「ハイドンのふたつの時代から 疾風と怒涛から古典派の確立へ」というコンサートのタイトルは、ほとんど意味不明ですが、同じ時代を生きた、ヨーゼフ・ハイドン(1732 – 1809)とルイジ・ボッケリーニ(1743-1805)の作品が演奏されました。
冒頭に、鈴木秀美さんのチェロで演奏されたボッケリーニのチェロ・コンチェルトは、当日配られた解説によれば、1770年にパリで出版された原曲に由来するそうですが、冒頭から奏された通奏低音奏法からも窺えるように、明らかにバロック音楽の痕跡を多く残し、かなり前に創られた作品であるように感じられました。
前半の2曲目は、ハイドンのシンフォニー、ホ短調 Hob.Ⅰ―44。
誰が付けたかわかりませんが、「悲しみ」というタイトルです。
悲しい、というよりは、ホ短調の緊張感が全曲を包みます。
後半は、ハイドンのシンフォニー、イ長調 Hob.Ⅰ-87。
たいへん充実した作品を、鈴木秀美さんの指揮による充実した演奏で聴くことができました。
的外れかもしれませんが、全体を通じて、聴衆の心理をくすぐる巧妙なプログラミングのように感じられました。
休憩をはさんで、静かに、さりげなく、聴き手の気持ちが盛り上がっていくように感じられたのです。
とくに、イ長調 Hob.Ⅰ-87は、後期のロンドンシンフォニーに比べても、決して劣るとは感じられない作風の充実が感じられ、終楽章に向かってテンションを高めながら進んでいく音楽の運びとも相まって、とてもスリリングなひとときを過ごすことができました。