久元 喜造ブログ

アズミ・ハルコは行方不明

yamauchi
山内マリコさんの小説を読むのは、『ここは退屈迎えに来て』(2014年7月4日のブログ)に続き、2冊目ですが、すごく面白かったです。
ストーリーは、小気味よいテンポ感で、次々に予想を超える展開を見せます。
一瞬たりとも読者を飽きさせない筆力は見事です。
しかも、ペーソスと独特のユーモアが入り交じった会話や心理描写は秀逸。

前作に続き、物語の舞台は、どこか衰退の気配が漂うある地方都市。
おそらく、作者が想定している読者層とはまったく異なる、私のようなおじさんが感想を書くと、ピント外れになることは重々覚悟の上なのですが、あえて言わしていただくなら、この作品のキーワードは、
「女の子たちが探しているつながり」
そして、
「街は遊び場だ」
ということなのではないかと感じました。

「小学生の時は活気に溢れた団地」だったのに、今は「すっかり変色し、白かった外壁は一度も塗り直されることなく鼠色に変色している」 ― そんな地方都市に、夜な夜な男性を無差別に襲う「女子高生ギャング団」が出没。
さらに、突然失踪した28歳のOL、安曇春子の行方を探す2人の若者によって、くすんだ街に何かが飛翔し始めます。

ラスト。
200人の女子高生は、「バタバタと(倒れる)男たちの姿を眺め、「ウォォォ」と雄叫びを上げると、めちゃくちゃ楽しげに飛びはねるように、一斉に走り去」り、「彼女たちがいなくなった商店街は、またいつものように静まり返る」のでした。

もしかしたら、退屈な地方都市に一瞬訪れた非日常的祝祭空間を、作者は描きたかったのかもしれません。