今年は、明治維新150年の年です。
明治維新を無条件に礼賛する必要はありませんが、少し前に掲載された毎日新聞「記者の目」のように、ひたすらその負の部分ばかりを強調するのは、やはり行き過ぎと感じます。
我が国は、東アジアの各国が列強に包囲される中にあって、独立を保ち、アジアで初の憲法を制定し、近代国家としての道を歩むことができました。
このことがいかにして可能となったのか、そして、その後、どのような経過をたどり、破局を迎えることになったのか、冷静な考察が必要です。
本書は、「序章 日本がモデルとしたヨーロッパ近代とは何であったのか」で始まり、「第1章 なぜ日本に政党政治が成立したか」、「第2章 なぜ日本に資本主義が形成されたのか」、「第3章 日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」、「第4章 日本の近代にとって天皇制とは何であったのか」の各章が続きます。
含蓄に富む考察にあふれますが、興味深かったのは、幕藩体制と明治政府との連続性です。
幕藩体制には、立憲主義の特質である権力の相互監視と相互抑制が組み込まれていたと説かれます。
そして、幕府を支えていた人材の多くは、明治政府に参画したのでした。
第2章で登場する重要人物は、やはり大久保利通です。
卓抜した指導力を発揮して殖産興業政策を強力に推進し、「自立的資本主義」を確立していきました。
そして、大久保の暗殺の後、経済政策では松方正義が、制度面では伊藤博文がその後を継ぎ、近代日本の骨格が形作られていったのでした。
今、話題の西郷隆盛は、本書にはほとんど登場しません。
43年前に聴いた三谷先生の「日本政治外交史」の講義を想い起しながら読み終えました。