久元 喜造ブログ

2019年2月25日
から 久元喜造

内部の説明にパワポは要らない。


市長・副市長会議で、庁内の説明にパワポを使わないことにしてはどうか と提案しました。
きっかけは、高岡浩三ネスレ社長に講演をしていただいたことでした。
とてもわくわくする講演で、聴きどころはいっぱいあり、全体の中では周辺部分でしたが、報告は原則として口頭、資料は原則、A4、1枚、いうお話がありました。

我が意を得たり、という思いでした。
とにかく、市役所の説明は長いのです。
政策会議などでも、パワポを使った説明が延々と続きます。
しかも、パワポの資料はスクリーンに映されるだけではなく、何十枚も紙で印刷して配布されることもあるのです。
膨大な資源の無駄遣いです。
このことは、4年以上も前に問題提起をしたのですが、あまり改善されていません。(2014年11月4日ブログ

内部での議論に、視覚的効果を狙い、意匠を凝らした説明資料は要らない のではないでしょうか?
パワポ資料の作成には、かなりの手間がかかるはずです。
「働き方改革」の面からも、内部説明のための労力は減らすべきです。
もちろん、数字やデータ、法令の規定に基づいた議論が必要な場合もあります。
そのようなときは、必要な既存の資料をタブレットに入れればよいし、タブレットの配布が完了するまでは、紙の資料で議論することは仕方がないでしょう。

これは私の趣味ですが、数字が必要なときは、数字さえあればよく、グラフにする必要は感じません。
グラフだけあって、数字が入っていない資料にたまにお目にかかりますが、それは困ります。
要は、みかけではなく、中身の濃い政策議論をしっかりとする、ということだと思います。
内部のために使う手間暇は、市民のために使われるべきです。


2019年2月23日
から 久元喜造

オクチュリエ『社会主義リアリズム』


昨年秋に読んだ『ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光』(2017年10月27日のブログ)は、ずっしりとした重い内容を含んだ著作でした。
そのときにも書いたのですが、ショスタコーヴィチの前に立ちはだかり、彼がおそらくは表面的に体現しようとした「社会主義リアリズム」とは何であったのか、この観点からの共産党権力との相克はどのようなものであったのかは、課題として残りました。
そこで、新聞の書評でぴったりのタイトルの本書を見つけ、読むことにしました。

著者は、本書の冒頭、1934年に制定されたソヴィエト作家同盟の憲章第1項を紹介します。
社会主義リアリズムとは、ソヴィエトの芸術的文学と文学批評の基本的な方法として、芸術家に、革命的発展における現実を、忠実に、そして歴史的かつ具体的に描写することを要求する

そしてロシア革命前後からの芸術文化における論争の経過が詳しく記述されます。
膨大な人物、文書が登場しますが、その大半は政治家、そして文学、芸術の理論家とも言える人々で、音楽はもとより、文学、演劇、建築、絵画などの個々の作品が語られることはほとんどありません。
各芸術分野における代表的な芸術家とその作品を題材とした考察を期待していたのですが・・・

メイエルホリドはなぜ処刑されなければならなかったのか?
そして、ショスタコーヴィチは、なぜしばしば断罪されなければならなかったのか?
検閲当局との神経戦はどのようなもので、それは作品にどのような影響を与えたのか?
これらの問いに対する答えは残念ながら本書からは見つかりませんでした。
ただ、旧ソ連史を芸術文化の観点から眺めることができたことは収穫でした。


2019年2月18日
から 久元喜造

お願いです。疑問点は直接聞いてください。


先日の夜、職員のみなさんと、外部人材も交えて、自由な意見交換を行いました。
さまざまな意見が出され、私からも率直に感じていることをお話しし、とても有益なひとときでした。
しかし、驚いたこともいくつかありました。
その一つが、「市長からの指示がどういう意味なのか、どんな意図なのかわからず、幹部が議論を重ねている」という指摘でした。
多くのみなさんが、そうだ、そうだ、という感じでウンウンと頷いていました。

正直、愕然としました。
そんなことは、直接聞いてくれればよいだけの話です。
だいぶ前にもブログで、総務省での体験について書いたことがありました。(2014年8月19日のブログ
大臣の発言について、説明のときの反応、秘書官に発した言葉、果ては酒席での戯れ言までが幹部の間で話題になり、「大臣の考えはこうだ」「いや、大臣の真意は別のところにある」といった、大臣の意図を探る会話があちこちで延々と交わされていたのです。
私は、そのような会話にはほとんど加わりませんでした。
時間が無駄だったからです。
そんなヒマがあったら、大臣に直接聞けばいいのに、と思っていましたし、実際そのようにしていました。

何と、同じようなことが、市役所で行われているというのです。
ショックです。
私の日程は過密ですが、職員のみなさんが部屋に来るのを断ることはありません。
私の意図を計り兼ねるときは、いつでも部屋に来てもらって聞いてもらえばよいだけのことです。
さっそく、山村昭市長室長から庁内に私の気持ちを伝えてもらうことにしました。

お願いです。
疑問があれば、直接部屋に来て、私に聞いてください!!!


2019年2月16日
から 久元喜造

50 Years History of Sysmex


シスメックス株式会社が、昨年創業50周年を迎えられました。
シスメックス50年史」を届けてくださいましたので、さっそく読ませていただきました。

臨床検査の総合メーカーとして今日揺るぎない地歩を築いておられる同社が創業されたのは、1968年2月。
東亞特殊電機株式会社(現TOA株式会社)の医用電子機器の販売会社(東亞医用電子株式会社)として、神戸市兵庫区で事業をスタートされました。
このときの従業員は8人。
それが今や世界中で、8,400人以上を雇用されています。
売上高は、上場された1995年度が309億円だったそうですが、2017年度には2,819億円と、約9倍にも拡大しました。
ものすごいスピードで成長を遂げてこられたことがわかります。
売上高の約85%は海外が占め、190カ国以上で取引を行うなど、グローバル企業として積極的なビジネスを展開されています。

創業まもない1970年代にオイルショック、上場した年には阪神・淡路大震災と大きな試練を乗り越えられ、「ヘルスケアの進化をデザインする」という Mission のもと、常に新たな挑戦を続けておられます。
家次恒会長兼社長の卓抜した経営手腕とリーダーシップに改めて敬意を表したいと存じます。

昨年20周年を迎えた「神戸医療産業都市」についても、構想段階から一貫してご支援いただいていることに感謝を申し上げます。
シスメックスさんが神戸市に本拠を置き、グローバルに活躍していただいていることは、神戸市民にとって大きな誇りです。
社業のますますのご隆盛をお祈り申し上げますとともに、人々の健やかな暮らしへの貢献をご期待申し上げます。


2019年2月12日
から 久元喜造

神戸における空き家対策の重要性


空き家対策はどこの地域でも求められますが、神戸ではとりわけ重要です。
もっとも力を入れなければならない分野のひとつです。
なぜなら、神戸における空き家の増加は、神戸の街づくりの歴史と密接に関連している からです。

空襲で壊滅的に破壊された神戸の街は、戦後、急速に復興しました。
戦災復興事業も進められましたが、その一方で、山麓部が次々に開発され、家が建っていきました。
都市計画の線引きもなく、建築ルールも不十分な中で、無秩序な開発が進められていったのです。
このような開発ラッシュから、地域によってはすでに70年近い年月が経過し、多くの家屋は老朽化して人口が流出し、空き家が増えています。
老朽危険家屋が増え、ごみステーションや街灯の管理もままならず、荒廃が進んでいる地域もあります。

1960年代に入ると、人口増加に対応し、市街地の過密を解消するため、灘区、東灘区、須磨区などで計画的な団地造成が始まり、さらに、現在の西区、北区ではニュータウンの開発も進められました。
これらの計画的開発地域が生まれてからすでに半世紀近い歳月が流れ、空き家が増えている地域も見られるようになっています。

このように、神戸市は、かつて短期間に集中的に開発された地域が一気に老化し、大量の空き家が生まれる宿命を背負っています。
「他都市並み」にと、のんびりやっていては、都市の空洞化が進み、人口減少が加速する要因にもなります。
新年度予算には、空き家・空地対策として、これまでにない施策も盛り込みました。
全庁一丸となり、使える空き家の有効活用、そしてすでに存在している老朽危険家屋の除去を、断固たる決意で進める必要があります。


2019年2月9日
から 久元喜造

新年度予算、前を向いて進みます。


昨日の午後3時から、市役所で平成31年度当初予算案の発表を行いました。
記者会見は、質疑応答の時間を多くとり、2時間10分にも及びました。

全部の会計を合わせた総額は、ほぼ1兆8000億円。
一般会計は、8,116億円、前年度比、4.3%の増で、積極型の予算となっています。
今回の予算案には、いたずらに都市の規模を拡大させるのではなく、市民生活の「質」を上げていくためのさまざまな施策が盛り込まれています。

冒頭、いわゆるヤミ専従問題に対する私の責任について明らかにするとともに、改めて市政に対する信頼を損なったことに対して陳謝しました。
今回の予算で盛り込まれている施策をスピード感を持って実施していくためには、神戸市役所が前を向いて進んでいくことができる組織であることが不可欠です。
おかしなことが行われていても、見て見ぬふりをしないと生きていけない。
おかしいと思っても声を上げることができない。
このような理不尽な雰囲気を一掃していかなければなりません。
逆に、おかしなことをおかしいと感じない市役所の「常識」は、世間の常識とは大きくズレています。

私は、最初の市長選挙のときに、「窓を大きくあけ放ち、外の空気を入れ、職員のみなさんが生き生きと仕事ができるような市役所を、職員のみなさんと一緒につくりあげていきます」とお約束しました。
私の力不足で、就任以来5年余りも経ったというのに、市役所改革は成果を挙げていません。
今回のヤミ専従問題は、このことを白日の下に晒しました。
今度こそ、明るく、前を向いて仕事ができる市役所に改革できるよう、良識ある職員のみなさんとともに、全力で取り組んでいきます。


2019年2月6日
から 久元喜造

ヤミ専従問題に対する市長の責任


いわゆるヤミ専従問題に関する第三者委員会の報告が出されたことを受け、きょう、関係者に対する処分を発表しました。
私は、すでに財政再建の見地から20%の給与減額を行っていますが、これに3か月間、30%を上乗せし、50%の減額を実施します。
市長、副市長の給与減額を行うための条例案を、2月議会に提案します。

振り返れば、昨年の夏ごろ、神戸市役所でヤミ専従が行われているとの心証を持つに至ったとき、どう対応すべきか悩みました。
ヤミ専従は、労使が癒着しないとできず、不用意に人事・労務当局に問いただせば、関係書類の改ざんなど証拠隠滅が図られる可能性もありました。
このような推測を行うことは、私を支えてくれている職員のみなさんに不信の念を抱くことを意味します。
自責の念にかられながらも、私は、実態解明を最優先することとし、内部調査を経ることなく、直ちに第三者委員会による調査を行うこととしました。

最終報告で明らかになったのは、ヤミ専従という職場慣行が数十年にもわたって続いてきたという事実です。
長年にわたって、おかしいことをおかしいとは言えない、世間の常識からかけ離れた組織風土が形成されてきたと考えられます。

このような組織風土に起因する不祥事の責任は、言うまでもなく組織のトップにあります。
私の責任は、給与の減額にとどまるものではなく、神戸市役所の組織風土を抜本的に改革し、明るく、開かれたものとすることだと考えます。
外から来た市長に勝手に市役所を変えさせてはならないと「義憤」にかられている幹部もいるようですが、大方の職員のみなさんの理解を得ながら、困難を極めて来た市役所改革を必ず実現するべく、全力で取り組んでいきます。


2019年2月1日
から 久元喜造

盛山正仁『所有者不明土地問題の解決に向けて』


盛山正仁 衆議院議員の新著が、大成出版社から刊行されました。
昨年制定された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」を中心に解説されています。

所有者不明土地問題は、いま我が国社会が抱える諸問題の縮図ともいえる課題です。
東京一極集中、地方の疲弊、土地神話の崩壊、無縁社会の進行、家族関係の希薄化などさまざまな要因が複雑に絡み合い、膨大な所有者不明土地が発生してきました。
私は、空き家・空地問題に取り組む中で、改めて所有者不明土地が増殖している実態を再認識し、この問題の解決に取り組んできました。
この問題の解決を図るうえで、地方自治体の役割には大きいものがあります。
同時に、所有権や不動産登記など私権の根幹的制度に関わる問題であり、制度的な課題について指定都市市長会でも議論し、国に対して制度改正も提言してきました。

この問題に対して真摯に対応していただいたのが、盛山正仁衆議院議員でした。
盛山代議士は、法務副大臣在任当時、地方自治体の長に不在者財産管理人の選任申立権を付与する制度改正に理解を示してくださり、この改正は今回の特措法に盛り込まれています。

盛山代議士は、個別の制度改正にとどまらず、特措法の立案、法制化に多大な尽力をされました。
本書は、そのような盛山代議士のご尽力に裏打ちされた内容になっています。
所有者不明土地問題の背景から説き起こされ、特措法の制定の経緯と概要、今後の課題が詳述される内容となっています。
各分野の専門家との鼎談・対談も収録されていますが、私も地方自治体の立場から発言させていただきました。

関係法令、参考資料を含め、たいへん充実した内容となっています。


2019年1月31日
から 久元喜造

「神戸みらい学習室」の活動


この前の日曜日、西区の大学共同利用施設 UNITY で開催されている 神戸みらい学習室 にお邪魔しました。
経済的理由などで塾に通うことのできない中学生に、無料の学習支援を提供している団体です。
講師の多くは、神戸市外国語大学、兵庫県立大学、神戸大学などの大学生のみなさんです。
少し前のことになりますが、神戸市外国語大学で学生のみなさんと意見交換したとき、出席者の一人から神戸みらい学習室 のことを聞き、一度活動を拝見したいと思っていました。

会場では、子どもたちの勉強の邪魔にならないように、後ろからそっと学習指導の様子を見せていただきました。
中学生たちは長机に問題集やドリルを広げ、熱心に問題を読んだり、鉛筆を動かしたりしています。
講師のみなさんは、横に座って説明したり、担当している生徒の進捗状況を記録したりしています。

夕方、近くの居酒屋で、代表で神戸市職員の 佐々木宏昌さん をはじめ、社会人を含む講師のみなさんと意見交換を行いました。
みなさんから、生徒たちの様子やふだんの活動のこと、苦労話などを聴かせていただきました。
不登校になっていた中学生を教えたところ、少しずつ元気が出てきて登校するようになり、成績が上がったという話も聞きました。
生徒たちの学習意欲の向上が、講師のみなさんの喜びにつながっていることがよくわかりました。
神戸市にも支援制度はあるのですが、制約が多いので使っていない、という話を聞き、改善の必要性を感じました。

さまざまな課題を抱えた子どもたちへの学習支援は、神戸市としても力を入れている分野です。
この日お聞きしたことを踏まえながら、支援策を強化していきたいと思います。


2019年1月30日
から 久元喜造

小野秀明・神戸新聞論説副委員長の批判に答えます。


「神戸の鉄道網は不便?」
と題された「論 ひょうご」(2019年1月28日)は、新神戸からの地下鉄に「別料金」がかかるのは、おかしい、と説き始めます。
新大阪駅からJRの在来線に乗り換えれば、大阪駅までの追加料金がいらない。
これに比べ「不便」だと。
新幹線とJR在来線の鉄道事業者は、同じJRグループです。
話は全然違います。

小野氏は、運賃の問題から、急に相互乗り入れに話題を変え、東京、大阪で相互乗り入れが進んでいることを礼賛します。
小野氏はご存じないのでしょうか。
関西で相互乗り入れに先陣を切ったのは、神戸であったことを。
市外から乗り入れていた阪神電鉄・阪急電鉄・山陽電鉄・神戸電鉄の4電鉄のターミナル駅が隔たっていたことから、神戸市復興基本計画の一環として神戸高速鉄道の路線計画が位置づけられました。
そして、1968年(昭和43年)、相互直通運転が実現したのです。
先人の努力を一顧だにせず、東京・大阪に比べた神戸の後進性を強調するのは、地元紙・論説ナンバー2 の「論」としては、寂しい限りです。

もちろん、現状に安住していていいわけはありません。
既存インフラを活用し、運賃をいかに下げていくかは重要です。
とくに、三宮・谷上間を、神戸市交通局と北神急行㈱が区間を分かって運営しているために初乗り運賃が発生し、10分余りの所要時間にも関わらず、540円と高い運賃になっていることは問題です。
私は、この長年の懸案に対処するため、昨年暮れ、阪急電鉄㈱との間で、新神戸・谷上間の神戸市交通局への譲渡を目指し、交渉をスタートさせることで合意しました。

「神戸が遅れている」という結論ありきで、小野氏にとって都合の良い「事実」を寄せ集めた論説は、一定の拍手喝さいを浴びるでしょうが、事情を知った関係者は呆れ果てるだけです。
神戸市政が、このような論説に影響を受けることはありません。
過去の歴史に目をつぶり、現実を直視しない論説が、神戸の未来を指し示すことはないでしょう。
残念ですが。