久元 喜造ブログ

2018年6月10日
から 久元喜造

不眠都市ロンドン


スコットランド出張の途中、ロンドンに一泊しましたが、ホテルの部屋が道路に面していて、車が通る音で目が覚めました。
時刻は、午前3時過ぎ。
せっかくの機会なので、寝るのはやめて、夜中のロンドンの路上を部屋の窓から観察することにしました。

そんなに大きな幹線道路でもないのに、頻繁に車が通っています。
トラックやタンクローリーはほとんど走っておらず、大半は自家用車のようです。
歩道には、4,5人の若者がぶらぶら歩いています。
かと思えば、一人の若い女性が自転車で通り過ぎて行きました。
最近、ロンドンの治安はかなり悪化していると聞いており、大丈夫か心配になります。
窓の下にはバス停があり、まだ午前4時にもなっていないのに、路線バスが到着しました。
結構、乗客がいます。

ロンドンの街は、夜中でも早朝でも、休むことなく活動を続けているようです。
週末には地下鉄の一部の路線で24時間運行が行われています。
まさにロンドンは、不眠都市と呼んでも良いでしょう。

ナイトタイムエコノミーの活性化が課題になっている神戸にとり、不眠都市ロンドンの姿は参考になります。
地下鉄の24時間運行は無理ですが、中心市街地の博物館、ミュージアムの閉館時間を遅らせたり(2017年11月24日のブログ)、飲食店などのお店には、もう少し遅くまで営業していただけるような環境づくりが求められます。

同時に人間にとり、覚醒と睡眠の健全なサイクルは必要です。
街全体を不眠状態にしていくことについては問題も多いことでしょう。
「夜」を豊かなものにしていく見地から、地域特性に応じた取り組みが求められるように感じます。


2018年6月7日
から 久元喜造

海洋産業分野でのスコットランドとの連携


今年は、震災後スタートさせた神戸医療産業都市が20周年を迎え、次世代産業として、航空機部品、ロボット、水素エネルギー分野の産業育成に取り組んでいますが、さらに先を見据えると、海洋産業クラスターの形成が魅力のあるテーマとして浮上します。
2年前から、北海油田があり、海底資源探査など海洋産業が発達している英国スコットランドとの連携をスタートさせました。 昨年2月には、スコットランド有数の海洋産業・人材クラスターを形成しているアバディーン市のジョージ・アダム市長が来神され、また、7月には、スコットランド国際開発庁と共催で海洋ビジネスに関するセミナーを神戸で開催しました。

このような成果の上に、さらにスコットランドとの連携強化の方策を探ることとし、神戸市から経済界、学界、市会の関係者から成る訪問団を編成して、アバディーンを訪問しています。
きょうは、午前中、アバディーン市役所を訪問し、クロケット市長との間で、海洋産業分野のビジネス交流や人材育成に関する意思確認書を交換しました。


続いて、ロバート・ゴードン大学で行われたセミナーにおいて、私から神戸における海洋産業クラスターのポテンシャルなどについて説明し、神戸大学、参加企業の代表者からプレゼンテーションが行われました。

初めてアバディーンを訪れましたが、神戸にはない知見、テクノロジーと戦略、人材の厚みがあることがよく分かりました。
スコットランドとの交流を深めながら、神戸における海洋産業クラスターの形成に向けて具体化を図っていきたいと思います。


2018年5月31日
から 久元喜造

「リーダーの本棚」に追加したい1冊


2年半ほど前、 日経新聞リーダーの本棚」に、私の読書歴を取り上げていただいたことがありました。(2015年9月20日朝刊)
見出しは、「近代が立体的に見える瞬間」。
日本の近代システムを創り上げていった政治家、官僚たちの群像、彼らを冷ややかに眺めていた永井荷風、さらにはプロレタリア文学、西洋音楽の摂取、大陸人脈の系譜などの視点を交錯させることによって、日本の近代を立体的に見ることができるのではないか、という問題提起でした。

このほど、日本経済出版社 から『リーダーの本棚』が単行本として出版されました。
各界の方々とともに、私のインタビューも掲載され、光栄に存じております。
この中で、『明治国家をつくる』(御厨貴著 藤原書店) を取り上げたのは、地方制度の整備と首都東京の建設が密接にリンクしていて、このことは、今日、地方創生と東京問題との関連に通じると感じたからです。

一方、我が国の近代化と経済発展には、神戸も大きく貢献しました。
神戸は日本を代表する国際港湾都市として発展していきましたが、同時に、労働問題や貧困など我が国の近代化の過程で露呈していった矛盾が噴出し、無産政党の活動も盛んでした。

火輪の海-松方幸次郎とその時代-』 (神戸新聞社編)には、松方の生涯を通じて、神戸の近代が鮮やかに描かれていますが、そこに描かれている大都市神戸の発展と混沌は、我が国近代の縮図でもありました。
日経新聞社からインタビューを受けたとき、本書を含めていれば、さらに「立体的」に我が国の近代を俯瞰することができたのではないかと改めて悔やまれます。


2018年5月27日
から 久元喜造

深井智朗『プロテスタンティズム』


ルターの「宗教改革」のイメージを根底から変えてしまうとともに、現代政治への示唆にも富む、刺激的な内容でした。
ルターは「プロテスタント」という新たな宗派を生み出そうとしたのではなく、カトリックの中での改革を試みた、という指摘から本書は始まります。
彼が批判したのは、贖宥状(免罪符)の販売でした。
贖宥状批判はローマ教皇や聖職者の経済的利益に関わり、政治的意味を持つに至ります。

聖書の解釈を最重要視するルターの主張は、当時の印刷技術の発展に支えられ、瞬く間に広がりました。
ローマ教皇はルターを破門にし、神聖ローマ皇帝カール5世は彼を異端と断じますが、問題はこれで解決せず、領主たちはローマ教皇、ルターのいずれの側に立つのかが問われることになりました。
ルターの死後、1555年、「アウクスブルク宗教平和」と呼ばれる決定が行われます。
領主が自分の領邦の宗教を決定できることになり、以後のドイツの各領邦は、「皇帝の古い宗教」(=カトリック)と、「アウグスブルク信仰告白派」(=プロテスタント)に色分けされていきました。

プロテスタントはドイツのみならず諸外国に広がり、そして枝分かれしていきます。
著者は、それら多様な動きを、「支配者の教会」と「自発的結社としての教会」に分かちます。
前者は、たとえばドイツ帝国において国教的役割を果たし、後者は、さらなる改革運動を各国で展開していったのでした。
このように、「プロテスタンティズムは、その後の歴史の中でさまざまな種類のプロテスタントを生み出し」ました。
複雑な内容がたいへん分かり易く説かれ、欧米近代史に対する鳥瞰図的理解を深める上でたいへん有意義でした。


2018年5月24日
から 久元喜造

葺合警察署「イノシシ」ポスターに拍手!


何日か前、新神戸駅前の 神戸芸術センター で開かれたリサイタルを聴きに行くため、阪急・春日野駅で下車、ぶらぶら歩きました。
その途中、掲示板に貼ってあったのが、イノシシへの注意を促すポスターでした。
このあたりでもイノシシが出没することを、改めて認識しました。

それにしても、このポスター、よく出来ていると感心しました。
「出た!」「いのしし」
とてもインパクトがあります。
イノシシが「危険な動物」だというメッセージが伝わってきます。

「絶対に追いかけない」
「エサは、やらないで」
市民への注意事項も明確ですし、「ぷぃ」と、ユーモアも感じられます。

「自然の動物は、自然のままに!!」
まったくそのとおりで、見識ある警告です。

このように、このポスターには無駄な言葉がなく、明確なメッセージや必要な情報が限られたスペースに盛り込まれています。
連絡先も、明記されています。
デザインなどから見て、ほとんどお金をかけていないと思われるのに、素晴らしい出来栄えです。
ひょっとしたら、署員の方の手づくりかもしれません。

デザイナーを入れて金をかけているのに、出来上がったものを見ると、きれいなだけで何が言いたいのかさっぱりわからない、というポスターやチラシもあるので、このポスターは大いに参考になります。

警察署のみなさんがイノシシ対策の面でも市民の安全に貢献していただいていることに、感謝申し上げます。
欲を言えば、神戸市の「有害鳥獣ダイヤル」(078-333-4408)についても記載していただければ最高でした。
神戸市関係部局と警察ご当局との連携を、さらに強化していきたいと思います。


2018年5月21日
から 久元喜造

崎谷明弘ピアノ・リサイタル


昨日の夕方は、「神戸まつりメインフェスティバル」の終了後、松方ホール で開催された、崎谷明弘さんのピアノ・リサイタルにお邪魔しました。
平成28年度神戸市文化奨励賞を受賞された若手ピアニストです。
プログラムに好きな曲が多かったこともあり、楽しみに伺いました。

前半は、ハイドンのピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:49 、そして、リストのロ短調ソナタです。
リストのソナタでは、目が眩むような技巧が圧倒的な迫力で繰り広げられましたが、崎谷さんは、決して力で音楽をねじ伏せようとはしません。
繰り返し反復される音楽の静まりもとても美しく、聴衆を魅了しました。

後半は、ドビュッシーの「喜びの島」に続き、 ベートーヴェンのピアノソナタ ト長調  op.14-2  をはさんで、シューマンの「フモレスケ」。
「フモレスケ」は、シューマンの情熱的な「フロレスタン」的要素、そして瞑想的な「オイゼビウス」的要素(シューマン『音楽と音楽家』)が交錯しますが、そのようなシューマンの音楽の魅力がこの上ない完成度で浮き彫りになった名演でした。
素晴らしい演奏に没入したリサイタルでしたが、プログラム全体を通して聴いた一愛好家の感想としては、ベートーヴェンのソナタが最も心に染み入りました。

今日のリサイタルは、高校生以下が無料で、小中学生と思しき姿もありましたが、聴き手は演奏に集中し、緊張感みなぎる濃密な音楽空間が現出しました。
崎谷さんのファンは確実に広がりを見せているようで、今後ますますのご活躍を期待しております。


2018年5月18日
から 久元喜造

マッキンゼー社のアジア拠点が神戸に。


既に報道されているところですが、昨日の 定例記者会見 でも申しあげたとおり、マッキンゼー・アンド・カンパニー のラーニングセンターが神戸に開設されることになりました。
同社は、申すまでもなく、世界を代表するコンサルティング会社です。
アジアでのコンサルティング業務が拡大している現状を踏まえ、香港やシンガポールなどの海外の大都市も視野に入れながら研修拠点の開設を検討されてきましたが、このほど神戸に決定しました。
米国、オーストリアに次ぐ、世界で3か所目の拠点となります。
拠点となるラーニングセンターは、ANAクラウンプラザホテルとホテル直結のオフィスビルのスペースの中に、約3,000平方メートルの規模で、今年の秋頃の開設が予定されています。

同社は世界中に約2,000人のコンサルタントを擁し、大体12カ月から18カ月に1回、1週間程度の研修が行われるとお聞きしています。
講師陣として、ビジネス、学界など約650名の多彩な方々が指導に当たられます。
世界中から優れた人材が恒常的に神戸に集まって来られることは、たいへんありがたいことです。
社内向けの研修拠点ではありますが、可能な範囲で、神戸の経済界、学界、行政関係者との交流や連携も模索していきたいと思います。

マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社は、学生のみなさんの就職先として抜群の人気があります。
今回の決定は、神戸のブランド力の向上にも資するところが大きいと感じています。
同社のみなさま、交渉をご支援いただきましたみなさまに、心より感謝申し上げます。


2018年5月16日
から 久元喜造

札幌とのご縁


昨日、札幌市で「指定都市サミット」が開催され、参加しました。
私は、1992年4月から1995年7月まで、札幌市役所に財政局長として勤務したことがあり、懐かしい想いを抱きながら、ずいぶん久しぶりに札幌を訪れました。

札幌在勤中の、1995年1月17日、地震が起きました。
テレビで次々に映し出される光景を見て、号泣しました。
故郷から遠く離れ、このような非常時に何の役にも立てないことが悔しく、情けない想いでいっぱいでした。
札幌市役所のみなさんは、神戸のために義援金を集めてくださり、私は、当時の杉田文夫収入役にお送りしました。

一昨日は、当時いっしょに働いたみなさんが、遅い時刻にもかかわわらず、薄野の老舗酒庵「五醍」で歓迎の宴を開いてくださいました。
それぞれ重責を担い、秋元市政をしっかりと支えておられます。
昔話や今の札幌市政についての話題に花が咲き、とても楽しいひとときでした。
「財界さっぽろ」も健在のようです。

神戸と札幌のご縁を感じる共通点のひとつが、スイーツです。
5月8日(火)には、ノエビアスタジアム神戸で、『スイーツマッチ2018』のプレス向けイベントが開催され、私も参加しました。

札幌の石屋製菓㈱石水創社長が来神され、㈱シュゼットの蟻田剛毅社長とのトークショーが行われました。
石屋製菓㈱は、銘菓「白い恋人」で知られ、㈱シュゼットは、「アンリ・シャルパンティエ」を神戸をはじめ幅広く展開しておられます。

スイーツをはじめいろいろな分野で、神戸と札幌のご縁が深まっていくことが楽しみです。


2018年5月13日
から 久元喜造

財務官僚の奮起を期待します。


神戸在住の作家、真山仁 さんの『オペレーションZ』を紐解きました。
財務官僚が数多く登場します。
事務次官、官房長、主計局長、大臣官房参事官、広報室長、IMFに出向した女性課長補佐、総理大臣官邸に出向中の若手官僚・・・
それぞれ個性は違いますが、彼ら、彼女らには、自分たちが国家を担っているのだという強烈な自負があります。
財政破たん寸前の日本を救うべく、登場人物たちがどのように行動し、物語がどんな結末を迎えるのか、楽しみです。

最近、財務官僚への風当たりが強くなっています。
小説と現実の世界は違うのでしょうが、財務官僚のみなさんは、わが国財政の現状に大きな危機感を持ち、どう対処していくのかを真剣に考え、行動に移してくれているはずです。
一部の幹部の行動には憤りを禁じ得ないものはありますが、だからと言って財務官僚全体を吊し上げ、不可解な満足を感じるような風潮は疑問です。
これで財政再建の道筋が遠のくとかいった論調に至っては、的外れというほかはありません。

わが国財政を持続可能なものとし、将来世代に過大な負担を押し付けないようにするためは、財政再建への取組みが必要です。
そして財政再建は、財務省のためではなく、国民のために求められるのであり、財政再建の責任を財務官僚のみに押し付けるべきではありません。
最終的な責任は、政治にあります。
財務官僚のみなさんには、委縮することなく、誇りを持って自らの任務を全うしてほしいと願います。
政治と行政がそれぞれの役割を果たし、緊張関係を維持しながら、しっかりと手を携え、財政と社会保障の持続可能性を回復させる努力が求められます。


2018年5月10日
から 久元喜造

献血車中での職員との会話


先日、市役所前で献血キャンペーンがあり、私も参加しました。
献血車の中の待合椅子で、20代と思しき若い職員と隣り合わせになりました。
市内の比較的遠方の出先機関に配属されている職員でした。
彼は大きな布袋を持参し、その中にはたくさんのファイルや書類が入っていました。
訊くと、書類に市長印を押すために市役所に来たのだそうです。
採血の順番が回ってきたので、それ以上詳しくは聞けませんでしたが、おそらく関係の決裁文書を持参し、市長印を保管している課に示して、1枚ずつ市長印を押して帰るのだろうと想像しました。

彼が所属する出先機関まで市役所から片道約1時間。
重い荷物を抱え、電車を乗り継いでの往復は、職員にとって苦痛のはずです。
やり方を変えれば、彼はもっと有意義な仕事をすることができるでしょう。

こんな仕事の仕方をいつまで続けているのかと、頭を抱えてしまいます。
大半の決裁は副市長以下が専決しており、私がこれらの文書を見ることはありません。
市長権限を出先機関の長に委任するとか、市長印の印影を改ざんされない方法で電子的に作成し、これを出先機関で印字するとか、やり方はあるはずです。

似たような不合理は、神戸市組織の至る所にあるのかもしれません。
以前、北区役所の部長が北神出張所で決裁するために、鈴蘭台から岡場まで神戸電鉄に乗って出張を繰り返している、という話を聞き、北神出張所の北神支所への格上げを急ぎ、さらに来年4月に北神区役所を設置することにしました。
「業務改革」「働き方改革」を加速させていかなければなりません。