久元 喜造ブログ

全く違うジャンルの本なのに・・・


年末年始は、2冊の本を並行して読みました。
1冊は、瀧井一博『伊藤博文 知の政治家』
県政150年、明治維新150年の今年、初代兵庫県知事を務めた明治の元勲の実像に改めて近づきたいと思ったのです。

もう一冊は、池上永一『ヒストリア』
沖縄とラテンアメリカを舞台にした壮大なファンタジーノーベルです。

まったく異なるジャンルの本を同時に読み進めるのはよくすることですが、今回は、本のジャンルも、扱っている世界もまったく違っているのに、ほとんど同じ内容の記述に遭遇したのには驚きました。

『伊藤博文』の筆者が強調するように、伊藤博文は、教育を重視し、人材育成において実学を重んじました。
伊藤にとって、「教育とは非政治的なものでなければなら」ず、「国民を実業にいそしむ専門的職業人に仕立てるべきもの」でした。
「実生活に根差した経済活動」に価値を置き、「政談の徒」を忌み嫌いました。
伊藤は、「明治初年から国民の政治参加を保障する議会制度の導入を促」し、後には自ら政党を組織しますが、あくまでこれを「漸進的」に実現しようとしました。

打って変わって、『ヒストリア』の主人公の知花煉は、ボリビアの地で革命を企てる恋人の革命家チェ・ゲバラにこう叫びます。
「私なら、50年かけて人材教育をする。まずは経済の仕組みを学ばせるわ。憲法や法律は豊かになった後、社会に合わせて変えていけばいい」
恋人からボリビア革命を否定され、見捨てられた革命家は、山中に孤立し、最期を迎えます。

全く関係がない2冊の本が見えない糸でつながっているような不思議な感覚に、年の初めから襲われたのでした。