久元 喜造ブログ

2017年12月3日
から 久元喜造

神戸室内合奏団 定期演奏会


「ハイドンのふたつの時代から 疾風と怒涛から古典派の確立へ」というコンサートのタイトルは、ほとんど意味不明ですが、同じ時代を生きた、ヨーゼフ・ハイドン(1732 – 1809)とルイジ・ボッケリーニ(1743-1805)の作品が演奏されました。

冒頭に、鈴木秀美さんのチェロで演奏されたボッケリーニのチェロ・コンチェルトは、当日配られた解説によれば、1770年にパリで出版された原曲に由来するそうですが、冒頭から奏された通奏低音奏法からも窺えるように、明らかにバロック音楽の痕跡を多く残し、かなり前に創られた作品であるように感じられました。
前半の2曲目は、ハイドンのシンフォニー、ホ短調 Hob.Ⅰ―44。
誰が付けたかわかりませんが、「悲しみ」というタイトルです。
悲しい、というよりは、ホ短調の緊張感が全曲を包みます。

後半は、ハイドンのシンフォニー、イ長調 Hob.Ⅰ-87。
たいへん充実した作品を、鈴木秀美さんの指揮による充実した演奏で聴くことができました。

的外れかもしれませんが、全体を通じて、聴衆の心理をくすぐる巧妙なプログラミングのように感じられました。
休憩をはさんで、静かに、さりげなく、聴き手の気持ちが盛り上がっていくように感じられたのです。
とくに、イ長調 Hob.Ⅰ-87は、後期のロンドンシンフォニーに比べても、決して劣るとは感じられない作風の充実が感じられ、終楽章に向かってテンションを高めながら進んでいく音楽の運びとも相まって、とてもスリリングなひとときを過ごすことができました。


2017年11月29日
から 久元喜造

神戸新聞社からの猛烈抗議

夜中、これまでアップしたブログの更新作業に追われました。
発端は、神戸新聞社からの、私のブログへの抗議です。
神戸新聞の記事を写真に撮り、ブログにアップすることが、著作権法違反にあたるという指摘です。
すぐに削除するように事前に警告するが、もしすぐに対応しなければ、市長といえども告訴も辞さない、との猛烈な抗議を受けたのだそうです。

確かに、著作権法の解釈からいえば、神戸新聞社のおっしゃるとおりです。
私は、夜遅く帰宅してから、これまでアップした記事を検索し、神戸新聞社の記事の画像を削除する作業を行いました。
もし、まだ残っている記事があれば、明日も確認し、削除したいと思います。

確かに私の落ち度ですが、新聞記事のごく一部を映し、ブログにアップすることが、そんなに問題があることでしょうか?
神戸新聞社には、神戸のことをいろいろ発信していただいていることには、本当に感謝しております。
記事を批判的に取り上げたことに関係しているとは思いませんが、地元紙として、もう少し、おおらかな対応がありえないのかという疑問は禁じ得ません。

もちろん、法律的な解釈は神戸新聞社のおっしゃるとおりですから、記事の画像は速やか削除いたします。


2017年11月28日
から 久元喜造

ハイブリッド芝導入に着手


先日、2019ラグビーワールドカップの試合日程が発表されました。
神戸では一次リーグ4試合が行われることとなりました。

会場となる ノエビアスタジアム神戸 では、10月下旬からハイブリッド芝導入のための工事が始まっています。
ハイブリッド芝は、天然芝に人工繊維を埋め込むことで、芝が生長するにつれて根が人工繊維に絡み、耐久性を向上させる芝です。(2017年3月26日のブログ
今年の7月に性能が検証され、日本国内で始めてJリーグからハイブリッド芝の使用が承認されました。
今回の工事では、ハイブリッド芝の敷設のほか、下層部分に「地温コントロールシステム」という新しい設備を導入します。

芝生ピッチの土中に配管を行い、夏場は冷たく、冬場は暖かく温度管理した水を循環させることで、芝生の育成に最適な土中温度に保ち、生長を促すものです。
「ハイブリッド芝」「地温コントロールシステム」、さらに日照不足を補完するため、芝生生育に有効な光を照射する「グローライト」という機器を組み合わせ、より強靭な芝生ピッチを生み出します。
これらの対応により、ノエビアスタジアムのピッチコンディションは大幅に改善されます。
このほか、新しいラグビーのゴールポストや、スタジアムの電気設備の改修などラグビーワールドカップに備えたほかの工事も行っています。
いずれの工事も来年3月を目標に進めており、生まれ変わった芝生ピッチで来シーズンのヴィッセル神戸のホーム戦を迎える日を楽しみにしたいと思います。


2017年11月24日
から 久元喜造

Friday Night in 神戸旧居留地


お洒落にライトアップされたビルの写真が載ったパンフレット。
神戸旧居留地の夜をもっと楽しんでいただこうという取り組みです。

ナイトエコノミーの活性化は、神戸の課題のひとつです。
神戸を訪れる来街者の多くが大阪に泊まるのは、神戸の夜のありように課題があるからだと思います。
「神戸文化フォーラム」でも議論しましたし(2017年2月13日のブログ)、夜のカフェで開かれたディスカッションにも2回参加しました。

そろそろ行動のときではないかと感じてきましたが、このほど、旧居留地で動きが出てきました。
神戸市立博物館 では、「ボストン美術館の至宝展」の開催期間中(2018年2月4日まで)、第四金曜日は、夜9時まで開館することにしました。
きょう11月24日、そして12月22日、来年の1月26日の3回、開館時間を「午後5時30分まで」から「午後9時まで」に、大幅に遅らせます。
市立博物館は35年前にできましたが、平日の夜9時まで開館するのは初めての試みです。

市立博物館のこの動きに呼応して、旧居留地内の他のミュージアム3館、神戸パールミュージアムKOBEとんぼ玉ミュージアム神戸らんぷミュージアム も、夜間開館をしていただけることになりました。
ありがたいことです。
また、夜間開館の日に合わせて、旧居留地のビルのロビーで、街角コンサートが開かれます。
PREMIUM CLASSICAL CONCERT

このような取り組みが広がり、神戸の夜が充実したものになっていってほしいと願います。


2017年11月23日
から 久元喜造

マイナンバーによる情報連携がスタート


マイナンバーを活用した情報連携が11月13日から始まりました。
自治体、税務署、ハローワーク、健康保険組合などの機関の間を「情報提供ネットワーク」で結び、マイナンバーの仕組みを使って、住民の情報を相互に提供する仕組みです。
住基コードから変換された特殊な符号を使って情報マッチングを行います。

これまでは、個々の行政機関はそれぞれの手続きに関する情報を住民のみなさんから直接教えていただいていました。
たとえば、児童手当などの給付を受けるときは、まず本人であるかどうか確認するために住民票が必要であり、所得要件に該当するかを確認するために所得証明を求められます。
このため、住民のみなさんが窓口でさまざまな手続きをする際に、あらかじめいろいろな証明書類を用意しなければならなかったのです。

マイナンバーによる情報連携により、行政機関などは、必要とする情報を「情報提供ネットワーク」で保有する機関に照会し、自ら情報を得ることができるようになりました。
住民のみなさんは、手続きの際に添付書類を提出していただく必要がなくなります。
窓口の混雑が緩和され、待ち時間も減ることしょう。
区役所などの行政窓口での仕事の効率化が図られ、職員は、反復的な確認作業が減る分、相談に来られた住民の方のお話をしっかり伺うことができるようになります。

今後とも、マイナンバーなどICTを活用することで、行政サービスの高度化、効率化を進めていきます。
これから日常生活のいろいろな場面でマイナンバーが必要になってきます。
マイナンバーカードをぜひ取得していただきたいと思います。


2017年11月18日
から 久元喜造

『ひょうたん池物語』の生き物たち

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選挙中も、
「『ひょうたん池物語』、読みましたよ」
と、ときどき声をかけていただきました。とてもうれしかったです。
登場する生き物たちについて質問を受けたり、話題になることも多いので、少し紹介させていただきます。

主な登場生き物は、ドンコ(どん太)、カワバタモロコ(モロコさん)、スズメ(ちゅんこ)、フナ(ふなじい)、カラスヘビ(からきち)、マムシ、イシガメ、ドジョウです。
このほか、ホトトギス、フクロウ、カッコウなどの鳥たち、イモリ、リス、ネズミなどの動物、カブトムシ、クワガタ、タガメなどの昆虫も登場します。

これらの中には、絶滅危惧種になったり、ずいぶん見られなくなった生き物もいます (神戸版レッドデータ2015)
同時に、神戸市内には、今でも豊かな自然環境が息づいています。
神戸市では、さまざまな団体、大学などと連携し、生物多様性を保全するための取組みを進めており (神戸市の生物多様性に関するポータルサイト) 、このような神戸市の取組みは、自治体の中でも進んでいると思います。
たとえば、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った、全国665自治体の評価では、神戸市は、生物多様性への取組みについて、最も高いランクの評価を受けています (同社のニュースリリース)
10月10日には、「神戸市生物多様性の保全に関する条例」を公布しました。

今後とも、市民のみなさんとともに、残された自然環境の保全と生物多様性の回復に取り組んでいきます。


2017年11月14日
から 久元喜造

高齢者部分休業制度の導入


『定年後』という本が売れているそうです。
まだ読んでいませんが、定年後の人生は長くなっており、どう過ごすかに関心が集まっているからでしょう。
公務員の場合には、在職中の知識・経験を退職後において活用し、社会が抱える課題に取り組んでもらえるようにするという視点が必要ではないでしょうか。

神戸市がこのほど導入した「高齢者部分休業制度」は、いわば漸進的な退職準備で、なだらかに「定年後」の人生に移行できるようにするものです。
55歳に達した職員は、勤務時間の半分を超えない範囲内で休業できるようになります。
休業した時間は、無給となります。
ご自身の体調不良や親の介護などの場合もあるでしょうが、第2の人生を見据えて、これまで以上に地域活動などに積極的に参画してほしいという願いも込められています。

家族や地域社会のありようが変容する中で、地域ではさまざまな課題が噴出しています。
自治会、婦人会、民生委員、消防団、保護司などのほか、さまざまなNPOのみなさんが献身的に活動されています。
地域課題に民間事業として取り組むソーシャルビジネスも少しずつ広がりを見せています。

中高齢職員が「高齢者部分休業制度」を活用して徐々に勤務時間を減らし、勤務時間外の地域活動にシフトしていくことも考えられます。
ソーシャルビジネスの起業やNPO法人の設立、参画など多様な試みを期待したいと思います。
阪神・淡路大震災への対応など困難な仕事に立ち向かってきた豊かな経験を、それぞれのありようで地域社会に活かしていただきたいと願っています。


2017年11月11日
から 久元喜造

池内紀『闘う文豪とナチス・ドイツ』


ジュンク堂で購入したのはだいぶ前ですが、選挙が終わり、ようやく読むことができました。
朝日新聞の「著者に会いたい」で池内さんのインタビューが掲載されていましたし、読売新聞などの書評も読んでいたので、紐解くのが楽しみでした。

20世紀のドイツを代表する作家、トーマス・マン(1875-1955)は、膨大な日記を遺しました。
ドイツ文学者、池内紀さんが、時代背景を交えながら、文豪の日記を読み解いてくれます。

1933年2月10日、トーマス・マンは、地元ミュンヘン大学でナチス・ドイツを痛烈に批判、その後短期間の講演旅行のために出国しますが、ナチスはこのときを待っていたかのように、マンの入国を禁止します。
家族、自宅、草稿などいっさいを残したままの、突然の亡命生活の始まりでした。
日記は、亡命直後の1933年3月15日から、逝去直前の1955年7月29日まで書かれました。

大戦をはさむ激動の時代がどのような道筋をたどったのかを、後世の私たちは知っていますが、それらは時代を過去の出来事としてとらえます。
これに対し、時代を生きた人々のそのときどきの観察は、危機的な時代の空気を臨場感を伴って伝えてくれます。
透徹した知性を備えたノーベル賞作家が同時代人として書き残した記録は、ドイツのことを知り尽くしておられる最良の案内人を得て、時代背景や周辺事情とともに蘇ります。
流浪の文豪の祖国への想い、交友した人々への感情、通史的な歴史書では描かれないナチス・ドイツの支配構造や行状にふれることができ、文豪の苦悩の日々に想いを馳せることができました。


2017年11月8日
から 久元喜造

政治はマーケッティングではない。


朝日新聞(10月28日)朝刊に掲載されていた「高橋源一郎の 歩きながら、考える」を読みました。
作家・高橋源一郎氏が小池百合子東京都知事と「彼女へのまなざしの中に何を見たの」かが記されていました。

高橋源一郎氏は、小池知事のご著書の「ビジネスでも政治でも『マーケッティング目線』が大切です」という部分に着目し、次のような感想を漏らされます。

「マーケッティング目線」を大切にする政治家にとって、有権者は、「消費者」にすぎない。だとするなら、あの車の上から投げかけられることばのシャワーは、テレビのCMから流れてくるものとまったく同じなのである。・・・車の上の人にとって、「下」にいる有権者たちは、ヒットしそうな政策を喜んで受け取ってくれる「消費者」だ。


この文章を読んで、4年前の選挙のことを思い起こしました。
選挙はマーケッティングだ」と公言する候補者がおられることに衝撃を受け、こう記しました。(2013年9月15日のブログ

選挙がマーケッティングという考え方は、ご自身、あるいは、公約や政策という商品を、消費者である有権者に売り込むことを意味するものと思われます。
このような考え方は、長く一貫して地方自治や民主主義を考え、実践してきた私には、到底受け入れられないものです。
有権者である住民は、決して消費者ではありません。住民は自治の主役であり、担い手です。そして、選挙は、主権者である国民、住民との誠実な対話であり、対話を通じて、国民、住民の代表を選ぶという厳粛な営みです。

政治や選挙の対するこの考え方は、今もまったく変わっていません。


2017年11月5日
から 久元喜造

松宮宏『まぼろしのお好み焼きソース』


前に読んだ松宮宏さんの小説『まぼろしのパン屋』(2017年6月8日のブログ)は、東京の郊外が舞台でしたが、今回は、神戸の長田が舞台です。
神戸市立青葉小学校の新任教師、磯野祥子が出勤初日に、商店街にある「間口ソース店」に入り、遅刻したところから、物語は始まります。
お好み焼きとソースがこれでもか、というほどに登場するB級グルメの物語です。

長田では焼きそばをそば焼きと呼ぶ。お好み焼きにそばを載せればモダン焼き、ご飯と切れ切れにしたそば麺を混ぜればそば飯だ。すべて長田が発祥である。

松宮さんは、丹念に長田を取材され、温もりと人情豊かな世界を描き出します。
現実には考えられないような人々も登場しますが、長田の日常が生き生きと描かれているように感じました。
読み進めると、新長田の合同庁舎が登場したのには、驚きました。

震災から20年経つが、長田の復興は道半ばである。ここは政治の出番と、市長は知事と決断し、長田に県と市の税金関係の合同庁舎を作ることを決定した。3年後、新しい庁舎は稼働をはじめ、長田は千人の公務員が通う町になる。昼飯代だけでも、年間3億円の経済効果があるという試算だ。しかし昼飯だけではいけない。

まったくそのとおりです。
新長田駅周辺には、お好み焼き屋さんをはじめ、味のあるお店がたくさんありますから、職員のみなさんには連れ立って夜もうろちょろしてほしいと思います。
個々の職員の事情もあり、無理強いはできませんが、千人の職員が「長田地域おこし応援団」になって、地域のみなさんと会話を交わし、長田の街づくりのお手伝いをしてほしいと願いながら、本書を読み終えました。