久元 喜造ブログ

2018年4月3日
から 久元喜造

神戸市職員辞令交付式


きょうは、ポートアイランドの国際会議場で、神戸市の新規採用職員への辞令交付式が行われました。
開会に先立ち、神戸室内管弦楽団による歓迎演奏があり、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」、モーツァルトの「ディヴェルティメント ニ長調 KV251」などが演奏されました。

国歌、神戸市歌斉唱の後、私から、319名の職員の代表に辞令を交付し、代表職員による 宣誓が行われました。

最後に私から歓迎の言葉を申し述べました。

「私たちは色々な意味で戦いをしています。
巨大地震、津波など災害のリスクとの戦い,サイバーテロや未知の病気など予見しがたいリスクとの戦い、貧困や格差といった社会的不公正との戦い、などです。
決して楽な仕事ではありません。
苦楽を共にし,私たちに与えられた任務を全うしていきましょう」

「国際都市神戸は、グローバル社会の中に生きています。
そしていまグローバル社会は、指数関数的に変容しています。
AI、ロボット、ネットワークの進化、そして神戸医療産業都市とも密接に関連するライフサイエンス・・・
このようなテクノロジーや社会の変化に、神戸、そして神戸市政は、しっかりと対応していかなければなりません。
みなさんの新鮮な感覚を、神戸の成長のために、都市のイノベーションのために、そして市役所、区役所などの組織の抜本的改革のために注ぎ込んでください」

私たちの仲間になったみなさんが、やりがいを持って仕事に打ち込み、神戸の発展のために全力で取り組んでくれると確信しています。


2018年3月30日
から 久元喜造

「しあわせの村」駐車場 子育て世代は無料に。

しあわせの村 は、1989年にオープンした総合福祉ゾーンです。
205ヘクタールの広大な敷地には、障害者支援施設、特別養護老人ホーム、リハビリテーション病院のほか、運動広場、芝生広場、キャンプ場などの屋外スポーツ施設、温泉・宿泊施設などが立地しています。

周囲を山々に囲まれた自然の中にあり、市街地からは少し離れています。
路線バスもありますが、車で来られる方もたくさんおられます。
去年、ネットモニター のみなさんとの対話フォーラムで、しあわせの村の駐車料金について、子育て世帯については無料にできないでしょうか、とのご意見をいただきました。
現在、1回の駐車料金は、500円で、1時間以内の利用は無料ですが、せっかく来られた家族のみなさんの滞在時間はこれをオーバーしてしまうことも多いことでしょう。
そこで、昨日閉会した定例市会で議決いただいた平成30年度予算に、18歳未満の方を含むグループについては駐車料金を無料にする経費を盛り込みました。
駐車料金の無料化は、7月1日から実施します。

毎年行っている「しあわせの村 入村者アンケート」によると、30歳代以下の利用者は約1割という結果も出ています。
これを契機として、子育て世帯のご家族のみなさんに、もっとしあわせの村にお越しいただきたいと願っています。
平成30年度予算には、このほか、子育て世帯の自転車駐輪料金の半額化、銭湯の入浴料金への支援、北神急行を利用する高校生の通学定期の割引拡大など、子育て世帯に対する支援の拡充を盛り込んでいます。
今後とも、子育て世帯に対するきめ細かな施策の充実に取り組んでいきます。


2018年3月26日
から 久元喜造

採用後のキャリアパスをしっかり用意します!


就活が最盛期を迎え、どこの自治体も優秀な人材の獲得にしのぎを削っています。
派手なポスターや奇抜なキャッチフレーズが話題を集めていますが、大事なことは、自治体が現在の課題と将来ビジョンを明確に示すことだと思います。
また、採用後にやりがいを持って仕事をすることができるよう、キャリアパスをどのように提供していくのかについて、しっかりと説明することも大切です。

神戸市では、3月16日と19日に職員採用説明会を開催し、それぞれ、171名、683名の参加がありました。
私からは、神戸のこれまでの歩み、とくに日本を代表する大都市としての輝かしい歴史と、戦災、震災という大きな試練を乗り越えてきた経験、その上に成り立っている神戸の「いま」、そして「将来ビジョン」についてお話ししました。

また、今年度から始めた「フォローアップ面談」についても触れました。
人事課の職員が行政職(専門職を除く)6,267名の職員全員に面談し、職員の近況、担当したい分野、今後の異動希望などについて聞き取り、記録していく取り組みです。
これまでは、職員が人事異動に関する希望を出しても、何人もの幹部職員が介在するうちにうやむやになってしまうきらいがありました。

神戸市のような規模の大きな自治体では、採用後、希望する組織に配属される保証はなく、予想もしなかったような仕事をさせられる可能性があります。
神戸市では、このようなことにならないよう、新規採用者に対しても、現役の職員に対しても、人事当局が直接面談し、職員の希望を可能な限り尊重しながら、一人ひとりの職員に応じたキャリアパスを用意する試みを続けていきます。


2018年3月24日
から 久元喜造

「神戸開港と神戸事件」


今年は、明治維新、そして兵庫県制150年の年です。
昨年は、神戸開港150年記念事業が一年を通して開催されました。
1868年は、我が国にとり、そして神戸にとっても、近代の幕開けを告げる重要な年でした。
激動の時代にあって、予期せぬ事件も発生しました。
いわゆる神戸事件です。

1868年2月4日(旧暦1月11日)、三宮神社前を進んでいた備前藩の隊列の前を外国人が横切り、この外国人を備前藩砲兵隊第三隊長、瀧善三郎の手槍が直撃、さらに発砲を加えたという事件です。
間もなく海岸に外国兵が散開して備前藩の隊列に射撃を開始し、数時間の銃撃戦となりました。

神戸史談」1月号は、「神戸開港と神戸事件=近代日本外交史の第一頁=」と題された島田清氏の論文を掲載しています。
この論文は、神戸開港120年の年、1987年(昭和62年)に掲載されたものの復刻です。
当時の政治情勢、世情、事件勃発までの経過とその後の対応がドキュメンタリー風に記され、興味深く読ませていただきました。

事態収拾のための交渉は、2月8日(旧暦1月15日)、運上所、今の税関で行われました。
フランス、英国など各国の公使と東久世通禧を代表とする新政府の幹部が向かい合いました。
外国側の要求は発砲を命じた士官の極刑、関係諸国への陳謝で、明治政府は備前藩を説得してこれを受け入れ、瀧善三郎の切腹は、3月2日(旧暦2月9日)、神戸の永福寺において各国公使検証のもとに行われました。
島田論文のサブタイトルが示すとおり、この交渉は「近代外交の第一ページ」であり、発足間もない明治政府の事態収拾能力を内外に示す結果となりました。

 


2018年3月22日
から 久元喜造

介護保険料の上昇を抑えるために


65歳以上の介護保険料は、3年毎に改定されます。
第7期(平成30年度から32年度)の神戸市の介護保険料は、6,260円になります。

介護サービスの費用は、利用者負担を除き、国・県・市が公費で50%を負担し、27%を40~64歳の保険料で、23%を65歳以上の高齢者の保険料で賄う仕組みになっています。
充実した介護サービスを提供するとともに、その経費の増加を緩やかなものとし、保険料の上昇を抑制することが大きな課題です。

保険料の上昇を抑制するためには、要介護認定率(65歳以上の方のうち、介護保険サービスが利用できると認定された方の割合)の上昇を抑制することが重要です。
近隣の大都市の保険料と比較すると、神戸市の保険料は低い水準にとどまっていますが、これは、要介護認定率が相対的に低いからです。
神戸市 6,260円(平成29年12月末の要介護認定率 20.1%)
大阪市 7,927円(同 24.6%)
堺市  6,623円(同 22.4%)
京都市 6,600円(同 21.7%)

健康寿命の延伸が要介護認定率の抑制につながります。
「フレイル」-年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要な状態に移行しやすい状態にならないようにしていくことが必要です。
65歳までは、主にメタボなどの生活習慣病の予防がポイントとなります。
65歳ごろからは、「身体活動」「栄養」「社会参加」を柱としたフレイル予防が大切になります。
健康寿命を延伸し、元気で長生きできる地域社会をつくることは、それ自体とても大切なことです。
そして、それがシニア世代、現役世代の負担を減らすことにつながります。


2018年3月18日
から 久元喜造

「民主主義って本当に最良のルールなのか、世界をまわって考えた」


本書は、2011年12月から2013年2月まで、朝日新聞に連載されたシリーズ「カオスの深淵」をまとめたものです。
シリーズの問題意識は、「ひょっとして、民主主義や市場や選挙などが、うまく機能しなくなっているのではない」か、ということだったようです。
「民主主義が、民意をうまくすくい取れなくなっているのではないか」-そんな疑問を抱えた記者のみなさんは、橋下徹市長の大阪、村長の無投票当選が続く大分県姫島村、市長のリコールと議会の解散を繰り返す鹿児島県阿久根市へ、さらには、ニューヨーク、フィンランド、フランス、ベネズエラ、ギリシア、ブータン、ハンガリーなどへと散り、取材と識者へのインタビューを繰り返します。

連載時から6,7年しか経っていないのに、民主主義を取り巻く状況や各国の国情、リーダーたちの顔ぶれなどが大きく変わってしまったことを痛感します。
同時に、本書で指摘されている本質的な問題は、今日まったく解決の糸口すら見いだせていません。
「市場はそんなにえらいのか」の章で語られる民主主義と市場との相克は、欧州においてとりわけ深刻化しています。
1000分の1秒を争い、コンピューターで取引する高頻度取引は一層肥大化し、金融と実体経済の乖離はグローバルな規模で進行中です。
「立ちすくむ税金」の章で取り上げられているテーマも、 とてもリアルで考えさせられます。

「頼りなさそうな民主主義だが、より良い手段がほかにあるわけではない」 ―そのとおりだと思います。
「正しい答え」が見つからないことを知りながら、「正しい問い」を探すために費やされた膨大な取材や執筆、編集の成果を多としたいと思います。

 


2018年3月16日
から 久元喜造

トイレを洋式に、そしてきれいに。


神戸市役所で働き始めた5年ほど前のことです。
市役所も含め、神戸市内の公共トイレに和式が多いことに気づき、ある幹部に話したところ、
神戸市民は、和式が好きなんですわ
という答えが返ってきたことがありました。

しばらくして、どうもこの答えは市民感覚からずれているのではないかと考え、トイレの洋式化に舵を切ることにしました。
それなりに進んではいるのですが、さらに加速させたいと考え、今市会で議決をいただいた2月補正予算を中心に、トイレの改善策を講じることにしました。
市の施設全体で、887基を洋式化し、47基を増設、さらに文化・観光施設において、164基の温水洗浄便座を設置します。

まず大事なのは、小中学校のトイレの洋式化です。
2月補正予算では、市立小中学校において604基の洋式化を進め、洋式化率も約49%から約54%まで引き上げます。
平成33年度までに洋式化を完了させます。
少数ながら和式便器を希望する児童・生徒もいることから、洋式化率の目標は約70%にしています。

次に公園のトイレについては、2月補正予算で129基の洋式化を行うとともに、平成30年度に「公園トイレチェンジアクションプラン」を策定し、平成32年度までに公園全体で洋式化率約70%をめざします。

また、年間50万人のみなさんにご利用いただいている 神戸文化ホール (上の写真)では、しばしば女性用トイレの前に長蛇の列ができています。
そこで、女性用トイレを61基から106基に45基増設するとともに、洋式化率も、約75%から約93%まで引き上げます。

トイレのきれいなまちをめざし、改善・充実を進めます。


2018年3月12日
から 久元喜造

的場順三氏は、喋り過ぎではないですか。


平成の時代が終焉に近づく中、次の元号が何になるのか、どのようにして決まるのかについて関心が集まっています。
マスメディアが今の元号である「平成」がどのように決まったのかについて、関係者に取材するのも当然のことです。
しかし、デリケートな問題であるだけに、当時の関係者が何でも喋ってよいというものでもないと思います。
とくに、実務を支える官僚は、慎重な発言が求められるように思います。

こうした観点からは、朝日新聞(2018年3月5日)に掲載された元内閣内政審議室長、的場順三氏の発言には正直驚きました。
的場氏は、「元号の考案を依頼する識者」について4つの具体的な基準を挙げ、「出身大学は東大だけでなく、京大など西日本地域の大学を含めることにも留意した」と述べておられます。
また、当時の官房長官、故小渕恵三氏が以前、元号懇談会で出されたある意見について証言しておられましたが、的場氏はその意見はご自身が「とっさに思いつき、懇談会の席で発言した」と答えておられます。
官僚はあくまでも黒衣です。
官僚が重要な人事に関与したり、元号の決定に影響を与えたりしたと誇示するが如き発言は、適切なのでしょうか。

元号は天皇の在位と直結する一方、天皇には元号を決定する権限はなく、内閣が政令で定めるという微妙な緊張関係を孕んでいます。
元号の制定過程についての回想は政治家や学識経験者に委ね、官僚が奔放な発言をするのは慎むべきではないかと考えます。
官僚には退職後も守秘義務が課せられるのであり、とくに元号のような微妙な問題については、矩を超えないようにしていただきたいと希望します。


2018年3月10日
から 久元喜造

「土地 マイナンバーで管理」


昨日(3月9日)の読売新聞朝刊の一面トップの見出しです。
土地 マイナンバーで管理 政府検討
「「所有者不明」に歯止め」

「増え続ける所有者不明土地に歯止めをかけるため、政府は登記簿や戸籍などの関連データをマイナンバーで一括管理することを検討している」という内容です。
現行制度では登記は義務ではないため、登記簿の情報は不正確で、このことが所有者不明土地問題が生じている大きな要因とされてきました。
マイナンバーが活用されることになれば、登記簿情報の正確性が格段に向上します。
たとえば、自治体に死亡届が提出されると、法務局が所有者の死亡を把握し、相続人に登記を促すことができます。
登記の住所変更の手続きも、自動的に行われます。
自治体も、登記簿上の所有者を把握することが容易になり、用地買収や老朽危険家屋への対応を進めることにつながります。
記事によれば、政府は、今年の夏にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)にこの方針を盛り込み、早ければ、来年の通常国会にマイナンバー法改正案などを提出する考えのようです。

私は、昨年12月25日、所有者不明土地問題への対応策を考える「国土計画シンポジウム」(上の写真)に参加したとき、マイナンバーの活用を提言したことがあり、今回の報道をたいへん喜んでおります。
所有者不明土地問題は、ブログでも何回も取り上げてきたとおり、官民挙げて取り組んでいかなければならない重要な政策課題です。
シンポジウムではマイナンバーの活用について反対の意見も出されましたが、誤解を解く努力を重ね、早期実現に向けて取り組んでいく必要があります。


2018年3月6日
から 久元喜造

神戸空港には市税は使われていない。


少し前のことになりますが、2月18日の日経新聞に地方空港の収支に関する記事が載っていました。
地方空港は、訪日外国人観光客の増加を背景に便数が増加しているが、収支は赤字で一般財源が投入されている、また、国管理空港の工事費負担も多額に上っている、という内容でした。

空港事業は、道路や公園などと同様に公共事業で、国や地方自治体が一般財源、すなわち税金を投入することは初めから想定されています。
ところが、神戸空港には、建設にも管理にも市税は使われていません。
これは、かつて空港建設について市民の賛否が分かれ、また、震災後の厳しい財政状況の中で復興を進める必要があったことから、市会で「市税は一切使わない」と決議されたからです。
神戸空港は、設置自治体の税金を使わずに建設・管理が行われている、我が国で唯一の地方管理空港なのです。

この方針は、4月の民営化後も変わりません。
神戸空港の建設のために発行した市債の残高は、平成30年度末見込みで165億円で、これに新都市整備事業会計からの借入金やこれらの利子を合わせた債務は454億円となる見込みですが、民営化後は、㈱関西エアポート神戸から支払われる運営権の対価などの財源で確実に返済していきます。

一方、空港の利用状況は好調を維持しています。
昨年は、300万人を越える方々にご利用いただくとともに、平均で8割近い搭乗率でした。
このような状況を受け、㈱関西エアポート神戸株式会社が発表した中期計画では、5年後の目標としていた旅客数300万人を上方修正し、327万人としました。

明るい雰囲気の中、民営化の日を迎えられることをありがたく感じています。