久元 喜造ブログ

2015年4月1日
から 久元喜造

教育に関する市長の責任

今日から教育の組織・運営に関する制度が大きく変わります。
これまでは、教育委員会が教育行政に関する責任の大部分を担い、知事・市町村長の役割は、予算の編成・執行、議案の議会への提出などに限られていました。

これでは選挙で選ばれた知事・市町村長が住民から寄せられた意見を教育行政に反映することができないことから、教育委員会制度を廃止して知事・市町村長が教育行政を実施できるようにすべきだという議論がありました。
また、大津市のいじめ事件に見られるように、一部の教育委員会の対応が責任感と緊張感に欠けるとの指摘があり、教育委員会への批判が高まりました。

一方、知事や市町村長が一元的に教育行政を担うことについては、政治的中立性の観点からの危惧もあり、侃々諤々の議論が行われた結果、執行機関としての教育委員会は存続させることとし、知事・市町村長の役割が強化されました。

まず、教育長については、教育委員会で選ばれるのではなく、知事・市町村長が議会の同意を得て任命することとされました。
また、知事・市町村長も構成員とする総合教育会議が置かれることになり、知事・市町村長が総合教育会議と協議して、教育などの分野における大綱を策定することとされました。

私は、これまで教育委員会の権限を尊重する立場から、教育行政には慎重に対応してきましたが、新年度からは、大綱の策定を含む自らの責任を適切に果たしていく必要があります。
市長が選挙で選ばれているからと言って、個人的な想いを振り回すことは避けなければなりません。
神戸市の教育の現状やこれから進むべき方向について幅広く市民のみなさんのご意見をお伺いしながら、責任を全うしていきたいと考えています。


2015年3月28日
から 久元喜造

トーテムポール跡記念碑

神戸市がシアトル市と姉妹都市提携を行ったのは、1957年のことでした。
私も、旧川池小学校で、シアトルの小学生と文通をしたのを覚えています。
そして、シアトル市との友好のシンボルとして、1961年、市役所の隣、花時計の横にトーテムポールが建立されました。
当時は大きく報じられ、話題になりました。 私も、さっそく見学に行ったのを覚えています。

月日が流れ、トーテムポールも老朽化が進みました。
関係者のみなさんで議論し、米国におけるトーテムポールの習わしに従い、土に還すことにしました。
「シアトルの森」がある森林植物園に移し、時間をかけて大地に還ることになります。

トーテムポールの跡地には、その写真を嵌め込み、両市、両市民の友情と交流を示す記念碑を建てることにしました。
温かな早春の陽射しが注ぐ中、昨日、除幕式が行われました。
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グリーンバーグ米国総領事、八木神戸・シアトル姉妹都市協会会長、レオンハート神戸クラブ顧問、山田神戸市会副議長をはじめとする関係者が出席され、和やかな雰囲気で式が挙行されました。

シアトル市は、航空・宇宙分野、医療産業、IT産業の発展が著しく、ビジネス交流に期待が持たれます。
新年度からは、シアトル市の事務所は廃止し、兵庫県ワシントン州事務所内に「神戸シアトルビジネスオフィス」を開設します。
神戸とシアトルとの交流は、新しいステージに入ります。


2015年3月23日
から 久元喜造

神戸市は大きすぎるのだろうか?

神戸新聞連載の故 貝原俊民さん 「わが心の自叙伝」第35回(3月21日掲載)は、神戸市に関わるテーマでした。
「山手」と「浜手」 と題し、坂井、貝原両知事と宮崎、笹山両市長との関係について記されていて、興味深く拝読しました。

転じて、貝原さんは、大都市行政の課題について、
「私は、大震災のとき、大都市の制度的欠陥を感じた。それは、基礎自治体として、人口規模が大きすぎるということである」
と端的に指摘され、次のように記しておられます。

神戸市とほぼ同じ人口規模の阪神地域には、7市1町がある。大震災時には8人の首長が対応し、広域的なことは知事が所管した。それに対し、神戸市では、市長1人がほとんどの責任を持った。このことによる住民対応の密度に、大きな差があった。

第27次地方制度調査会で、大都市制度について議論が行われたとき、貝原委員が「大を小にする」必要性について発言されていたことを想い起こします。
貝原さんが、指定都市の分割・解体まで考えておられたのかは、判然としませんが、現行の指定都市制度について大きな疑問を持っておられたことは間違いありません。

神戸市が大きすぎるから解体すべきだという議論は、少なくとも私が市長になってから市会で行われたことはありませんし、そう考える市民のみなさんは少ないと思います。
神戸市の存在を前提として、「住民対応の密度」を上げて行くことが必要で、そのためには、区役所の権限・役割強化が不可欠です。
将来ビジョン、行革ビジョンを作成していく中で、来年度中には、具体策をまとめます。


2015年3月21日
から 久元喜造

理不尽の再生産は止めよう。

霞が関で働いていた20代の頃、こんなことがありました。

39度を超える高熱を出し、独身寮でうんうん唸っていたら、夕方、管理人さんが部屋に来て、役所から電話だとおっしゃるのです。
下に降りて電話口に出たら、上司からでした。
課長から今日中に資料をつくれと言われているが、君にしかわからないので、今晩中につくって課長の官舎にとどけろ、と言うのです。
私は、朦朧となりながらも指示された資料をつくり、夜遅くタクシーで課長の官舎に届けました。悪いことにエレベーターのない官舎の上の階に住んでおられたので、ふらふらになりながら階段を上りました。
チャイムを鳴らすと、奥さんが出てこられ、
「主人はまだ帰っていません」
と、おっしゃるので、課長に渡していただくよう頼みました。
どうせ、どこかで飲んでいたのでしょう。
次の日、熱が38度くらいに下がったので、なんとか出勤しましたが、上司も、課長も、私に声すらかけてくれませんでした。

これは、私が経験した理不尽な仕打ちの、ほんの一つにしか過ぎません。
もちろん、心から尊敬できる上司や先輩はたくさんいましたが、職場の慣行や仕事の仕方は、理不尽だらけでした。

私は、霞が関で、長く「上司」として仕事をする中で、自分が受けた理不尽は行わず、同時に、組織から根絶することに努めました。
しかし、全体としてはうまくいきませんでした。
私の力不足もありますが、管理職の中に、自分が若いころに受けた教育をそのまま部下に施すことが、その部下のためにも、組織のためにもよいことなのだと信じ、忠実に実践する人が結構多かったからです。

組織の中に、少しはそんな人がいてもいいのかもしれません。
しかし、この種のタイプが組織の主流を占めてしまうと、組織の改革は進みませんし、職場環境の改善も望めません。
理不尽の再生産は止めるべきです。


2015年3月17日
から 久元喜造

小田切徳美『農山村は消滅しない』

三宮のジュンク堂で、小田切教授の『農山村は消滅しない』 (岩波新書)を購入した次の日、総務省のエレベーター前で、小田切先生にばったりお会いしました。
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明治大学農学部教授の 小田切徳美 先生には、定住自立圏の懇談会や、地方制度調査会などでご指導をいただいてきました。
豊富なフィールドワークを重ねながら、我が国の農山漁村の現状やその構造的要因について、緻密な分析を続けてこられました。

本書は、増田寛也さんの 『地方消滅』 (2014年11月1日のブログ) に対する批判から始まり、中国地方を中心に、我が国の農山村が、過疎化、高齢化の波にさらされながら、したたかに生き抜いてきた歩みが語られていきます。
そして、困難な状況にあって、地域社会の維持に工夫をこらし、前を向いて進んできた、たくさんの事例が紹介されています。
これらの事例が例外的な成功談ではないことは、近年、若い世代の間で、農山漁村での暮らし方への関心が急速に高まっている社会現象からも窺えるところです。

3月1日の読売新聞文化面は、「増田レポート 反論と補完」と題し、濱田武士氏が本書を取り上げていました。
濱田氏は、対立軸に触れながら、本書に「『地方消滅』の見落としを補完する役割」を見いだしておられます。
濱田氏は、「『地方消滅』の読了後には是非読んでほしい」と結んでおられますが、両方を読んだ私にも、対立軸ではなく補完を見出す方が有益であるように感じられました。
農山村の役割について、改めて考えさせられるとともに、前に向かって進んでいくエネルギーをいただきました。
とりわけ「定住・移住の推進」に関わっておられるみなさんに、お勧めしたいと思います。


2015年3月15日
から 久元喜造

大学生のみなさんとの円卓会議

昨日、「第3回 大学生と神戸市長との円卓会議」が開催されました。
きょうの神戸新聞でも紹介されていますように、「安全・安心な市民生活」をテーマに、活発な議論が行われました。
防災への関心が高く、具体的な提案も出されました。
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また、神戸親和女子大学のお二人が、「震災20年記憶のフラット化プロジェクト」に参加して作成した 「大学生のための防災訓練マニュアル」 の紹介も行ってくれました。

その一方で、犯罪防止や治安の向上についてもたくさんの意見が出されました。
多かったのは、やはり、地域の中でつながりをつくっていくことの重要性です。そのようなつながりをどうつくっていくかについても、多彩なアイデアが出されました。

プレ会議も含めて、4回の円卓会議は、昨日で終了しました。
参加されたみなさんは、円卓会議から何かを得てくれたようですし、私自身、学生のみなさんから、また4回の会議を通じて、たくさんの元気をいただきました。

円卓会議で出された提案は、市政にどんどん反映させていきます。
平成27年度予算では、(仮称) KOBE学生まちパス を発行します。
これは、 公募抽選した500名の市内在住あるいは市内大学の学生のみなさんに発行するパスです。
ビエンナーレ会場、水族園、動物園、美術館、公園、博物館など17施設(予定)に年間、無料で入場でき、各自のFacebookで、施設の感想や見どころ、楽しみ方などを発信してもらう取り組みです。
円卓会議で出された提案を、ほとんどそのまま具体化しました。

最後になりましたが円卓会議のファシリテーターをおつとめいただきました、島田智明、清水信年、加納郁也、賀屋光晴、船木伸江 の各先生に、心より感謝申し上げます。


2015年3月12日
から 久元喜造

職員採用試験区分の見直し

神戸市の大卒職員採用試験の試験区分は、次の10区分になっています。

一般行政、福祉、土木、建築、電気、機械、化学、農業、造園、衛生監視

さらに、一般行政は、法律、経済、経営、国際関係が選択科目となり、衛生監視は、獣医、畜産、水産、農芸化学、薬学が選択科目となります。

この試験区分は、長く変更されていませんが、神戸市を取り巻く環境や市政の重点課題の変化に応じて、その変化に対応した試験区分になるよう見直しが求められます。
そこで、来年度は、次のような観点に着目して見直しを行っていただくよう、人事委員会にお願いしてきました。

まず、神戸市が重点プロジェクトとして推進を図っている神戸医療産業都市構想を進めるうえでは、ライフサイエンスなどの分野で、基礎的な専門知識を有する人材が必要です。
また、環境政策は、これからさらに力を入れていかなければならない分野であり、生態系や地球環境、自然エネルギーの分野について基礎的な専門知識を有する人材が必要です。

人事委員会では、このような私からの要請を真剣に検討していただき、以下のような試験区分の見直しを行っていただけることになりました。
まず、試験区分として、 「生物」 「環境」 の区分が新設されます。
また、 「衛生監視」 の区分と  「農芸化学」  の選択科目を廃止するとともに、 「生命科学」 の区分が新設されます。
これにより、神戸市採用試験の試験区分は、新設の3区分を含め、16となります。
人事委員会のスピーディーで適切な対応に感謝しております。


2015年3月10日
から 久元喜造

貝原俊民さん「人間サイズのまちづくり」

神戸新聞連載の故 貝原俊民さん 「わが心の自叙伝」第32回(3月7日掲載)は、「人間サイズのまちづくり」でした。
「阪神・淡路大震災からの教訓に学び、「巨大サイズ」「経済サイズ」「画一サイズ」によるまちづくりから脱皮して、「人間サイズ」による都市づくり」を提唱されたことが記されています。
貝原さんによれば、神戸市の創造的復興の中で、新しい都市機能の整備をめざしたプロジェクトが二つありました。

ひとつは、「HAT神戸」です。
神戸製鋼所発祥の地に、世界保健機関(WHO)を誘致し、国際協力機構(JICA)関西国際センター、神戸赤十字病院、ひょうご震災記念21世紀研究機構、人と防災未来センター、兵庫県こころのケアセンター、県立美術館などを整備し、「人の安全や安心についての研究、国際協力を、神戸市の新しい都市機能として位置付けることとした」とあります。

二つは、医療産業都市構想です。
テーマパーク構想もあったようですが、神戸市はこれを採用しませんでした。
今日、さまざまな研究機関や大学などの施設、医療機関、民間の研究所などが集まり、日本でも有数の医療産業の集積地となりつつあります。

貝原さんは、「この二つの新しい都市機能は、神戸市を経済サイズの単なる港湾都市から、人間サイズのまちへ進化させるものである」と結んでおられます。

「単なる港湾都市」という表現には、多少の違和感を覚えますが、HAT神戸と医療産業都市を、「人間サイズのまちづくり」として位置付けておられた貝原さんの視点は、改めて新鮮に感じました。
人間サイズという視点を忘れることなく、前に進んでいきたいと思います。


2015年3月7日
から 久元喜造

中谷美紀さん主演『繕い裁つ人』

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『繕い裁つ人』
秀作です。
神戸の坂の上に佇む古い洋館で、ひらすらミシンを踏み続ける主人公、南市江。
洋館には、「南洋裁店」の古い看板が掛かっています。
偉大な仕立て人であった祖母を超えられず、自分なりの服を創りたいという願いを押し殺し、祖母が仕立てた服の繕いにいそしむ日々。
そこへ、大丸神戸店の藤井が市江の技に着目し、ブランド化の話を携えてやってくるところから、ドラマが始まります。

眼下に望む神戸の街、港、そして光る海。
主人公の靴音、教会の鐘、阪急電車が走り去る音・・・
神戸の光景、そして音風景が、この穏やかで奥行きの深い映画の大事な舞台装置です。

祖母が仕立て、そして、市江が繕い続けてきた服を大事に着ながら、永く寄り添って生きてきた人々。
そんな人々の密かな楽しみは、年に1回開かれる「夜会」です。 30歳以上で、南洋服店で仕立てた服を着続けてきた人だけが参加することができるのです。
美しく咲き誇る花々に囲まれ、人々が弦楽四重奏の生演奏に合わせてダンスを踊り、グラスを傾けるシーンは、観る者を美しいメルヘンの世界に誘います。

中谷美紀さんは、凛とした美しさを湛え、誇り高く、優しい主人公を演じます。
そして、この映画のもう一人の主役は、「洋服」です。神戸が誇る洋服業界のみなさんが、制作に貢献されました。
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振り返れば、監督の三島有紀子さん、中谷美紀さんが市役所にお越しになったのは、1月14日のことで、すっかり日が経ってしまいました。
久しぶりに観た映画が、このように素晴らしい作品であったことは、本当に幸せでした。


2015年3月4日
から 久元喜造

ラグビーの次は、神戸サミット。

ラグビーの次は、サミットです。
3月2日 、2019年ラグビーワールドカップの神戸開催が決定しましたが、間髪を入れず、神戸サミットの実現に向け、行動に移すことにしました。
きょう、井戸敏三知事とともに、外務省を訪問し、中山泰秀外務副大臣にお会いして、2016年サミットの神戸開催を要請しました。
国会からは、渡海紀三朗衆議院議員、盛山正仁衆議院議員、関芳弘衆議院議員、末松信介参議院議員が同席されました。心強い限りです。
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大阪ご出身の中山副大臣は、兵庫県と関わりも深く、神戸のこともよくご存知でしたが、私から改めて、神戸サミットの意義、充実した施設内容、アクセスや警備面での優位性などについてご説明申し上げました。

その後、井戸知事と、斎木昭隆外務事務次官を訪ね、同様の要請を行いました。

開催都市決定の時期は未定ですが、機は熟しつつあります。
仙台、新潟、軽井沢、浜松、名古屋、広島に加え、三重県(伊勢志摩地区)も立候補しました。
8か所からサミット開催都市に選ばれるのは、1か所のみ。
ラグビーに比べ、はるかに狭き門ですが、実現すれば、神戸の存在を世界に向けて大きく発信することができます。
最後の最後まで手を緩めることなく、実現に向け、全力で取り組みます。