神戸の中心街・栄町通りを一本南に入った通りのビルの5階に、書店「1003 -センサン-」があります。
明るい雰囲気のこじんまりした書店です。
古書のほかに新刊もあり、店主の独自の視点で書籍が選択されていることが分かります。
平積みになっている新刊書の中に本書を見つけました。
帯にはこうあります。
「友達なし、恋人なし、お金なし。
コロナ禍で家から出られない一人暮らしの大学生・瀬戸杏奈。
ある晩、彼女に伝説のハリウッドスターから電話がかかってきて――!?。」
自分には向いていないような気もしましたが、これまで読んだ山内マリコさんの小説はどれも面白かったので、買って読み始めました。
シングルマザーに育てられた瀬戸杏奈が主人公。
お互いを思い遣る親子の会話には、じんと来ます。
コロナ禍の中での孤独と不安。
3年生になってやっと教室での授業が始まり、彼女は、ジェンダー社会論Ⅳ・松島ゼミに参加します。
マリリンとの電話で彼女の素顔の一端に触れた瀬戸杏奈は、ゼミ生たちと次第に自信を持って議論を交わすようになります。
松島ゼミでのやり取りは、いろいろな意味で興味深かったです。
そして卒業論文「セックス・シンボルからフェミニスト・アイコンへ マリリン・モンローの闘い」を書き上げます。
就活全滅の彼女が着目したのは、ワーキングホリデーでした。
ワーホリ発信型YouTuberを貪り見た彼女は、ママから背中を押してもらい、オーストラリアへと旅立ちます。
2024年・春、瀬戸杏奈は、豪州の農場にいました。
豪州で苦労する日本の若者の情報に接していたこともあり(2024年8月16日のブログ)、豪州での彼女の平安を祈りながら読了しました。