この本を読んだのは、「孤独」が国や自治体の政策テーマに挙げられ始めた頃でした。
神戸市も今年の4月、こども家庭局に担当局長を新設するとともに、福祉局・健康局・こども家庭局の3局で構成するプロジェクトチームを設置し、この問題に取り組んでいます。
しかし本書を読んだのは、仕事とはまったく関係がありません。
山内マリコ さんの本はいつも面白かったからです。
山内マリコさんの小説は、『ここは退屈 迎えに来て』(2014年7月4日ブログ)、『アズミ・ハルコは行方不明』(2015年11月16日ブログ)に続き、3冊目です。
前2作では、女性が主人公か、物語の中心にいました。
それから、ジャンルは少し違いますが、『東京23区』(2016年3月27日ブログ)も読みましたが、最も印象的だった登場人物は、葛飾北斎の娘、お栄でした。
今回は、雰囲気がガラッと変わっていて、主人公はすべて男です。
登場人物は年齢、職業、立場もさまざま。
帯には、「情けなくも愛すべき男たちの「孤独」でつながる物語」とありますが、主人公の男たちの心象風景は多彩で、こう一括りにはできません。
「女の子怖い」の主人公は、高校の男子生徒。
「よりによって高校3年の1学期に内山花音なんかに手を出してしまったのが、僕の人生にケチがついたはじまりだった」で始まる女の子との顛末は、恐ろしく刺激的でした。
彼はどうやって内山花音からの「生還を果たした」のか。
その後に続くモノローグには深い含蓄がありました。
ほかに「さよなら国立競技場」「ぼくは仕事ができない」そして、わずか3行で終わる「いつか言うためにとってある言葉」など19の短編が収められています。