久元 喜造ブログ

理不尽の再生産は止めよう。

霞が関で働いていた20代の頃、こんなことがありました。

39度を超える高熱を出し、独身寮でうんうん唸っていたら、夕方、管理人さんが部屋に来て、役所から電話だとおっしゃるのです。
下に降りて電話口に出たら、上司からでした。
課長から今日中に資料をつくれと言われているが、君にしかわからないので、今晩中につくって課長の官舎にとどけろ、と言うのです。
私は、朦朧となりながらも指示された資料をつくり、夜遅くタクシーで課長の官舎に届けました。悪いことにエレベーターのない官舎の上の階に住んでおられたので、ふらふらになりながら階段を上りました。
チャイムを鳴らすと、奥さんが出てこられ、
「主人はまだ帰っていません」
と、おっしゃるので、課長に渡していただくよう頼みました。
どうせ、どこかで飲んでいたのでしょう。
次の日、熱が38度くらいに下がったので、なんとか出勤しましたが、上司も、課長も、私に声すらかけてくれませんでした。

これは、私が経験した理不尽な仕打ちの、ほんの一つにしか過ぎません。
もちろん、心から尊敬できる上司や先輩はたくさんいましたが、職場の慣行や仕事の仕方は、理不尽だらけでした。

私は、霞が関で、長く「上司」として仕事をする中で、自分が受けた理不尽は行わず、同時に、組織から根絶することに努めました。
しかし、全体としてはうまくいきませんでした。
私の力不足もありますが、管理職の中に、自分が若いころに受けた教育をそのまま部下に施すことが、その部下のためにも、組織のためにもよいことなのだと信じ、忠実に実践する人が結構多かったからです。

組織の中に、少しはそんな人がいてもいいのかもしれません。
しかし、この種のタイプが組織の主流を占めてしまうと、組織の改革は進みませんし、職場環境の改善も望めません。
理不尽の再生産は止めるべきです。