久元 喜造ブログ

2019年4月25日
から 久元喜造

地方選挙・低投票率の背景 ②


自治体選挙の投票率は、以前から、郡部などでは高く、大都市部では低い傾向が見られてきました。
自治体の規模が小さいほど、住民との距離が近く、その存在が身近に感じられるからだと考えられます。

私は、1980年代、青森県で選挙管理委員会事務局長を務めましたが、当時の投票率は、とくに郡部で極めて高く、たとえば、津軽地方にあった当時の木造町の町長、町議会議員選挙の投票率は、以下のとおり、90%を超えていました。
町を二分する、極めて激しい町長選挙だったと記憶しています。

木造町長選挙(1983.4.24 執行)95.01% (有権者数 16,963人)
木造町議会選挙(1984.2.26 執行)92.69% (同 15,826人)

木造町は合併し、つがる市になりました。
つがる市の市長選挙は、直近も含めて、無投票が続いています。
直近の、つがる市議会議員選挙(2019.1.27 執行)の投票率は、72.36%(有権者数 28,376人)でした。

大都市部よりもかなり高い水準ですが、旧町のときよりも、20%程度、低下しています。
合併により、市長・市議会との距離が遠くなったからかもしれません。
合併だけが原因であるとは断定できませんが、旧郡部においても、お互いに顔が見えていた地域社会が変容してきている可能性もあります。

4月21日に執行された統一地方選挙では、町村長・町議会議員選挙の投票率とも、過去最低となりました。
投票率の低下傾向の背景には、人々の投票行動に影響を与える構造的な変化があるように思えます。
投票率低下の背景や対応策を含め、各方面から多角的な考察・分析が求められるように感じます。(続く)


2019年4月19日
から 久元喜造

地方選挙・低投票率の背景 ①


自治体選挙の投票率が低下し続けています。
神戸市議会議員選挙の投票率は、39.98%と、40%を割り込み、前回に続き、過去最低となりました。

地方自治への関心の低下を嘆く社説や論説が多い一方、その背景、要因を分析した記事・解説は多くはありません。
そのような中、現場を取材し、要因について触れた記事がありました(朝日新聞 平成31年3月25日朝刊)。

「「住民の声を」形だけでは 低投票率 高砂市から考える」と題されたこの記事では、建設が進む新庁舎の基本設計に関し、市が行ったパブリックコメントが取り上げられていました。
これまでのパブリックコメントに対し「意見ゼロ」が半数以上に上ったことについて、
「説明会や意見公募を形だけ済ませればいい、では逆に市政への無関心を誘発し、投票率の低下にもつながっていく」という専門家の声を紹介しています。
さらに、別の専門家の意見として、「地方衰退と均質化の中で政治的な地域性が失われてきた」こと、「決して政治的な争点がなくなったわけではないのに、(オール与党化などで)争点が見えにくくなった」ことが指摘されます。
そして、「今年2月の沖縄県民投票のように、民意が一顧だにされないような現実を見せつけられれば無力感は強まる」と締めくくります。

この分析について、どう思われるでしょうか?
高砂市での選挙の投票率が低いのは、市のパブリックコメントのやり方が悪いからなのか?
沖縄県の住民投票に対する政府の対応が悪いからなのか?

率直に申し上げて、ちょっと違うのではないかと感じます。
長年続いてきた、地方選挙の投票率の低下には、もっと根本的な要因があるような気がします。(続く


2019年4月15日
から 久元喜造

熊本地震から3年


熊本地震から、昨日で3年となりました。
神戸市では、地震発生後、直ちに情報収集を開始し、緊急消防援助隊として消防職員が現地に向け出発しました。
関係方面からの要請を受け、4月16日には水道局の応急給水隊を、17日には危機管理室の先遣調査隊を派遣しました。
4月18日、「平成28年熊本地震 緊急応援対策本部」を設置し、各局から次々と職員を派遣しました。
派遣された職員のみなさんは、避難所の運営、健康・衛生面での支援、廃棄物の処理、応急給水、下水道施設の復旧支援、建物の応急危険度判定など幅広い支援業務に従事しました。

任務を終えて帰還した職員から、現地の状況について報告を受けたことを想い起します。
阪神・淡路大震災の災害対応に経験のある職員からは、当時の経験を踏まえながら、必要なアドバイスを行ったとの話も聞きました。
同時に、多くの職員からは、被災自治体で活動する中で生起している事象について、生々しい説明を聞きました。

この3年の間、熊本県内へは、神戸市民や市内企業からの支援も活発に行われてきました。
さまざまな活動に従事し、支援に貢献していただいてきたすべてのみなさまに、感謝を申し上げたいと思います。

神戸市は、今年度、熊本市に1名、益城町に2名の職員を派遣します。
このほか、引き続き、東日本大震災被災自治体の名取市、石巻市、南三陸町に、4名の職員を派遣します。
健康に留意し、復興のために頑張ってほしいと願っています。

神戸市も、熊本市も、震災で大きな被害を受け、試練を乗り越えてきました。
お互いの経験や想いを共有し、議論を重ね、災害への備えを強化していく努力を重ねていきたいと、改めて感じます。


2019年4月12日
から 久元喜造

「役所らしくない」広報願望が墓穴を掘る。


少し前のことですが、防衛省自衛隊滋賀地方協力本部による自衛官募集ポスターが物議を醸しました。
煽情的としか言えないようなデザインが批判を受け、結局は撤去に追い込まれました。
この問題では、セクハラかどうかが議論になったようですが、騒ぎの背景には別の要因があるように思えます。

それは、役所の広報担当者の間に広がる 「役所らしくない」広報をしたいという欲求 です。
マスメディアに取り上げられ、ネットでも話題になることに躍起になり、「役所らしくない」、過激なキャッチコピーやデザインに走る傾向です。

正直、あまり良いことではないと感じます。
過激さを求める傾向は、過激さを競う競争をエスカレートさせます。
全国の自治体が、煽られるかのように「役所らしくなさ」を競い合うのは、滑稽です。
行政の広報には、やはり品位と節度が求められるのではないでしょうか。

そんなに頻繁ではありませんが、「役所らしくないものを考えてみました」と言われ、中身を見ると、首を傾げざるを得ないものもあります。
大事なことは、大手広告代理店の全国画一的発想に踊らされるのではなく、自治体職員が自分の頭で考えることではないかと思います。
神戸市内には、優れたクリエイターやデザイナーがたくさんおられますから、地元のみなさんと自由闊達に議論してみることも大事です。

上の写真は、1月に市役所の市民ギャラリーで開催された展示の模様ですが、伝えたいものがまっすぐに伝わってくる内容でした。
ポスターなどの展示は、中島和也課長をはじめ住宅都市局耐震推進課のみなさんが、神戸の企画会社とコラボして考案したのだそうです。
デザイン的にも優れていると感じました。


2019年4月9日
から 久元喜造

マイナンバーカードをお取りください。


先日の神戸新聞で、神戸市がマイナンバーカード申請を加速させるため、商業施設などでの「出前受け付け」に力を入れていることが報道されていました。
試験的に、ショッピングモールでマイナンバーカード申請を受け付けたところ、かなりの反響があったという記事でした。
兵庫区のショッピングモールに臨時窓口を設けたところ、個人番号通知カードや身分証明などを事前準備する必要があったにもかかわらず、連日、多くの方にお越しいただいたようで、ありがたく感じています。
区役所などでは、顔写真を無料で撮影 し、カード交付の手続きを分かり易く案内していますので、ぜひお越しください。

マイナンバーカードは、是非、取得していただきたいと思います。
ネット社会の進展の中で、さまざまな場面で、マイナンバーが使われていきます。
これからは、就職してから、会社内での手続き、医療、介護などさまざまな分野でマイナンバーが必要になってきます。
本人が本人であることを証明するマイナンバーカードは、あらゆる局面で、ますます重要なものとなっていくことでしょう。
マイナンバーカードを使えば、住民票や印鑑証明といった証明書を、区役所に行かなくても、コンビニなどにある「キオスク端末」で簡単に受け取ることができます。
神戸市では、手数料も窓口の半額(戸籍の証明書は150円引き)にしています。(必要な手続き
区役所などで証明書発行に携わっている職員を、窓口での相談業務に振り向けていけば、一人ひとりの市民のみなさんに寄り添った行政サービスを充実させていくことができます。
マイナンバーカードは、市民のみなさんと行政の双方に、大きなメリットをもたらします。


2019年4月7日
から 久元喜造

湊かなえ『ユートピア』


物語の舞台は、太平洋を望む、人口約7,000人の港町、鼻崎町です。
近隣の大きな市に吸収合併されることなく、町として独立できているのは、日本有数の食品加工会社の国内最大工場があるからでした。
岬に向かう途中には、どの区画からも海を見渡せるように造成された〈岬タウン〉があり、都会から越してきた芸術家などが住んでいます。
古くから町に住み、商店街でお店を営んでいる地元の人たちは、外から移り住んできた人たちの協力を得て、商店街の活性化に取り組みます。
新旧住民が微妙な心理のずれを気にしながらも、地域のためにいっしょになって汗を流す・・・物語は明るい雰囲気で始まるのですが・・・

主要な登場人物は、同じ年代の小学生の女の子を持つ、新旧住民の若い母親です。
帯には、「善意は、悪意より恐ろしい」とありますが、確かに、主要登場人物を含め、物語には悪役は登場しないし、あからさまな「悪意」を示すことはありません。
そして「善意」に基づく行動は、ストーリーの中で重要な役割を演じます。
しかし、むしろ印象的なのは、それぞれの登場人物が相手の気持ちを汲み取ろうとする熱意です。
相手が何を考えているのか、自分の言動に対してどのように感じたのかについて、常に神経を研ぎ澄ましています。
そしてそのような他人の心理への詮索は、ちょっとしたきっかけで疑念を生み、ネット上での書き込みなどを通して不信が芽生え、増幅していきます。

読み終わって何かスカッとするものはないと言ってよいでしょう。
解説では、港かなえさんの特徴の一つとして「いわゆる「イヤミス」と呼ばれる極上の後味の悪さ」が挙げられていましたが、そのとおりだと感じました。


2019年4月4日
から 久元喜造

令和への改元に向けての対応


昨日の毎日新聞全国面に、改元に向けた神戸市の対応が紹介されていました。
元号が「令和」に決定され、5月1日に「平成」から「令和」に改元されることを受け、神戸市では、万全の対応を進めています。

公文書上の元号をどう表記するのかについて、条例・規則に特別の定めはありませんが、神戸市では、文書の発信日など日付の表記については、原則として元号を用いています。
例外として、外国宛の文書などについては、西暦を使用しており、外国人にも対応が必要な住民票などについては、元号・西暦を併記しています。

改元に伴い、情報システムの文書について、元号を一律に「平成」から「令和」に変更する必要があります。
神戸市が保有する情報システムは、全体で、275あり、市民サービスに直結する、住民情報や税、福祉など規模の大きい22システムについては、平成30年度から準備を進めてきました。
具体的には、元号の公表予定日の4月1日までに、文書の中にある元号の部分を、「平成」からダミーの文字列に仮置きし、システムの修正を行って、テストを行うなどの対応を進めてきました。

このような準備作業を行い、4月1日、「令和」決定の日を迎えました。
直ちに、ダミー文字列を「令和」に置き換える作業を開始し、5月1日までにシステムの対応を完了することができる見込みです。
現在、各システムを管理する組織に対し、最新の対応状況をあらためて確認しています。

すでに発行されている許可証、契約書など有効期限を定めたものには「平成32年3月31日」など、改元後の日付を表記しているものがありますが、改元によって効力に影響はなく、特段の対応は必要ないと考えています。


2019年4月1日
から 久元喜造

「令和」決定の日、神戸市役所の入庁式。


今日の午後、ポートアイランドの国際会議場で、神戸市の新規採用職員への辞令交付式が行われました。
開会に先立ち、神戸室内管弦楽団による歓迎演奏があり、モーツァルトのディヴェルティメント ニ長調KV.136より第1楽章、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」などが演奏されました。

国歌斉唱の後、私から、259名の職員の代表に辞令を交付し、代表職員による 宣誓が行われました。
私から歓迎の言葉を申し述べました。

「私たちは色々な意味で戦いをしています。
巨大地震、津波など災害のリスクとの戦い,サイバーテロや未知の病気など予見しがたいリスクとの戦い、貧困や格差といった社会的不公正との戦い、などです。
決して楽な仕事ではありませんが、苦楽を共にし,私たちに与えられた任務を全うしていきましょう」

「組織に属するということは、組織に迎合することではありません。
自分自身の音色を大切にし、異なる音色を奏でる周りの人々を尊重し、さまざまな音色が響き合う、素晴らしい組織をつくりあげていきましょう」

「震災などの苦難を乗り越え、市民のために尽くしてきた私たちの組織の歩みを大切にし、同時に、みなさんの新鮮な感覚を私たちの組織に吹き込み、よりよいものにしていく努力を、一緒に行って行きましょう」

きょうは、折しも、辞令交付式の直前、新しい元号「令和」の発表が行われました。
新元号に込められている、美しく、平和な社会を築いていこうという願いと決意を、神戸市民は共有したいと思います。
典拠として紹介されているように、咲き誇る梅の花々のごとく、新規採用職員のみなさんが、私たちとともに、人生の花を咲かせていただきたいと願っています。


2019年3月29日
から 久元喜造

谷上・三宮間、540円 から 280円に大幅引き下げ


 北神急行 は、神戸電鉄との結節点の谷上駅から、新幹線との乗換駅、新神戸までをおよそ8分、神戸の玄関、三宮までをわずか10分で結びます。
谷上駅から新神戸駅までは、北神急行が、新神戸駅から三宮を経て終点の西神中央までは、神戸市営地下鉄が運行しています。
抜群のアクセス性を持ちながら、運賃が高いこともあり、利用者数は伸び悩んできました。

高すぎる運賃を引き下げて、北神急行の利用者増を図るため、昨年暮れ、阪急電鉄との間で、神戸市交通局が北神急行の経営を引き継ぐ方向で交渉を開始しました。(2018年12月28日のブログ
交渉の結果、神戸市は、阪急電鉄・北神急行から、198億円 (税込では、217.8億円)で資産の譲渡を受けることで基本合意し、今日記者発表を行いました。

この金額は、資産の簿価を大きく下回るとともに、交通局が専門機関に依頼して行ったデューデリジェンスによる資産の評価額の範囲に収まっています。
この譲渡額を前提に、将来の利用客数を見込み、地下鉄事業が安定的に経営できるようにしていくことが求められます。

運賃をどの程度まで引き下げられるかについては、法に基づく手続きが必要であり、現時点で確定的なことは申し上げられませんが、神戸市としては、たとえば、谷上・三宮間 は、現在の 540 円 を、280円  に引き下げたい と考えています。
大幅な引き下げになります。
実施時期 は、2020年度中、遅くとも、2020年10月の実施 を目指します。
交通事業の一層の効率化を進めるとともに、兵庫県に引き続きご支援をお願いし、一般会計からの支援についても市会の理解を求めていきたいと存じます。


2019年3月26日
から 久元喜造

「パワポの使用が禁止」とは驚いた!?・・・


パワポの活用について、先日のブログ で、内部での議論には要らないのではないか、と記しました。
パワポ資料の作成にはかなりの手間がかかるはずで、「働き方改革」の面からも内部説明のための労力は減らすべきではないかと考えたからです。
私への説明を含め、内部事務に使う手間暇は、市民のために使われるべきです。

ところが、民間企業の方から、市役所職員の話として、奇妙なことを聞きました。
市役所でのパワポの使用が禁止になった、というのです。
その職員の話によれば、民間のみなさんも入る会議で、会議の議題について説明するためにパワポで資料をつくったところ、上司から「パワポで資料をつくらないようお達しが来た」と言われ、つくり直すよう指示された、というのです。

愕然としました。
市民のみなさんをはじめ、市役所の外部への説明はできるだけ分かり易く行うことが大事で、パワポはそのための有力な手段です。
どうしてこんなことになってしまうのでしょうか?

市長・副市長会議での結論は、各局の主管課長が出席する会議で示され、局内などに周知されます。
この会議で説明した福島国武秘書課長の話では、「パワポをなるべく使わないようにするのは、内部事務を減らし、職員の負担を軽減するためであって、外部への説明には引き続き使ってください、ということを繰り返し説明しました」とのことでした。
組織の中で伝言ゲームのようなことが起き、趣旨が伴わず、結論だけが伝わっていったのでしょうか。
大きな組織の中で意思疎通を図る難しさを改めて痛感させられました。
繰り返し、繰り返し、「働き方改革」の趣旨を説明し、疑問に答えていく以外、方策はなさそうです。