久元 喜造ブログ

大原瞠『公務員試験のカラクリ』

ohara
就活の記事があふれていますが、この本はあまりにも面白くて、あっという間に読んでしまいました。
著書の肩書きは、「公務員試験評論家」。
こんな職業があるのですね。

著者は、この分野のウォッチャーだけあって、地方公務員が「都道府県庁や市役所という地方自治体単位で採用され、特に事務職採用者の人事異動の範囲はその自治体が行うほとんどすべての行政に及ぶ」ことを正しく理解しておられます。
そして、幅広い範囲で異動させられることを指摘した上で、こう述べます。

「そもそも公務員の仕事のなかには、「ときにはやりがいがないかもしれないけれども、どこかで誰かが、まじめにやらないといけない仕事」が相当含まれている。そして、辞令一本で、やれと言われた仕事にはNOとは言えず、淡々とこなすしかない」

確かに、内容が異なるさまざまな部署に脈絡なく異動させるような人事をしていると、専門性は身につかず、優れた人材は育たないでしょう。
優れた人材を採用しようとするなら、採用する側に、人材育成に関する確固たる方針がなければなりません。
きれいなパンフレットや見栄えのよいウェブサイトをつくることは二の次です。

著者は、「やりがいのある仕事」と、そうでない仕事が初めから截然と分かれて存在していることを前提にされているようですが、そのような状況があるとするなら、改めなければなりません。
一見やりがいがないように見えるかもしれない仕事に、いかにやりがいを持って取り組めるようにするかについて、衆知を結集することが必要です。