久元 喜造ブログ

2014年11月16日
から 久元喜造

貝原俊民さんの急逝に。

前兵庫県知事、貝原俊民さんが、11月13日、神戸市内で交通事故によりお亡くなりになりました。
事故に遭われ、心肺停止、との第一報を受け、ほどなく、ご逝去の知らせが入りました。言葉では言い表せない衝撃でした。
どうしてこんなことになるのか、今でも信じられません。
震災直後の困難な対応、そして「創造的復興」の先頭に立って奮闘された貝原さんを悼む声が広がっています。

私は、1976年に旧自治省に入省して以来、貝原さんには40年近くご指導をいただいてきました。若い頃、県庁に貝原さんをお伺いすると、家族の近況を訊ねて下さいました。
30年前の私ども夫婦の結婚式には、遠いところをご夫妻で出席してくださいました。

貝原さんは、知事を退かれてからも防災や地方自治について積極的に発言され、行動に移されました。10年ほど前、私が総務省で地方自治制度を担当する課長になったとき、貝原さんは、第27次地方制度調査会の委員として参画され、市町村合併、大都市制度、道州制などについて発言されていました。
いつも温かくお声をかけてくださいました。

ちょうど2年前、神戸に戻ってきてからは、私を取り巻く状況がたいへん厳しいことを心配され、いろいろとご助言をくださいました。
震災20年を迎え、行政のトップとして当時どのように対応されたのか、改めて是非お話をお伺いしたい、お聞きしなければいけない、と思っておりましたが、それも叶わぬこととなりました。

最後にお会いしたのは、家内でした。
去る11月9日、丹波の森公苑ホールで開催された「シューベルティアーデ゙たんば」のコンサートで、家内の演奏を聴いて下さり、会場でお声をかけていただき、握手をしてくださったのだそうです。
大きな、厚い手をされていた、と家内から聞いています。


2014年11月12日
から 久元喜造

神戸で里山ぐらしを。

11月6日のブログ でも記しましたが、我が国が人口減少時代を迎える中で、島根県・邑南町をはじめ、地方の自治体は、人口定住に力を入れています。
東京などの大都会での人生経験を経て、もういちど、ふるさとで暮らしたい、あるいは、見知らぬ土地で、大都会とは違う人生を送りたい、と考える方はたくさんおられます。そのような人々に、豊かな自然の中で、ゆったりとした時間が流れる「里山ぐらし」を提供することは意義あることだと思います。
一口に「里山ぐらし」といっても、そのありようは地域により異なります。自治体は、 大都会から移り住む選択肢となることができるよう、定住条件を整えていくことが求められます。

神戸は、ハイカラな港町というイメージがありますが、広大な田園地帯が広がっている自然が豊かな街です。
里山の風景があり、由緒ある神社仏閣、農村歌舞伎舞台、茅葺き民家、伝統芸能などが数多く残されています。
自然と文化遺産が一体となった田園地帯は、神戸の大切な財産です。
このような神戸の農村地域への人口定住を図っていくことは、神戸のバランスある発展を図る上でも大事な政策課題だと考えます。

農村地域は、都市計画法上の市街化調整区域に指定され、建物の建築は、厳しく抑制されてきました。乱開発を防ぐための規制ですが、あまりにも実態とかけ離れ、厳しすぎる面がありました。
そこで今回、市街化調整区域の開発許可要件を一部緩和することにしました。
詳しくは、 神戸市ウェブサイト をご覧いただければと思いますが、分家住宅の建築 既存集落内における住宅の建築、農家住宅等から一般住宅への用途変更について、立地規制を緩和し、住宅を建てやすくします。

これは、神戸における「里山ぐらし」を進める政策の第1弾です。さらなる誘導策について検討していきたいと思います。


2014年11月9日
から 久元喜造

「春陽軒」の想い出

11月6日の産経新聞神戸版に、新開地の豚まん専門店「春陽軒」が取り上げられていました。
「神戸・新開地で親子3代、約90年間守り続けている豚まんの味」です。

私が小学生だった頃、「春陽軒」は、湊川公園のすぐ近くにあり、割合に大きな中華料理店でした。もう使われていなかった神戸タワーが近くに聳えていました。
「春陽軒」には母や祖母がよく連れて行ってくれました。豚まんも美味しかった記憶がありますが、お目当ては「火鍋」(ホーコー)でした。ただし、高かったので、特別のときしか口にすることはできませんでした。
芙蓉蟹も大好物でした。あんな綺麗な形をした芙蓉蟹には、その後お目にかかったことがありません。
ワンタン麺もときどき食べましたが、ワンタン麺は、当時、湊川公園東口にあった「蓬莱」の方が好きでした。

余りにも身近な存在だったので、店の由来も知らなかったのですが、記事によると、大正12年創業の老舗だそうです。
「当初は「和風中華料理店」として中華料理を提供していた」が、「20年ほど前、建物が老朽したことから、閉店」・・・・
しかし、「店の再開を望む地元の声の後押しを受け、すぐに・・・豚まん専門店として復活した」とのことです。
今では、午後2時半には売り切れ、閉店になることもある人気店だそうです。

新開地商店街に、「春陽軒」の名前が入ったアーケードがありますが、 4月8日のブログ などでも何回か取り上げた「たこ焼き たちばな」の名前も見えます。
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子どもの頃、この通りにあった「たちばな」にもよく行きましたが、移転後の「春陽軒」と「たちばな」がこの通りで同時に営業していた時期があったとは知りませんでした。

「春陽軒」伝統の味が地元のみなさんに愛され、こうして新聞記事にもなって広く知られることは、昔からのファンの一人としてありがたいことです。


2014年11月6日
から 久元喜造

島根県・邑南町の定住促進策

きのうのNHK朝のニュースで、島根県・邑南町の定住促進の取り組みが紹介されていました。
中国山地の中山間地である邑南町は、ご多分に漏れず過疎の町でしたが、最近、都会からの移住が増えているのだそうです。
町を挙げての定住促進策が功を奏しているからで、その中心人物が番組にも登場していた、町職員の横洲竜さんです。
「定住支援コーディネーター」の職名で、外から邑南町に移り住んで来たみなさんの相談に乗っています。

見知らぬ町に移り住んで来たみなさんは、住宅の補修、農業技術、子育て、医療、近所づきあいなどさまざまな課題に直面します。それぞれの課題ごとに役場に相談すると、どうしても縦割りになるので、「定住支援コーディネーター」横洲さんがワンストップで相談に乗り、答えを導きます。
さらに、移住してきたみなさんを横洲さんが訪ね、近況を聞いたり、相談に乗っている様子も映されていました。

番組では、外から邑南町に移り住んで来られた方々のお話もありましたが、ちょっぴり寂しかったのは、神戸からこの町に移り住んだ女性と子どもさんが笑顔でインタビューに応じておられたことでした。
神戸の北区、西区にも、自然環境に恵まれ、新規に農業を始めるのにふさわしい場所もあり、それなりに受け入れ態勢も整えているので、神戸市内で新天地を見つけてほしかった、と正直思いました。

そのような想いもありますが、島根県・邑南町の取り組みには脱帽です。
町の取り組みによって移り住む人が増え、地域の元気につながっていってほしいと願わずにはおれません。
同時に、神戸も、神戸なりに、邑南町の取り組みにも学びながら、農村地域への定住促進に取り組んでいきたいと思います。


2014年11月4日
から 久元喜造

パワポによるプレゼンについて

パワーポイントを使ったプレゼンテーションは、よく行われます。パワポによるプレゼンに関する本はたくさんあり、雑誌などでも特集が組まれたりします。
民間企業であれ、官公庁であれ、パワポを有効に使ってプレゼンを行うことは重要です。
よく感じるのですが、パワポを使った映像をスクリーンに映してプレゼンが行われるとき、小さな文字がいっぱい詰まっていたり、小さな写真を複数使っていたりして、何を伝えたいのかわかりにくいことが結構多いように感じます。

このような違和感は、紙で配布するイメージでつくった資料を、そのまま映し出すことによって生まれるのではないかと思います。
映写用と配布用の資料は、そもそもつくりかたが違うのではないでしょうか。
映像は短時間か一瞬のうちに消えてしまいますから、画像や写真主体のつくりにし、文字を入れる場合にもパッと眼に入る大きな文字で書き、インパクトのあるものにする必要があります。

これに対し、配布用資料は、じっくり読んでいただくことを期待しているわけで、文字や詳細なデータが充実していても構わないし、むしろその方が誠実です。
ですから、映写をイメージしてつくられた資料をそのままコピーし、配布することは、大いに疑問です。映写用の資料を配布用にすると、十枚以上、ときには何十枚もの散漫な資料となり、コピー用紙の無駄遣いでしかありません。

パワポのプレゼン資料は、映写用と配布用をそれぞれの目的に応じて峻別し、明確でわかりやすい内容にしていくことが求められます。
きょうの政策会議(方向性協議型)でのプレゼンは、両者を効果的に使った見事なものでした。
市役所の中でこのようなプレゼンが広がっていくことを期待したいと思います。


2014年11月1日
から 久元喜造

昼休み、三宮・ジュンク堂へ。

先週の昼休み、久しぶりに、三宮のジュンク堂に行きました。
政治の棚には、『民主政治はなぜ「大統領制化」するのか』(T.ポグントケ、P.ウェブ編)(ミネルヴァ書房)がありましたので、さっそく購入しました。
だいぶ前に新聞の書評欄に載っていて気になっていた本でした。
国は議院内閣制、地方自治体はすべて大統領制、という我が国の統治構造は、主要国では例を見ない特異なものですが、このような統治構造が将来とも持続可能なのかどうか、変動する可能性はあるのか、という長年の問題意識に対して、本書がどのように答えてくれるのか楽しみです。
523頁にも及ぶ大著なので、年末など少しまとまって時間が取れるときに読んでみたいと思います。
masuda

増田寛也さん 編著の『地方消滅-東京一極集中が招く人口急減』は、平積みになっていました。
10月22日に神戸にお越しいただき、講演していただくとともに、ディスカッションも行ったばかりでしたので、たいへん興味深く読みました。
mozart

音楽書の棚には、家内の『モーツァルトのピアノ音楽研究』 『モーツァルト 18世紀ミュージシャンの青春』の2冊が置かれていました。こんなマニアックな本まで置いていただいていることに感謝申し上げます。


2014年10月29日
から 久元喜造

口コミで広がる Benediction

神戸ワインの中でも評価が高い銘柄が、ベネディクシオン(Benediction)ではないでしょうか。
神戸に戻ってきたばかりの頃、ワイン通の経済界の方から、
「ベネディクシオンは、神戸ワインの中で、もっとも美味しい」
という評価を伺ったことがあります。
benediction

神戸市西区、北区で収穫されたブドウのみを使用しており、白はシャルドネ100%です。
白、赤ともに、1本2880円(税込)です。
足踏みで搾っており、機械搾りと違って非常に時間がかかりますが、その間、ブドウはゆっくりと空気に触れ、角のとれたまろやかなワインに仕上がると言われます。
仕込み作業時には、スキンコンタクトと呼ばれる作業を行っています。これは、ブドウを破砕した後に果汁と果皮を接触させ、果皮に含まれる成分を抽出する作業です。

神戸市内の魚の名店に、ワインはシャブリしか出さないお店があり、ある日、おそるおそるベネディクシオンの話をしたところ、さっそく白を置いてくださいました。なんと、常連のお客さんの間でシャブリよりも人気が出て、酒屋さんへの注文を増やしているのだそうです。
さらに、お友だちのお店にベネディクシオンを紹介していただき、店主、マスターが試飲してみると、「おいしい」「神戸ワインを見直した」など絶賛の嵐で、取り扱って下さるお店が増えているのはありがたいことです。

9月7日のブログ でも記しましたが、ワインの本場にして美食の都、リヨンで開催した投資促進セミナーのパーティーで出したところ、あっという間になくなりました。複数の方から、「バランスに優れている」「存在感があるワイン」という評価を直接お聞きすることができ、とても嬉しかったです。

Benediction は、「神の祝福」の意。
フランツ・リストに、「孤独のなかの神の祝福」 “Bénédiction de Dieu dans la solitude” と名付けられた素晴らしいピアノ曲があります。


2014年10月27日
から 久元喜造

市長選挙から1年が経ちました。

昨年10月27日の神戸市長選挙から1年が過ぎました。

たいへん厳しい選挙でした。 (選挙結果)
敗北を覚悟し、敗戦の弁しか頭になく、当選確実の報道があった後、しどろもどろで会見に臨んだことなど、昨日のことのように思い起こします。
ご支援をいただきましたみなさまに、改めて心より感謝と御礼を申し上げます。

初心を忘れず、あの日の驚きと感激をいつも想い起こし、神戸のために、神戸市民のみなさんの幸せのために、全力を尽くしていきます。
選挙のときにお約束したこと (久元きぞうの政策) は、4年の任期中に実現したい、実現しなければならないと考えています。
とにかく、4年の任期中、ひたすら仕事をしていきます。

残念ながら、まだほとんど成果が出ていません。
神戸経済が目に見えてよくなったとは感じませんし、街並みが綺麗になったわけでも、市役所や区役所のサービスが改善されたわけでもありません。
まだほとんど成果を出せていないことを、本当に申し訳なく思っております。
もっとスピード感のある仕事をしていかなければなりません。自分に鞭打ち、全力で仕事をして行きます。

同時に、お約束した政策については、かなりの分野で議論の場を新設し、市民と職員との協働プロジェクトチームをつくるなど、新しいやり方で行動を起こしています。来年後半くらいには、それらが一つずつ芽を出し、目に見える成果として姿を現すことができるよう取り組んでいきます。

これらの政策実現のためには、市民のみなさんの参画と協力が必要です。
神戸の元気とにぎわいを取り戻すために、いっしょに歩んで下さいますよう、心よりお願い申し上げます。


2014年10月24日
から 久元喜造

自治体における複式簿記の導入

先頃、神戸市の平成25年度決算見込みを発表しましたが、自治体の決算と関連する大きな運用改正が、総務省から示されています。
複式簿記の導入 です。

複式簿記は、民間企業にあっては常識で、その法的根拠は、会社法、法人税法に規定されており、明確です。
たとえば、法人税法の体系では、青色申告法人は、「その資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づいて決算を行なわなければならない」(法人税法施行規則53条)等とされて います。

一方、地方自治体の財務会計制度は、地方自治法で規定されていますが、現金主義に基づく予算、決算の制度となっています。現金主義の会計方式が単式簿記を前提としていることは明らかです。
民間企業の考え方をみても、複式簿記は正確な決算を行うためにあるのであり、自治体に複式簿記の導入を求めるのであれば、予算、決算制度を発生主義に変更する改革と一体として行われるべきではないでしょうか。
今回の複式簿記導入の根拠は、局長通知ですが、 自治体にとっては大きな運用の変更になりますから、本来は、一片の通知で行うのではなく、制度改正によって行われるべきです。

制度改正に当たっては、選挙中の 2013年10月1日のブログ でも記しましたように、財政に対する民主的統制の要請との関係をどう考えるかを含め、論点は多岐にわたり、奥行きの深い議論が必要です。
なかなか簡単ではないとは思いますが、総務省のみなさんには、自治体からの疑問に答え、制度改正への道筋を示すことができるよう、頑張っていただきたいと思います。


2014年10月21日
から 久元喜造

生物多様性への理解を広げるために。

少し前のことになりますが、「福田川クリーンクラブ」の展示を見せていただいたことがありました。
福田川は、主に垂水区内を流れている川です。水質には課題がありますが、下流を中心にさまざまな魚が棲息しています。

下の写真は、新種のヨシノボリです。ヨシノボリにもずいぶんたくさんの種類があるようで驚きました。
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下の写真は在来種のナマズです。関東の霞ヶ浦などは外来種のナマズが席巻しているようですが、神戸では在来種が主流とのことで、まずは安心しました。
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市長になりたてのころ、若手職員から、
「生物多様性やイノシシ対策など、市長の趣味に振り回されて、職員はほとほと困っています」
と言われ、悲しくなったことがありました。
自分の説明不足のせいなのですが、私は、生物多様性を保全し、回復していく営みは、個々の在来種の保護といった次元を超える、大切な課題だと考えています。

生態系は、気が遠くなるほど長い時間の経過のうちに、それぞれ独自の進化を遂げ、創り上げられてきました。微妙なバランスの中に成り立っており、そこには、人間の知見では解明できない、未知の世界や謎が存在しているはずです。
異種の持ち込みなど、生態系への敬意や畏怖を欠いた行為を人間が繰り返すなら、映画『もののけ姫』において表現されているように、大きな災いが人間界にもたらされることでしょう。
そのような愚行を避け、人間が、自然界における時間の経過の中で生かされているという意識を常に持ちたいと願います。

このような抽象的な説明では、なかなか理解してもらえないかもしれませんね。
共鳴していただける市民のみなさんのお知恵をいただきながら、どうすれば理解を広げていけるのかを含め、考え、行動していきたいと思います。
11月9日に、 生物多様性シンポジウム を開催しますので、ご参加をお待ちしています。