ウクライナなどの国籍の方にタープによる対応が行われています。

また、垂水区役所では、英語ができる職員が講師になり、昼休みに簡単な英会話を指導する「イングリッシュ・カフェ」も行われています。
職員自身の発案によるこのような取り組みは貴重であり、ほかの区でも取り組んでほしいと期待しています。