地下鉄の延伸の可能性に触れておられる候補予定者がいらっしゃいますので、私の考えを述べたいと思います。
結論から申しますと、神戸市営地下鉄を今の路線からさらに延伸できる可能性は、ゼロだと思います。延伸は不可能です。
実現不可能な地下鉄の延伸を考えるのではなく、もっと現実的な方法で、住民の足を守ることを考えるべきです。
地下鉄の延伸が議論された経緯を振り返ってみましょう。
確かに、1989年(平成元年)、運輸政策審議会の答申において、2005年(平成17年)を目標年次として、西神中央を起点に、着手すべき路線として西明石までが、また、検討すべき路線として、押部谷方面、舞子学園都市、東播磨方面が位置付けられました。
その後、国、県、市において検討が進められましたが、2004年(平成16年)10月に出された近畿地方交通審議会の答申では、鉄道事業をめぐる経営環境の悪化や、国や自治体の厳しい財政状況を踏まえ、既存の鉄道施設の改良による対応が困難な場合に新線の整備を図る、とされ、大幅に後退した内容となりました。
そして、結局、これらの地下鉄延伸計画については、費用対効果、採算性、政策目標との整合性、既存の交通ネットワークなどの観点から総合的な評価が行われた結果、答申には位置づけられませんでした。
このように、地下鉄延伸計画そのものが、バブル爛熟期に構想された計画で、すでに、断念され、放棄された計画だと申し上げても過言ではありません。
これから、早晩、神戸も人口減少時代に入ると見込まれます。また、かつての西神山手線のように、住宅団地・産業団地などの大規模な沿線開発の計画もありません。
海岸線については、また、改めて触れたいと思いますが、乗車人員が計画を大幅に下回り、累積債務が増え続けています。このような中で、地下鉄の延伸を考えることは、財政的に見てもまったく非現実的であり、不可能であると断言できます。
そのような発想自体が、時代遅れとしか言いようがありません。
確かに、かつて運輸政策審議会の答申において触れられた路線沿線の住民のみなさんの中には、なお、地下鉄の延伸に期待する向きもあります。
神出には、地下鉄延伸を訴える看板がありますし、岩岡にも、そのような看板が最近まで掲げられていたと聞きます。
それだけに、客観的に見て不可能な地下鉄の延伸を、今更、可能性があるように取り上げるのは、たいへん、罪深いことではないでしょうか。
西区における住民のみなさんの足の確保は、非現実的な地下鉄延伸という幻想を振りまくのではなく、地下鉄、JR、山陽電鉄と結ぶバス路線の確保、ダイヤの充実により対応することが基本です。また、西区や垂水区は細い坂道が多いという地域特性を踏まえ、小回りがきくコミュニティバスの導入、駅前駐輪場の整備など、現実的な方策が考えられるべきです。
LRTや超小型電気自動車など、次世代型の新しい交通システムを構想することも考えられます。
私たちは、人口減少時代を見据え、人に優しい、小回りのきく交通体系を構築する時期を迎えています。