久元 喜造ブログ

2018年5月7日
から 久元喜造

新開地・喜楽館、7月11日オープン!


新開地で整備が進められている 喜楽館 が、いよいよ7月11日(水)にオープンします。
かつて「東の浅草、西の新開地」と呼ばれ、国内有数の繁華街だった神戸の新開地。
落語や漫才の公演が毎日のように行われていた神戸松竹座が1976年に閉館して以来、約40年ぶりに落語や伝統芸能が毎日演じられる場が復活します。

喜楽館 のオープンは、新開地の活性化に長年取り組んでこられた、新開地まちづくりNPO が中心的な役割を果たされました。
高四代理事長をはじめNPOのみなさんのこれまでのご努力に敬意を表します。
上方落語協会 からも全面的なご支援をいただいていることもありがたいことです。

喜楽館 は、2階建て、客席の数は約200です。
建設費は、約2億7000万円。
国庫補助が約1億円、神戸市と兵庫県がそれぞれ5000万円を補助しました。

運営は、新開地まちづくりNPO が行います。
昼席は、上方落語の定席、夜は、上方落語のほか東京の落語家さんの独演会、浪曲、講談、漫才、踊り、ジャズのライブなどが行われます。
7月11日(水)のこけら落とし公演には、上方落語協会会長の桂文枝師匠をはじめ豪華な顔ぶれが出演されます。

喜楽館 のオープンは、新開地の活性化に大きく寄与すると期待されます。
この機会をとらえ、新開地駅から高速神戸駅までの地下通路のリニューアルも計画されています。
地域のみなさんとしっかりと手を携え、新開地の歴史と伝統を踏まえながら、新開地のにぎわいづくりに取り組んでいきます。


2018年5月4日
から 久元喜造

工藤律子『マフィア国家』


帯にこう書いてありました。
「2016年に殺人発生件数が、シリアに次ぐ2位となったメキシコ。何が起きているのか」

経済成長が続く中米の大国、メキシコの治安が悪いことは知っていましたが、本書を読み、改めてその深刻な状況を知ることができました。

筆者は、身の危険を感じながら、メキシコ各地を飛び回ってたんねんに取材し、インタビューを重ねていきます。
そこで繰り広げられているのは、治安の悪化を超えた「麻薬戦争」とも言うべき事態でした。
家族、友人を殺された数えきれないほどの人々の悲しみ、苦しみ、怒りが伝わってきます。
殺人とともに、膨大な数の失踪者が出ているという事態も深刻です。
その多くは女性で、麻薬カルテルによって誘拐され、性産業に売り飛ばされている実態があると見られます。

「麻薬戦争」は、社会の矛盾と密接にかかわっています。
麻薬組織が地域社会を牛耳っている地域では、貧困層の少年たちは、麻薬カルテルの下部組織に取り込まれやすいからです。
まともな仕事は少なく、多くの者は、家族、親せきなどを頼って、米国を目指します。
麻薬カルテルは、政党、中央政府、州政府、自治体、連邦警察、地方警察、軍隊の中にも入りこんでいます。
被害者が声を上げても、警察がなかなか捜査や調査に乗り出そうとしない実態が描かれます。
「麻薬戦争」が政治構造に根差していることがわかります。
閉塞感と諦めの中にあって、声を上げ、行動に移している人々がいます。

今年の7月1日には、大統領選挙が予定されています。
メキシコ国民がどのような選択をするのか、そしてその選択が困難な状況を変えていく動きにつながるのか注目されます。


2018年5月1日
から 久元喜造

中央区役所 引っ越し待ち時間が4分に。


3月から4月にかけての引っ越しシーズンは、どこの役所の窓口もかなり混雑します。
一昨年の暮れだったと思いますが、中央区役所に行く用務があり、転入・転出届を担当する市民課のフロアでエレベーターが止まったとき、目に入ったのは長蛇の行列でした。
引っ越しシーズンには一体どのようなことになるのか、たいへん危惧しました。
訊いてみると、日によっては、2時間待ちになることもあるなど、憂慮すべき事態でした。
どうしてこんな状況を放置してきたのか、理解できませんでした。

平成29年度は、外国人への対応を含め体制を強化しました(2017年2月17日のブログ)。
しかし、庁内の一部には「繁忙期なんだから来庁者に待ってもらうのは当たりまえ」という空気もあったので、今年初めの局区長会議で、区長以下組織を挙げて全力で対応するよう、強くお願いしました。

引っ越しの繁忙期がほぼ終息し、この間の中央区役所の待ち時間について報告を受けたところ、今年は平均約4分と、大幅に短縮されていました。

平成28年(3月22日から4月11日) 約64分
平成29年(3月21日から4月10日) 約30分
平成30年(3月19日から4月9日)   約4分

人事当局も体制の強化をバックアップし、区役所では窓口を増やすとともに、フロアの案内や表示にも改善を加えたということでした。

3月の終わりに、中央区役所市民課のフロアに行きましたが、幹部職員が窓口で陣頭指揮を執り、テキパキとした対応ができていました。
中央区役所関係職員のみなさんの労をねぎらいたいと思います。
今後とも改めるところはしっかりと改め、市民サービスの改善に努めていきます。


2018年4月24日
から 久元喜造

KOBE PRアンバサダー任命式


KOBE PR アンバサダー事業は、市内在住・在学・在勤の外国人のみなさんの中からアンバサダーを委嘱し、それぞれの目から見た神戸の魅力や神戸での生活を、SNSなどで発信していただく試みです。
きょうの午前中、市役所で、今年度、25名のKOBE PR アンバサダー任命式があり、あいにくの天気の中を20名のみなさんが出席してくださいました。
新規が16名、昨年度からの継続が9名です。
国別では、米国9名、英国とロシアが各2名、フィリピン、マレーシア、シンガポール、タイ、ニュージーランド、インド、イラン、カナダ、オランダ、スロベニア、ポーランド、モロッコが各1名です。

KOBE PR アンバサダーのみなさんには、神戸の中のさまざまなスポットを訪れていただき、いろいろな分野のみなさんと意見交換を行いながら、神戸のありのままの姿や魅力を発信していただきます。
使用される言語は、英語、中国語、ロシア語、フランス語のほか、ペルシア語、マレー語、タイ語、パンジャブ語、ヒンディー語、ウルドゥー語、タガログ語、オランダ語、ポーランド語、スロベニア語などです。

任命式には、この試みの発案者であるルイーズ・デンディさんの姿もあり、和気藹々とした雰囲気に包まれました。
私からは、お引き受けいただいたことへの感謝とともに、神戸のありのままを世界各地に届けていただくようお願いいたしました。
神戸への関心が大きく広がり、たくさんの来街者に結びついていくことを期待しています。


2018年4月23日
から 久元喜造

コシノヒロコ先生との対談


六甲アイランドの 神戸ファッション美術館 名誉館長に、コシノヒロコ先生にご就任いただきました。
きょうは、芦屋のアトリエ「SEMPER」で先生と対談をさせていただきました。

神戸ファッション美術館 は、ファッションをテーマにした我が国初めての公立美術館として、1997年(平成9年)4月にオープンしました。
ファッション都市神戸のシンボル的な施設です。
館内には、服飾関係だけで約6万件の収蔵品があり、18世紀から20世紀にかけてのさまざまな国、地域の衣装など歴史的に価値のある貴重な資料を多数所蔵しています。
ファッション関係の書籍や雑誌を集めた図書室、ファッションショーもできる構造のオルビスホールなどの施設も備えています。

六甲アイランド街びらき30年を迎えた今年、世界的なファッションデザイナーのコシノヒロコ先生を名誉館長にお迎えできたことをたいへん喜んでおります。
きょうは初めてコシノヒロコ先生からじっくりお話を聞かせていただきました。
泉のように次々に湧き出る斬新な発想に思わず引き込まれるとともに、ファッション、芸術に対する熱い想いに触れることができ、感銘を覚えました。
先生はもともとは画家を志されたそうで、三味線も巧みに弾かれるそうです。
幅広い分野で活躍されているコシノヒロコ先生の大きなお力添えをいただき、館の展示内容、活動の充実を図るとともに、内外に向けた発信を強化していきたいと考えております。


2018年4月20日
から 久元喜造

人材確保有識者会議の提言


グローバル社会の中で、アジア・パシフィック地域の大都市は、優秀な人材を獲得しようとしのぎを削っています。
ビジネス、アカデミズムをはじめあらゆる分野で神戸に優れた人材を呼び込んでいかなければなりません。
このような要請を踏まえ、大学などの教育研究機関では、学部、学科の新設、再編が盛んに行われています。
民間企業も、人材の獲得・確保のために「働き方改革」を進め、採用と人材育成のための模索を続けています。
地方自治体も、このような動きを見据えながら、しっかりと対応していく必要があります。

そこで、これからの神戸市政を担う人材を確保していくため、大学、専門学校、経済界などで活躍されているみなさまに参画していただき、「神戸市の人材確保に関する有識者会議」を昨年の12月に設置しました。
有識者会議では、約3か月という驚くべき短期間に、極めて密度の濃い議論を重ねていただき、この3月30日に報告書をとりまとめていただきました。

座長をお願いいたしました神戸大学副学長の品田裕先生をはじめ、参画いただきました委員各位に心より感謝申し上げます。

提言では、求める人材を明確にするためのキーワードとして「チャレンジ精神」「リーダーシップ」「デザイン力」が挙げられています。
市政への「共感」を広げるため、リクルーター制、インターンシップの拡大などのほか、試験区分を大括りにし、試験問題を選択制にすること、博士課程修了者等を対象とした「エキスパート制」、プロフェッショナル人材として「法律専門職」「デザイン職」の導入などが提言されています。
試験区分の見直しを含め、実現できるものから具体化を進めていきます。


2018年4月18日
から 久元喜造

「定年後」楠木新さん講演会


昨日の夜、神戸文化ホールで、楠木新 さんの講演会が開催されました。
楠木さんは、神戸市兵庫区のご出身。
ご著書、『定年後~50歳からの生き方、終わり方』(中公新書)は、25万部の大ベストセラーになりました。

背景には、「定年後」に対する関心の高まりがあります。
会社、役所勤めの人には一律に定年が適用され、それぞれ慣れ親しんだ職場から退くことになります。
長寿社会になり、定年後の人生は長くなりました。
楠木さんは、こう書いておられます。

「人は若いころの成功を中高年以降まで持ち越すことはできない。
・・・定年後が輝けば過去の景色は一変する。
やはり、終わりよれければすべてよしだ。
そういう意味では、定年後、いわゆる人生の後半戦が勝負なのだ」
そのとおりだと思います。

神戸市では、職員のみなさんが円滑に「定年後」の人生に移行できるようにする一助として、「高齢者部分休業制度」を設けました。
原則として、55歳から徐々に勤務時間を減らし、地域貢献活動などに携わり、退職後は、本格的にそれらの活動にかかわっていただけるようにする試みです。
また、年齢を問わず、職員が勤務時間外において、継続的な地域貢献活動に報酬を得て従事できるよう、「地域貢献応援制度」も設けました。
もちろんこれらを使うかどうかは職員の判断で、現実にはほとんど使われていません。

昨日の講演を聴かせていただき、会社や役所に勤めている人が、組織の外でそれぞれの能力を活かして活動することは、「定年後」を豊かなものにする上でも有意義ではないかと改めて感じました。
お忙しい中ご講演いただいた楠木さんに感謝申し上げます。


2018年4月15日
から 久元喜造

井上寿一『戦争調査会』


1945年10月30日、政府は「敗戦の原因及実相調査の件」を閣議決定しました。
当時の総理大臣は、外交官出身の幣原喜重郎。
幣原総理の強い決意の下に設置されたのが「戦争調査会」でした。
総裁の人選は難航し、幣原総理が自ら就任、事務方トップの長官には大蔵省出身の青木得三が任命されました。
また、5つの部会が作られ、部会長には粛軍演説で名高い斎藤隆夫などが就任しました。

敗戦間もない当時、政府が「戦争はなぜ起きたのか」という根源的な課題に自ら向き合ったことを、本書を読んで初めて知りました。
当時、東京裁判が進行中でしたが、幣原は裁くことよりも検証することを重視し、大臣経験者や外交官、軍人、官僚などから精力的に聴き取りが行われました。
しかし占領統治の司令塔GHQ、そして対日理事会は、戦争調査会に冷ややかな視線を送ります。
とりわけソ連代表は、調査会が戦争を正当化しようとしていると非難し、解散を主張しました。
結局、戦争調査会は、1946年9月30日に廃止されました。

調査会はこうして設置から1年も経たないうちに廃止されましたが、当事者からの聴き取りに基づく膨大な資料が残されました。
そしてこれらの貴重な資料は、2016年に公刊されるまで、国立公文書館と国立国会図書館憲政資料室の書庫で眠り続けたのです。
本書は、「幻の政府文書」から「なぜ道を誤ったのか?」を探ろうとします。
当事者の証言から、最終的に戦争に突き進んでいった背景が浮き彫りになるとともに、戦争を回避するチャンスが何度もあったことが明らかにされます。
幣原喜重郎、青木得三、そして吉田茂など、戦争に至った道を自ら検証し、それを後世に残そうとした先人の努力にも感銘を覚えました。(文中敬称略)


2018年4月10日
から 久元喜造

読みたい本は、やはり自分で選ぶのが良いのでは。


去る4月3日、神戸市に入庁したばかりの新規採用職員に講話をしました。
予定の1時間のうち、20分を質問に充てたところ、10人近いみなさんから質問や意見が活発に出て、心強く感じました。

その中で、
「市長お奨めの本を挙げてください」
という質問がありました。
読書に関心を持ってくれているのは嬉しく、それだけにどう答えるのか、一瞬、悩みました。
吉村昭『破船』 は良い本だが、さすがに新規採用職員には暗すぎるし、川崎草志『崖っぷち役場』 は神戸とはちょっと違う・・・

迷いましたが、こう答えました。
「自分が読みたい本は自分で見つけることが大切なのではないでしょうか。私も、昼休み、本屋に行って本棚を回り、面白そうな本を選んだり、新聞の書評に取り上げられていた本を買ったりしています」
これではさすがに不十分なような気がしたので、
「これは単なる私の好みですが、いわゆる自己啓発本やハウツー本を読むことはありません。小説を読む方が好きです。優れた小説からは教えられるところが多いように感じます」
と付け加えました。
質問してくれた女性職員には、物足りない答えだったことでしょう。

その翌々日、ある大学が、大学生の「読書離れ」を防ぐため、人工知能(AI)が個々人の性格に合った本を選ぶアプリをつくった、という記事を目にしました。
AIは、投稿内容の文字をもとに、その人の性格をいくつかの指標で数値化し、性格に最も合った本を選び出してくれるというものです。(2018年4月5日付け朝日新聞朝刊)

市長に尋ねるよりは適切な答えが得られそうですが、それでも読み終えて良かった、と思える本を自分で見つける努力をしてほしいと感じます。


2018年4月6日
から 久元喜造

職種別人事異動は今年が最後です。


神戸市の人事異動は、職種別に行われます。
人事異動案は、局長、部長、課長、係長それぞれの段階ごとに、一般行政、土木、建築、造園、衛生監視、設備などの職種別につくられます。
私は、このような職種別人事は平成30年4月人事で終わりにし、今後は、役職段階別に一本化された人事案をつくり、職種は個々の職員ごとに「備考」として記す方法に変更するよう、人事当局にお願いしました。

職種別人事異動は、それぞれの職種に属する職員が就くポストを限定することを前提にしていると考えられますが、ポストの固定化はメリットより弊害が大きいように感じます。
採用時の試験区分が退職時までついて回るのは、これだけ変化が激しい時代の人事管理として適切か大いに疑問です。

もちろん、個々の職員が学生時代から培ってきた専門的知識を生かして職務に当たることは大切です。
専門的知識が各行政分野に生かされ、科学的知見に基づく政策を展開していく必要性はむしろ強まっています。
しかしこのことは、職種ごとにポストを固定化することで達成されるとは思えません。

人事管理において大事なことは、個々の職員の意向をよく聴き、最大限、人事異動に反映させていくことです。
昨年から、人事課による行政職(専門職を除く)の職員全員の「フォローアップ面談」を始めました。
ポイントのひとつは、個々の職員が、自らの専門領域を生涯追い求めたいか、それとも、専門領域を大切にしながら幅広い分野を経験したいか、どちらの方向を望んでいるのかを把握することです。
なかなか難しい課題ですが、個々の職員の満足度を可能な限り最大化できる人事管理の姿を追い求めていきたいと思います。