ひとり暮らしのお年寄りが増える中、ひっそりと亡くなる方が増えています。
まったく身寄りのない方、親族などと連絡がとれない方のほか、実のお子さんがおられても「いっさい関わりたくない」と連絡すら拒まれるケースもあります。
このような場合、葬祭を行うのは、自治体です。
行旅病人及行旅死亡人取扱法、墓地・埋葬等に関する法律の規定に基づき、自治体が埋火葬を行いますが、その費用は、故人が持っておられた現金、遺留金を充て、不足するときは自治体が負担します。
残された遺留金は、相続人に引き渡さなければなりません。
民法の規定によれば、引き取り手が不在である場合は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申し立てを行います。
しかしながら、申し立ての際に求められる予納金は、家庭裁判所により、30万円や50万円、ときには100万円にもなり、遺留金が不足する場合には、相続財産管理人の選任申し立てを行うことが困難です。
このような場合には、少額の遺留金が自治体に残されます。
遺留金は、神戸市には所有権がありませんから、本来持っていてはいけないお金なのですが、現実には、何の法的根拠がないまま増え続け、神戸市の場合、平成29年3月末現在で4,600万円余りとなっています。
指定都市市長会では、遺留金を保管する根拠法を制定し、各自治体の実情に応じて有効に活用できる仕組みづくりを国に提言していますが、実現に至っていません。
そこで、神戸市では、全国では初めて、遺留金の取扱いに関する条例の制定を検討しています。
家族のありようが変容しているのに、制度が現状に追い付いていない中、自治体の模索が続きます。