久元 喜造ブログ

2018年12月22日
から 久元喜造

イタリアンレストランも東京一極集中?


少し前のことになりますが、12月7日に開催された 神戸ルミナリエ 点灯式に、ジョルジョ・ストラーチェ駐日イタリア大使 が出席してくださいました。
このとき、大使からいただいたのが、日本のイタリア料理レストランのカタログでした。
それぞれのレストラン自慢の料理がきれいな写真付きで紹介されていて、楽しく読ませていただきました。

カタログの冒頭に掲載されている大使のご挨拶には、次のように記されてありました。

「東京と大阪を主に、北は北海道から南は沖縄まで日本各地に散在する最も素晴らしいイタリアンレストランの選りすぐりの140軒をセレクトして紹介しております」

確かに、地域別に数えてみると、
東京23区が、35軒
大阪市内が、16軒
これに対し、神戸は、3軒 でした。
ちなみに、札幌、横浜、名古屋がいずれも1軒なのに対し、ともに海産物が美味しい、富山市内が6軒、小田原市内が4軒と目立ちます。

別に気にすることはないのかもしれません。
しかし、「食都 神戸」を目指しているのに、少々寂しい気がします。
もちろん、オーナーやシェフの方の中には、「お馴染みさんが来てくれればいい」という方もいらっしゃるでしょうが、全体として、神戸の「食」の存在を、もっと全国に、そして海外にも発信するというアプローチがあってもよいのではないでしょうか。

来街者を増やしていくために、行政としてもしっかりと取り組んでいきます。
魅力のあるお店に関する情報発信を強化し、このことが来街者の増加につながり、お店を訪れるお客が増え、さらに素敵なお店が神戸に集積していくという好循環をつくっていければと感じます。


2018年12月18日
から 久元喜造

神戸市職労「英語による政策討議」批判

きょうの午前中、職員研修所で、「英語による政策討議」が行われ、私も参加しました。
テーマは、外国人市民のみなさんに気持ち良く暮らしていただけるようにするための方策でした。

この「英語による政策討議」に冷ややかな視線を向けるのが、神戸市職労です。
機関紙「公鏡」(2018年7月1日)は、次のように批判しました。
新聞でも報道された「英語による政策討議」が盛り上がらない。平成28年11月に始まり、本年2月に第5回目が開催されている。のべ66人が参加し平均して13人と低調だ

この指摘は、事実に反します。
確かに、きょう討議に参加した職員は10名でしたが、これは、充実した討議ができるようにするため、発言する参加者の数を制限しているからです。
討議参加者のほかに、31名の職員が聴講し、討議に聞き入りました。
きょうで6回目になりますが、これまでに、75名の職員が討議に参加し、聴講者は183名、合計258名の職員が参加したことになります。

神戸市職労がどうして事実を捻じ曲げてまで、この研修を批判するのか、私には理解できません。
神戸は、我が国を代表する国際都市です。
外国人住民も、外国人観光客も増えています。

職員の英語力を高めていくための取り組みがどうして気に障るのでしょうか。
この研修は、職員の自発的な意欲が前提になっており、参加を強制してはいません。
私も決して英語は得意ではありませんが、少しでも英語力を高めたいと思い、参加しています。
市職労のみなさんには、もうそろそろこんな後ろ向きの姿勢ではなく、私たちの組織が前を向いて進んでいくことができるよう、協力していただきたいと願います。


2018年12月15日
から 久元喜造

山崎史郎『人口減少と社会保障』


著者は、社会・援護局長、総理秘書官などを務めた厚生労働官僚で、社会保障制度に精通する一方、幅広い人脈を持ち、地域の実情にも通じておられるようです。
人口減少社会における社会保障はどうあるべきなのか、私たちはそれぞれの立場で何をすべきなのかについての視点や提言は、説得力があります。

筆者の視点は幅広く、包括的です。
大きな視点に立った時、日本の社会保障制度は、縦割りの社会保険方式によって支えられており、社会保険方式が導入された分野(例えば、介護保険)では、「費用負担について国民の理解が比較的得やすく、その結果、サービスは拡大しやすいが、社会保険の論理が成立しづらい分野は、サービスの拡大がなかなか進まない」のが実情です。
後者の典型が「子育て支援施策」であり、諸外国に比較して、大きく立ち遅れています。
国による制度の充実が急がれるとともに、自治体も全力で取り組んでいかなければなりません。
大きな方向性は、「全世代型」の社会保障です。

著者の包括的視点は、「すまい」にも向けられます。
我が国では、住宅行政と社会保障行政が分立した形で展開されてきました。
人口減少時代においては、その連携、さらには融合が図られる必要があります。
居住空間の「希薄化」に対して、サービス形態の革新、生活関連サービスを集約した拠点の整備、「住み替え」の促進、空き家、空き地の利活用などが挙げられており、これらの施策はいずれも自治体が対応しなければならない分野です。
どうすれば、行政組織内の縦割りを排し、市民、企業、NPOなどの参画を得て、政策の刷新を図ることができるのか、自治体の力量が問われるところです。


2018年12月9日
から 久元喜造

三ツ星ベルト・ニューイヤー・コンサート2019


㈱三ツ星ベルト は、来年創業100周年を迎えられます。
西河紀男会長は、昨年1月17日、NHKニュースに出演され、震災の時のことを語っておられました。
震災時には、会社と街を守り、その後も防災訓練や地域貢献を続け、今日を迎えられました。
創業100周年を記念し、2019年新春、華やかなコンサートが開催されます。

ウィーン・サロン・オーケストラ ニューイヤーコンサート2019」。

2019年 1月6日(日) 午後7時 開演
神戸文化ホール 中ホール

音楽の都、ウィーンで抜群の人気を誇る名門オーケストラで、優雅な響きが新春を彩ることでしょう。
モーツァルトのピアノ協奏曲 第26番 KV537「戴冠式」では、家内の久元祐子がピアノを弾きます。
メインは、ヨハン・シュトラウスの「美しき青きドナウ」「皇帝円舞曲」などウィーンゆかりの名曲です。

チケット: SS席:10000円(売り切れ)、S席:7000円、A席:5000円

お問い合わせ先:神戸文化ホール のプレイガイド
078-351-3349 (10:00~18:00)

お申し込みフォーム

とても楽しいコンサートになることと存じます。
たくさんのみなさんにお越しいただければと願っています。


2018年12月7日
から 久元喜造

ちょっとしたことで風景が変わる。


神戸市役所の玄関ホール中央に、生け花を飾ることにしました。
きっかけは、兵庫県議会議事堂にお邪魔したとき、生け花が美しく飾られてあったことでした。
神戸市役所でもできないか、庁舎管理課に持ちかけたところ、すでに生け花が置かれていることを知りました。
以前から、生け花は、玄関ホールの隅にひっそりと置かれていました。
私は、不注意で気づきませんでしたが、実はあまり知られていなかったようでした。
そこで、生け花を、玄関を入ってすぐの目立つ場所に移動し、後ろの掲示板も別の場所に移しました。
これで、玄関ホールの雰囲気は、かなり変わりました。

もうひとつ、現在、新長田に県市合同庁舎を建設中ですが、建設現場の囲いには、完成後の庁舎のイメージを掲示しています。

地域のみなさんと長田区役所のみなさんが協力して蘇らせた、獅子が池の写真もあります。

長田区が進めている「緑プロジェクト」の掲示板の前には、ベンチも置かれています。

これらの掲示により、周辺の雰囲気も華やいだものになっていると感じます。

このように、神戸市が管理している施設やその周囲に、ちょっとした仕掛けをすることで、風景が変わることがわかります。
市内には、膨大な事業費をかけて街づくりをしたにもかかわらず、景観的に無機質で、うるおいに欠けるエリアもあるような気がします。
みんなで工夫をこらし、街の風景をよりよいものにしていきたいと思います。


2018年12月4日
から 久元喜造

楽天㈱と包括連携協定を締結


先日の土曜日、ノエビアスタジアム神戸で、楽天㈱の三木谷浩史会長兼社長との間で、包括連携協定を締結し、記者会見を行いました。
まず、私から、ヴィッセル神戸の運営を通じて、神戸に多大な貢献をしていただいていることに感謝を申し述べました。
とくに、ここのところ、ポドルスキ選手に続き、イニエスタ選手が入団され、大いに話題になりました。
内外に、イニエスタ選手と神戸が発信され、注目を集めました。
さらに、この日、ダビド・ビジャ選手の入団が発表され、大いに盛り上がりました。

今回の協定項目は6項目ありますが、とくに、楽天㈱のEC(電子商取引)ビジネスなどのテクノロジーやサービスを活用した新たな仕事の創出、人材育成を進めたいと考えています。

神戸の大学などを卒業した若者たちが新たなビジネスに参入するとともに、都市型創造産業の活性化にもつながることを期待したいと思います。
また、キャッシュレス決済の普及、観光プロモーションを通じたインバウンド誘客の推進も、大事な課題です。
このほか、神戸市立図書館では、すでに楽天㈱の協力をいただき、電子図書館サービス を開始しています。
電子図書には、「英語読み上げ機能」がある英語図書も含まれており、小中学生が英語に親しむ一助になればと思います。
今後は、AIを活用した市民サービスの向上にも取り組んでいきます。

三木谷社長は、「未来型都市のモデルケース」という表現を使われました。
刻々と進化するテクノロジーを活用するだけではなく、神戸がテクノロジーの進化の舞台となり、未来に向けたさまざまな実験を展開する都市となることができるよう、全力で取り組んでいきたいと思います。


2018年12月2日
から 久元喜造

中島らも『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』


先週の夜、JR元町駅のホームで、灘高の1年上の先輩に会い、中島らも さんの話になりました。
帰宅し、さっそく本棚の奥から引っ張り出しました。
ろくに受験勉強もせず、めちゃくちゃな青春の日々が赤裸々に語られます。
1970年前後の神戸がひんぱんに登場し、なつかしい風景を思い出しながら、いくつかの部分を再読しました。

大阪の中華料理はまずい。というよりは神戸のそれがうますぎるのだ
と叫ぶ、らもさんが挙げるのは、三宮の「振華軒」、元町の「丸萬飯店」、鯉川筋の「東亜食堂」、そして、モツ料理の「丸玉食堂」でした。
丸玉食堂」には、今もときどきお世話になっています。

抱腹絶倒の話が多いのですが、友人の自殺についても語られます。
らもさんの友人は、「田舎の一軒家に一人で住んで、受験勉強をしていた」のだそうです。
タヌキが出た話をして周りを笑わせていた彼は、高校を出て日がたつにつれ、だんだん物静かになり、「水子」の話をするようになったのだそうです。
そして、その田舎の家で、自ら命を絶ったのでした。
そのときから18年経って、らもさんは、こう記します。
「こうして生きてみるとわかるのだが、めったにはない、何十年に一回くらいかもしれないが、「 生きていてよかった」と思う夜がある」。

あとがきには、こう記されています。
「通読していただくとわかるが、十代前半の明るさに比べると、後半はひたすらに暗い。ほんとうのところはこの後に「超絶的に明るい、おじさん時代」というものが横たわっているのだ」

あとがきの日付が、1989年5月。
2004年に亡くなるまで、中島らもさんは「超絶的に明るい、おじさん時代」を生き抜かれたのでしょう。


2018年11月29日
から 久元喜造

街を奏でろ!「駅ピアノ」の音空間


NHK BSのドキュメンタリー「駅ピアノ」の録画を見ました。
舞台は、チェコの首都プラハ。
プラハの鉄道駅で最も古いマサリク駅に、1台のピアノが置かれています。
さまざまな人がピアノの前に座り、思い思いの曲を奏でていきます。

それぞれの事情を抱えたプラハの市民、この街で音楽を学んでいる留学生、たまたまこの街を訪れた観光客のカップル・・・
びっくりするくらい上手な弾き手もいれば、たどたどしく、うろ覚えの曲を弾く子どももいます。
定点カメラは、そんな駅の佇まいを淡々と捉えます。

駅を行きかう多くの人々は、「駅ピアノ」が別に珍しいものではないようで、ただ通り過ぎていきます。
そうかと思えば、ときどき立ち止まってピアノの音に耳を傾ける人もいます。
弾き手と通りすがりの人が会話を交わすこともあるようで、このピアノの前で出会ったことが縁で、付き合いが始まり、結婚にこぎつけたる人もいるようです。

「駅ピアノ」について教えてくれたのは、市役所の幹部でした。
「神戸ではむずかしいでしょうね」と申し上げたのですが、若手有志がトライしてみたいと言っています、とのことでした。

いざ進めるとなると賛成、反対両方の意見があるでしょうし、ひとつひとつ解決していかなければならない課題もたくさん出てくるでしょう。
それでも、若手有志のみなさんが、「駅ピアノ」の可能性を求めて、神戸の街を歩き、街の音風景を感じながら、街のにぎわいのためにどうすればよいのかを考えてくれることは、とてもよいことではないかと思います。
そのような試行錯誤を経て、大方の理解が得られ、「駅ピアノ」が実現できれば、とても素晴らしいことと感じます。


2018年11月26日
から 久元喜造

神戸市職員採用試験「デザイン・クリエイティブ枠」


平成31年度(2019年度)の神戸市採用試験に、新たに「デザイン・クリエイティブ枠」を新設することとし、先日の定例記者会見で発表しました。
美術や音楽、映像、デザインなど芸術分野の素養を備えたみなさんに入ってきていただき、人材の多様化を図ることが目的です。

神戸市をはじめ、多くの自治体では、試験区分は大きく、事務系と技術系に分かれます。
事務系の試験を受ける人材の多くは、法学部、経済・経営学部出身で、技術系は、工学部、理学部、農学部出身です。
これはこれでよいのですが、これからの大都市経営を考えるとき、もっと多様な人材に入っていただく必要も感じてきました。

人口減少時代を迎え、もはやいたずらに都市の規模を拡大させていく時代ではありません。
むしろ、都市の価値を上げていくことが求められる時代に私たちは生きており、いかに創造性を発揮して魅力ある街づくりを展開し、生活の質を上げていくことが必要です。
こうした認識に立つとき、魅力のある人材群として立ち現れてくるのが、芸術系の大学、短大、高専に学んだみなさんです。

自治体はこれまで芸術系のみなさんに目を向けてきませんでした。
現実には極めて少数ながら、これらの学校、学科を卒業した職員が存在し、活躍してくれています。
しかし、彼ら、彼女たちは、予備校などに通い、自治体の試験のために特別の勉強を余儀なくされたと思われます。
そのような苦労を経るのではなく、真正面から芸術系の若者たちを迎えたい、そして、神戸市役所で思う存分、能力を発揮してほしいと思います。

現時点における受験資格、試験日程などについては、神戸市ホームページ をご覧ください。


2018年11月24日
から 久元喜造

見田宗介『現代社会はどこに向かうか』

どういうわけか、たぶん違う書店で、本書を2冊購入してしまい、1冊を大学時代の同級生に送りました。
彼は1970年代初め、気鋭の若手社会学者として頭角を顕していた見田宗介助助教授の講義を聴き、何冊かの著作を読んでいたからです。
すぐに、「楽天的だなあ」という感想を送ってくれました。
確かに、著者の以下のような問題意識は、楽天的と言えるかもしれません。

「近代に至る文明の成果の高みを保持したままで、高度に産業化された諸社会は、これ以上の物質的な「成長」を不要なものとして完了し、永続する幸福な安定平衡の高原(プラトー)として、近代の後の見晴らしを切り拓くこと」

その上で、こう述べるのです。

経済競争の強迫から解放された人類は、アートと文学と思想と科学の限りなく自由な創造と、友情と愛と子どもたちとの交歓と自然との交感の限りなく豊饒な感動とを、追求し、展開し、享受しつづけるだろう

ひとり居酒屋のカウンターに佇むひとときを持つことができたとしたら、この美しい文章を反芻しながら、冷や酒をちびちび味わうことでしょう。
現実としての「永続する幸福な安定平衡の高原」は見えないかもしれないが、ある種の幸福感に浸ることはできるだろうと想像します。

著者は、日本の1970年代の若者(つまり、われわれの世代!)と、現代の若者の意識を調査し、とりわけ現代の若者に、生活満足度の増大と保守化の傾向が見られることを指摘します。
「未来に希望を託し今を犠牲にする」生き方から、「今を満足に生きること」への変化です。
そこからさらに進んで、「幸福感受性の再生」を果たすことができるかどうかが問われていると感じました。