久元 喜造ブログ

2019年3月5日
から 久元喜造

「職員部」は廃止します。


先日の記者会見で、某市長の「暴言」に関連して、職員にどう接しているかについて訊かれました。
私は、職員を怒鳴ることはありませんが、市役所にお世話になるようになってから、そうなってしまったことが1回だけあります。
それは、人事当局の身勝手 に対してでした。

もう4年近く前のことです。
6月半ば、梅雨の蒸し暑い日が続いていました。
秘書から、明日は、背広、ワイシャツ、ネクタイを持ってきてください、と言われました。
職員証の写真撮影があるとのことでした。
言われるとおりにしましたが、さすがに切れました。(2015年6月23日のブログ
どうして夏に、冬の格好で写真を撮らせるのか。
背広を着ている季節に撮影すればよいだけのことです。
人事当局の身勝手な指示のために、私だけではなく、何千人という職員が、ラッシュ時に余計な荷物を持って来ることになるのです。

人事当局は、職員が気持ちよく、能率的に仕事ができる環境を用意していく使命を持っています。
職員のことなど眼中になく、無用の負担と苦痛を強いる人事当局・・・
これほど周りへの配慮を欠き、自分たちのことしか考えない人事当局は見たことがありませんでした。

その後、人事当局と私は、「市役所改革」のためにさまざまな議論を重ねました。
少しずつ前向きの議論ができるようになる一方、今から思えば、苦渋に満ちた表情で下を向く幹部もいたように思います。
何かに怯えていたのでしょう。

そして、ヤミ専従問題が発覚しました。
労使癒着の舞台となり、さまざまな弊害を生んできた「職員部」は、今月末をもって廃止します。
神戸市役所は新たな体制のもと、明るく、開かれた職場づくりに取り組んでいきます。


2019年3月3日
から 久元喜造

村上しほり『神戸 闇市からの復興』

空襲で焼け野が原になった神戸の街が、戦後、闇市から復興してきたことは知られています。
著者は、その闇市の「発生から衰退を辿り、さらに闇市が姿を変えて新たな商業空間として根付くまでの変容過程を描」きます。

素晴らしい研究書です。
GHQ記録の文書をたどり、対象時期の神戸新聞の全紙面(!)を通覧し、神戸市職員を含め当時を知る人々へのインタビューを実施し、複雑な当時の状況を丹念に蘇らせます。
三宮国際マーケット、ジャンジャン市場などを舞台に、民衆、GHQ、地方行政・警察をはじめ、きわめて多様な人々が登場します。
1987年生まれの著者が、まるで当時のカオスの真っただ中に身を置いていたかのような臨場感に圧倒されます。

街づくりは、今後の社会経済の変化を見据えるとともに、「都市の記憶」を踏まえながら構想し、進めていかなければなりません。
その意味で、本書が、神戸市の多くの職員に読まれることを期待したいと思います。

また、新開地近辺で生まれ、子供時代を過ごした私にとり、「湊川新開地」、「湊川公園商店街」に関する記述はまことに興味深く、喧騒と混沌の坩堝であった当時のことを懐かしく想い起しました。
あの頃、すで長く廃墟となっていた神戸タワーが、まだ湊川公園に聳えていました。
神戸タワーの撤去がなぜ1960年代に入るまで行われなかったのか、複雑な事情を初めて知ることができました。
1968年9月に撮影された写真には、取り壊される最中の神戸タワー、そして5年前に竣工したポートタワーの両方が写っています。
神戸の街は、闇市の面影を払拭し、急速に姿を変えていったのでした。(慶応義塾大学出版会:2018年12月刊)


2019年2月28日
から 久元喜造

感度良好!ストリート・ピアノ・ポスター。


デュオこうべに一時設置していたストリート・ピアノは、3月20日頃に本格的に設置することにしており、いま準備を進めています。(2019年1月19日のブログ
それにしても、このときの画像を見ると、ピアノの傍に置かれていたポスターがとても良くできている、と感心しました。

ご自由に お弾きください!」のメッセージが大きく書かれ、英語でも表記されています。
たくさんのみなさんが行き交う場所でピアノを弾くのは、少しためらうところがあるかもしれませんが、そんなこと全然気にしないで自由に弾いてください、という作成者の意図が、優しく伝わってきます。
このピアノの歴史や経緯に関する説明も、ほんわりとした温もりのある文体です。
いろいろな方向を向いた音符記号が配置され、ピアノの音が周囲に届いていくイメージにぴったりのデザインとなっています。
フォント、色彩、文字と音符記号のバランス、余白の取り方も絶妙です。
ハッシュタグがつけられているのも、役所のポスターとしては新鮮です。
貼られている掲示板のワインカラーの色彩もセンスが良く、上品に目を惹きます。

このポスターの原案は、住宅都市局市街地整備部のみなさんがつくり、クリエイティブ・ディレクターのアドバイスを受けながら、完成させたと聞いています。
市役所プロパーの職員と外部人材とがコラボし、良い仕事をしてくれていることをありがたく感じています。

この前のブログ でも書きましたが、内部の説明資料作成にかけている膨大な労力を減らし、市民のみなさんの目に触れるポスターや文書をもっと良いものにしていきたいものです。
その意味で、このポスターは、良いモデルになります。


2019年2月25日
から 久元喜造

内部の説明にパワポは要らない。


市長・副市長会議で、庁内の説明にパワポを使わないことにしてはどうか と提案しました。
きっかけは、高岡浩三ネスレ社長に講演をしていただいたことでした。
とてもわくわくする講演で、聴きどころはいっぱいあり、全体の中では周辺部分でしたが、報告は原則として口頭、資料は原則、A4、1枚、いうお話がありました。

我が意を得たり、という思いでした。
とにかく、市役所の説明は長いのです。
政策会議などでも、パワポを使った説明が延々と続きます。
しかも、パワポの資料はスクリーンに映されるだけではなく、何十枚も紙で印刷して配布されることもあるのです。
膨大な資源の無駄遣いです。
このことは、4年以上も前に問題提起をしたのですが、あまり改善されていません。(2014年11月4日ブログ

内部での議論に、視覚的効果を狙い、意匠を凝らした説明資料は要らない のではないでしょうか?
パワポ資料の作成には、かなりの手間がかかるはずです。
「働き方改革」の面からも、内部説明のための労力は減らすべきです。
もちろん、数字やデータ、法令の規定に基づいた議論が必要な場合もあります。
そのようなときは、必要な既存の資料をタブレットに入れればよいし、タブレットの配布が完了するまでは、紙の資料で議論することは仕方がないでしょう。

これは私の趣味ですが、数字が必要なときは、数字さえあればよく、グラフにする必要は感じません。
グラフだけあって、数字が入っていない資料にたまにお目にかかりますが、それは困ります。
要は、みかけではなく、中身の濃い政策議論をしっかりとする、ということだと思います。
内部のために使う手間暇は、市民のために使われるべきです。


2019年2月23日
から 久元喜造

オクチュリエ『社会主義リアリズム』


昨年秋に読んだ『ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光』(2017年10月27日のブログ)は、ずっしりとした重い内容を含んだ著作でした。
そのときにも書いたのですが、ショスタコーヴィチの前に立ちはだかり、彼がおそらくは表面的に体現しようとした「社会主義リアリズム」とは何であったのか、この観点からの共産党権力との相克はどのようなものであったのかは、課題として残りました。
そこで、新聞の書評でぴったりのタイトルの本書を見つけ、読むことにしました。

著者は、本書の冒頭、1934年に制定されたソヴィエト作家同盟の憲章第1項を紹介します。
社会主義リアリズムとは、ソヴィエトの芸術的文学と文学批評の基本的な方法として、芸術家に、革命的発展における現実を、忠実に、そして歴史的かつ具体的に描写することを要求する

そしてロシア革命前後からの芸術文化における論争の経過が詳しく記述されます。
膨大な人物、文書が登場しますが、その大半は政治家、そして文学、芸術の理論家とも言える人々で、音楽はもとより、文学、演劇、建築、絵画などの個々の作品が語られることはほとんどありません。
各芸術分野における代表的な芸術家とその作品を題材とした考察を期待していたのですが・・・

メイエルホリドはなぜ処刑されなければならなかったのか?
そして、ショスタコーヴィチは、なぜしばしば断罪されなければならなかったのか?
検閲当局との神経戦はどのようなもので、それは作品にどのような影響を与えたのか?
これらの問いに対する答えは残念ながら本書からは見つかりませんでした。
ただ、旧ソ連史を芸術文化の観点から眺めることができたことは収穫でした。


2019年2月18日
から 久元喜造

お願いです。疑問点は直接聞いてください。


先日の夜、職員のみなさんと、外部人材も交えて、自由な意見交換を行いました。
さまざまな意見が出され、私からも率直に感じていることをお話しし、とても有益なひとときでした。
しかし、驚いたこともいくつかありました。
その一つが、「市長からの指示がどういう意味なのか、どんな意図なのかわからず、幹部が議論を重ねている」という指摘でした。
多くのみなさんが、そうだ、そうだ、という感じでウンウンと頷いていました。

正直、愕然としました。
そんなことは、直接聞いてくれればよいだけの話です。
だいぶ前にもブログで、総務省での体験について書いたことがありました。(2014年8月19日のブログ
大臣の発言について、説明のときの反応、秘書官に発した言葉、果ては酒席での戯れ言までが幹部の間で話題になり、「大臣の考えはこうだ」「いや、大臣の真意は別のところにある」といった、大臣の意図を探る会話があちこちで延々と交わされていたのです。
私は、そのような会話にはほとんど加わりませんでした。
時間が無駄だったからです。
そんなヒマがあったら、大臣に直接聞けばいいのに、と思っていましたし、実際そのようにしていました。

何と、同じようなことが、市役所で行われているというのです。
ショックです。
私の日程は過密ですが、職員のみなさんが部屋に来るのを断ることはありません。
私の意図を計り兼ねるときは、いつでも部屋に来てもらって聞いてもらえばよいだけのことです。
さっそく、山村昭市長室長から庁内に私の気持ちを伝えてもらうことにしました。

お願いです。
疑問があれば、直接部屋に来て、私に聞いてください!!!


2019年2月16日
から 久元喜造

50 Years History of Sysmex


シスメックス株式会社が、昨年創業50周年を迎えられました。
シスメックス50年史」を届けてくださいましたので、さっそく読ませていただきました。

臨床検査の総合メーカーとして今日揺るぎない地歩を築いておられる同社が創業されたのは、1968年2月。
東亞特殊電機株式会社(現TOA株式会社)の医用電子機器の販売会社(東亞医用電子株式会社)として、神戸市兵庫区で事業をスタートされました。
このときの従業員は8人。
それが今や世界中で、8,400人以上を雇用されています。
売上高は、上場された1995年度が309億円だったそうですが、2017年度には2,819億円と、約9倍にも拡大しました。
ものすごいスピードで成長を遂げてこられたことがわかります。
売上高の約85%は海外が占め、190カ国以上で取引を行うなど、グローバル企業として積極的なビジネスを展開されています。

創業まもない1970年代にオイルショック、上場した年には阪神・淡路大震災と大きな試練を乗り越えられ、「ヘルスケアの進化をデザインする」という Mission のもと、常に新たな挑戦を続けておられます。
家次恒会長兼社長の卓抜した経営手腕とリーダーシップに改めて敬意を表したいと存じます。

昨年20周年を迎えた「神戸医療産業都市」についても、構想段階から一貫してご支援いただいていることに感謝を申し上げます。
シスメックスさんが神戸市に本拠を置き、グローバルに活躍していただいていることは、神戸市民にとって大きな誇りです。
社業のますますのご隆盛をお祈り申し上げますとともに、人々の健やかな暮らしへの貢献をご期待申し上げます。


2019年2月12日
から 久元喜造

神戸における空き家対策の重要性


空き家対策はどこの地域でも求められますが、神戸ではとりわけ重要です。
もっとも力を入れなければならない分野のひとつです。
なぜなら、神戸における空き家の増加は、神戸の街づくりの歴史と密接に関連している からです。

空襲で壊滅的に破壊された神戸の街は、戦後、急速に復興しました。
戦災復興事業も進められましたが、その一方で、山麓部が次々に開発され、家が建っていきました。
都市計画の線引きもなく、建築ルールも不十分な中で、無秩序な開発が進められていったのです。
このような開発ラッシュから、地域によってはすでに70年近い年月が経過し、多くの家屋は老朽化して人口が流出し、空き家が増えています。
老朽危険家屋が増え、ごみステーションや街灯の管理もままならず、荒廃が進んでいる地域もあります。

1960年代に入ると、人口増加に対応し、市街地の過密を解消するため、灘区、東灘区、須磨区などで計画的な団地造成が始まり、さらに、現在の西区、北区ではニュータウンの開発も進められました。
これらの計画的開発地域が生まれてからすでに半世紀近い歳月が流れ、空き家が増えている地域も見られるようになっています。

このように、神戸市は、かつて短期間に集中的に開発された地域が一気に老化し、大量の空き家が生まれる宿命を背負っています。
「他都市並み」にと、のんびりやっていては、都市の空洞化が進み、人口減少が加速する要因にもなります。
新年度予算には、空き家・空地対策として、これまでにない施策も盛り込みました。
全庁一丸となり、使える空き家の有効活用、そしてすでに存在している老朽危険家屋の除去を、断固たる決意で進める必要があります。


2019年2月9日
から 久元喜造

新年度予算、前を向いて進みます。


昨日の午後3時から、市役所で平成31年度当初予算案の発表を行いました。
記者会見は、質疑応答の時間を多くとり、2時間10分にも及びました。

全部の会計を合わせた総額は、ほぼ1兆8000億円。
一般会計は、8,116億円、前年度比、4.3%の増で、積極型の予算となっています。
今回の予算案には、いたずらに都市の規模を拡大させるのではなく、市民生活の「質」を上げていくためのさまざまな施策が盛り込まれています。

冒頭、いわゆるヤミ専従問題に対する私の責任について明らかにするとともに、改めて市政に対する信頼を損なったことに対して陳謝しました。
今回の予算で盛り込まれている施策をスピード感を持って実施していくためには、神戸市役所が前を向いて進んでいくことができる組織であることが不可欠です。
おかしなことが行われていても、見て見ぬふりをしないと生きていけない。
おかしいと思っても声を上げることができない。
このような理不尽な雰囲気を一掃していかなければなりません。
逆に、おかしなことをおかしいと感じない市役所の「常識」は、世間の常識とは大きくズレています。

私は、最初の市長選挙のときに、「窓を大きくあけ放ち、外の空気を入れ、職員のみなさんが生き生きと仕事ができるような市役所を、職員のみなさんと一緒につくりあげていきます」とお約束しました。
私の力不足で、就任以来5年余りも経ったというのに、市役所改革は成果を挙げていません。
今回のヤミ専従問題は、このことを白日の下に晒しました。
今度こそ、明るく、前を向いて仕事ができる市役所に改革できるよう、良識ある職員のみなさんとともに、全力で取り組んでいきます。


2019年2月6日
から 久元喜造

ヤミ専従問題に対する市長の責任


いわゆるヤミ専従問題に関する第三者委員会の報告が出されたことを受け、きょう、関係者に対する処分を発表しました。
私は、すでに財政再建の見地から20%の給与減額を行っていますが、これに3か月間、30%を上乗せし、50%の減額を実施します。
市長、副市長の給与減額を行うための条例案を、2月議会に提案します。

振り返れば、昨年の夏ごろ、神戸市役所でヤミ専従が行われているとの心証を持つに至ったとき、どう対応すべきか悩みました。
ヤミ専従は、労使が癒着しないとできず、不用意に人事・労務当局に問いただせば、関係書類の改ざんなど証拠隠滅が図られる可能性もありました。
このような推測を行うことは、私を支えてくれている職員のみなさんに不信の念を抱くことを意味します。
自責の念にかられながらも、私は、実態解明を最優先することとし、内部調査を経ることなく、直ちに第三者委員会による調査を行うこととしました。

最終報告で明らかになったのは、ヤミ専従という職場慣行が数十年にもわたって続いてきたという事実です。
長年にわたって、おかしいことをおかしいとは言えない、世間の常識からかけ離れた組織風土が形成されてきたと考えられます。

このような組織風土に起因する不祥事の責任は、言うまでもなく組織のトップにあります。
私の責任は、給与の減額にとどまるものではなく、神戸市役所の組織風土を抜本的に改革し、明るく、開かれたものとすることだと考えます。
外から来た市長に勝手に市役所を変えさせてはならないと「義憤」にかられている幹部もいるようですが、大方の職員のみなさんの理解を得ながら、困難を極めて来た市役所改革を必ず実現するべく、全力で取り組んでいきます。