久元 喜造ブログ

2013年7月23日
から 久元喜造

デトロイト市の破産

ミシガン州のデトロイト市が破産したという記事が、大きくニュースなどで取り上げられています。
7月18日、デトロイト市は、連邦破産法の適用を申請しました。自治体が破産を申請するには、州知事の承認が必要で、ミシガン州のシュナイダー知事は、申請を承認しました。

我が国では、自治体が破産する制度は設けられていませんが、アメリカでは、自治体も、民間企業と同様に、破産することがあります。
連邦破産法は、基本的には、民間企業の破産の要件、手続き、効果などを規定した法律ですが、第9章で、自治体の破産について規定しています。

破産手続きは、民間企業、自治体とも、裁判所の関与の下に進められ、債権債務の整理が進められます。
第9 章では、地方自治体の場合の特例が規定されており、破産した地方公共団体が財政再建に取り組んでいる間は、債権者の債権回収から一定の 保護が受けられます。
また、民間企業の場合は、最終的に清算されることがあるわけですが、自治体の場合は、清算はありませんし、債権者に収益が分配されることもありません。

破産手続きは、債務調整計画が策定され、破産裁判所の監督の下に進められます。
我が国の場合は、自治体の債権について債権放棄は行われませんが、連邦破産法に基づく債務調整計画には、債権放棄を盛り込むことができます。
しかし、その一方で、歳出についても大胆に見直しが行われ、職員の解雇や一定の行政サービスの停止が行われるのが通常です。
職員の給与も大幅に引き下げられ、年金についても、給付削減が行われます。

デトロイト市も、これから、イバラの道を歩むことになるでしょう。


2013年7月22日
から 久元喜造

選挙の翌日に。

第23回参議院議員選挙と兵庫県知事選挙が終わりました。
昨晩は、参議院議員選挙兵庫選挙区の鴻池祥肇候補、辻泰弘候補、そして、井戸敏三兵庫県知事選挙候補の事務所を回り、挨拶をさせていただきました。

井戸敏三知事は、168万票を超える得票をされ、圧勝で4選を果たされました。
安定した県政の継続を願う、県民の意思が表明された選挙でした。

次は、10月に予定される神戸市長選挙です。
私は、これまでの神戸市政の受け継ぐべきところはきちんと受け継ぎ、変えるべきところはしっかり変える、という姿勢で、臨んでいきたいと思います。

24日からは、街頭に出て、自分の思いや考えを、直接、市民のみなさんに訴えることにしています。
そして、さまざまなご意見を伺い、対話を重ねがら、公約を練り上げていきたいと考えています。

どうぞよろしくお願い申し上げます。


2013年7月21日
から 久元喜造

参議院議員選挙の投票日に

さきほど、参議院議員選挙と兵庫県知事選挙の投票に行って来ました。
私なりの国政、県政への思いを1票に託し、投票箱に入れました。

選挙後においては、参議院のあり方について、是非、議論を進めていっていただきたいと思います。
国会のあり方は、まさに憲法論になるわけですが、第二院のあり方と両院の関係は、ひじょうに重要なテーマです。

参議院のあり方の議論をするに当たって、たいへん参考となる研究書が、このほど刊行されました。
筑波大学大学院人文社会科学研究科の岩崎美紀子教授が執筆された『二院制議会の比較政治学 ― 上院の役割を中心に』(岩波書店)です。
iwasaki

制度のあり方を考える上で、諸外国の制度を比較し、研究することは有意義です。
本書においては、各国の制度比較を行う前に、二院制議会の分析の枠組みについて説明されており、どのような枠組で制度比較を行うのかの視点が明示されています。
岩崎教授は、①議院の構造(代表原則、選出方法、任期、定数など) ②一つの議院が可決した法案をもう一つの議院が可決しない権限 ③議院間関係 を挙げておられます。

分析対象国として選ばれたのは、カナダ、オーストラリア、イタリア、スペイン、ドイツの5カ国。
その後、日本、米国、フランスなども含め、各国横断的に比較分析が行われています。

岩崎教授は、二院制をとる主要国で、ふたつの議院の代表原則が同じなのは、日本だけだ、と指摘されています。
両院における代表原則をどう考えるのかは、参議院のあり方を考える出発点だと思われます。
もし、現行制度のように、両院の代表原則を引き続き同じとするなら、岩崎教授が指摘される、上記のそれ以外の論点について、突っ込んだ検討を行っていくことが必要になります。


2013年7月20日
から 久元喜造

ケミカルシューズの振興

昨晩は、ケミカルシューズ産業会館で、井戸敏三知事の演説会があり、出席させていただきましたので、ケミカルシューズの振興について書いてみます。

工業統計に、特化係数という概念があります。
各産業部門の付加価値額の構成比を、全国の構成比で除した係数です。特化係数が1より多ければ、その産業がその地域で集積していることを示します。
ケミカルシューズの神戸での特化係数は、19.55で、鉄道車両(35.83)に次ぐ集積となっています。
このほか、革製履物用材料が12.45、革製履物が11.26と、神戸経済の特化係数上位5部門のうち、3部門がシューズ関係となっています。

このシューズ分野をさらに伸ばしていくには、やはり品質の向上とブランド力の強化が求められます。
そして、シューズにおける品質は、ファッション性と機能性がポイントになりそうです。

ファッション性はついては、既におしゃれなイメージの神戸ブランドを最大限活用し、デザインという新しい視点も加えて打ち出すのが良いと思われます。
また、機能性については、「履きやすい」、「疲れくい」、「転ばない」などの機能が求められます。神戸医療産業都市のなかで、神戸大学医学部の整形外科などと共同で、科学的なウォーキングの研究をしていますので、これらの研究成果を生かして、機能性に富むシューズを開発していくことが考えられます。

世の中にシューズ多しと言えど、ファッション性と機能性の両方を兼ね備えたものは少ないと言われています。神戸シューズが両方を備えた「履きやすくてオシャレ」なイメージを打ち出すことが出来れば、新しい神戸ブランド商品として大きく伸びるのではないでしょうか。
行政としても、機能性を追及するための産学連携の推進や、販売促進のための情報発信を強化していく必要がありそうです。

いずれにしても、ケミカルシューズ関係業界のみなさんのご意見をよくお伺いし、神戸が誇るケミカルシューズがさらに世界中で愛されるよう、私自身も頑張りたいと思います。


2013年7月19日
から 久元喜造

県庁は「おもてなし課」ばかりではない。

先日、NHKの「仕事ハッケン伝」で、北九州市役所のフィルム・コミッション担当課が取り上げられていた、という話を聞きました。
タレントが、北九州市のフィルム・コミッション担当課に派遣され、その苦労をともに味わうという設定のようです。
この課は、わずか5人の小さな課なのですが、次々、映画の誘致に成功しています。いわゆる、スゴ腕公務員が登場し、ロケ地探しや夜を徹しての撮影立ち会いなどの場面が展開されていたようです。

少し前には、「県庁おもてなし課」という映画も上映されていました。

kencyou

有川浩の原作。高知県庁に実在する課を舞台にしています。全国から観光客を呼ぶための方策を考えるのが課の役割で、「おもてなし」する心で県の観光を盛り立てるための課員の奮闘が取り上げられます。
この映画を見た方によれば、顧客視点から程遠い役所の現状や雰囲気を的確についており、特に役所の人間が読んで、思わずほくそ笑むような話に仕上がっていたとのことでした。

北九州市の「フィルム・コミッション担当課」も、高知県「おもてなし課」も、いわば、花形職場と言ってもよいでしょう。
自治体の人事当局や人事委員会には、このような花形職場を前面に出し、地方公務員の仕事がいかに楽しくて、やりがいがあるかを強調し、リクルートに精を出す傾向も見られます。
このような宣伝に釣られ、公務員を志す若者もいることでしょう。

しかし、実際の自治体の組織の中で、観光や広報の職場は、全体のごく一部です
なぜなら、自治体の大半の仕事は、脚光を浴びることを目的にして存在しているわけではないからです。
大半の職員は、子育て、生活、老親の介護、まちづくり、地域の助け合い、ゴミ処理、上下水道、そして、教育・・・・地味だけれど、直接市民と向き合い、どこまで自分で対応できるのかを悩みながら、ベストを尽くそうと、試行錯誤をくり返しながらの日々を送っています。

トップが、脚光を浴びる観光や広報のことしか関心を持たないとき、そのときはそのときで、トップに関係なく、現場の力で仕事は回るかも知れません。
でも、何か、変ではないでしょうか。


2013年7月18日
から 久元喜造

長田ゆかた祭り

昨日は、夕方、長田神社と長田神社前商店街周辺で行われた、長田ゆかた祭りの会場を訪ねました。
長田神社は、子どもの頃から、よくお参りしていますが、今回は、藤原正克宮司さんに挨拶をさせていただくことができました。

長田神社境内から、赤い鳥居が立つ神社前商店街周辺は、ものすごい人出です。
地域のみなさんが、総出で、祭りをプロデュースし、運営に当たっておられることがよくわかります。
ゆかた祭りは、10年ほど前に始まったそうですが、当初は、数百人規模のお祭りだったのが、今は、2万人以上の方が訪れる、大きなお祭りになっています。

魚屋さん、八百屋さん、和菓子屋さん、パン屋さん、レストラン、お寿司屋さんなどをたずね、挨拶させていただきました。
お寿司屋さんのカウンターでビールを飲んでおられた女性からは、「神戸市政を変えてください」と声をかけられました。

「NAGATA食遊館」の愛称で親しまれている、長田公設市場にもお邪魔させていただきました。
長田公設市場の歴史は古く、大正11年にさかのぼるそうです。時代の変化に対応するため、平成4年3月、共同店舗方式による「NAGATA食遊館」が誕生します。
阪神淡路大震災では、ビルが全壊するという壊滅的被害を受けましたが、平成10年には、営業を再開しています。
この間の、関係のみなさんのご苦労には、筆舌に尽くしがたいものがあったと拝察いたします。

長田神社前商店街のパワーと熱気を感じることができました。
次回は、浴衣を着て訪れ、ビールで喉を潤したいものです。


長田区地域福祉センター給食会

2013年7月17日
から 久元喜造

世代間対立を煽るのではなく・・・・

本の広告「「老人優先経済」で日本が破綻」というタイトルが目に入りました。
老人が恵まれすぎている、若者が損をしている、という論調は、よく目にしますが、この本の題名も、端的に、内容を表しているようです。

「政権を維持するために借金を若者世代に先送り。改革骨抜きのアベノミクスは破綻への序曲!どうすれば生き残れるのか?」
とのキャッチコピーがありますから、まさにそういうたぐいの本なのでしょう。
ごていねいに、「注意!!! 読むと怒り出す高齢者がいます」との注意書きまであります。

現代の若者が、私たちの世代に比べて、社会保障の負担が増え、先行きに不安を感じていることは確かでしょう。
しかし、その不安や不満の矛先を、高齢者の方々に向けてどうなるというのでしょうか。

いたずらに世代間の対立を煽るだけでは、社会保障を含む、世代間負担の公平のための建設的な議論に踏み出せないことは、明らかです。
異なる世代の間で、相互理解を深め、助けあう社会のありようが求められるのに、このような本が次々に刊行されるのは、残念です。

著者は、日本を代表する新聞の記者で、関係の雑誌記者としても活躍されたそうで、
「自分の会社で書けなかったことを綴った一冊!!!!!!!!!!」
とありました。
そして、「大新聞が書かない、この国を支配しているモンスターの正体!」とも。
この方が属する大新聞は、自己抑制された、当たり障りのない記事を読者に送り続け、その一方で、ほんとうの現実を知りたいなら、自社の記者がほかの出版社で書いている本を読め!とでもいうのでしょうか。

二重の意味で、残念な本の広告でした。

少なくとも神戸では、このような発想はしたくはありません。
神戸は、市民がたすけ合いながら、震災を乗り越え、再生を果たしてきた街です。
そのような土壌の上に、異なる世代が、理解や触れ合いを深めながら、あたたかく、顔の見える地域社会をつくっていきたいものです。

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きょうは、長田区地域福祉センターで開かれた給食会にお邪魔しました。
給食会では、長田小学校のこどもたちが、コーラスで「花は咲く」を披露し、お年寄りのみなさんの盛んな拍手を浴びていました。
このような取り組みを広げ、世代間の相互理解を深めていくことができれば、素晴らしいですね。


2013年7月16日
から 久元喜造

選挙運動規制は抜本的見直しを

参議院議員選挙、兵庫県知事選挙の選挙運動期間も、あと残すところ、5日間となりました。
今回の選挙では、初めて国政選挙でネット選挙が解禁になり、ネットツールを有効に利用して、どう有権者の支持を集めるのかに関心が集まっています。

ネット選挙の解禁は、むしろ遅すぎたくらいで当然なのですが、ネット選挙の解禁で、公職選挙法の選挙運動規制の見直しを一段落させることがあってはなりません。

なぜ、ホームページ、ブログ、メール、ツイッターといったネットツールが選挙運動の手段として使えなかったかと言うと、公職選挙法が、「文書図画」(ちなみに、「ぶんしょとが」と読みます。)という概念を立て、文書図画による選挙運動をまず包括的に禁止し、その上で、一定のものだけの使用を認めるという規制を行ってきたからです。

文書図画は、「文字若しくはこれに代わるべき符号又は象形を用いて物体の上に多少とも永続的に記載された意識の表示」(総務省の解説書)を指すとされ、公職選挙法は、これらのうち、頒布できるものを、通常はがき、ビラ、新聞広告などに、また、掲示できるものを、ポスター、立て札、ちょうちん及び看板の類などに限定しています。

しかも、頒布又は掲示が認められている個々の文書図画については、大きさなどについて実に細かい規制がなされています。
たとえば、ちょうちんの類は、高さ85センチ、直径は45センチ以内といったふうに。

文書図画の規制は、そもそもホームページなどが存在することを想定していないのですが、文書図画の規制そのものが、選挙運動をきわめていびつなものにしていることを忘れてはなりません。文書図画に限らず、我が国の選挙運動に関する細かな規制は、少なくとも主要国のなかで類を見ないほど厳しく、珍奇なものと言って差し支えありません。

ネット選挙の解禁を突破口として、選挙運動規制の抜本的な見直しが進められることを期待します。


辻原登『冬の旅』

2013年7月15日
から 久元喜造

辻原登『冬の旅』

阪神・淡路大震災が取り上げられている、というのが、この小説を読み始めた理由です。
それにしても、理不尽で、不条理で、何の救済ももたらされない、重い小説でした。

9つの章 ― 「孤独」「回想」「カラス」「郵便馬車」「春の夢」「凍結」「幻」「菩提樹」「鬼火」 ― は、ヴィルヘルム・ミューラーのの「冬の旅」からの抜粋です。「冬の旅」は、シューベルトの歌曲で知られます。

物語は、2008年6月8日、秋葉原の事件の日、5年の刑期を終え、主人公の緒方隆雄が出所するところから始まります。
物語は、主人公の回想という形を取り、進行していきますが、緒方に生きる場所はなく、凄惨なラストを迎えます。

阪神・淡路大震災の場面は、次のように始まります。

「なぜかその朝はカラスが鳴かなかった。かなり冷え込んで、いつもより長くフトンの中で愚図愚図して、緒方がロフトから降りたのは5時を回っていた。朝刊を取りに行こうとしたとき、何か巨大なものが近づいてくるようなゴーッという音がして、下から突き上げてくる大きな揺れが襲った。」

緒方は、このとき、新興宗教集団に属していて、被災地の神戸で活動します。
地震直後の神戸の惨状は、「4 郵便馬車」で描かれます。
緒方は、被災地で活動する中で、看護師の鳥海ゆかりと知り合い、結婚します。「5 春の夢」です。
そして、「7 幻」で、妻となったゆかりが失踪するところから、緒方の人生は暗転し、転落していくのです。
ゆかりの人生も不条理なものでした。

緒方も、ゆかりも、本人の力ではどうすることもできない宿命のようなものに突き動かされ、破滅への道をたどっていきます。
物語では、この時代の、神戸、そして大阪の街がたんねんに描かれています。雑誌『大阪人』の記者までもが登場します。
そして、街では、現代の地域社会のさまざまな矛盾が、断層のようにむき出しになっています。

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走り回っている毎日ですが、1日に、5分でも、10分でも、読書の時間を持ちたいと思います。

 


神戸市立大学セミナーハウス

2013年7月14日
から 久元喜造

北区道場、長尾、大沢訪問

昨日は、北区の淡河町に続き、道場町、長尾町、大沢町を訪問しました。
神戸市の北部に位置する地域です。

道場町では、「道場のまちづくり懇談会」が開催され、30分弱、地域や自治体が直面している課題について、感じるところをお話をさせていただきました。
懇談会には、町内の連合自治会の会長さんなど幹部のみなさん、民生委員、消防団、婦人会、PTA、老人クラブなど、地域活動を行っておられるリーダーのみなさんが出席されていました。

道路整備、児童館のあり方、自然保護活動、火災発生時の通報のありかたなどさまざまな課題についてご意見をいただき、道場町が抱える課題の一端に触れさせていただきました。
とてもありがたい機会でした。

続いて、長尾町を訪問。
長尾町でも、地域のみなさんと、ほ場整備に伴う道路移管の問題などについてご意見をいただきました。

大沢町では、「ふれあい祭り in 大沢」が始まろうとしていましたが、雷鳴がとどろき、どしゃぶりに雨になってしまい、テントや倉庫の中で、ご挨拶させていただきました。

道場町では、神戸市立大学セミナーハウス まで足を伸ばしました。

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せっかくの神戸市の施設ですから、北区の地域づくりのためにもっと活用できればいいですね。
来所される学生のみなさんに、北区の魅力について知ってもらう試みがあってもよいのかもしれません。