久元 喜造ブログ

2018年1月30日
から 久元喜造

鈴蘭台「ブックストリート」の広がり


今日の午後は、鈴蘭台駅前再開発の工事現場を視察しました。
駅前ビルが出来上がりつつあり、無事故で工事を進めていただいている関係者のみなさんから進捗状況について説明を受けました。

途中、神戸新聞(2017年12月28日)に紹介されていた「ブックストリート」のお店にお邪魔しました。
記事によれば、「小説や絵本、生活の知恵に関する本」が並び、「近隣住民らが利用し、本を通した交流が広がりつつある」とのことでした。

お伺いしたのは、「ファミット」(鈴蘭台東町)。

洋服や素敵なグッズを販売しているお店ですが、カフェのコーナーがあり、飲み物を片手に読書されている方の姿もありました。
お店の外壁に本棚が設置され、近くの住民みなさんから寄付された本が並んでいます。
店主の高木かおりさんからお話をお伺いできました。
周りのみなさんの協力で、この本棚がつくられ、本を借りた方で返されなかったことはないそうです。

すごそばにある「レガート」にも伺いました。
店主は、井口秀人さんです。

内部のデザインはとてもおしゃれです。
大きなテーブルを囲んで、読み聞かせなど、さまざまなイベントが行われているそうです。

「ブックストリート」への参加は、5店まで広がっているとお聞きしました。
気に入ったお店に集まり、好きな本を読んでゆったりとした時間を過ごしたり、本好きの仲間が集まって読書会を開いたりできる時間と空間は、とてもかけがえのないものだと感じます。

今年の夏、神戸電鉄鈴蘭台駅と北区役所などが入る駅前ビルが完成します。
温かく、活気のある街づくりの輪が広がっていく鼓動のようなものを感じることができました。
感謝です!!!


2018年1月28日
から 久元喜造

瀧井一博『伊藤博文 知の政治家』


著者は「あとがき」の中でこう記しています。
「歴史好きの人ならば、・・・真っ先に”遊び人”ということが思い浮かぶだろう。確かに彼は醜聞の多い政治家である。”知”ではなく、”痴”だろう、との声が聞こえてくる気がする」

私もそのようなイメージを抱いていた一人でしたが、本書は全く異なる「知の政治家」像を提示します。
伊藤は英語を巧みに操り、津田梅子に対し、「アメリカを知る最良の本」として、トクヴィル『アメリカのデモクラシー』の英訳を渡しています。
愛読していたのでしょう。
若き日から亡くなるまで、伊藤の旺盛な知識欲には目を見張るものがあります。

本書の特徴は、単に伊藤の事績をたどるのではなく、その政治思想を明らかにしようとするところにあります。
有名な「滞欧憲法調査」で、伊藤がグナイストの憲法論を「頗る専制論」と嘆き、「議会政治と行政の調和」を主張するシュタインの国家理論に傾倒するさまが紹介されます。
伊藤は終生、憲法秩序における議会制度を不可欠のものと考え、その漸進的な実現を図ろうとしたのでした。

伊藤が目指した国家像は、「知的水準が高く、権利の保障された人民によって構成される国家」、すなわち「文明国家」でした。
そのために高等教育の発達を期すわけですが、伊藤は、自由民権運動に代表される「政談」や観念的なナショナリズムを嫌い、「利便を生み出し、経済的生活を豊かにする「実学」」の普及を目指したのでした。
伊藤が自ら立憲政友会を結成して政党政治を主導した意図や政治哲学に関する記述も興味深かったです。

丹念に史料を読み込み、「自問自答を重ねて」執筆された本書は、伊藤の思想を提示するのに成功しているように感じました。


2018年1月26日
から 久元喜造

相互不信からは何も生まれない。


神戸市役所の管理システムは、職員に対する不信に根差しているのでしょうか。
不祥事があるたびに、市民からの批判にさらされてきたから、ということがあるのかもしれませんが、職員が悪いことをする、という前提に立って、管理側の人々は、職員に不合理な事務処理手続きを課し、膨大な事務負担を課しています。

管理側職員の不信の目は、市民にも向けられます。
政策的見地から、新しい給付措置を講じようとしても、市民が悪いことをするのではないか、不正を働くのではないか、という疑念から、信じられないような重い事務負担、煩瑣な手続きをつくろうとするのです。
私は、予算編成の中でそのようなことがないように、何度も、何度も、何度も、お願いをしましたが、信じられないようなことが起きていることに驚愕しました。

神戸市の行政サービスは、いろいろな意味で、他都市に後れをとり、抜本的な改革が必要です。
市民サービスの提供に当たっては、いかに市民の事務負担を軽減し、わかりやすく、簡単な手続きで公正な行政サービスが受けられるようにすることが何よりも重要です。
このことは、職員のみなさんにとっても必要なことなのです。
職員一人ひとりの負担が増えている中、職員の負担を軽減し、疲労を回復させ、英気を養って、神戸市民のために頑張ろうという意欲を生み出していくためにも必要なのです。

このような残念な事態が続いていることに、本当に責任を感じます。
私は、帰宅し、瞑目し、改めて、自分のふがいなさに眩暈がする想いでした。
すべては私の責任です。
すべては、私のリーダーシップの不足です。
明日、また、気を奮い立て、管理側の皆さんと粘り強く向き合い、交渉し、良い方向を見出していきたいと思います。
頑張ります!!


2018年1月25日
から 久元喜造

身寄りのない方が遺されたお金は・・・


ひとり暮らしのお年寄りが増える中、ひっそりと亡くなる方が増えています。
まったく身寄りのない方、親族などと連絡がとれない方のほか、実のお子さんがおられても「いっさい関わりたくない」と連絡すら拒まれるケースもあります。
このような場合、葬祭を行うのは、自治体です。

行旅病人及行旅死亡人取扱法、墓地・埋葬等に関する法律の規定に基づき、自治体が埋火葬を行いますが、その費用は、故人が持っておられた現金、遺留金を充て、不足するときは自治体が負担します。
残された遺留金は、相続人に引き渡さなければなりません。

民法の規定によれば、引き取り手が不在である場合は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申し立てを行います。
しかしながら、申し立ての際に求められる予納金は、家庭裁判所により、30万円や50万円、ときには100万円にもなり、遺留金が不足する場合には、相続財産管理人の選任申し立てを行うことが困難です。
このような場合には、少額の遺留金が自治体に残されます。
遺留金は、神戸市には所有権がありませんから、本来持っていてはいけないお金なのですが、現実には、何の法的根拠がないまま増え続け、神戸市の場合、平成29年3月末現在で4,600万円余りとなっています。

指定都市市長会では、遺留金を保管する根拠法を制定し、各自治体の実情に応じて有効に活用できる仕組みづくりを国に提言していますが、実現に至っていません。
そこで、神戸市では、全国では初めて、遺留金の取扱いに関する条例の制定を検討しています。
家族のありようが変容しているのに、制度が現状に追い付いていない中、自治体の模索が続きます。


2018年1月21日
から 久元喜造

三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』

今年は、明治維新150年の年です。
明治維新を無条件に礼賛する必要はありませんが、少し前に掲載された毎日新聞「記者の目」のように、ひたすらその負の部分ばかりを強調するのは、やはり行き過ぎと感じます。
我が国は、東アジアの各国が列強に包囲される中にあって、独立を保ち、アジアで初の憲法を制定し、近代国家としての道を歩むことができました。
このことがいかにして可能となったのか、そして、その後、どのような経過をたどり、破局を迎えることになったのか、冷静な考察が必要です。

本書は、「序章 日本がモデルとしたヨーロッパ近代とは何であったのか」で始まり、「第1章 なぜ日本に政党政治が成立したか」、「第2章 なぜ日本に資本主義が形成されたのか」、「第3章 日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」、「第4章 日本の近代にとって天皇制とは何であったのか」の各章が続きます。

含蓄に富む考察にあふれますが、興味深かったのは、幕藩体制と明治政府との連続性です。
幕藩体制には、立憲主義の特質である権力の相互監視と相互抑制が組み込まれていたと説かれます。
そして、幕府を支えていた人材の多くは、明治政府に参画したのでした。

第2章で登場する重要人物は、やはり大久保利通です。
卓抜した指導力を発揮して殖産興業政策を強力に推進し、「自立的資本主義」を確立していきました。
そして、大久保の暗殺の後、経済政策では松方正義が、制度面では伊藤博文がその後を継ぎ、近代日本の骨格が形作られていったのでした。
今、話題の西郷隆盛は、本書にはほとんど登場しません。
43年前に聴いた三谷先生の「日本政治外交史」の講義を想い起しながら読み終えました。


2018年1月17日
から 久元喜造

平成30年「1.17のつどい」


早朝、東遊園地で開催された「阪神・淡路大震災1,17のつどい」に参加しました。
あの震災から23年の年月が流れました。
雨が降りしきる中、たくさんのみなさんが参加されました。
灯籠の前で、「阪神淡路大震災1.17のつどい実行委員会」委員長の藤本真一さんにお目にかかり、これまでのご苦労に感謝を申し上げました。

5時46分、黙祷。
「慰霊と復興のモニュメント」前のステージで、式典が開始されました。
ご遺族を代表し、次男を亡くされた崔敏夫さんが追悼の言葉を述べられました。
私からも追悼の誠を捧げました。

7時20分から、市役所で、区役所との情報連絡を含む訓練が行われ、その後、幹部のみなさんに挨拶を申し述べました。
震災の記憶と、そこから得られた教訓、想いを、次の世代にしっかりと伝えていかなければなりません。
神戸は、国内外からの支援をいただき、街を復興させることができました。
感謝の気持ちを抱きつつ、被災地を含め、国内外の都市、地域に貢献し続ける都市であり続けたい、そのような自らのありように誇りを持ち続けることができる都市でありたいと念じます。

きょう一日、冷たい雨が降り続きましたが、東遊園地を訪れる人の波が途絶えることはありませんでした。


2018年1月16日
から 久元喜造

徹底した業務改革が必要だ。


昨年は、恒例になっている御用納めの幹部のみなさんへの挨拶はとりやめました。
年末年始、忙しい幹部のみなさんに2回も14階会議室に集まってもらう必要はありません。
私にできるささやかな業務改革です。

御用始めに、幹部のみなさんにお願いしたのは、徹底した業務改革の推進でした。
このことは、以前からもお願いしてきたのですが、残念ながらあまり進んでいません。

業務改革は待ったなしです。
神戸市は、震災に起因する財政危機を乗り切るため、徹底的な行財政改革、とくに大幅な職員の削減を断行しました。
震災の年の平成7年度に、21,728人いた職員は、平成27年度には、14,538人にまで削減しました。
平成29年度は、14,305人です。
20年間の削減率は、33%で、全地方公務員の削減率、16%の2倍以上になっています。

一方、この20年以上の間、神戸市の仕事は増え続けています。
新しく出来た事務、大幅に事務量が増えた仕事としては、介護保険、児童・高齢者虐待対策、南海トラフ地震対策、国民保護法制、サイバーテロ対策、中学校給食、いじめ対策、成年後見、空家・空地対策、インフラ老朽化対策など枚挙にいとまがないほどです。

職員数が大幅に減少する中で、仕事が増え続けているということは、職員一人当たりの負担が大幅に増えていることを意味します。
今までの仕事のやり方を漫然と続けることは、もうとっくに限界にきています。
市民政サービスを向上させ、職員の負担を減らすためにも、ICTやAIを活用した徹底的な業務改革を仕切り直したいと考えています。


2018年1月13日
から 久元喜造

東京はどこから人口を集めているのか。


昨日、地方創生を担当されている内閣府幹部が神戸市役所に来られ、年末の税制改正に盛り込まれた「地方における企業拠点の強化を促進する特例措置の延長・拡充」(2017年12月31日のブログ)など来年度の税制改正、国家予算の内容について説明してくださいました。
わざわざ神戸までお越しいただき、丁寧に説明をいただいたことに感謝しております。

いただいた資料の中に、東京圏への転出超過人口が多い自治体に関するデータ(2016年)がありました。
これを見ると、東京圏に流出している人口の多い自治体は、大阪市、名古屋市、仙台市、札幌市、福岡市、神戸市、新潟市、広島市と続きます。
東京圏に多くの人口が流出している自治体は、東京以外の大都市であることがわかります。

三大都市圏の大都市の東京圏への転出超過数は、以下のとおりです。
大阪市  3388人
名古屋市 3265人
神戸市  2221人
京都市  1304人

かつての人口移動のイメージは、北海道、東北、九州などの地方圏から、東京圏、中部圏、近畿圏の三大都市圏に流出しているというものでした。
それが大きく変わり、東京圏に絶対数として多くの人口が流出しているのは、東京圏以外の大都市になっているわけです。

神戸市の 2020ビジョン では、東京圏への転出超過の解消を掲げています。
非常に難しいテーマですが、国の施策を有効に活用し、取り組みを進めていきたいと考えています。
同時に、国土政策として、東京以外の大都市を含む地方圏から東京圏への人口流入を食い止めるための、強力な政策展開が求められます。

 


2018年1月8日
から 久元喜造

平成30年神戸市成人お祝いの会


きょう、1月8日は、成人の日です。
神戸市の成人お祝いの会は、例年、ノエビアスタジアム で開催していますが、現在、ハイブリッド芝導入の工事中で使えないため、今年は、グリーンアリーナ神戸 で、第1部と第2部に分けて開催しました。

黙祷が捧げられた後、私からは、現実の世界の中で大人として生きていくためには、ネット社会を漂流することなく、現実の世界と向き合い、現実と格闘することが不可欠であり、目の前にあるものを自分の目で見、聞こえてくる音に耳を傾け、漂ってくる香りを嗅ぎ、自分の手が触って感じる感覚を大切にしていただくようお願いしました。

決して静まり返っていたわけではありませんが、新成人のみなさんが、北川道夫市会議長と私の挨拶に耳を傾けてくれたことはうれしかったです。

お祝いの会を企画、運営してくれた11人の代表のみなさんに、花束をお贈りしました。

第2部では、神戸出身で、新成人でもあるシンガーソングライターの井上苑子さんのライブが華やかに行われました。
最後にみんなで「しあわせ運べるように」を合唱し、新成人代表の一人、入口桜花さんの発声により、一本締めで閉められました。

新成人のみなさんのこれからの人生が素晴らしいものであるよう、お祈り申し上げます。

 


2018年1月6日
から 久元喜造

全く違うジャンルの本なのに・・・


年末年始は、2冊の本を並行して読みました。
1冊は、瀧井一博『伊藤博文 知の政治家』
県政150年、明治維新150年の今年、初代兵庫県知事を務めた明治の元勲の実像に改めて近づきたいと思ったのです。

もう一冊は、池上永一『ヒストリア』
沖縄とラテンアメリカを舞台にした壮大なファンタジーノーベルです。

まったく異なるジャンルの本を同時に読み進めるのはよくすることですが、今回は、本のジャンルも、扱っている世界もまったく違っているのに、ほとんど同じ内容の記述に遭遇したのには驚きました。

『伊藤博文』の筆者が強調するように、伊藤博文は、教育を重視し、人材育成において実学を重んじました。
伊藤にとって、「教育とは非政治的なものでなければなら」ず、「国民を実業にいそしむ専門的職業人に仕立てるべきもの」でした。
「実生活に根差した経済活動」に価値を置き、「政談の徒」を忌み嫌いました。
伊藤は、「明治初年から国民の政治参加を保障する議会制度の導入を促」し、後には自ら政党を組織しますが、あくまでこれを「漸進的」に実現しようとしました。

打って変わって、『ヒストリア』の主人公の知花煉は、ボリビアの地で革命を企てる恋人の革命家チェ・ゲバラにこう叫びます。
「私なら、50年かけて人材教育をする。まずは経済の仕組みを学ばせるわ。憲法や法律は豊かになった後、社会に合わせて変えていけばいい」
恋人からボリビア革命を否定され、見捨てられた革命家は、山中に孤立し、最期を迎えます。

全く関係がない2冊の本が見えない糸でつながっているような不思議な感覚に、年の初めから襲われたのでした。