久元 喜造ブログ

吉原祥子『人口減少時代の土地問題』


「「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ」というサブタイトルが付けられています。
空き家・空地、所有者不明土地問題については、ブログで何回も取り上げてきましたように、強い問題意識を持って取り組んできましたので、興味深く読みました。
本書が取り上げている問題の所在と現状、対応方策の進捗状況については、おおむね知っていましたが、問題が生じてきた背景、制度の由来、解決方策へのアプローチについて、さらに理解を深めることができました。

筆者の問題意識のひとつは、「なぜ、国土管理の基本である土地の所有者情報について、任意である権利の登記がその中心になったの」か、という点です。
不動産登記制度は、「不動産の物理的状況を明確にする機能」と「所有権などの権利の変動を公に示す機能」の二つの役割を持っていますが、これらはもともと別の制度でした。
前者の機能は、地租を徴収するためにつくられた土地台帳が始まりで、税務署が担っていました。
後者の機能は、民法の制定に対応するために不動産登記法が担い、法務局が管轄しました。
戦後、地租が廃止されて、市町村が固定資産税を課すことになりましたが、この結果、税務署が土地所有者の把握を行わなくなり、さらに土地台帳の廃止による登記簿と台帳の「一元化」により、前者の機能は後者の機能を有する登記制度に吸収されてしまったのです。

このような経緯を考えれば、登記の義務化はなかなか奥行きの深いテーマであることがわかりましたが、何とか解決に向けて自治体としても積極的に検討に参画していきたいという思いを新たにしました。