久元 喜造ブログ

芦部信喜『憲法』(高橋和之改訂)

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少し時間がかかりましたが、社会人になって初めて、憲法の教科書を通読しました。
憲法についてはさまざまな議論が盛んに行われるようになっており、改めて基本的な解釈を押さえておきたいと感じたからです。
芦部憲法学は、私たちの世代が学生のときから、オーソドックスな憲法理論とされてきました。
本書は、1993年に初版が出版され、現在は6版を重ねています。
補訂は、高橋和之東京大学名誉教授です。

総務省で選挙部長をしていたとき、当時の菅義偉総務大臣から、地方自治体の首長の多選禁止について憲法との関係を整理するよう指示を受け、平成19年5月、総務省に「首長の多選問題に関する調査研究会」が設置されました。
このとき座長をお引き受けいただいたのが、高橋和之先生でした。

立憲主義とは何か、民主主義とは何か、その相互の関係はどのようなものか、といった原理的な議論が展開され、毎回わくわくしながら研究会に臨んだものでした。
この研究会では、以前の旧自治省の研究会がとった曖昧な態度を払拭し、「法律に根拠を有する地方公共団体の長の多選制限については、必ずしも憲法に反するものとは言え」ず、「それはすぐれて立法政策の問題」との見解がとりまとめられました。
飄々とした面持ちで、精力的に研究会の議論をリードされていた高橋先生のことを懐かしく想い起こしました。

本書は、高橋先生の補訂により、新版後の憲法理論の発展、重要な立法、判例の蓄積が簡潔にまとめられており、主要な論点について頭を整理するうえで、たいへん参考になりました。