久元 喜造ブログ

憲法に選挙制度の基本規定は必要だ。


自民党の選挙制度に関する改憲案が批判にさらされているようです。
国民的な議論が求められる重要テーマですが、私見ながら、自民党の改憲案はもっともな内容を含んでいると感じます。

憲法は、「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する方法」を法律に委ねていますが(47条)、国民の代表を選ぶ選挙制度をすべて法律に委ねている現行規定は不十分であり、選挙区を設ける場合の基本原則は、憲法の中に規定されるべきです。
この点について、自民党の憲法改正案は「各選挙区は人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない」との規定を追加するという内容を含んでいますが、妥当な考え方ではないでしょうか。

現行憲法にはこのような規定がないために、選挙区の定数配分に対しては、法の下の平等を定めた憲法第14条の規定がもっぱら適用され、1票の格差が同条に照らしてどの程度まで許容されるのかが争われてきました。
憲法第14条の射程は幅広く、選挙区を設ける際の基本原則を規定することは、第14条の存在と矛盾するものではありません。
選挙区の議席配分に関し自民党案のような原則を憲法に書き込むことが許容されないとは思えませんし、むしろ必要なことだと思います。

人口が東京に集中し、その結果東京選出の国会議員が増え続ければ、全体として東京に有利な政治・行政制度に傾いていく可能性があります。
このことが人口のさらなる東京への集中を惹起するという悪循環が生じれば、我が国の各地域に深刻な事態が生じます。
今回の自民党からの問題提起を契機として、建設的な憲法改正論議が展開されることを期待します。