久元 喜造ブログ

2018年10月4日
から 久元喜造

ダイキン工業「ブリッジパーソン」は参考になります。

少し前のことになりますが、産経新聞(2018年9月24日)朝刊1面に、㈱ダイキン工業が「ブリッジパーソン」という専門職を設けるという記事が掲載されていました。
本社と子会社の間の「情報パイプ役」としての役割が期待されているのだそうです。

同社では、本社と子会社の間で、情報が「会社の上層部に伝わるまでに実態と異なったり、十分な内容が届かなかったりする問題も起きがち」だったと言います。
「ブリッジパーソン」は、「子会社側から得た情報をありのままの状態で引き上げる一方で、本社の経営戦略を正確に伝達。組織に横串を通して、社員が目指すビジネスの方向性を一致させていく役目を担う」とされています。

記事には、ダイキン工業幹部の「現場にある泥水のような情報が、本社に上がってくるときには真水に変わっていてはいけない」という話も紹介されています。
確かに、大きな組織になると、組織内部の意思疎通がうまくいかず、正確な情報が伝わりにくくなるという傾向が出てきます。

神戸市役所でもそのような傾向があることは否定できません。
ヤミ専従問題の発覚を受けて、神戸新聞社説(2018年9月24日)は、「危惧するのは、久元喜造市長が「就任以来、幹部から報告も聞いたことがない」としていることだ。・・・悪い情報も上がってくる体制になっていないのであれば、巨大組織・神戸市のガバナンスに疑問符が付きかねない。早急な点検が必要だ」と指摘しています。

そのとおりだと感じます。
「ブリッジパーソン」の試みを参考にしながら、新年度の組織改正では、組織をつなぐ仕掛けを取り入れることができないか、検討したいと思います。


2018年10月1日
から 久元喜造

頑張る職員が報われる市役所に。


台風24号は、昨夜8時ころ和歌山県田辺市付近に上陸し、神戸市内でも暴風雨が吹き荒れました。
9月4日の台風21号で大きな被害を受けた神戸市では、防潮鉄扉を閉じるなど厳戒態勢で臨みました。
危機管理室を司令塔に、多くの職員が徹夜で情報収集、避難指示・勧告、119通報への対応、避難所の開設と運営などの応急対策に当たりました。
幸い、台風24号による大きな被害は、今のところ出ていません。
市民のみなさんの冷静で落ち着いた対応に感謝申し上げます。

多くの神戸市職員が、市民の生命、財産を守るために献身的に仕事をしているにもかかわらず、神戸市役所に対しては、いま厳しい批判が寄せられています。
組合幹部が仕事をせずに、違法に組合活動に従事する慣行、いわゆる「ヤミ専従」に向けられる厳しい視線です。
また、法律上認められた期間を超えて在籍専従を認め、超過期間を退職手当の対象に含めて、違法に退職手当を上乗せして支給していた実態も判明しました。
このような違法行為は、組合だけで行えるものではなく、人事当局が関与していたことは確実です。
誠に遺憾と言わざるを得ません。

大事なことは、まずは事実を明らかにすることです。
歪んだ労使関係は数十年続いてきた可能性があり、いまの行財政局職員をバッシングしてみても問題解決にはつながりません。
それぞれの事案に応じ、第三者委員会の調査に委ね、あるいは内部調査を進め、真相を明らかにしていきます。
市民の代表である市会からの質問や指摘に誠実に答えていくことも大切です。
旧来の悪弊を改め、真に頑張る職員が報われる市役所にしていかなければなりません。


2018年9月28日
から 久元喜造

日本は次世代へのツケ回し大国だ。


プレジデント」(2018年9月3日号)に、池上彰さんとジャック・アタリさんの対談があり、興味深く読みました。
その中で、アタリさんが創設した財団「ポジティブプラネット」による調査が紹介されていました。
OECD(経済協力開発機構)に加盟する34カ国が、国民に対してどのような将来を準備するキャパシティを有しているか(国家のポジティブ指数)を測る調査です。
毎年公表されている統計値を基に、29項目の指標により比較しています。
2017年の結果は、1位がノルウェー、2位がアイスランド、3位がスウェーデン、以下、デンマーク、ニュージーランド・・・と続きます。
これらの国は、最もライフクオリティが高く、国民に明るい将来を準備できているとされます。

最下位は、ギリシアで、ハンガリー、トルコ、メキシコと続き、下から5番目が日本。
日本は、34カ国中、30位でした。
「人口の減少、公的債務の多さ、女性の地位の低さなどがメインの理由です」とアタリさん。
今の世代が、減り続ける将来世代にツケをずっと回しているということです。

神戸市の経常的経費を見ても、年間の行政コスト 6188億円のうち、812億円が、赤字地方債などにより将来世代の負担に回されています。(平成28年度決算)
日本のすべての自治体がこのような状況になっているのです。
社会の持続性を確保するためには、社会保障経費について抑制を図るとともに、給付と負担のアンバランスを見直していくことが必要です。
子どもたちが大人になったときに背負う負担を少しでも減らしていくために。
そしてこれから生まれてくる将来世代のためにも。


2018年9月25日
から 久元喜造

鈴蘭台駅前開発が完成


神戸電鉄・鈴蘭台駅前開発が完成し、今朝、記念式典が行われました。
来年度には、駅前広場が完成し、最終的には、上のイメージ図のような鈴蘭台駅前になります。

式典では、私から、一緒に事業を進めてきた寺田信彦社長をはじめ神戸電鉄、この大きなプロジェクトに終始理解を示し、協力をしてくださいました地域のみなさんをはじめ関係各位に感謝を申し述べました。
子どもたちも参加し、テープカットです。

完成した駅ビルの1階から3階までは商業施設となり、4階から7階まで北区役所が入ります。
再開発ビルは、3階で神戸電鉄・鈴蘭台駅と直結しています。
改札口は、天井から自然光を取り入れ、明るい雰囲気です。
エスカレーターなども整備され、改札口から街への移動もすごく便利になりました。
見違えるような変わりようです。
神戸電鉄とバスとの乗り継ぎを分かりやすく表示する工夫もしていきたいと考えています。

北区役所も面目を一新します。
待合スペースの拡張、引っ越しなどの手続きをワンストップで取扱う総合窓口の設置、わかりやすい窓口のカウンター、ユニバーサルデザインなどにより、新しい北区にふさわしい区役所になりました。

お子さま連れのお母さんにも安心して滞在していただけるよう、キッズスペースも設けています。

来年度中に完成する駅前広場も、ゆったりと、そして鈴蘭台らしさを感じていただけるように整備していきます。
駅前広場には、交番も移転し、便利で快適な鈴蘭台駅前が出現します。
鈴蘭台らしさって何だろう。
自分なりのアイデアもお話ししました。
みんなで考え、魅力あふれる街づくりを行っていきましょう!!!


2018年9月22日
から 久元喜造

真野俊樹『医療危機ー高齢社会とイノベーション』


帯には、「国民皆保険と財政規律を両立させるために」とあります。
世界に誇る日本の皆保険制度を持続可能なものとするためには、増え続ける国民医療費を抑制していくことが不可欠です。

本書では、各国の取組みが紹介されますが、とりわけ参考になるのは米国だと思います。
私自身、米国は満足な公的医療保険制度を持たず、医療サービスの分野では遅れているというイメージを抱いていましたが、本書を読んでそれが先入観であったと思い知らされました。
イノベーションを取り入れた医療サービスが、米国で次々に展開されていることが紹介されます。

たとえば、ACO(Accountable Care Organization)は、政府管轄の公的医療保険であるメディケアの患者を対象として、地域の病院と開業医・専門医が一つの診療母体を形成し、外来初診から入院、退院後のフォローアップまで継続的にケアを提供する概念です。
診療母体は、電子カルテなどを共有するとともに、さまざまな指標を通じて医療の質を管理し、質の向上に努めます。
特別に用意された支払プログラムでは、出来高払いではなく、「予想されるコスト」が前払いされ、コストの抑制と質を改善を図るためのインセンティブが用意されています。
このほか、リテールクリニックにおけるナースプラクティショナーの活用、CCRC(継続介護付きリタイアメント・コミュニティ)、IHN(広域医療圏の医療統合体)などの取組も注目されます。

筆者は、米国をはじめとした各国の事例を紹介した上で、医師のみならず患者自身のイノベーションも不可欠だと主張します。
これらの提言にはかなり実現可能性が高いものが含まれていると感じました。


2018年9月19日
から 久元喜造

ネットモニターのみなさんとの対話


神戸市には、市政に対するご意見をメールでスピーディーにお聴きするため、「神戸市ネットモニター」制度があります。
18歳以上の神戸市民に委嘱しており、9月1日現在、5,603人のみなさんが、ネットモニターとして活動されています。

ネットモニターのみなさんには、毎月1~2回程度、神戸市の施策に関するアンケートをお願いしています。
たとえば、7月には、広報紙KOBEについてお聞きしたところ、約7割の方が「毎号読んでいる」と、また、今年5月に紙面を左開きに変更し、記事の文章を横書きに統一したことについて、約8割の方が「適切である」と回答されました。
アンケートの結果は、施策の立案、改善につなげていきます。

不定期ですが、ネットモニターのみなさんとは、「対話フォーラム」を行っています。
これまでは、土日に開催していましたが、お勤め帰りに気軽に参加していただけるよう、先日は、午後6時から三宮で開催しました。
約30名のみなさんが参加してくださいました。
ネットフォーラムでは、とくに毎回のテーマを決めることはしていません。
私から15分か20分、財政状況など市政の現状について簡単に紹介し、あとは、1時間あまり自由に発言していだくようにしています。
事前に発言内容もお聞きしていませんので、的確にお答えできないこともあると思いますが、 率直に議論することが大事だと考えています。

この日も、私の知らないことをずいぶん教えていただきました。
意見が分かれるテーマや、実現するまでに時間がかかるものもありますが、いただいたご意見は、できる限り、市政に反映させていきたいと考えています。


2018年9月16日
から 久元喜造

新井勝紘『五日市憲法』


明治維新百年の1968年、当時の東京都西多摩郡五日市町の旧家、深沢家の土蔵で、自由民権運動期に作成されたと考えられる憲法草案が見つかりました。
本書は、発見者自らによる文書の修復、解読、そして憲法草案の起草者探索の物語です。
作業に当たったのは、東京経済大学、色川大吉教授と筆者をはじめとするゼミ生たちでした。

後に「五日市憲法」と呼ばれるようになった憲法草案の全文は、本書に掲載されています。
全五篇、204条から成ります。
とくに「第二篇公法」は、「日本国民は各自の自由を達す可し。他より妨害す可らず。且国法之を保護す可し」から始まり、国民の権利が具体的に規定されています。
府県の自治には干渉、妨害してはならない、という地方自治の保障に関する規定も注目に値します。
「第五篇司法権」の詳細な人身保護規定も目を引きます。

この憲法草案の起草者、千葉卓三郎とはどのような人物だったのでしょうか。
筆者は、ほとんど手掛かりがない中を千葉の人物像を求めて探索の旅に出ます。
土蔵の古文書の中から、出生地が宮城県栗原郡志波姫町であることを突き止め、役場の戸籍簿から千葉の本籍を見つけます。
千葉の子孫は住んでいませんでしたが、筆者は限られた情報を頼りに、石巻、そして仙台へと探索を続け、とうとう千葉の子孫が神戸市兵庫区祇園に居ることを突き止めます。

筆者の探索には、兵庫区役所も協力しました。
紆余曲折がありましたが、1969年3月17日、筆者は、神戸大学附属病院南寮111号室で、千葉のご遺族、千葉敏雄さんと面会します。
そして病床の敏雄さんから、唯一現存する千葉卓三郎の肖像写真を託されたのでした。


2018年9月13日
から 久元喜造

神戸空港の運用時間の緊急拡大

9月4日の台風により、関西国際空港が被害を受け、6日、大阪府の松井一郎知事より、関空の全面復旧までの間、神戸空港が代替機能の一部を担ってほしい、との要請を受けました。
さらに、10日、国土交通省航空局長より、関空の本格運用までの間に限り、関空の国際拠点空港機能の代替のための緊急措置として、神戸空港の運用を拡大する必要があるので、協力をお願いしたい旨の依頼がありました。
昨日の12日、私は、この依頼について、その趣旨を理解し、協力すること、また松井大阪府知事より要請のあった運用時間の前後1時間の拡大について、対応する用意があることを回答しました。

これらの経緯を踏まえ、本日、国土交通省から、神戸空港における国際線・国内線の代替受け入れについて、次のような発表がありました。
・現行の運用時間は、7時から22時までとなっているが、これを、6時から23時までに拡大する。
・一日あたりの発着回数(最大)を、現行の60回から90回に拡大する。
・国際線を含む運用とする。

今回の決定を実施するためには、国際線を受け入れるためのCIQ(税関、出入国管理、検疫)の体制整備、航空管制の充実などが求められ、国に対して適切な対応をお願いしているところです。
同時に、神戸市としても、三宮などへのアクセスの強化など必要な対応を行っていきます。

関空の被災による関西経済の影響を最小限に食い止めるためには、関西の各地域が一致協力して対応していく必要があります。
神戸市としては、今回の国の決定を受け、関空の代替機能をしっかりと果たしていけるよう、全力で取り組んでいきます。


2018年9月11日
から 久元喜造

「鵯越合葬墓」に応募が殺到。


神戸で初めての合葬式墓地「鵯越合葬墓」が、7月18日に完成し、開所式が行われました。(2018年7月21日のブログ
7月19日から8月20日まで申し込みを受け付けたところ、神戸新聞、読売新聞などに報じられているとおり、予想を大幅に上回る申し込みがありました。

合葬墓は、個別安置施設と合葬施設から構成されます。
個別安置施設の骨壺に10年間安置されたご遺骨は、その後、合葬施設に埋葬されます。
今回の募集では、個別安置施設については、160体の募集に対し、651体の申し込みが、また、合葬施設については、400体の募集に対し、2518体の申し込みがありました。
560体の募集に対し、3169体の申し込みがあったことになります。
申し込み資格のある方については、すべて合葬墓の使用許可を行う予定です。
開所式の後に行われた内覧会にも、たくさんのみなさんが来られ、関心が高いことは承知していましたが、やはり実際の申し込みも想定を大幅に上回りました。
また、申込者の約8割は、生前申し込みの方々でした。

お墓に対する意識が確実に変化していることを改めて認識しました。
このことは、記名板を希望されたのが1500体と、全体の半分以下にとどまったことにも現れているように感じます。
個別安置施設(1600体収蔵可能)、合葬施設(1万体収蔵可能)とも、十分な施設規模を備えていますので、すぐに合葬式墓地を増やす必要はありませんが、今後の墓地行政は、近年における意識の変化に対応したものでなければならないと感じています。

次回の「鵯越合葬墓」の募集は、来年4月頃の予定です。


2018年9月9日
から 久元喜造

中條聖子『森のかんづめ』


本当に申し訳ないのですが、どなたからいただいたのか忘れてしまいました。
部屋の本棚にあるのをたまたま見つけ、昼休みに読みました。

表紙が可愛くて美しい、素敵な絵本です。
日本語と英語の両方で書かれています。

ある山のちょうじょうに 美しい森にかこまれた 小さな国がありました。
小さな国には ひとりの王さまと 少しの人びとが すんでいました。
人びとは すくない畑をたがやして みんなしっそに なかよく くらしていました。

ある日、小さな国の王さまは、大きな国の王さまからパーティーに招かれます。

見たこともない大きなたてもの、そして大きなお城がそびえています。
お城の大広間では、たくさんの王さまや女王さまたちがにぎやかに話をしていましたが、小さな国の王さまは話の輪に入れず、すみのほうで、ぽつんとたっていました。
そしてすばらしいたべものがつぎつぎにはこばれてきます。

しかし、大きな国の王さまから見せられた地図には、小さな国はのっていませんでした。

国に帰った王さまは元気がありません。
そんな王さまを人びとは励まします。

王さま 元気をだしてください。
わたしたちの国をしってもらうためにも じまんのものを いっしょにかんがえましょう。

小さな国の人々が、自分たちの国のすばらしさを知ってもらうために考え出したものとは・・・・・・?

作者の中條聖子さんは、神戸出身の内科医。
神戸大学医学部附属病院で診療と研究に当たっておられましたが、阪神・淡路大震災で亡くなられました。
29歳の若さでした。
中條さんのやさしいお人柄が偲ばれる佳作です。
美しく、ほのぼのとした絵は、三浦美代子さんの作品です。