久元 喜造ブログ

2019年4月12日
から 久元喜造

「役所らしくない」広報願望が墓穴を掘る。


少し前のことですが、防衛省自衛隊滋賀地方協力本部による自衛官募集ポスターが物議を醸しました。
煽情的としか言えないようなデザインが批判を受け、結局は撤去に追い込まれました。
この問題では、セクハラかどうかが議論になったようですが、騒ぎの背景には別の要因があるように思えます。

それは、役所の広報担当者の間に広がる 「役所らしくない」広報をしたいという欲求 です。
マスメディアに取り上げられ、ネットでも話題になることに躍起になり、「役所らしくない」、過激なキャッチコピーやデザインに走る傾向です。

正直、あまり良いことではないと感じます。
過激さを求める傾向は、過激さを競う競争をエスカレートさせます。
全国の自治体が、煽られるかのように「役所らしくなさ」を競い合うのは、滑稽です。
行政の広報には、やはり品位と節度が求められるのではないでしょうか。

そんなに頻繁ではありませんが、「役所らしくないものを考えてみました」と言われ、中身を見ると、首を傾げざるを得ないものもあります。
大事なことは、大手広告代理店の全国画一的発想に踊らされるのではなく、自治体職員が自分の頭で考えることではないかと思います。
神戸市内には、優れたクリエイターやデザイナーがたくさんおられますから、地元のみなさんと自由闊達に議論してみることも大事です。

上の写真は、1月に市役所の市民ギャラリーで開催された展示の模様ですが、伝えたいものがまっすぐに伝わってくる内容でした。
ポスターなどの展示は、中島和也課長をはじめ住宅都市局耐震推進課のみなさんが、神戸の企画会社とコラボして考案したのだそうです。
デザイン的にも優れていると感じました。


2019年4月9日
から 久元喜造

マイナンバーカードをお取りください。


先日の神戸新聞で、神戸市がマイナンバーカード申請を加速させるため、商業施設などでの「出前受け付け」に力を入れていることが報道されていました。
試験的に、ショッピングモールでマイナンバーカード申請を受け付けたところ、かなりの反響があったという記事でした。
兵庫区のショッピングモールに臨時窓口を設けたところ、個人番号通知カードや身分証明などを事前準備する必要があったにもかかわらず、連日、多くの方にお越しいただいたようで、ありがたく感じています。
区役所などでは、顔写真を無料で撮影 し、カード交付の手続きを分かり易く案内していますので、ぜひお越しください。

マイナンバーカードは、是非、取得していただきたいと思います。
ネット社会の進展の中で、さまざまな場面で、マイナンバーが使われていきます。
これからは、就職してから、会社内での手続き、医療、介護などさまざまな分野でマイナンバーが必要になってきます。
本人が本人であることを証明するマイナンバーカードは、あらゆる局面で、ますます重要なものとなっていくことでしょう。
マイナンバーカードを使えば、住民票や印鑑証明といった証明書を、区役所に行かなくても、コンビニなどにある「キオスク端末」で簡単に受け取ることができます。
神戸市では、手数料も窓口の半額(戸籍の証明書は150円引き)にしています。(必要な手続き
区役所などで証明書発行に携わっている職員を、窓口での相談業務に振り向けていけば、一人ひとりの市民のみなさんに寄り添った行政サービスを充実させていくことができます。
マイナンバーカードは、市民のみなさんと行政の双方に、大きなメリットをもたらします。


2019年4月7日
から 久元喜造

湊かなえ『ユートピア』


物語の舞台は、太平洋を望む、人口約7,000人の港町、鼻崎町です。
近隣の大きな市に吸収合併されることなく、町として独立できているのは、日本有数の食品加工会社の国内最大工場があるからでした。
岬に向かう途中には、どの区画からも海を見渡せるように造成された〈岬タウン〉があり、都会から越してきた芸術家などが住んでいます。
古くから町に住み、商店街でお店を営んでいる地元の人たちは、外から移り住んできた人たちの協力を得て、商店街の活性化に取り組みます。
新旧住民が微妙な心理のずれを気にしながらも、地域のためにいっしょになって汗を流す・・・物語は明るい雰囲気で始まるのですが・・・

主要な登場人物は、同じ年代の小学生の女の子を持つ、新旧住民の若い母親です。
帯には、「善意は、悪意より恐ろしい」とありますが、確かに、主要登場人物を含め、物語には悪役は登場しないし、あからさまな「悪意」を示すことはありません。
そして「善意」に基づく行動は、ストーリーの中で重要な役割を演じます。
しかし、むしろ印象的なのは、それぞれの登場人物が相手の気持ちを汲み取ろうとする熱意です。
相手が何を考えているのか、自分の言動に対してどのように感じたのかについて、常に神経を研ぎ澄ましています。
そしてそのような他人の心理への詮索は、ちょっとしたきっかけで疑念を生み、ネット上での書き込みなどを通して不信が芽生え、増幅していきます。

読み終わって何かスカッとするものはないと言ってよいでしょう。
解説では、港かなえさんの特徴の一つとして「いわゆる「イヤミス」と呼ばれる極上の後味の悪さ」が挙げられていましたが、そのとおりだと感じました。


2019年4月4日
から 久元喜造

令和への改元に向けての対応


昨日の毎日新聞全国面に、改元に向けた神戸市の対応が紹介されていました。
元号が「令和」に決定され、5月1日に「平成」から「令和」に改元されることを受け、神戸市では、万全の対応を進めています。

公文書上の元号をどう表記するのかについて、条例・規則に特別の定めはありませんが、神戸市では、文書の発信日など日付の表記については、原則として元号を用いています。
例外として、外国宛の文書などについては、西暦を使用しており、外国人にも対応が必要な住民票などについては、元号・西暦を併記しています。

改元に伴い、情報システムの文書について、元号を一律に「平成」から「令和」に変更する必要があります。
神戸市が保有する情報システムは、全体で、275あり、市民サービスに直結する、住民情報や税、福祉など規模の大きい22システムについては、平成30年度から準備を進めてきました。
具体的には、元号の公表予定日の4月1日までに、文書の中にある元号の部分を、「平成」からダミーの文字列に仮置きし、システムの修正を行って、テストを行うなどの対応を進めてきました。

このような準備作業を行い、4月1日、「令和」決定の日を迎えました。
直ちに、ダミー文字列を「令和」に置き換える作業を開始し、5月1日までにシステムの対応を完了することができる見込みです。
現在、各システムを管理する組織に対し、最新の対応状況をあらためて確認しています。

すでに発行されている許可証、契約書など有効期限を定めたものには「平成32年3月31日」など、改元後の日付を表記しているものがありますが、改元によって効力に影響はなく、特段の対応は必要ないと考えています。


2019年4月1日
から 久元喜造

「令和」決定の日、神戸市役所の入庁式。


今日の午後、ポートアイランドの国際会議場で、神戸市の新規採用職員への辞令交付式が行われました。
開会に先立ち、神戸室内管弦楽団による歓迎演奏があり、モーツァルトのディヴェルティメント ニ長調KV.136より第1楽章、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」などが演奏されました。

国歌斉唱の後、私から、259名の職員の代表に辞令を交付し、代表職員による 宣誓が行われました。
私から歓迎の言葉を申し述べました。

「私たちは色々な意味で戦いをしています。
巨大地震、津波など災害のリスクとの戦い,サイバーテロや未知の病気など予見しがたいリスクとの戦い、貧困や格差といった社会的不公正との戦い、などです。
決して楽な仕事ではありませんが、苦楽を共にし,私たちに与えられた任務を全うしていきましょう」

「組織に属するということは、組織に迎合することではありません。
自分自身の音色を大切にし、異なる音色を奏でる周りの人々を尊重し、さまざまな音色が響き合う、素晴らしい組織をつくりあげていきましょう」

「震災などの苦難を乗り越え、市民のために尽くしてきた私たちの組織の歩みを大切にし、同時に、みなさんの新鮮な感覚を私たちの組織に吹き込み、よりよいものにしていく努力を、一緒に行って行きましょう」

きょうは、折しも、辞令交付式の直前、新しい元号「令和」の発表が行われました。
新元号に込められている、美しく、平和な社会を築いていこうという願いと決意を、神戸市民は共有したいと思います。
典拠として紹介されているように、咲き誇る梅の花々のごとく、新規採用職員のみなさんが、私たちとともに、人生の花を咲かせていただきたいと願っています。


2019年3月29日
から 久元喜造

谷上・三宮間、540円 から 280円に大幅引き下げ


 北神急行 は、神戸電鉄との結節点の谷上駅から、新幹線との乗換駅、新神戸までをおよそ8分、神戸の玄関、三宮までをわずか10分で結びます。
谷上駅から新神戸駅までは、北神急行が、新神戸駅から三宮を経て終点の西神中央までは、神戸市営地下鉄が運行しています。
抜群のアクセス性を持ちながら、運賃が高いこともあり、利用者数は伸び悩んできました。

高すぎる運賃を引き下げて、北神急行の利用者増を図るため、昨年暮れ、阪急電鉄との間で、神戸市交通局が北神急行の経営を引き継ぐ方向で交渉を開始しました。(2018年12月28日のブログ
交渉の結果、神戸市は、阪急電鉄・北神急行から、198億円 (税込では、217.8億円)で資産の譲渡を受けることで基本合意し、今日記者発表を行いました。

この金額は、資産の簿価を大きく下回るとともに、交通局が専門機関に依頼して行ったデューデリジェンスによる資産の評価額の範囲に収まっています。
この譲渡額を前提に、将来の利用客数を見込み、地下鉄事業が安定的に経営できるようにしていくことが求められます。

運賃をどの程度まで引き下げられるかについては、法に基づく手続きが必要であり、現時点で確定的なことは申し上げられませんが、神戸市としては、たとえば、谷上・三宮間 は、現在の 540 円 を、280円  に引き下げたい と考えています。
大幅な引き下げになります。
実施時期 は、2020年度中、遅くとも、2020年10月の実施 を目指します。
交通事業の一層の効率化を進めるとともに、兵庫県に引き続きご支援をお願いし、一般会計からの支援についても市会の理解を求めていきたいと存じます。


2019年3月26日
から 久元喜造

「パワポの使用が禁止」とは驚いた!?・・・


パワポの活用について、先日のブログ で、内部での議論には要らないのではないか、と記しました。
パワポ資料の作成にはかなりの手間がかかるはずで、「働き方改革」の面からも内部説明のための労力は減らすべきではないかと考えたからです。
私への説明を含め、内部事務に使う手間暇は、市民のために使われるべきです。

ところが、民間企業の方から、市役所職員の話として、奇妙なことを聞きました。
市役所でのパワポの使用が禁止になった、というのです。
その職員の話によれば、民間のみなさんも入る会議で、会議の議題について説明するためにパワポで資料をつくったところ、上司から「パワポで資料をつくらないようお達しが来た」と言われ、つくり直すよう指示された、というのです。

愕然としました。
市民のみなさんをはじめ、市役所の外部への説明はできるだけ分かり易く行うことが大事で、パワポはそのための有力な手段です。
どうしてこんなことになってしまうのでしょうか?

市長・副市長会議での結論は、各局の主管課長が出席する会議で示され、局内などに周知されます。
この会議で説明した福島国武秘書課長の話では、「パワポをなるべく使わないようにするのは、内部事務を減らし、職員の負担を軽減するためであって、外部への説明には引き続き使ってください、ということを繰り返し説明しました」とのことでした。
組織の中で伝言ゲームのようなことが起き、趣旨が伴わず、結論だけが伝わっていったのでしょうか。
大きな組織の中で意思疎通を図る難しさを改めて痛感させられました。
繰り返し、繰り返し、「働き方改革」の趣旨を説明し、疑問に答えていく以外、方策はなさそうです。


2019年3月23日
から 久元喜造

イチロー選手、ありがとうございます!!!


イチロー選手の引退の報道を受け、神戸の街では、イチロー選手に対する感謝の気持ちが広がっています。
震災の年、オリックスのリーグ優勝は、震災を経験し、街の復興に汗を流す神戸市民に限りなく大きな力と勇気を与えてくれました。
イチロー選手をはじめ選手のみなさんは、「がんばろうKOBE」の文字を肩に付け、試合を戦いました。
(写真は、神戸新聞NEXTからお借りしています。)

3月21日の記者会見で、イチロー選手は、「神戸は特別な街です、僕にとって」と仰っいました。
そして続けて、こう仰ったのだそうです。
恩返しは、選手として続けることでしかできないと思っていたので、できるだけ長く現役を続けたいと思っていたこともある。税金を少しでも払えるように頑張ります

ありがたいことです。
もちろん、税金を払っていただければうれしいです(笑)。
しかし、そんなことは気にかけないでいただきたいと思います。
神戸の街は、そして神戸市民は、税金とか、お金とか、そんなものでは換算できない、たくさんの素晴らしいものを、イチロー選手からいただいてきたのですから。
そして、引退の会見のとき、神戸についてこのように仰っていただいたことに、心から感謝を申し上げたいと思います。
本当に長い間ありがとうございました。
そして、お疲れさまでした。

神戸の街は、これからもイチロー選手とともにあり続けます。
改めてイチロー選手からいただいた力を想い起し、いろいろな課題に対して、前を向いて進んでいきたいと思います。


2019年3月19日
から 久元喜造

ストリートピアノが帰ってきます。


1月末から2月11日まで、デュオこうべ浜の手・デュオドームに、だれでも自由に弾ける ストリートピアノ を試験的に設置しました。
たくさんのみなさんがピアノを弾き、周りには自然と人が集まり、拍手が起こるなど、街の中に新しい形のコミュニケーションが生まれました。
ピアノを弾いた小学生から手紙をいただいたり、メッセージカード、メールや電話などさまざまな形で、ずっと置いておいてほしいという声をただきました。

実験は成功したと感じました。
そこで、ストリートピアノを、この場所に戻すことにしました。

3月21日(木曜・春分の日)15時、ストリートピアノが、デュオドームに帰ってきます。
試験設置のピアノと同じ、本山第三小学校で使われていたアップライトピアノです。

これにあわせて、設置を記念するイベントを行います。
試験設置したときにストリートピアノを演奏していただいた大学生、水野優衣さんにソロ演奏をしていただくほか、小学校から来たピアノであることにちなんで、小学生のみなさんによる合唱が行われます。

記念イベント終了後は、どなたでも自由にストリートピアノをお弾きいただけます。

翌日の3月22日には、メトロこうべの「星の広場」で、次のストリートピアノがお目見えします。

第3、第4のストリートピアノ設置のアイデアも出されています。
ピアノの周りに、次々にわくわく感が生まれ、広がっていってほしいです。
ぜひ、ストリートピアノを見に来てください。
そして、ピアノに触れ、楽しいひとときを過ごしていただければと思います。


2019年3月19日
から 久元喜造

職員の地域貢献が広がってほしい。


神戸市の職員が、公務員としてではなく、市民として、地域のために汗を流すことはとても意義があると思います。
職員として与えられた仕事をするのとは違う方法で、地域への貢献につながります。

今年の1月、「神戸みらい学習室」にお邪魔しました。(上の写真)
経済的理由などで塾に通うことのできない中学生に、無料の学習支援を提供している団体です。
団体を立ち上げたのは、代表の佐々木宏昌さんなど神戸市の職員有志でした。
間近で活動の一端を見せていただき、改めて感銘を受けました。

神戸市では、職員が職務以外において地域の課題解決に取組むことができるよう、「地域貢献応援制度」(2017年12月6日のブログ)を用意しています。
職員が勤務時間外に、社会性・公益性の高い地域貢献活動をする場合に、報酬を得て活動に従事できるようにする試みです。
神戸みらい学習室」に携わる神戸市職員は、地域貢献応援制度は使わず、「BE KOBE ミライPROJECT」などの支援を受け、活動を展開しています。
さまざまな団体とつながり、支援を得て、活動を広げていってほしいと願っています。

一方、さまざまなイベントで神戸を盛り上げているNPO法人「umidas耕作所」の理事長、須磨区役所保健福祉部長の衣笠収さんは、
地域貢献応援制度を使い、夜や休日に活動を行ってきました。
アートやデザインを取り入れた「楽しさ」や「共感」でつながる地域コミュニティづくりです。
衣笠さんが今年度で市役所を退職されるのは、たいへん残念ですが、長寿時代の人生は長く、これまでの経験を活かし、市役所時代とはまた違った形で、地域に貢献していただきたいと願っています。