久元 喜造ブログ

2016年1月31日
から 久元喜造

苦楽堂刊『次の本へ』

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だいぶ前に、神戸の海岸通りにある 書肆スウィートヒアアフター (2015年4月14日のブログ)に行ったときに買った本です。
残念ながら、店主によれば、あの場所での営業は終了されたようです。
ネット販売とイベント販売は続けられるようですので、今後に期待したいと思います。

さて本書の 出版社は、苦楽堂
神戸を本拠にする出版社が頑張っていただいていて、良書を出しておられることはありがたいことです。
本書は、長い積読の後、ようやく紐解いてみたのですが、とても面白く、すぐに読破しました。

この本の使い方について、冒頭こう指南されます。
「「1冊は読んだ。でも、次にどんな本を読むといいのか、わからない」・・・この本は、そんな皆さんのためにつくりました」

余計なお世話という気もしないではありませんが、ある本からどのように別の本を探り当てる、あるいは、おのずから関連性がある本を紹介するという試みは、面白いものでした。
高村薫、鎌田慧、山田太一、加護野忠夫、柏木博の各氏をはじめとする84人の筆者の想像力や認識関心が伺え、共感するシーンも、そうでないシーンもありましたが、興味がそそられる本のタイトルを拾い読みするのではなく、知らない本が紹介されているタイトルも含め、まずは通読することにしました。

2冊目以前に、1冊目をまず読んでみたいという本たちにも巡り合えることができた、幸福な時間でした。


2016年1月27日
から 久元喜造

水素プロジェクト、神戸で始動

一昨年の3月6日、市長に就任して間もない私は、総理大臣官邸で開催された経協インフラ会議に招かれ、都市インフラ輸出に関する神戸の取り組みについてプレゼンしました。
麻生副総理、菅官房長官ほか関係閣僚が出席されました。
提案したプロジェクトの一つが「水素エネルギーを活用したスマートコミュニティ構想」で、この時点では、「将来的にはオーストラリアの褐炭由来のCO2フリー水素を利用した事業を展開」するとだけ説明しました。

この構想が現実のものになろうとしています。
昨日、川崎重工業、岩谷産業などによる水素の輸入基地が神戸で整備されることが決定し、私からも記者発表しました。
場所は、神戸空港のある空港島北東部の市有地です。
オーストラリアの褐炭から製造された液体水素を高性能の運搬船で搬入し、貯蔵、出荷する国内初の実証プラントが建設されます。
2020年度をめどに本格稼働し、工場や水素ステーションなどに供給することを目指します。

この決定は、1月25日の日経新聞の一面で報じられましたが、国内の有力都市がしのぎを削り、各方面から注目されてきました。
地球環境に貢献する国策として推進されている水素エネルギーの利活用について、環境貢献都市・神戸が先導役を果たせることは、たいへん名誉なことと感じています。

神戸市は、タンカーが振動を抑えて接岸できるよう岸壁の整備を行い、このプロジェクトを全面支援します。
この夢のあるプロジェクトは、長期的な神戸の産業政策に新しい地平を開くという意味でも大きな意味があります。
しっかりと進めていきます。


2016年1月26日
から 久元喜造

こんな仕事の仕方はやめたい。


予算の説明などを聴いていますと、市役所改革もまだ道半ばですが、市役所のみなさんには改革に向けて努力していただいており、仕事の仕方も少しずつ変化しているような手ごたえを感じています。
もともと、私が変えたいと思ってきた仕事の仕方とは、おおむね以下のようなものでした。

まず、空疎で抽象的な計画、ビジョンなどの作成に精力を傾ける「作文行政」(2014年9月4日のブログ)。
ふだんから、ことあるごとに指摘してきましたので、このような計画の類はかなり減ってきていますが、無意味な文書の削減をさらに進める必要があります。

次に、もっともらしいことを述べ立てているが、結局何をやるかといえば、「啓発」用印刷物を配るだけの「パンフレット行政」。
ある政策目的を本気で達成しようとするのであれば、単なる啓発では不十分です。
また広報をする場合にも、ターゲットを明確にし、最も費用対効果に優れる広報手段を練り上げる必要があります。
漫然と印刷物を作成して、ラックに置いたり、配布したりするやり方が横行しており、改善が必要です。

最後に、地域全体において、あるいは、一定の属性を有する集団において、幅広い、あるいは普遍的な行政ニーズが存在しているのに、ごく限られた場所で、またごくわずかな人数分だけの事業を行ってお茶を濁そうとする「アリバイ行政」。
自分の限られた経験から言えば、「モデル事業」が広がっていった験しはありません。
確かに、すべての市民、企業からのニーズに対応できない場合が多いのですが、そこがプロとしての手腕が問われるところです。


2016年1月23日
から 久元喜造

『アズミ・ハルコは行方不明』映画化へ

昨年暮れ、三宮のジュンク堂に本を漁りに行ったとき、山内マリコさんの小説『アズミ・ハルコは行方不明』 (2015年11月16日のブログ) が映画化されるという帯を見つけました。
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公開時期は未定のようですが、楽しみです。
(もっとも、残念ながら映画を見ることができる可能性は少ないのですが・・・・)

行方不明になった主人公のOLは、蒼井優さんが演じるようです。
蒼井優さんについては、山田洋二監督の映画『東京家族』での演技が印象に残っています。
微妙に揺れ動く女性心理を巧みに演じてくれることでしょう。

もちろん、男ばかりを狙って襲う女子高生ギャング団が現れ、忽然と消えてしまう地方都市が、どのように描かれるのかも楽しみです。

山内マリコさんの小説からは、いつも豊かな時間と元気をもらっているので、小説の世界を忠実に表現してくれるような映画に仕上がってほしいと願っています。


2016年1月20日
から 久元喜造

長田シューズ 復活の足音

1月12日の朝日新聞夕刊に、「神戸・長田シューズ、復活の足音 阪神大震災乗り越え」という見出しで、長田シューズの最近の状況が取り上げられていました。

もともと長田は、ケミカルシューズの一大生産拠点でしたが、震災で壊滅的な被害を受けました。
記事では、独自のブランドの立ち上げや後継者の育成により、活気が戻ってきていることが取り上げられていました。
最近相次ぐ神戸港復活の報道とともに、とても元気が出る記事でした。

長田シューズの生産量は、今でも震災前の半分以下にとどまっており、もちろんまだまだ課題は多いのですが、このように活気が出てきていることはとてもありがたいことです。
記事では、「職人技生かし独自色・高級化」という見出しも出ていました。
このような動きが出てきたひとつの契機は、平成26年3月に、「神戸シューズ」として地域団体商標登録が行われたことだったと思います。

最近では、業界団体と大丸松坂屋百貨店、くつのまちながた神戸㈱とのコラボによる「神戸シューズ」の販売が進められています。
また、昨年秋には、銀座ファッションウィークの一環として、プランタン銀座で「神戸シューズ」の販売催事も開催されました。
ワールド記念ホールで開催されている国内最大規模のファッションショー「神戸コレクション」へは、平成26年、平成27年と連続して出展されています。

神戸市としても、「神戸シューズ」を全力で応援していきます。


2016年1月17日
から 久元喜造

震災21年の「1.17のつどい」

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今朝、東遊園地で開催された「阪神・淡路大震災1,17のつどい」に参加しました。

5時46分、黙祷。
竹灯籠の前には、今年もたくさんのみなさんが集っておられます。
歳月が流れても、癒えることのない悲しみが、今年も会場を覆います。
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「慰霊と復興のモニュメント」前のステージで、式典が開始されました。
ご遺族を代表し、震災でお母さまを亡くされた山本広美さんが追悼の言葉を述べられた後、私からも追悼の誠を捧げました。
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21年が経過し、当時、想像を絶する事態と格闘された方々が一線を退き、世代が交代していくことも時代の流れです。
あのときの記憶、教訓と想いを、震災を経験しなかった世代がどのようにして受け継いでいくのか、覚悟が問われます。

市役所の2階市民ギャラリーで、Twitterでメッセージを入力した後、幹部職員に挨拶を申し上げました。
これから、人と未来防災センターで開催される兵庫県主催「1.17のつどい」に参列します。


2016年1月13日
から 久元喜造

教員の多忙化は何とかしなければ。

昨日の総合教育会議で、教育委員の先生方と教育大綱について議論をしましたが、私がこだわった項目の一つのが、教員の多忙化対策でした。

教員の多忙化の原因は、多岐にわたり、相互に関連し、複合的です。
その原因をたどることが必要で、現場の先生方からアンケートをとったり、現状を匿名で報告できるようなホットラインを設けることが考えられてもよいでしょう。

その上での話ですが、教育委員会だけでなく、市長部局からも、膨大な資料の配布を学校現場にお願いしているという実態があるようで、これらの資料配布を最小限にすることが必要です。
また、神戸市教育委員会から調査、照会、協力依頼等のために出されるメールの量も膨大な数に上っているようで、このような実態も改める必要があります。
神戸市教育委員会から学校への連絡事務窓口は、事務局の中で一元化すべきではないでしょうか。
また、兵庫県教育委員会に対しても、同様の措置をとるよう要請する必要があります。

こう書きますと、必ず、
「そんな枝葉末節のことより、先生の数を増やすことが先決だ」
といった批判がすぐに予想されますが、できることからとりかかることが重要だと思います。

総合教育会議では、教頭の補助体制の強化、そして給与を含む処遇の改善についても議論しました。
文案についていろいろなご意見をいただきましたので、修正案をお示しし、できるだけ早く教育大綱を策定して、速やかに実施していきたいと考えています。


2016年1月9日
から 久元喜造

岡義武『独逸デモクラシーの悲劇』

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世界史的に見て最も民主的な憲法を持ったワイマール共和国がなぜ短期間に終焉し、しかも、ナチスドイツという忌まわしい政体にとって代わられたのか。
この重いテーマについて、20世紀を代表する政治史学者、岡義武(1902 – 1990)が、戦後間もない1949年に著した論文です。
戦後民主主義の熱気、騒然とした時代の空気が影響したのか、論文は高揚した文章で閉じられます。

「ワイマール共和国の短い歴史、それは不幸の中に生れ落ち、不幸の中に生き、そして夭折した一人の薄幸なるものの生涯に似ている。・・・ここに疑もなく明白なことは、自由は与えられるものではなくて、常にそのために闘うことによってのみ、確保され又獲得されるものであるということである。そして、そのために闘うということは、聡明と勇気とを伴わずしては、何らの意味をもち得ぬということである」

三谷太一郎先生の解説が掲載されていますが、たいへん分かりやすい内容でした。
とりわけ、「議会およびそれを動かす政党が権力の主体として十分に機能せず、したがって体制の求心力がきわめて弱かった。そのことは、ドイツ帝国の「外見的立憲制」の下での帝国議会から受け継いだ政治的遺産が貧しかったことを意味する」との指摘が印象的でした。。
この点こそが、岡のこの論文、そして、本書において初めて収録された処女論文「環境に關連して観たる十九世紀末独逸の民主主義運動」(1928年刊)の核心であるように思われました。(文中一部敬称略)


2016年1月6日
から 久元喜造

産経「神戸港 活気戻った」

きょうの産経新聞一面に、この見出しで記事が載っていました。

神戸港の昨年のコンテナ取扱量が「1~6月では前年同期比5・7%増を記録」。「国内外を合わせたコンテナ取扱量を震災以降最高の135万TEUに押し上げた」。
「その後も好調で同年7~10月で90万TEUを記録。取扱量世界6位となり、過去最高だった震災前年の6年(292万TEU)実績にほぼ回復するペースで進んでいる」と報じています。
この理由について、記事は、「26年10月に神戸港や大阪港などを一括運営するため発足した「阪神国際港湾」が、西日本の地方港から韓国・釜山港など東アジアの拠点港に流れた貨物を取り戻すため、輸出入貨物を神戸港経由に変更した船会社や荷主に補助金を出すなどの支援制度を充実。この結果、神戸港と地方港を結んで輸出入貨物を運ぶ「フィーダー輸送」が好調となり、取扱量が増えた」と分析しています。

新年早々から、とても明るい気持ちになりました。
昨日の港運関係団体合同賀詞交換会でも申し上げましたが、来年の開港150年を大きなチャンスととらえ、ハード・ソフト両面にわたる取り組みを行って神戸港の港勢を回復させていきたいと念じています。


2016年1月4日
から 久元喜造

平成28年の御用始め

新年おめでとうございます。
新しい年の仕事がスタートしました。

神戸は3年連続、人口が減少しています。
人口は都市の活力のバロメーターですから、人口定住対策をしっかりと講じ、神戸への移住・定住を図っていかなければなりません。
かつてのように、山を削って海を埋め立て、ニュータウンを造成していく時代はとっくに終わっており、既成市街地の再生を図りながら、居住都市としての魅力を高めていく方策が求められています。
都市としての総合力を高めていかなければなりません。
とりわけ、子供・子育て、教育、公共交通分野について、新しい発想を取り入れながら、積極的な施策展開を図っていきたいと考えています。

人口減少対策は重要ですが、ひたすら都市の規模を追い求める時代でもありません。
神戸市民が戦災、震災などの試練を乗り越えて創り上げてきた神戸の街のたたずまい、風格をさらに磨き上げ、グレードの高い街を目指したいと思います。

神戸全体としては、居住都市としての魅力を高める一方、神戸の玄関口である三宮などの都心においては、商業・業務機能の集積を図る必要があります。
駅周辺に高層タワーマンションを林立させるのではなく、神戸でショッピングをし、グルメやアートシーンを楽しむ・・・・そのような神戸でありたいと思います。
都心居住へのニーズとのバランスを考えながら、ワクワクできる、賑わいのある街づくりを進めます。

三宮から市役所機能の一部を新長田に移転させるなど、人口減少が見られる西部市街地、ニュータウンの再生を進めるとともに、農村地域への定住を図ります。