久元 喜造ブログ

2016年5月1日
から 久元喜造

エイプリルフール・仕掛けるべきだったか?

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4月1日からひと月経ったので、市役所内で行った議論の一端を記しておきます。
神戸開港150年記念事業PRの一環として、エイプリルフールに合わせ、行政が奇抜なアイデアで情報を発信する試みをしたらどうかという提案を受けました。
上のような「新聞」の「号外」を1万部作成し、4月1日(金)に三宮・元町駅前で配布するという内容でした。

面白いアイデアだと思ったものの、行わないことにしました。
以前、ある全国紙がエイプリルフールの記事を大々的に掲載したのですが、あまり反応がよくなかったことを話し、
「日本人に、欧米流のユーモアのセンスは受け入れられているのだろうか?」
と疑問を投げかけました。

結果として、私の指摘は間違っていたようです
メディアでは、さまざまな企業によるエイプリルフールを使った情報発信が紹介され、大成功したケースもありました。
提案してくれた担当者は、そのような成功事例を見て、
「頭の固い役人市長の限界やな」
と思っているかもしれません。

今回感じたことは、自治体の広報戦略は民間企業と同じであるべきなのか、あるいは違ってもよいのかということでした。
同じでよいという考え方もあるでしょうが、私は、税金を使って行う自治体広報には、自ずから自己抑制が要るのではないかと感じています。
一方、南あわじ市の「独立宣言」のように、これまでの殻を破った自治体プロモーションがたくさん出てきており、さまざなご意見をいただきながら、広報戦略の進化を図りたいと思います。


2016年4月29日
から 久元喜造

熊本地震・水道復旧への支援

熊本市内では、地震発生直後から断水が発生しました。
神戸市水道局では、ほかの都市と分担しながら、応急給水活動を実施してきました。
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給水タンク車(2台)による給水を行っていますが、神戸から運んできたコック付の給水袋(10ℓ)が重宝されているとのことでした。
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また、阿蘇郡西原村では、破損した水道管の仮配管を行うこととし、避難所を中心に給水するための施工管理を支援しています。
また、配水管を本格復旧するための現地調査を行い、復興計画を作成する支援業務も行っていきます。

2015年8月9日のブログ でも書きましたが、神戸市水道局は、岩手県大槌町をはじめ東日本大震災の被災自治体への支援を行ってきました。
これまでの経験を踏まえ、熊本県内の水道が早期に復旧することができるよう、全力で取り組んでいきます。


2016年4月26日
から 久元喜造

熊本地震への現時点での対応

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きょうは、4月14日の地震発生後、初めての定例記者会見がありました。
これまでの神戸市としての対応の経過と現時点での対応状況、今後の見通しなどについてお話しました。

きょう時点で熊本市に派遣されている神戸市の職員は、126名。
避難所の運営、健康・衛生面での支援、廃棄物の処理、応急給水、下水道施設の復旧支援、建物の応急危険度判定など幅広い支援業務に従事しています。

任務を終えて帰還した職員は、124名。
緊急消防援助隊としての活動、先遣隊としての情報収集、災害時医療、応急給水、下水道施設の復旧支援などの業務に当たりました。
同種の業務について、後任の要員が派遣されて交代した職員も含まれています。

帰還した職員からは、被災状況や現地での支援業務の内容について報告を受けています。
派遣された職員の多くは、阪神・淡路大震災のときの対応や東日本大震災への支援を行ったみなさんです。
これまでの経験を生かして、熊本市などの自治体のみなさんと率直に意見を交わし、現地での活動にあたってくれています。
現時点で、怪我をしたり、大きく体調を崩した職員はいないようです。
余震活動もまだ続いているようですから、引き続き安全を確保し、健康に注意して、任務にあたっていただきたいと念じています。


2016年4月23日
から 久元喜造

「本震」前に引き返した神戸市消防隊

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昨日の読売新聞一面トップの記事です。
14日午後9時26分にマグニチュード6.5、益城町で震度7の地震が発生した後、熊本に向かった神戸市消防局の部隊が、総務省消防庁の待機指示を受け、15日未明までに神戸に引き返したことが報じられていました。
この後、16日1時25分にマグニチュード7.3の地震が発生し、消防庁からの指示を受け、神戸市を含む各消防本部の隊員は、緊急消防援助隊として現地に向かったのでした。

大きな地震の後は、余震を伴いながら収束していくのが通常のパターンです。
記事は、気象庁にとって、最初の大きな地震を本震とみなすのは長年の「常識」であったことを指摘した上で、会見した気象庁の地震津波監視課長が「今回が本震」と説明すると、「報道陣はどよめいた」と報じていました。

私は、気象庁や総務省消防庁の判断が間違っていたとは思いません。
これまでの「常識」からすれば、やむを得ない対応だったことでしょう。
しかし、この記事で、古村孝志東大地震研究所教授が「規模や時期の予測で被害を減らせるという考え方を改める必要がある」と述べておられるのは、そのとおりだろうと思います。

2014年10月3日のブログ でも書きましたが、私たちは、地震など地下の動きについては、なお未知の世界が広がっているという認識に立つべきだと思います。
根拠のない予断を抱くべきではありません。
神戸でも、21年前に大地震があったからと言って、近い将来再び起きないとは言い切れません。
神戸近辺の活断層の状況と市内の地質分布を、改めて地図で確認しました。


2016年4月19日
から 久元喜造

熊本への派遣職員を増員

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昨日の第2次緊急消防援助隊、給水応援隊に続き、神戸市からの職員派遣を増員します。
避難が長引くにつれ、懸念されるのが、被災者の健康と衛生状態です。
そこで、神戸市として、医師を含む先遣隊、保健師などから構成される保健衛生隊、土木職から成る下水道支援隊を派遣することとし、きょう、8時45分から市役所前で出発式が行われました。

13名のうち8名は、阪神・淡路大震災の時に災害対応を行った経験があります。
また、東日本大震災の被災地に派遣された職員も含まれています。
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私からは、余震が続く中、くれぐれも安全には気をつけていただいて、これまでの経験を生かし、任務を全うしていただくよう、お願いしました。


2016年4月18日
から 久元喜造

熊本への災害派遣と支援

神戸市では、4月14日21時26分の地震発生後、直ちに情報収集を開始し、広域応援準備体制を整えました。
すでに、緊急消防援助隊兵庫大隊第1次派遣隊が派遣されているほか、16日には水道局の応急給水隊を、17日には危機管理室の先遣調査隊を派遣しました。

現地の被害状況にかんがみ、さらに組織を挙げた応援体制を構築することとし、本日9時半に、神戸市「平成28年熊本地震」緊急応援対策本部を設置、第1回会合を開催しました。
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現地に派遣されている要員からの情報に基づき、全庁を挙げて、熊本への支援を行います。
きょうは、11時半から緊急消防援助隊兵庫県隊(神戸市隊)第2次派遣隊の出発式を行いました。
八代谷県大隊長以下25名の職員が出発し、残り17名と合流し、任務につきます。
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42名の職員のうち、14名は、21年前の震災時に対応した経験があります。
そして消防局の職員のうち約4割は、東日本大震災の被災地に派遣された経験があります。
さらにきょう以降、応急給水隊、保健師、設備の技術職員などを職員を順次派遣します。

また、災害救援物資としては、17日に、神戸市として備蓄していた飲料水2万本、アルファ化米1万食、生理用品約3万枚、紙おむつ(子供用)約1万2千枚、紙おむつ(大人用)約2600枚などを発送しました。
現地でしっかりと行き渡るよう手配しています。

きょうの本部会議では、初動、応急・復旧、復興の各段階における応援メニューも提示されました。
現地のステージは刻々と変化していきます。
正確な情報のもとに、変化に応じた応援を展開していきます。


2016年4月15日
から 久元喜造

神戸から被災地への支援

4月14日(木)21時26分、熊本で地震発生。
神戸市では、21時40分、危機管理室指令2号を発令、情報収集を開始しました。

21時45分、消防局では後方支援本部を立ち上げて職員の参集を行い、出動準備部隊を待機させるとともに、23時34分、神戸市指揮支援隊8名が指揮車台に分乗し、現地に向け、出発しました。
23時47分、総務省消防庁は、岡山市以西の消防本部で対応する方針をとり、神戸市指揮支援隊に対しては待機指令を発令したため、本市指揮支援隊は、これを受けて待機することとしました。
神戸市では、今後、現地での状況の推移に応じ、いつでも必要な人員を現地に派遣することとしています。

震災に際し、内外から支援をいただきながら災害対応を行った経験を有する神戸市は、被災地に対してこれまでの知識、経験を生かした支援活動を行ってきました。
今年度も、東日本大震災の被災自治体に対し、12名の職員を派遣し、被災地の復興にあたっています。

熊本に対しては、市民レベル、企業レベルでも、さまざまな支援の動きが出てくることと思われます。
地域ぐるみで被災地を全力で支援していきます。


2016年4月14日
から 久元喜造

500 Startups 神戸でプログラム展開

500 Startups は、シード期スタートアップを対象とした世界最大級の投資ファンドです。
私は昨年6月に米国西海岸を訪問したとき、サンフランシスコの 500 Startups にお邪魔し、500 Startups  が日本進出に関心を持っておられることを知りました。
その後、協議を重ねてきましたが、きょう、両者でパートナー協定を締結し、500 Startupsの起業家育成プログラムが神戸で展開されることが決まりました。
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きょう、神戸市役所で行われた記者会見では、創業者のデイブ・マクルーアさんがお越しになり、記者のみなさんからは活発な質問も出されました。
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500 Startups は、これまでのベンチャーキャピタルのように見込みのある起業家に投資するだけでなく、起業家のために自ら短期育成プログラムを準備し、事業の成功のために必要なアドバイスを提供します。

今回のプログラムは、国内、海外から15-20チームの参加者を募ります。
8月1日から6週間のプログラムで、500 Startups からメンター、トレーナーが派遣され、参加者は、シリコンバレーの専門知識だけでなく、グローバルな規模でのネットワークを得ることができます。

今回の取組みは、世界のイノベーションの中心地であるシリコンバレーから、新しい風を日本、そして神戸に吹き込ませるものです。
高い目線を持った優秀な起業家、起業家候補のみなさんが神戸に集結し、この地で新たなイノベーションやコミュニティを生み出し、神戸から世界に雄飛していただくことを期待しています。


2016年4月13日
から 久元喜造

神戸市選管ポスター「18歳をナメるな」

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神戸市選挙管理委員会がこんなポスターをつくったのを新聞で知りました。
次の参議院議員選挙から、18歳、19歳のみなさんも選挙権を行使できます。
キャッチコピーには賛否あるでしょうが、このポスターには、投票に行ってほしいというメッセージが込められています。

憲法は、「成年者による普通選挙」を保障した上で、選挙人の資格は法律で定めるとしています。
法律により、18歳以上の日本国民に選挙権を付与することとされたわけですから、欠格事由に該当する者以外の18歳、19歳の国民はすべて有権者です。
働いているか、学んでいるかは関係がありません。

もちろん、選挙権を行使するうえで、市民と政治との関わりに関心を持ち、政治制度や選挙の仕組みを学ぶことは大切で、「主権者教育」には意味があります。
しかし、主権者であり、有権者である若者たちが「主権者教育」を受けているかどうかは、権利行使の前提であるはずはなく、自らの感性と判断に基づき、投票行動を行えばよいだけのことです。
国や地方自治体が、新しい有権者の未成熟を、上から目線であげつらうべきではありません。

また彼らが行う政治活動は、憲法の保障を受けています。
学校外で高校生が行う政治活動について学校が関与するのであれば、明確な関与の目的・根拠を示すとともに、その目的・根拠に照らして合理的な範囲であることが不可欠です。
有権者である若者は、政治参加の世界では大人なのだという認識に立つべきではないでしょうか。


2016年4月10日
から 久元喜造

芦部信喜『憲法』(高橋和之改訂)

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少し時間がかかりましたが、社会人になって初めて、憲法の教科書を通読しました。
憲法についてはさまざまな議論が盛んに行われるようになっており、改めて基本的な解釈を押さえておきたいと感じたからです。
芦部憲法学は、私たちの世代が学生のときから、オーソドックスな憲法理論とされてきました。
本書は、1993年に初版が出版され、現在は6版を重ねています。
補訂は、高橋和之東京大学名誉教授です。

総務省で選挙部長をしていたとき、当時の菅義偉総務大臣から、地方自治体の首長の多選禁止について憲法との関係を整理するよう指示を受け、平成19年5月、総務省に「首長の多選問題に関する調査研究会」が設置されました。
このとき座長をお引き受けいただいたのが、高橋和之先生でした。

立憲主義とは何か、民主主義とは何か、その相互の関係はどのようなものか、といった原理的な議論が展開され、毎回わくわくしながら研究会に臨んだものでした。
この研究会では、以前の旧自治省の研究会がとった曖昧な態度を払拭し、「法律に根拠を有する地方公共団体の長の多選制限については、必ずしも憲法に反するものとは言え」ず、「それはすぐれて立法政策の問題」との見解がとりまとめられました。
飄々とした面持ちで、精力的に研究会の議論をリードされていた高橋先生のことを懐かしく想い起こしました。

本書は、高橋先生の補訂により、新版後の憲法理論の発展、重要な立法、判例の蓄積が簡潔にまとめられており、主要な論点について頭を整理するうえで、たいへん参考になりました。