久元 喜造ブログ

2018年2月24日
から 久元喜造

憲法に選挙制度の基本規定は必要だ。


自民党の選挙制度に関する改憲案が批判にさらされているようです。
国民的な議論が求められる重要テーマですが、私見ながら、自民党の改憲案はもっともな内容を含んでいると感じます。

憲法は、「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する方法」を法律に委ねていますが(47条)、国民の代表を選ぶ選挙制度をすべて法律に委ねている現行規定は不十分であり、選挙区を設ける場合の基本原則は、憲法の中に規定されるべきです。
この点について、自民党の憲法改正案は「各選挙区は人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない」との規定を追加するという内容を含んでいますが、妥当な考え方ではないでしょうか。

現行憲法にはこのような規定がないために、選挙区の定数配分に対しては、法の下の平等を定めた憲法第14条の規定がもっぱら適用され、1票の格差が同条に照らしてどの程度まで許容されるのかが争われてきました。
憲法第14条の射程は幅広く、選挙区を設ける際の基本原則を規定することは、第14条の存在と矛盾するものではありません。
選挙区の議席配分に関し自民党案のような原則を憲法に書き込むことが許容されないとは思えませんし、むしろ必要なことだと思います。

人口が東京に集中し、その結果東京選出の国会議員が増え続ければ、全体として東京に有利な政治・行政制度に傾いていく可能性があります。
このことが人口のさらなる東京への集中を惹起するという悪循環が生じれば、我が国の各地域に深刻な事態が生じます。
今回の自民党からの問題提起を契機として、建設的な憲法改正論議が展開されることを期待します。


2018年2月20日
から 久元喜造

開港12年の神戸空港


この2月16日、神戸空港は開港12年を迎えました。
直近の1年間の旅客数は、304万8千人(前年比13.8ポイント増)、また搭乗率も78.8%(前年比2.4ポイント増)と、いずれも過去最高の水準になっています。
そして、この4月からは、神戸空港の運営は、㈱関西エアポート神戸に移り、関西空港、大阪国際空港(伊丹)との三空港一体運用が実現します。
神戸空港は新しいステージに入ります。

振り返れば長い経緯がありました。
1960年代、国は神戸沖に空港建設を提案しましたが、神戸市民の反対は強く、1973年の市長選挙で、当時現職の宮崎辰雄市長は空港建設反対を主張して、推進派の砂田重民氏を破り当選。
これで、神戸沖の空港建設は挫折し、いろいろな経緯はありましたが、現在の関西国際空港が誕生したのでした。
宮崎市長は翻意し、現在の神戸空港建設を決断、2006年2月16日、神戸空港が開港しました。

かつて世論を二分した神戸空港でしたが、現在、大多数の神戸市民は神戸空港の存在を前提として、さらなる利活用に期待を寄せているように感じます。
神戸空港の雰囲気は明るく、ターミナルは賑わいを見せています。

廃港を主張する人々は、少なくなりました。
これまで神戸空港反対を唱え、運動を続けてこられたみなさんは、それが神戸のために良いことだと信じて活動されてきたのだと思います。
長年の主張を変えることは容易ではないと推察されますが、神戸空港にかかわる財務状況などについて丁寧に説明を行い、理解を求めていきたいと思います。
新たなステージを迎えた神戸空港が、市民のみなさんに祝福されながらさらなる飛躍を図ることができるよう、全力を傾けていきます。


2018年2月18日
から 久元喜造

池上永一『ヒストリア』


壮大なスケールのファンタジーで、わくわくしながら読みました。
1945年3月23日、沖縄本島の戦場で物語は始まります。
米軍は沖縄に殺到し、主人公の知花煉は家族を失い、魂(マブイ)までも落としてしまいます。
生き残った彼女は、米軍占領下でしたたかに生きていくのですが、米軍から追われる身となり、他人になりすまし、ボリビアに渡ります。

物語の大半は、ボリビアで展開されます。
沖縄から移住した人々には過酷な日々が待っていました。
うるま植民地、パロメティーヤと流転し、紆余曲折の末にコロニア・オキナワにたどり着きます。
彼女はボリビアの人々の中に同志を見出し、伝染病や洪水など次々に襲い掛かる試練に立ち向かい、成功と挫折を繰り返します。
プロレスの女王、謎の占い師など多彩な人物が登場し、物語はダイナミックに、そして意表を突く形で進みます。
一方、マブイであるもう一人の知花煉は、キューバに渡り、革命家チェ・ゲバラの恋人になり、ボリビアで彼の最期を見届けることに・・・
二人の知花煉はときに遭遇し、交錯し、相手になりすましたり、物語の展開を複雑なものにします。
キューバ危機が想像逞しく描かれ、「死の天使」メンゲレのようなナチスの残党まで登場し、死闘を演じるのでした。

ボリビアの風俗、人々の気質、地域社会のありよう、それに料理までもが実に細かく描かれています。
産経新聞に掲載されていた池上永一さんのインタビュー(2018年1月14日)を読み、納得しました。
『ヒストリア』には15種類ものボリビア料理がちりばめられているそうです。
破天荒なストーリーの中に、珍しいレシピなど知られざるボリビアが生き生きと描かれているのも、本書の魅力となっています。


2018年2月15日
から 久元喜造

駅前空間の点検調査


駅は通勤、通学、買い物に欠かせない重要な場所であり、地域の顔です。
駅前空間は、駅によって人通りなどに違いがあることは当然ですが、それぞれ魅力である場所であることが必要です。
駅前が寂れていて、薄汚れているようでは、寂しいものです。
この街に住み続けたい、この街に住んでみたいと思っていただけるような駅前空間でありたいものです。

私は、市内を移動するとき、少しでも時間があれば、JR、地下鉄、私鉄の駅前を歩くようにしていますが、残念ながら、管理が行き届いていなかったり、バスやタクシーへの乗り換えの案内や動線が悪かったりするようなところもあるように感じています。 

そこで、昨年11月の補正予算で、市営地下鉄・西神山手線、神戸電鉄、山陽電鉄沿線のいくつかの駅を対象に、駅前空間に関する基礎調査を行うこととしました。
街づくりの分野の研究者の方にリーダーになっていただき、大学院生や学生のみなさんとともに、とにかく駅周辺を歩いてもらって、駅前空間の現状を調べ、課題を抽出していただこうという試みです。
駅前を訪れる来街者、駅を利用する周辺住民のみなさんの声も、可能な範囲で聞き取っていただければと思います。
駅周辺の土地利用や地域で起きている事象についても考察していただければと願っています。
平成30年度には、これら沿線の全駅を見ていただき、分析・評価を進める予定です。

公共交通を便利に利用していただき、駅周辺に人口を誘導できるような街づくりを進めるためには、まず現状をしっかりと把握することが必要です。


2018年2月11日
から 久元喜造

大河ドラマ vs ファンタジー


NHKの大河ドラマは、2015年に放映された『花燃ゆ』以来見ていません。
史実が正しく描かれているのかどうかが気になってしまい、素直にドラマを楽しむことができないのです。
史実を正しく検証することが難しいことはわかっているのですが、明らかに特定の視点が入っているように思えたり、あまりにも誇張や飛躍があるように感じられたりすると、観る気が失せてしまいます。
とりわけ我が国の近代が舞台である場合には、関心が強いだけに、いつもそのような想いを抱きながら観るのは苦痛です。

その点、特定の時代や人物を描くのではなく、空想の世界が繰り広げられるファンタジーは、史実との緊張関係から解き放たれ、自由に楽しむことができるような気がします。
とくに、『精霊の守り人』は圧巻で、毎回欠かさず録画し、ようやく見終えることができました。
綾瀬はるかさんの演技はもちろん素晴らしかったのですが、架空の物語の中に、現代のさまざまな寓意がちりばめられているように感じられたからです。
国家同士の葛藤、大国の覇権への欲望、そのような中にあって弱小国が生き残る術・・・
支配者に翻弄される人々、満足な武器や食糧も与えられず戦場に駆り出される庶民・・・・
帝の神聖性、宮廷内の暗闘、親と子の葛藤・・・
超自然的なものの存在、神託の解釈、そして自然界の異変・・・・
現実には存在しない世界の衣装、建築物、家具、武具、料理なども興味深かったです。

最終回、タルシュ帝国は滅び、殺戮の限りを尽くしたラウル王子にその後の世界は託されるのですが、作者はそこに人間の再生可能性を見出したかったのでしょうか。


2018年2月7日
から 久元喜造

神戸港のコンテナ取扱個数が過去最高に。


すでに報じられていますように、平成29年の神戸港のコンテナ取扱個数が、20フィートコンテナ換算(Twenty-foot Equivalent Unit ;TEU)で291.7万個となり、過去最高を記録しました。
正確な数字は、以下のとおりです。

1994年(平成6年) 291万5,853 TEU
2017年(平成29年) 291万6,588 TEU

わずか、735TEU の差ですが、震災前の水準を上回り、過去最高となりました。
神戸開港150年の節目の年に過去最高を更新したことは、神戸港の港勢回復を印象付ける大変明るい話題であり、喜ばしく感じています。

振り返れば震災前のアジアにはまだ大きな港がなく、港湾設備の充実した神戸港は、アジアのハブ港でした。
神戸港は、かつてはコンテナ取扱量で世界2位だったこともあります。
震災前までは、国内1位の港でした。

震災により港湾施設は大きな被害を受け、コンテナターミナル全てが使用不能になりました。
港は2年で復旧しましたが、この間、神戸港で取り扱っていた貨物は釜山港などに移ってしまいました。

そこで、西日本やアジア地域の輸出入コンテナ貨物を神戸港に取り戻すために、本格的な集貨施策を展開しました。
西日本の港と神戸港を内航船で結び、神戸港で積み替えて外国の港へ運ぶようにするものです。
このような努力が功を奏し、過去最高を更新することができました。
ご尽力いただいた関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
平成30年は、300万TEU達成を目指します。


2018年2月3日
から 久元喜造

報道機関は取材を大切にしてほしい。


貴乃花親方など新聞、テレビの報道に接し、感じていることを少し記したいと思います。
長い間、報道の原点は、記者による取材でした。
記者のみなさんが、国内外の支局などで丹念に行った取材をもとに報道が行われてきました。
有力な政治家や有名人の言動も、記者会見や囲み取材をもとに報道が行われてきました。

このような長年の報道のありようが大きく変わってきているように感じます。
新聞の記事、テレビのニュースで、有力政治家、有名人のつぶやきがよく報じられています。
ツイッターなどの文字をただ転載しているだけです。
テレビの報道番組でも、ネットで意見を受け付け、それらをもとに議論が展開される番組も目立ちます。
新聞でも、SNSで投稿された意見の紹介やその動向をベースに組み立てられる記事や評論が増えています。

ネット時代ですから、やむを得ない面もあると思いますが、ネット上の情報に頼り、これを垂れ流しにする傾向が強まるようであれば、報道機関としての主体性、その存在価値が問われます。
本人が取材に応じないのであれば、ネット上の発言を流すだけでなく、周辺への取材も大事なのではないでしょうか。
優秀な記者のみなさんによる取材はたいへん重要です。
取材は、実際に当事者の生の声を聞き、その声音や表情、反応を観察し、現場の雰囲気を五感で感じながら行われるはずです。
新聞記事やテレビのニュースに直接生かされる部分は一部かもしれないけれども、そのようにして行われる取材の蓄積は、社会を変えていく力を内在させていると思います。
ネットからの情報を賢明に選択し、補完的に活用しつつ、取材に基づく報道姿勢が堅持されることを望みます。


2018年1月30日
から 久元喜造

鈴蘭台「ブックストリート」の広がり


今日の午後は、鈴蘭台駅前再開発の工事現場を視察しました。
駅前ビルが出来上がりつつあり、無事故で工事を進めていただいている関係者のみなさんから進捗状況について説明を受けました。

途中、神戸新聞(2017年12月28日)に紹介されていた「ブックストリート」のお店にお邪魔しました。
記事によれば、「小説や絵本、生活の知恵に関する本」が並び、「近隣住民らが利用し、本を通した交流が広がりつつある」とのことでした。

お伺いしたのは、「ファミット」(鈴蘭台東町)。

洋服や素敵なグッズを販売しているお店ですが、カフェのコーナーがあり、飲み物を片手に読書されている方の姿もありました。
お店の外壁に本棚が設置され、近くの住民みなさんから寄付された本が並んでいます。
店主の高木かおりさんからお話をお伺いできました。
周りのみなさんの協力で、この本棚がつくられ、本を借りた方で返されなかったことはないそうです。

すごそばにある「レガート」にも伺いました。
店主は、井口秀人さんです。

内部のデザインはとてもおしゃれです。
大きなテーブルを囲んで、読み聞かせなど、さまざまなイベントが行われているそうです。

「ブックストリート」への参加は、5店まで広がっているとお聞きしました。
気に入ったお店に集まり、好きな本を読んでゆったりとした時間を過ごしたり、本好きの仲間が集まって読書会を開いたりできる時間と空間は、とてもかけがえのないものだと感じます。

今年の夏、神戸電鉄鈴蘭台駅と北区役所などが入る駅前ビルが完成します。
温かく、活気のある街づくりの輪が広がっていく鼓動のようなものを感じることができました。
感謝です!!!


2018年1月28日
から 久元喜造

瀧井一博『伊藤博文 知の政治家』


著者は「あとがき」の中でこう記しています。
「歴史好きの人ならば、・・・真っ先に”遊び人”ということが思い浮かぶだろう。確かに彼は醜聞の多い政治家である。”知”ではなく、”痴”だろう、との声が聞こえてくる気がする」

私もそのようなイメージを抱いていた一人でしたが、本書は全く異なる「知の政治家」像を提示します。
伊藤は英語を巧みに操り、津田梅子に対し、「アメリカを知る最良の本」として、トクヴィル『アメリカのデモクラシー』の英訳を渡しています。
愛読していたのでしょう。
若き日から亡くなるまで、伊藤の旺盛な知識欲には目を見張るものがあります。

本書の特徴は、単に伊藤の事績をたどるのではなく、その政治思想を明らかにしようとするところにあります。
有名な「滞欧憲法調査」で、伊藤がグナイストの憲法論を「頗る専制論」と嘆き、「議会政治と行政の調和」を主張するシュタインの国家理論に傾倒するさまが紹介されます。
伊藤は終生、憲法秩序における議会制度を不可欠のものと考え、その漸進的な実現を図ろうとしたのでした。

伊藤が目指した国家像は、「知的水準が高く、権利の保障された人民によって構成される国家」、すなわち「文明国家」でした。
そのために高等教育の発達を期すわけですが、伊藤は、自由民権運動に代表される「政談」や観念的なナショナリズムを嫌い、「利便を生み出し、経済的生活を豊かにする「実学」」の普及を目指したのでした。
伊藤が自ら立憲政友会を結成して政党政治を主導した意図や政治哲学に関する記述も興味深かったです。

丹念に史料を読み込み、「自問自答を重ねて」執筆された本書は、伊藤の思想を提示するのに成功しているように感じました。


2018年1月26日
から 久元喜造

相互不信からは何も生まれない。


神戸市役所の管理システムは、職員に対する不信に根差しているのでしょうか。
不祥事があるたびに、市民からの批判にさらされてきたから、ということがあるのかもしれませんが、職員が悪いことをする、という前提に立って、管理側の人々は、職員に不合理な事務処理手続きを課し、膨大な事務負担を課しています。

管理側職員の不信の目は、市民にも向けられます。
政策的見地から、新しい給付措置を講じようとしても、市民が悪いことをするのではないか、不正を働くのではないか、という疑念から、信じられないような重い事務負担、煩瑣な手続きをつくろうとするのです。
私は、予算編成の中でそのようなことがないように、何度も、何度も、何度も、お願いをしましたが、信じられないようなことが起きていることに驚愕しました。

神戸市の行政サービスは、いろいろな意味で、他都市に後れをとり、抜本的な改革が必要です。
市民サービスの提供に当たっては、いかに市民の事務負担を軽減し、わかりやすく、簡単な手続きで公正な行政サービスが受けられるようにすることが何よりも重要です。
このことは、職員のみなさんにとっても必要なことなのです。
職員一人ひとりの負担が増えている中、職員の負担を軽減し、疲労を回復させ、英気を養って、神戸市民のために頑張ろうという意欲を生み出していくためにも必要なのです。

このような残念な事態が続いていることに、本当に責任を感じます。
私は、帰宅し、瞑目し、改めて、自分のふがいなさに眩暈がする想いでした。
すべては私の責任です。
すべては、私のリーダーシップの不足です。
明日、また、気を奮い立て、管理側の皆さんと粘り強く向き合い、交渉し、良い方向を見出していきたいと思います。
頑張ります!!