多くの自治体は、年度末になると組織の再編を行いますが、毎年この時期に思い起こされるのが、かつて携わった地方自治法の改正です。
市町村の組織に対する制度上の規制は、戦前からほとんどなかったのですが、都道府県の組織には法律で厳しい制約が課されていました。
昔は、団体の規模に応じて、東京都の局、道府県の部の名前まで法定されていました。
平成15年1月、私は地方自治制度を担当する総務省自治行政局行政課長になりましたが、このとき、最終的な制約の緩和が予定されていて、すぐにこの改正を担当することになりました。
用意されていた案は、
「都に局、道府県に部を置く」
でした。
私は、都と道府県で組織の名称を異にする必要性に疑問を感じながらも、着任したばかりだったので、まあこれでいいいか、と思っていたのですが、たまたま、当時読んでいた永井荷風の『断腸亭日乗』の中に、次の一節を見つけたのです。
「東京市教育局長贓吏〇〇来る」
東京都に局があるのは、東京市が局を置いていた名残ではないか。
それだけの理由であれば、同じ広域自治体である都と道府県の組織の名称に、法律で差を設ける理由はありません。
私は、局や部といった名称で縛らず、都道府県も市町村もすべて自由に「内部組織を設けることができる」という案を用意し、この案のとおり法律改正が行われました。
これで都道府県の組織編成は完全に自由になりました。
この規定を使い、部を本部や局に変更する県も出てきています。
大事なことは、最も合理的でわかりやすい組織を編成し、質の高い行政サービスを展開できるようにするところにあることは言うまでもありません。