久元 喜造ブログ

2016年4月6日
から 久元喜造

ケネディ大使と故大統領のご著書

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今年初め、キャロライン・ケネディ駐日米国大使と昼食をご一緒させていただいたことがありました。
ケネディ大使は、気品のある、気さくな大使でいらっしゃいました。
1963年、第35代ケネディ大統領がダラスで暗殺されたとき、私は小学校4年生でしたが、繰り返し放映された場面とジャクリーン夫人、キャロライン、ジョン兄妹のお姿が脳裏に焼き付いています

歳月が流れ、大使からは、故ケネディ大統領のご著書を頂戴しました。
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タイトルは「勇気あるある人々」。
ケネディ大統領が上院議員時代に、8人の上院議員の事績、言動を記した本です。
キャロライン大使は、
「父は、熱心に歴史を勉強し、・・伝説的な先達の伝記を読みあさっていた」
と、記しておられます。
最初に取り上げられているのは、ジョン・クインシー・アダムズ。
最近、衆議院の選挙制度改革をめぐる議論でひんぱんに登場する「アダムズ方式」を考案したとされる米国の政治家です。
上院議員を経て第6代大統領をつとめました。

取り上げられている上院議員は、いずれも大多数の支持者とは異なる主張をしたために、厳しい批判、非難、すさまじい攻撃を受け、それでも、それぞれのありようで信念を貫いた政治家です。
是非、読破したいと思いました。

大使からは、サインも頂戴しました。
とても光栄に感じています。
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2016年4月1日
から 久元喜造

新しい仲間を迎えて

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新しい年度に入り、きょうは、神戸市役所でも入庁式がありました。

新しい仲間を迎え、とてもわくわくしています。
社会のために、神戸のために役立ちたい、そして、そのことを通じて、自己実現を図ろうとするみなさんをしっかりと支えたいと思います。
もし仮に、
「神戸市役所は、安定していて、定時に帰れる楽な職場なのだろう」
という理由で選んだとすれば、それは大きな間違いであったことが、すぐにわかることでしょう。

私たちは、いろいろな意味で戦いをしています。
人口減少との、災害の危険との、環境に対する脅威との、公正と正義を阻害するあらゆる要因との戦いです。
新しい仲間のみなさんが神戸市役所という職場を選択されたことは、私たちの戦列に加わる判断をされたことを意味します。

戦いには困難を伴いますが、困難の克服は、決して孤独な営みではありません。
しっかりとチームを組み、新しい仲間たちが孤独感にさいなまれることなく、生き生きと使命を全うしていくことができるよう、最大限のサポートをしていきます。

いたずらに組織に迎合することなく、それぞれの持ち味を大事にしてほしいと思います。
ヴァイオリンにピアノの音が出せないように、自分の音色を変えることはできません。
自分という存在を大切にしてほしいと思います。
ひといろの価値観に染め上げられた、モノクロームの組織は弱いものです。
多彩な人材がそれぞれの音色を響かせ合って、豊かな響きが奏でられるような市役所にしていきたいと、改めて決意します。


2016年3月29日
から 久元喜造

『ふたば学舎』への名称変更

昨日、市会に提出した平成28年度予算と関連議案などの議決をいただきました。
それらの中に、旧二葉小学校の「神戸市立地域人材支援センター」(神戸市長田区二葉町)の名称を「ふたば学舎」に変更する条例改正案があります。
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この施設には何度もお邪魔しましたが、地域のみなさんからは、
「施設ができるとき、昔からなじんだ『ふたば』という文字を入れてほしいと何度も市役所にお願いしました」
「しかし、全市的な施設なので特定の地域の名前を入れるわけにはいかない、との理由でかないませんでした」
というお話をお伺いしてきました。
その都度、「それはおかしいですね」と申し上げてきたのが影響したのかもしれませんが、昨年暮れ、自治会、婦人会、学校関係者などから構成される旧二葉小学校活用委員会から「ふたば学び舎」に変更してほしいという要望をいただきました。

この要望を踏まえ、今回条例改正案を提出することにした理由のひとつは、「地域人材支援センター」と呼ぶ方がほとんどおられないということでした。
たいていの方は、「昔の二葉小」とか単に「ふたば」などと呼んでおられました。
呼んでもらえないような名前は、施設の名称としてそもそも不適当です。

また、全市的施設だから特定の地域の名称を使ってはいけない、というのもおかしな話です。
そんなことを言うなら、王子動物園や北野工房も不適当な名称なのでしょうか。
訳のわからぬ屁理屈で地域の声を封殺するような態度は、許されません。
それに地域性の尊重は、地方自治の大事な要素です。


2016年3月27日
から 久元喜造

山内マリコ『東京23話』

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山内マリコさん (2014年7月4日2015年11月16日 のブログ)の近著が目に入ったので購入していましたが、少し時間ができたので読みました。

読み始めましたが、正直つまらなかったです。
長く働いていた千代田区、飲みに行くのが多かった中央区と港区、そして、学生時代を含めて長く住んだ新宿区と、自分なりに思い入れがあったせいかもしれないのですが、底が浅い感じがして、途中で読むのをやめようかと思いました。

ところが、台東区で雰囲気ががらっと変わります。
登場するのは、浅草六区。
かつての日本随一の繁華街。
「役人たちが奥山にあったいかがわしい見世物小屋なんかを全部六区に押し込めたもんで、たちまち大衆芸能のメッカになった」。
当時の猥雑な活気が生き生きと蘇ってきます。
永井荷風の『断腸亭日常』と重ね合わせながら、浅草六区に想いを馳せました。

続いて、墨田区に登場するのは、浮世絵師、葛飾北斎歌川国芳です。
北斎の娘、お栄を交えた軽妙な会話は、二人の天才の想いを作者なりに組み立て、優れた芸術論に仕上がっていました。
国芳は自答します。
「目に映るもの全部を—目に見えないものだって、思いのままに」

たまたま、先日、「神戸ゆかりの美術館」で猫を描いた絵ばかりを集めた「猫まみれ展」を見たのですが、最も印象に残ったのが、歌川国芳の浮世絵でした。
それらは、単に猫を描写したというよりも、猫を題材にして、実に自由に想像力を飛翔させているように感じられました。

残りの各区の話も実に面白く、あっという間に読み終えました。


2016年3月25日
から 久元喜造

「都に局、道府県に部を置く」

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多くの自治体は、年度末になると組織の再編を行いますが、毎年この時期に思い起こされるのが、かつて携わった地方自治法の改正です。

市町村の組織に対する制度上の規制は、戦前からほとんどなかったのですが、都道府県の組織には法律で厳しい制約が課されていました。
昔は、団体の規模に応じて、東京都の局、道府県の部の名前まで法定されていました。

平成15年1月、私は地方自治制度を担当する総務省自治行政局行政課長になりましたが、このとき、最終的な制約の緩和が予定されていて、すぐにこの改正を担当することになりました。
用意されていた案は、
「都に局、道府県に部を置く」
でした。
私は、都と道府県で組織の名称を異にする必要性に疑問を感じながらも、着任したばかりだったので、まあこれでいいいか、と思っていたのですが、たまたま、当時読んでいた永井荷風の『断腸亭日乗』の中に、次の一節を見つけたのです。

「東京市教育局長贓吏〇〇来る」

東京都に局があるのは、東京市が局を置いていた名残ではないか。
それだけの理由であれば、同じ広域自治体である都と道府県の組織の名称に、法律で差を設ける理由はありません。
私は、局や部といった名称で縛らず、都道府県も市町村もすべて自由に「内部組織を設けることができる」という案を用意し、この案のとおり法律改正が行われました。

これで都道府県の組織編成は完全に自由になりました。
この規定を使い、部を本部や局に変更する県も出てきています。

大事なことは、最も合理的でわかりやすい組織を編成し、質の高い行政サービスを展開できるようにするところにあることは言うまでもありません。


2016年3月22日
から 久元喜造

トアウェスト「息づく進取の気質」

トアウェストは、トアロードの西のエリアで、細い路地が入り組み、小粋な雑貨店やバー、カフェなどが集まっています。
少し前のことになりますが、3月16日の神戸新聞に、トアウェストのシェアハウス「Z ROOMS」が取り上げられていました。
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路地からさらに裏道に入った、古めかしいビルの4階にあるそうです。
2階の壁をぶち抜いた30平方メートルほどのコモン(共有)スペースです。
記事によれば、「暮らしているのは、性別、国籍、年齢、職業、全てごちゃまぜの10人余り」。

シェアハウスを運営されているのは、設計やデザイン、施工を手掛ける集団「TEAMクラプトン」です。
自らを「変態」と称する同集団代表の山口晶さんは、
「東京だと変態は埋もれる。大阪や京都はちょっと空気が違う。でも神戸では連帯ができる。ちょうどいい規模と自由さが魅力です」
と、神戸の魅力を語られます。

「息づく 進取の気質」と見出しがつけられたこの記事は、
「街に重なっていく新しい色、懐かしい色。山口さんらの拠点・トアウェストも、二つの色彩が交錯していた」
と結ばれていました。

都心の再生を考えるとき、最先端の機能を備えた商業ビルの新設は必要です。
同時に、比較的古い建物群のあるエリアが、新しいビジネスを興していく場所となり、都市文化を奥行きの深いものにしていくという視点も大切にすべきだと思います。
トアウェスト、そして乙仲通りなどのエリアから、神戸を元気にする新しい動きが生まれていくことを期待したいと思います。


2016年3月19日
から 久元喜造

ラグビーワールドカップ2019準備委員会

ラグビーワールドカップは、2019年秋に初めて日本で開催され、全国12都市で試合が行われます。
神戸では、ノエビアスタジアムが会場となります。

3年半後の大会開催に向け、各方面と調整を進めてきましたが、神戸全体でスクラムを組んで準備を加速させるため、「ラグビーワールドカップ2019神戸開催準備委員会」を設置し、昨日第1回の委員会を開催しました。
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委員会は、神戸商工会議所、兵庫県ラグビーフットボール協会をはじめ、スポーツ、報道、地域、防犯、医療、観光分野などの分野の方々から構成されています。
ラグビーワールドカップの概要と2019日本大会について説明があり、意見交換を行ったほか、基調講演として、過去5回のラグビーワールドカップで現地コメンテーターを務め、ラグビージャーナリストとしても著名な村上晃一さんに「ラグビーワールドカップの価値と魅力について」と題してお話いただきました。
海外からのラグビーファンは、2,3週間滞在するので、経済効果も大きいというお話がありました。

2019年に向けた、いわばキックオフになりました。
新年度早々に第2回を開催して、確実に開催に向けた準備を進め、2018年にはさらに組織を拡充した推進委員会を設立する予定です。

神戸で試合をされる選手のみなさんには最高の試合環境を、観戦者には最高の感動と興奮を味わっていただけるよう、そして最高のおもてなしをお届けできるよう取り組んでいきます。


2016年3月15日
から 久元喜造

祝鈴高新聞・文部科学大臣賞

すでに報じられているとおり、県立神戸鈴蘭台高校編集部が「高校新聞の甲子園」と言われる「第45回全国高校新聞コンクール」で最高賞の文部科学大臣賞に輝きました。
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2月26日号を読みましたが、一面には、卒業式の記事が掲載され、2面には、神戸市が進めている鈴蘭台駅前再開発事業の特集が組まれていました。
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1964年にすでに都市計画決定されていたこと、1995年の阪神・淡路大震災で事業が中断されたこと、2011年に改めて都市計画決定され、着工に至ったことなどの経緯がまとめられています。
市の住宅都市局市街地整備部へのインタビューのほか、再開発に関係するお店や住民にみなさんの意見も掲載されていました。
「20年前にこの話が出ていたら鈴蘭台は盛んになってさびれていなかったのにね」というコメントもありました。
駅前再開発についての鈴高生のアンケートも行われ、87.1%のみなさんがメリットを感じてくれているようでした。
同時に、再開発に関する批判も含め、さまざまな意見も掲載されていました。
丹念な取材が窺えます。

詳しい平面図も掲載されていましたが、この中に記されていなかったのが、鈴蘭台交番です。
今の鈴蘭台交番は、駅から少し離れており、住民のみなさんからは以前より駅前に移転させてほしいという要望をいただいてきました。
昨年暮れに井戸知事に直接お願いしたところ、神戸市が用意した用地に移転することで、駅前移転が実現することになりました。

鈴高新聞編集部のみなさんには、これからも、学校のこと、地域のこと、神戸のことなど素晴らしい紙面をつくってほしいと願っています。


2016年3月11日
から 久元喜造

教育に関する調査研究の含意

1月策定した神戸市教育大綱は、学力の向上など7つの基本方針を定めています。
その中に「教育に関する科学的な調査研究」があります。

言うまでもなく教育は、一人一人の子供、すなわち人間と真正面から向き合う営みです。
人間とは何なのか、という根源的な問いかけから逃れることはできません。
「子供なんて所詮こんなもの」という思い込みと、「人間の心の中などわかるはずがない」という諦観との間を揺れ動いてはいけないと思います。
人間という存在は汲みつくせないものであることを前提にして、そこに近づこうとする営為が教育には求められるのでないでしょうか。

子供の心の中を理解しようとする中で、 実務に携わる私たちは、哲学的、宗教的なアプローチではなく、科学的な知見に基づく、実証的な調査研究を重視すべきだと思います。
とりわけ、急速に進展し、日々変容しているネット社会は、子供の心理にどのような影響を与えているのか、また、動機が不可解な少年犯罪が続発する背後には何があるのかといったテーマについては、不断の分析が必要です。
幸い、これらについては膨大な研究の蓄積があり、日々進化しています。
それらの成果を調査分析し、教育現場に活かしていく努力が求められているように感じます。

それらの調査研究結果が絶対に正しいという保証はありません。
だからこそ、大綱では、「それらの成果を実際の教育現場にどのように反映させていくかについては、専門家の意見を聴取しつつ、教育委員会において検討を行っていく」としています。

あるべき教育の姿を求めて、模索を続けます。


2016年3月7日
から 久元喜造

大原瞠『公務員試験のカラクリ』

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就活の記事があふれていますが、この本はあまりにも面白くて、あっという間に読んでしまいました。
著書の肩書きは、「公務員試験評論家」。
こんな職業があるのですね。

著者は、この分野のウォッチャーだけあって、地方公務員が「都道府県庁や市役所という地方自治体単位で採用され、特に事務職採用者の人事異動の範囲はその自治体が行うほとんどすべての行政に及ぶ」ことを正しく理解しておられます。
そして、幅広い範囲で異動させられることを指摘した上で、こう述べます。

「そもそも公務員の仕事のなかには、「ときにはやりがいがないかもしれないけれども、どこかで誰かが、まじめにやらないといけない仕事」が相当含まれている。そして、辞令一本で、やれと言われた仕事にはNOとは言えず、淡々とこなすしかない」

確かに、内容が異なるさまざまな部署に脈絡なく異動させるような人事をしていると、専門性は身につかず、優れた人材は育たないでしょう。
優れた人材を採用しようとするなら、採用する側に、人材育成に関する確固たる方針がなければなりません。
きれいなパンフレットや見栄えのよいウェブサイトをつくることは二の次です。

著者は、「やりがいのある仕事」と、そうでない仕事が初めから截然と分かれて存在していることを前提にされているようですが、そのような状況があるとするなら、改めなければなりません。
一見やりがいがないように見えるかもしれない仕事に、いかにやりがいを持って取り組めるようにするかについて、衆知を結集することが必要です。