久元 喜造ブログ

2020年5月6日
から 久元喜造

黄金週間後の対コロナ戦略


きょうで黄金週間が終わります。
外出の自粛を強くお願いしてきましたが、全体としてかなり徹底され、感謝申し上げます。

黄金週間後の対コロナ戦略をどう立てるのか。
緊急事態宣言が延長されました。
休業要請など法律上の権限は兵庫県にあり、指定都市である神戸市の立場もほかの市町と同じです。
兵庫県の判断に従うことになります。
たとえば、博物館、美術館、図書館については、しっかりとした「三密」対策を講じた上での再開を検討していましたが、兵庫県の休業要請を受けて、閉鎖を継続することにしました。
兵庫県におかれては、「出口戦略」という考え方をとるのかどうかを含め、明確な方針を示していただきたいと思います。

その上で、基礎自治体としてできること、やらなければならないことを、しっかりと、全力で実施していきます。
感染された方が自宅療養を余儀なくされるという事態は避け、2か所の民間療養施設を確保して万全の態勢で運営を継続します。
医療提供体制の確保、医療従事者のみなさんへの支援を行います。(こうべ医療者応援ファンド
特別定額給付金については、大都市の中でもできる限り早く支給することができるよう作業を進めます。(手続き
本市独自の店舗等の家賃減額支援についても、急ピッチで作業を進めます。
ビルオーナー・テナントのみなさまへ
さまざまな支援施策について、できる限りわかりやすい情報提供に努めます。(神戸市支援総合サイト
引き続き、家にいていただくことを基本にしつつ、外出自粛の長期化を踏まえ、徐々に野外で過ごしていただくことができるような方策も検討します。
もちろん、感染防止に細心の注意を払うことが前提です。


2020年5月3日
から 久元喜造

感染を防ぎながら公園の利用を。


市内あちこちの公園で、親子連れなどで利用されている市民のみなさんを多く見かけます。
外出抑制が長期間になり、家で過ごすことが求められていますが、ずっと家に閉じこもりっきりになると、ストレスも溜まります。
近くの公園で散策を楽しんだり、遊んだりすることは、気分転換になることでしょう。

しかし中には、遊具周辺など限られた空間にかなりの数のみなさんがいたり、グループで集まって食事をしたりするなど、感染の危険があると思われる光景も目にするようになりました。
これを心配した公園担当の職員が、公園のベンチに「飲食禁止」という張り紙をして、注意を喚起しました。
これに対し、神戸市会の議員各位から、一律にベンチでの飲食を禁止するのは行き過ぎではないか、もっとわかりやすい広報に努めるべきではないかというご意見をいただきました。
そこで改めて検討し、感染を防ぎながら公園を楽しく利用していただけるよう、わかりやすい説明をすべきではないかということになり、写真入りの利用方法に関するページを神戸市のウェブサイトにアップしました。

新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた公園利用について

まず、人と人との距離を十分にとっていただき、散歩や軽い運動程度にとどめていただきたいと思います。
飲食は、人との距離をとり、一人や家族でするようにお願いします。
バスケット、サッカー、ラグビーなど多人数で接触・密集する球技は避け、親子でのボール遊びなど少人数で楽しんでください。
遊具に子どもたちや保護者が多数集まるのはやめ、子どもたちがお互い離れて使うようにしてください。
手洗いやマスク着用などの感染予防対策の徹底もお願いします。


2020年4月29日
から 久元喜造

神戸市衛生課『神戸市伝染病史』


新型コロナ感染症という、目の前にある見えない敵との戦いに全力で取り組んでいます。
組織の総力を挙げて、今やるべきことをやらなければなりません。
同時に、感染症との戦いは、古今東西、人々が経験してきたところであり、過去の歴史から学ぶことも重要です。

仕事の合間を縫い、『神戸市史』を紐解くと、『神戸市伝染病史』からの引用があったので、早速庁内から取り寄せました。
1925年(大正14年)に、神戸市役所衛生課が編んだ労作です。

1918年(大正7年)から1920年(大正9年)にかけて蔓延した「流行性感冒」(いわゆる「スペイン風邪」)に関する記述は多くはありませんでしたが、当時の流行の様子と神戸市政の対応状況の一端を知ることができました。
「緒言」は、「現実に於ける幾多の障害を排除し、其矛盾を調和する事に於て、初めて大都市の矜持を保ち得るのである」と結ばれます。
当時、神戸市の衛生行政を担った人々の使命感が窺えます。

「スペイン風邪」の感染拡大防止には、内務省衛生局 が大きな役割を果たしました。
内務省衛生局が編んだ『流行性感冒』(1922年)は、「スペイン風邪」大流行の記録です。
出版社の 平凡社 により、2008年に復刻されました。
先見性のある出版企画だったと感じます。
しかも同社は、この貴重な資料を、5月15日まで無料で公開しており、さっそくダウンロードさせていただきました。
衛生局長通知(大正8年2月1日付)の中には「地震の震(ゆ)り返しよりも此病気の再発(ぶりかへし)は怖ろしい」という一節もありました。
平凡社におかれましては、時宜に叶った対応に敬意を表しますとともに、心より感謝申し上げます。


2020年4月21日
から 久元喜造

「こうべ医療従事者応援ファンド」(仮称)


医療現場において、医師、看護師など医療スタッフのみなさんが、厳しい状況の中で新型コロナ患者に対する医療にあたっておられます。
中央市民病院では、院内感染対策を懸命に講じながら、重症患者への治療を行っていただいています。
このような様子が知られるようになり、「医療従事者を応援するために私財を寄付して、少しでも貢献したい」というお申し出をいただくようになりました。
そこで、医療従事者の活動を応援するための寄付を市民や企業から募集し、神戸市内の医療機関に支援金を交付する仕組みを構築することにしました。
寄付に込められた医療従事者への感謝と連帯の気持ちを届けるため、神戸市がコーディネーター役になり、㈶こうべ市民福祉振興協会の中に「新型コロナ対策こうべ医療従事者応援ファンド」(仮称)を創設します。

このファンドで市民のみなさんや企業からの寄付をお受けし、一日でも早く現場の医療従事者に寄付金を届けるようにします。
資金は、各医療機関において医療従事者の職務環境の改善のために充てることとし、具体的な使途は、資金の交付を受けた各医療機関で判断していただきます。
例えば、医療従事者への手当の加算、医療従事者への飲食などの提供、医療従事者の心と体のケア、家族への感染防止などの観点からの宿泊施設の利用などが考えられます。

ファンドの創設はスピード感を持って進めます。
今週中には寄付の受入れ口座を開設し、寄付を受け入れることができるよう、財団のご協力をいただきながら作業を進めます。
具体的な交付先や金額については、財団において有識者による「応援ファンド配分委員会」を立ち上げていただいて決定し、早期の配分を目指します。


2020年4月14日
から 久元喜造

データが示す外出抑制の効果


いま、緊急事態宣言を受け、外出抑制が呼びかけられています。
感染者への治療などに当たっておられる医療従事者のみなさんの負担を少しでも減らすためにも、さらなる外出自粛について、昨日も、臨時記者会見(4月13日) でお願いしました。

神戸市は、ただ外出抑制を呼び掛けるだけではなく、市民や神戸に来られる方々の行動がどのように変わっているのかを、データとしてお示しすべきではないかと考えました。
そこで、「新型コロナウイルス感染症対策 最優先宣言」の中で、「データ解析チーム」を設置し、データの収集・解析・提供を行うこととしました。
9名の「データ解析チーム」は、直ちに作業を開始し、わずか1日で、とりあえずのデータを収集してくれました。
そして、その状況は、「新型コロナ対策データ解析サイト」でご覧いただけるようにしました。
地下鉄の駅の乗降客数、山麓バイパスの通行車両数、赤外線センサーによる人の流れがわかりやすく示されています。

これを見ると、地下鉄の乗降客数は、土日、祝日は、とくに緊急事態宣言の後、大幅に減っていますが、平日の減少は緩やかなものにとどまっています。
金曜日の繁華街の人出は、かなり減っています。
このデータも参考にしていただき、土日の繁華街などへの外出抑制を継続するとともに、通勤のさらなる減少をお願いしたいと思います。

「データ解析チーム」は、新しい種類のデータの収集や充実に取り組んでいきます。
市民や来街者が自らの行動変容につなげていただきたいと思います。
市内の大学からも、データ解析への協力の申し出もいただいています。
学界からも助言をいただきながら、データ活用の取り組みを進めていきます。


2020年4月9日
から 久元喜造

市役所組織を挙げてコロナ対策に。


きょうの各紙朝刊にも掲載されていますが、昨日「新型コロナウィルス感染症対策・最優先宣言」を発しました。
いま私たちは、新型コロナウィルス感染症という見えない敵と闘っています。
神戸が震災以来迎える最大の危機です。
市役所が持っている人的資源を、感染症対策に集中させる一方、緊急性の低い業務は当面実施を見合わせます。

感染症対策の中心を担っているのが、保健所長以下保健所の職員です。
ウィルスとの闘いもかなり長期間となり、今後の収束も見通すことができない今、保健所への応援体制を強化する必要があります。
専門的な仕事は、医師、保健師、看護師のみなさんに担ってもらう必要がありますが、電話対応、各方面との連絡・調整、情報の収集、整理、資料の作成、広報などについては行政職の職員でも対応することが可能です。
このため、本日付で「保健所支援班」(120名)を設置し、各区の保健センターを含め態勢を大幅に強化することにしました。
このほか、迅速で分かりやすい情報発信・広報の体制を強化するため「広報支援班」(9名)を設置するとともに、市民のみなさんの行動変容につなげていただくうえで必要なデータの収集・解析・提供にあたる「データ解析班」(9名)も設置しました。
必要な兼務発令も今日付で行いました。

職員は、新型コロナウィルス感染症に関連しない対外的な会議、会合を開催したり、出席したりしないようにします。
市役所、区役所などへの営業、挨拶などを目的とした来庁はお断りします。
市役所のロビーの椅子も大幅に削減するとともに、24階の展望ロビーも閉鎖し、直行エレベーターも休止しました。
神戸市役所は、緊急事態対応の態勢に移行します。


2020年4月1日
から 久元喜造

新型コロナ最優先で新年度がスタート


きょう4月1日から、令和2年度がスタートしました。
神戸市も定例の人事異動を行いましたが、新型コロナウィルス感染症への対応を最優先にしたシフトを敷くことにしました。

まず、庁内全体のマネジメントを担当する行財政局長、医師の資格を持って感染拡大防止に全力で取り組んでいる保健所長(保健福祉局担当局長)は、定年退職の予定でしたが、それぞれ本人の同意を得て、地方公務員法に基づく勤務延長の措置を執り、引き続き現在の職務に当たってもらいます。
保健福祉局は事務が大幅に増えてきたたため、4月から福祉局と健康局に再編成することにしましたが、新型コロナウィルス感染症への対応に最も深く関わる健康局長には、これまで感染拡大防止の陣頭指揮をとってきた保健福祉局長が就任します。
さらに、健康局には担当局長を配置し、体制の強化を図ります。

例年、人事異動の時期には、庁内外での挨拶回りが行われてきましたが、感染リスクを少しでも減らすとともに、事務の停滞を来すことがないよう、職員の挨拶回りは行わないこととしました。
各方面のご理解をお願いいたします。

今年度は、神戸市職員として289人のみなさんを迎えます。
心から歓迎申し上げるとともに、フレッシュな感覚を私たちの組織に注ぎ込んでほしいと期待しています。
例年行っている入庁式については、感染防止を図るために野外で十分な距離をとって行うことを予定していましたが、残念ながら雨天のため中止することにしました。

神戸市は、きょうから新しい仲間を迎え、改めて職員が一丸となって新型コロナウィルス感染症と闘うとともに、神戸を見違えるような街にすることができるよう、全力で取り組みます。


2020年3月20日
から 久元喜造

就職内定取り消しへの対応


昨日の 定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症への第2弾の対策を発表しました。
その中の一つが、就職内定の取り消しへの対応です。

これまでは空前の人手不足で、就職戦線も売り手市場でしたが、感染拡大の影響で風向きが変わってきているようです。
多くの企業は従業員の雇用を守る努力をされていますが、中には解雇や雇い止めなどが起きているようです。
そして、就職の内定を取り消す動きも出ていると言います。
厚生労働省の調査ではごくわずかにとどまっていますが、実態がどのようになっているかは見えにくい面もあると思われます。
社会人になることを心待ちにし、期待に胸を膨らませていた学生にとって、入社目前で内定取り消しに遭うようなことがあれば、とても大きなショックだろうと思います。
目の前の生活をどうするのか、途方に暮れる方もおられることでしょう。
神戸は、大学などの高等教育機関が集中しており、そのような実態があるとすれば、影響は相対的に大きいのではないかと推察されます。

そこで、緊急の対策として、4月に入社予定だった企業などから内定を取り消された学生の方々を、原則1年間の任期付きで市職員として採用することにしました。
対象者は、神戸市在住で大学、短大、高専、専門学校を卒業予定の方、そして市外在住で市内の大学などを卒業する方です。
募集人員は、100人程度。
会計年度職員として採用し、年収はおおむね300万円程度を考えています。
詳細は、来週に発表しますが、今月下旬にも募集を始め、4月から順次面接して採用します。
当面の生活費を得ながら、新たな就職先を探していただき、これからの人生設計を描いていただきたいと考えています。


2020年3月17日
から 久元喜造

日常との折り合いをどうつけるのか。


神戸市内では、今日現在21例の感染症患者が報告されています。
病院で、PCR検査、救急、学童保育の現場で、福祉施設などあらゆる場所で、多くのみなさんが感染拡大防止のために懸命の努力を続けてくださっています。
市民のみなさんも、学校の休校などの対応に理解を示してくださり、この危機を乗り越えるために行動していただいています。
そのおかげで、何とか感染の拡大を防ぐことができています。

市内では小規模なクラスターが発生しており、クラスターが次のクラスターを生みださないようにすることが不可欠です。
神戸には、感染症指定病院である中央市民病院をはじめ、多くの病院・医療機関があり、今回の肺炎治療に対しても高水準の医療サービスを提供することができています。
重症化した患者に対し、適切な医療を提供することが求められます。
神戸の医療の力を結集し、最善の医療提供体制を確保します。

私たちは、いま見えない敵と闘っています。
これからどうなるのか、正確に先を見通すことができる人はいないと思います。
闘いは短期間では終息しないかもしれません。
このような状況の中で、多くの人々が過度に行動を委縮させることは、私たちの平穏な日常を損ない、経済活動を長期にわたって停滞させるおそれがあります。
そうならないようにするために、感染拡大防止を最優先にしながら対応することが必要です。
今日からは、図書館、博物館・美術館を、制約はありますが、開館することにしました。
子どもたちの居場所づくりへの支援も広がっています。
感染の拡大防止と日常の暮らしとの間でどう折り合いをつけるのか、感染のフェーズに応じた賢明な判断と行動が求められています。


2020年3月15日
から 久元喜造

大木毅『独ソ戦』(岩波新書)


著者は、本書の冒頭で独ソ戦の性格をこう断定します。
ヒトラー以下のドイツ側指導部にとって、対ソ戦は「世界観戦争」であり、「みな殺しの闘争」、「すなわち絶滅戦争にほかならなかった」と。
これに対し、スターリン以下のソ連指導部たちは「コミュニズムとナショナリズムを融合させ」、ロシアを守るための「大祖国戦争」と規定したのだと。
ソ連側では、対独戦は通常の戦争ではなく、イデオロギーに規定された、交渉による妥協など考えられないものになっていきます。
このような性格を帯びた戦争は、もはや戦時の国際法規が適用されるわけでもなく、帯にあるように「戦場ではない 地獄だ」としか言いようのない様相を呈していったのでした。

ヒトラー、そしてスターリンの思考や行動についても詳しく記されており、興味深いものです。
開戦当時、ソ連軍は著しく弱体化していました。
スターリンの大粛清の矛先が軍にも向けられ、何と軍の最高幹部101名中91名が逮捕され、80名が銃殺されていたという戦慄すべき事情があったからです。
ドイツ側においては、ハルダー陸軍参謀総長をはじめとした中枢部の楽観的で杜撰な作戦計画も明らかにされます。

独ソ戦の転機となったスターリングラードの攻防は、地図を交え、詳しく語られます。
当然のことながら、市民を巻き込んだ市街戦は壮絶なものでした。
もちろんレニングラードの攻防も凄まじいものでした。
敗戦が確実になってもなお、ヒトラーが交渉で戦争終結に向かうことはありませんでした。
「世界観戦争」を妥協なく貫徹するというその企図はまったく動揺していなかったという著者の指摘は、地獄を現出させた根源を言い当てているように感じました。