久元 喜造ブログ

2019年1月29日
から 久元喜造

デュオこうべに「ストリートピアノ」が登場。


少し前に、BSで放送されていた「駅ピアノ」について記しました。(2018年11月29日のブログ
このときは、すぐに神戸で実施するのはむずかしいのではないか、と感じていましたが、予想以上に早く実現しました。
動いてくれたのは、住宅都市局市街地整備課のみなさんです。

JR神戸駅近く、デュオこうべ  浜の手・デュオドームに、「ストリートピアノ」が設置されました。
だれでも自由に弾けるピアノです。

置かれている楽器は、本山幼稚園で使われ、震災後は本山第三小学校で保管されていたアップライトピアノ(MIKIピアノ)です。
1978年(昭和53年)から約40年間使われていましたが、保存状態は良好で、修理・調律が行われた後に設置されました。
神戸市がピアノを設置し、管理は㈱神戸地下街が行います。
㈶神戸文化振興財団の全面的な協力もいただいています。

設置期間は、1月26日(土)から2月11日(建国記念日)ですが、反応を見たうえで、3月中下旬に本格設置する予定です。
デュオこうべを、演奏したり、音楽を聞いたり、写真を撮ったりと、にぎわいが生まれる空間にできればと願っています。

1月27日(日)の午後、会場を訪れましたが、ショパンの美しい調べが響き、たくさんのみなさんが聞き入っていました。
子どもたちが興味津々、ピアノを覗き込んでいました。

年代を問わず、ピアノを触ったことがある方は、どんどん弾いてみてください。
そうやって、街の中のコミュニケーションが広がっていくことができれば、素晴らしいと思います。
設置に至るまで、たくさんのみなさんの参加や協力があったことと思います。
心より感謝申し上げます。


2019年1月28日
から 久元喜造

全国初、認知症「神戸モデル」スタート!


認知症「神戸モデル」
は、診断助成制度と事故救済制度を組み合わせて実施する、全国で初めての試みです。
きょう、1月28日 から、診断助成制度がスタートしました。
診断助成制度は、65歳以上の市民のみなさんを対象に、認知症診断を無料で実施する制度です。
認知症診断は、二つの段階で実施します。
第1段階は、認知症の疑いがあるかどうかを診る「認知機能検診」。
第2段階は、疑いがある方を対象に、認知症かどうかと、病名の診断を行う「認知機能精密検査」です。

認知症は、早期に発見することで、進行を遅らせ、病名(アルツハイマー型、血管性、レビー小体型など)を明確にして症状に応じた対応をすることが可能となります。
早期に受診することが大切です。

第1段階は、身近な地域の医療機関で受診していただけるよう、市内326の医療機関で実施します。
受診には受診券が必要です。
電話、インターネットなどで申し込んでいただき、後日、送付いたします。
申し込み方法
第2段階は、地域の専門医療機関で受診していただきます。
広報紙KOBE2月号の認知症の特集記事には、実施する全医療機関を掲載しています。

4月1日からは、以下の事故救済制度がスタートします。
①最高2億円の賠償責任保険に神戸市が加入
②事故の場合にコールセンターで24時間365日相談対応
③GPS安心かけつけサービス
④全市民を対象とした最高3,000万円の見舞金の支給

このように、認知症「神戸モデル」は、早期の診断を促し、万一の事故の場合にも備える仕組みを用意し、認知症の人やご家族を支援していきます。
お問い合わせは、神戸市総合コールセンター まで。


2019年1月26日
から 久元喜造

中村文則『教団X』

教団X」。
不気味なタイトルに惹かれて、書店で手に取りました。
文庫で600頁近い大著です。
そして、ずっしりと重いものをたっぷり含んだフィクションです。

物語の進行はかなり手が込んでいます。
ストーリー自体はさほど複雑ではないのですが、教団Xの教祖・沢渡、別の宗教団体の教祖・松尾、そして、これらに深く関わり合う4人の男女それぞれに凄絶な人生体験があり、それらが回想を交えて複雑に絡み合い、想像を超える展開を見せます。

教団Xは、反社会的な背徳的宗教集団です。
そのようなカルト集団はいつの時代にも存在してきたのですが、教団Xは、教祖、沢渡のすさまじい人生遍歴と密接に関わっていました。
アフリカやアジアの貧困、格差、これらに起因する暴力、テロなどが浮き彫りになり、現代が照射されます。
一方の松尾の団体は、開かれた雰囲気を持ち、松尾による「教祖の奇妙な話」が挟み込まれます。
仏教の摂理、デカルト、量子力学、人間心理などが巧みにつながり、大学の講義を聞くような雰囲気です。

教団Xは、平成の時代に実在したカルト集団と同じく、国家の転覆を狙い、権力への攻撃を開始します。
自衛隊、機動隊のみならず、陰謀を企む「公安」も登場し、緊迫感を孕んだ展開を見せます。
数多くの非条理がこれでもかというほど出現します。
ファンタジー的要素は皆無で、現代の暗部とグロテスクがあちこちでむき出しになります。
しかし非条理はなぜかそこに理由があるような形で出現し、この小説にある種の論理性と説得力を与えています。
目を覆いたくなるようなシーンにもしばしば救済の可能性が訪れます。

ラストシーンは、アフリカの大地。
一筋の光が未来を指し示します。


2019年1月23日
から 久元喜造

組織への「さん」づけに関する悶々・・・


神戸市役所にお世話になって6年余りが過ぎましたが、どうしても違和感を感じることのひとつが、「さん」付けです。
多くの職員のみなさんが、ほかの局や部に「さん」を付けるのです。
「〇〇局ですが、各局さん には、大変お世話になっています」
〇〇局さん には、・・・にご協力いただき、ありがとうございます」
といった風に。
私のところに説明に来る時にも、
「これは、〇〇局さん からこういう風にきいております」
といった説明が行われます。

私も、36年間、国や地方自治体で仕事をしてきましたが、ほかの組織に「さん」を付ける風習は、神戸市が初めてでした。
兵庫県庁の幹部の方に尋ねてみましたが、そのような風習はない、とのことでした。
民間企業でも、聞く限りそんなことはないようです。

正直申し上げ、説明できない違和感に悶々としてきました。
やめてください、とお願いする理由を理屈では説明できません。
言葉狩り をしているように受け止められ、反発を買う恐れもあります。
そんなわけで、庁内の会議でこのことを口にしたことはありません。

しかし、どうしても違和感を禁じ得ないのです。
さん」を付けるのは他人に対してですから、職員のみなさんは市役所のほかの組織を身内と思っていないのではないか、そうであれば、縦割り、割拠主義の現れか、とも思ってしまいます。
会議や説明のとき、組織に「さん」を付けられると、それが違和感となって耳の中に不協和音のようなものが響き、説明してくれている内容がおろそかになってしまうのです。

正直、この風習は、ほかの行政組織とはかけ離れたものであるように思います。
なんとか善処していただければ、ありがたく存じます。


2019年1月20日
から 久元喜造

福田直子『デジタル・ポピュリズム』


サブタイトルは、「操作される世論と民主主義」。
帯には、「捏造され 誘導され 分断される現代」。
ともに本書の内容が端的に表現されています。

「第1章 ビッグデータは監視し、予測し、差別する」は、想像どおりの表題ですが、アクシオム社、データロジックス社、エプシロン社といったデータブローカーが米国で急成長していること、そして今や、MBA(経営学修士)よりもデータサイエンティストが花形職業となり、引く手あまたとなっていることを初めて知りました。
米国のように政治資金規正が緩い国では、集金力のある陣営が彼らを駆使し、有利にネット選挙を展開できることが容易に想像できます。

そして第2章では、まさにそのような「心理分析」データを使った選挙戦術が生々しく報告されます。
すでに2012年の大統領選挙では、陣営に情報を送った有権者に「クッキー」が送られ、購読雑誌、所有している車、フェイスブックへの「いいね!」の傾向などの情報が分析されて、関心分野に沿ったメールが送られていたと言います。

2016年の大統領選挙では、さらにこれが進化します。
地理的、統計学的な情報を5000のデータポイントで分析して米国人を32種類のパーソナリティーに分け、それぞれの属性にふさわしいマイクロターゲット広告が用意されました。
しかもそれらは、激戦区の有権者に集中的に送られたのだそうです。

このほか、偽ニュースの作られ方、急速に進む「ネットバブル」現象、ボットによるツイッターへの書き込みと拡散、売買される「いいね!」ボタンなど、想像を超えるネット世界の現実に戦慄を覚えるばかりでした。
この現実に、どう対応すればよいのか・・・


2019年1月18日
から 久元喜造

「アーバンイノベーション神戸」始動!


昨日まで、神戸新聞で全6回のシリーズが掲載されました。
IT市役所 ミライ形」という見出しもつけられていました。
スタートアップ企業と市職員が一緒になって、地域や行政の課題を解決する取り組みです。

きっかけは、2015年6月、サンフランシスコに出張したとき、市の職員とスタートアップ企業のみなさんが議論をしている姿を見たことでした。
その生き生きとした、楽しそうな雰囲気にとても新鮮な感動を覚えました。
これを神戸で実現できないかと考えたのです。

長田区では、子育てイベントをスマホで見つけることができるアプリを導入しました。
すると、参加者が月当たり550人から800人へと、約1.5倍に増えました。
チラシでしか知ることができなかったイベントを、同じ悩みを持つお母さん、お父さんたちが知り、子育てに関するコニュニティが広がりつつあります。

20以上の窓口がある東灘区役所では、タブレットアプリを開発し、来庁者の窓口案内をデジタル化しました。
スムーズに案内することができるようになり、来庁者の案内時間は最大で約半分になります。

政府(Government)に技術(Technology)を積極的に取り入れようとする、GovTech(ガブテック)の動きが日本でも始まっています。
2月10日には、東京で他の自治体のみなさんとも議論するイベントを開催します。

地域や行政の課題への先端テクノロジーの活用は、市民サービスを向上させるとともに、スタートアップ企業のみなさんに活躍の機会を提供し、職員の発想を豊かにすることにもつながります。
これまでの成果を踏まえながら、今後さらにたくさんの業務に広げていきたいと思います。


2019年1月15日
から 久元喜造

「成人式」は20歳のままでよいのでは。


昨日、ノエビアスタジアム神戸 で、神戸の成人式、「神戸市成人お祝いの会」が開催されました。
神戸の成人式は、毎年、華やかな中にも厳粛な雰囲気で行われます。

民法の成人年齢が、2022年4月に20歳から18歳に引き下げられることから、今後の成人式をどうするのかが議論になっています。
私は、2022年以降においても、現行どおり、20歳になるみなさんを対象として、時期も1月のままで開催するのがよいのではないかと感じています。
昨日お会いした新成人の代表6人のみなさんも、全員が同じ意見でした。

すでに選挙権年齢は18歳に引き下げられ、これに民法の成人年齢の引き下げが続くことは、確かに大きな制度改正です
しかし、18歳のみなさんは、飲酒、喫煙が禁じられており、また少年法の対象年齢も20歳以下のままです。
つまり、全体として考えれば、成年に関する現行諸制度は、18歳、19歳のみなさんを完全な大人とはみなしていない、と言えます。

また、18歳という時期は、進学、就職の岐路に当たり、多くのみなさんが落ち着いた気持ちで成人式に臨むことができるのか疑問です。
大学進学を希望するみなさんは、受験シーズンに当たります。
2024年度からは大学受験の方法が抜本的に変わる予定となっており、大きな議論を呼んでいます。
2022年、2023年の頃は、受験生のみなさんに不安な心理が広がっていることも懸念されます。
このような中で、18歳のみなさんを対象として「成人式」を開催することは、現実的には無理があると思います。

まだ時間がありますから、議会をはじめ各方面の意見も聴きながら検討していきたいと思います。


2019年1月12日
から 久元喜造

神戸の歴史「県政150年」「明治150年」


昨年は、神戸開港150年、兵庫県設置150年の年でした。
初代兵庫県知事、伊藤博文公の台座周辺の環境整備を行ったことを踏まえ(2018年10月12日のブログ)、伊藤博文公の銅像・台座や大倉山の整備を記した「神戸市史」の補遺を編むことができないか、企画調整局にお願いしていたところ、昨年12月に、神戸市史紀要「神戸の歴史」第27号 として刊行することができました。
年始に読みましたが、たいへん興味深い内容でした。

研究論文は、以下のとおりです。
瀧井一博「開港期神戸と初代兵庫県知事伊藤博文」
津熊友輔「伊藤博文銅像・台座と大倉山公園」
山本一貴「幻の神戸市公会堂の建設計画と設計競技」

瀧井論文の冒頭には、神戸海洋博物館のメインエントランスに置かれてある、19世紀英国の軍艦、ロドニー号模型の写真が掲載されています。
1868年1月1日、神戸開港の日、ロドニー号を旗艦とする英国艦船団12隻が兵庫港に来航します。
このロドニー号に長崎から乗船して神戸の地に降り立ったのが、後の伊藤博文公でした。
同論文は、初代兵庫県知事としての事績、そこから垣間見える伊藤博文公の政治思想の原点について語っています。
津熊・山本両論文は、それぞれ銅像・台座と公会堂建設をめぐり、戦前の大倉山で展開された物語です。
公会堂の設計コンペに応募された作品の写真も掲載されています。

お忙しい中、論文を執筆してくださいました瀧井一博先生をはじめ研究者の先生方、紀要を編んでくださいました神戸市文書館のみなさんに感謝申し上げます。
本号は、定価500円(税込み)で市内書店で販売されています。
店頭で手に取ってご覧いただければ幸いです。(文中敬称略)


2019年1月7日
から 久元喜造

本邦初?「つなぐ課」設置


来年度の組織改正で検討しているのが、「つなぐ課」の設置です。
組織と組織をつないで、政策課題に一体となって対応することができるようにするための取り組みです。
国でも地方自治体でも、縦割り行政の弊害は、頭の痛い問題であり続けてきました。
とくに国、規模の大自治体では、組織の階層が多く、細分化され、国民・住民から見れば、どこで何をやっているのかわかりません。
切実な課題を抱えて相談に訪れた市民や企業がたらい回しにされ、あちこちに足を運ばされたりしています。

神戸市でも、縦割り行政の打破を目指すための取組みは進めてきました。
「市民・職員協働プロジェクトチーム」のほか、庁内のプロジェクトチームを設置し、有益な提言を出してもらったことはありますが、結局は、各課室それぞれの施策として具体化されるという改善策にとどまってきました。
縦割り行政の抜本的な改革には、結びついていません。

新年度、企画調整局に設置を検討している「つなぐ課」は、定常的な仕事は持たず、ひたすら各局部、課室の橋渡しを行う組織です。
特定の政策課題に対して、どのような施策が行われているのか、それらが整合性のとれた形で、連携をとりながら実施されているか、市民に届いているかなどを点検します。
役所の中の行政組織を「つなぐ」だけでなく、市民、地域団体やNPOなどと行政を「つなぐ」役割も期待しています。
「つなぐ課」の職員に求められるのは、リサーチ能力です。
ある意味、記者のような取材能力が求められる仕事です。
まずは、ひたすら庁内、地域を歩き周り、丹念に取材し、問題の所在を明らかにしてほしい。
縦割り打破のため、是非、成果を上げていきたいと思います。


2019年1月4日
から 久元喜造

神戸市「新年合同祝賀会」


御用始めのきょう、ポートピアホテルで、恒例の合同新年祝賀会が開催されました。
経済界、政界、行政、文化・スポーツをはじめ各界の約1,600名が出席されました。
開会に先立ち、スーパーストリングスコーベ による弦楽合奏が披露されました。


昨年暮れ、松方ホールで、スーパーストリングスコーベ の演奏を聴き、たいへん感動したことを想い起します。
私からは、今年も世界水準の素晴らしい演奏を、多くのみなさんに届けていただくよう、期待を申し上げました。

今年は、1889(明治22年)に神戸市が市制を施行して、130年になります。
そしてこの年、新橋と神戸間の鉄道の全線が完成し、東海道本線が開通しました。
神戸は、海上交通・陸上交通の拠点として発展してきた都市です。
私からは、昨年12月22日の大阪湾岸道路西伸部着工式、24日の三空港懇談会の開催、27日の北神急行の神戸市交通局への譲渡交渉に関する阪急電鉄との共同記者会見に触れつつ、今年は、陸・海・空の要衝としての神戸をさらに発展させる決意を申し上げました。
人と物の流れをさらに活発化し、神戸と神戸経済が関西全体の発展に寄与できるよう、全力で取り組んでいきます。

人口減少時代に入り、神戸の都市としての価値、ブランド力を高めていく取り組みが求められます。
今年は、我が国で初めてのラグビーワールドカップが神戸でも開催されます。
たくさんのみなさんに神戸の街を満喫していただけるよう、神戸観光局とも連携し、態勢強化を加速させます。
神戸を見違えるような街に進化させることができるよう、全力で取り組んでいきますので、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。